原子分解能逆 X 線光電子ホログラフィー
Atomic-resolved Inverse X-rays Photoelectron Holography
㈱東北テクノアーチ1,東北大金研2,JASRI 3,㈱堀場製作所4
○上坂 彰朗1,林 好一2,松下 智裕3,新井 重俊4
物質中の特定原子周辺の局所構造解析を行うために、原子分解能ホログラフィー技術が最近、注 目を集めている。これは、X 線や電子線、中性子線等を利用し、特定原子周辺の 3D 原子配列を 20 Å 程度で再構成させる技術であり、クラスター構造の解析やドーパント周辺の局所構造の解明に対 して大きな利点がある。例えば、原子分解能ホログラフィー技術の一つである光電子ホログラフィ ーの技術を用いて、表面構造の解析等が行われてきた。しかし、
従来の原子分解能ホログラフィー法では、放射光実験施設等の 大型実験施設が必要であった。そこで、我々は、実験室で容易に ホログラムを測定するために、電子顕微鏡を用いた逆 X 線光電 子ホログラフィー法を提唱した[1]。本発表では、市販の SEM を 使用し、実験室レベルで原子分解能ホログラム測定が可能であ ることを示す。
Fig.1.(a)に示す光電子ホログラフィーでは、X 線を試料に照射 すると、試料内部のある原子から発生した光電子の一部が隣接 する原子と散乱し、散乱しない光電子と干渉し、ホログラムを 形成する。観測されたホログラムをフーリエ変換することによ り、3D 原子配列を再生させることが可能である。一方、Fig.1.(b) に示す逆 X 線光電子ホログラフィーは、光電子ホログラフィー の光学的相反定理を用いる。試料に照射された電子線の一部が 試料内部のある原子と散乱し、直接、特性 X 線を発生する原子 に届く入射電子線と試料内部で干渉を起こす。その干渉強度は 照射方向の角度方位に依存して変化するので、結果として、目 的原子から発生する特性 X 線にも強度変化が生じ、ホログラム が測定される。
本実験では、電子線の照射源には SEM の電子銃を使用し、試 料に SrTiO3を用い、エネルギー分散型 Ge 検出器を用いて Ti-k
特性 X 線を測定し、Ti 周辺のホログラムを取得した。複数のエネルギーでホログラムを測定し、よ り高精度な原子像を再生させるため、SEM の加速電圧を 6.00、6.08、6.15、6.22、6.30 kV とした。 次に、得られたホログラムから、フーリエ変換によらない、フィッティングを用いた原子像再生 アルゴリズムである SPEA-MEM[2]を用いて、実空間に原子像を再生した。SrTiO3に含まれる全て の元素(Ti、O、Sr)の原子像を理論位置に鮮明に再生させることに成功した。Sr では空間分解能 0.6 Åを達成し、非常に高精度に再生させることができた。このように、汎用の実験装置を用いて、実 験室レベルでホログラムを測定し、特定原子周辺の 3D 原子配列を高精度で再生させることが可 能なため、逆 X 線光電子ホログラフィー法は構造解析において大いに有用である。
[1] K. Hayashi, et al : J. Phys. Soc. Jpn 75, 053601 (2006). [2] T. Matsushita, et al. Phys. Rev. B. 78 (2008) 144111
Fig.1. Principle charts of (a) photoelectron holography and (b) inverse X-rays photoelectron holography.