西アジアから世界を見る

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西アジアから世界を見る

大学院文学研究科 准教授

守川

もりかわ

知子

ともこ

(文学部人文科学科)

専門分野 : 西アジア史,イラン社会史

研究のキーワード : 東洋史,聖地巡礼,イスラーム,シーア派,アジア

HP アドレス : http://www.let.hokudai.ac.jp/history-area/asian/staff-list-060.php

「東洋史」って何ですか?

過去にどんなことが起こり、人びとはどのような生活をしていたのでしょうか?彼らは 何を考え、どう行動していたのでしょうか?――このように、むかしの人びとの営みを探 るのが歴史学です。

歴史学のなかでも「東洋史」というと、みなさんにはなじみがないかもしれません。東 洋史とは「アジアの歴史」を対象とする学問です。そして東洋史が対象とする「アジア」 は、主にユーラシア大陸のヨーロッパ以外の地域を指します。つまり、韓国からトルコま でのとても広い地域なのです。あまりにも広い地域を対象としますので、これをもう少し 細かく分けて、中国や朝鮮半島の「東アジア」、インドネシアやタイなどの「東南アジア」、 インド亜大陸を中心とした「南アジア」、そしてイランやトルコなどの「西アジア」、ウズ ベキスタンなど旧ソ連国の地域を「中央アジア」と呼んだりもします。

わたしはこの広い「アジア」の中のイラン 地域の研究をしています。イランはかつては 「ペルシア」とも呼ばれ、イラン人の話すペ ルシア語は、イラン以外の地域でも広く使わ れる公用語でした。そのため、たくさんのペ ルシア語の歴史資料(文献)が西アジアや中 央アジアに残っています。これらの地域では、 ペルシア語のほかにも、アラビア語やトルコ 語が使われており、むかしの人たちが書き残 した数多くの文献が、わたしたちの歴史研究 を支えています。

具体的にはどのような研究をしているのですか?

近世の日本では、お伊勢参りや四国巡礼が盛んだった時期があります。それと同じよう に、19世紀のイランでは、シーア派の偉人や聖者のお墓にお参りすることがブームを迎え ていました。ちなみに、シーア派の聖者のことを「イマーム(指導者)」と呼んでおり、ア リー(661年没)や息子のフサイン(680年没)といった人が広く尊崇されています。彼ら のお墓のあるイラクへ、19世紀後半には年間10万人もの巡礼者がイランから訪れていまし た。巡礼する人びとは、質素な身なりでキャラバンを組み、1ヶ月以上をかけて徒歩で目

出身高校:京都府立北稜高校 最終学歴:京都大学大学院文学研究科 歴史

17世紀末に、イスファハーン(イラン)からアユッタ ヤー(タイ)に行った使節の見聞記。タイの風俗習 慣が詳しく書かれています。

(ペルシア語、大英図書館所蔵)

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的地へ向かいます。そしてイマームのお墓に着くと、お参りをして、熱心に祈りを捧げま す。

このようなシーア派の聖地巡礼から見えてきたものは、巡礼に行く人たちが必ずしも信 仰心だけで行動しているわけではないということです。当時のペルシア語のことわざに、 「参詣(巡礼)も、商売も」というのがありますが、この言葉に象徴されるように、巡礼 者たちは携えてきたものを聖地で売り、土産物を買い、あるいは散策や観光をしたり、知 り合いを訪ねたり、さまざまなかたちで余暇を過ごしています。そして、より重要な点と して、聖俗両面をあわせもった巡礼者たちの行動は、シーア派に限ったことではないとい うことです。お伊勢参りに行く人もまた、お土産を買ったり、お参りのあとに精進落とし をしたりと、信仰心だけでは語りきれない行動をとっています。

歴史学が明らかにできることは、過去の人びとの営みのうちのごくわずかですが、その 先には現代のわたしたちの社会との比較があります。たったひとつの事象であれ、古今東 西、あるいは世界で起きた(起きる)さまざまなことを照射する座標となり得るのです。

これから何を目指しますか?

世界には、たくさんの聖地があります。これまでの研究では、キリスト教の聖地はイェ ルサレムやローマ、イスラームはメッカ、仏教はブッダガヤなど、宗教ごとに別々に考え られてきました。ですが、歴史的にみると、どこかの段階で、聖地は人びとによって「つ くり出された」ことがわかります。どのような宗教の名を冠するにせよ、神聖とされる由 来も後付けである場合や、パワースポットのように時代を超えて聖地とみなされつづける 場合が多く見られます。わたしはいま、世界中の聖地を対象に、『聖地の世界史』としてま とめていく作業をしています。特定の宗教に限定せず、人びとが祈りの空間を求め、それ を各地でつくりあげていった過程を明らかにすることが、この本の一番の目的です。

また、近世のシーア派の人びとやイラン人(ペルシア系)の活動に注目することで、西 アジアから、さらには中央アジアや東南アジア、ヨーロッパまで対象を広く捉え、近世の 世界像を明らかにしていきたいと思っています。

参考書

(1) 守川知子,『シーア派聖地参詣の研究』,京都大学学術出版会(2007)

左: シーア派の初代イマームのアリー

右: イラ クのナ ジャフ市にあ るアリ ー の墓廟。ナジャフは、アリーのお墓を中 心に、大都市になりました。

(人文学カフェのポスターより) http://ocw.hokudai.ac.jp/OpenLecture/ HumanitiesCafe/2011/IslamicHolyLand/

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参照

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