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は じ め に
2001 年にホウ素・フッ素が水質汚濁防止法の排 水基準(有害物質)に追加され,全国一律の排水規 制がスタートすることとなって 9 年が経過した。し かし依然として,多くの業種は処理技術の開発が不 十分で対応が困難などの理由により,暫定的に設け られた緩やかな基準の適用を受けており,一律基準 への移行が猶予されている状況にある。
フッ素は以前より水質汚濁防止法の生活環境項目 として規制されており,数多くの処理技術が実用化 されていることもあって,かなりの業種で一律基準 へ移行が進んできたが,ホウ素は過去に処理技術の 研究例が少ないだけでなく,特に難しい処理対象で あることもあって,大部分の業種で一律基準移行へ の時期の目処が立っていない。環境負荷(汚泥の発 生量など)が小さく,効率的で安価な処理技術の開 発が強く要望されている。
当社は過去数十年に渡り,大学などの実験廃液の 処理技術として知られる“NEC フェライト法”の事 業を行ってきた。実験室では千差万別の物質が取り 扱われるため,難処理物質の処理を数多く依頼され てきた経緯がある。ホウ素やフッ素,ホウフッ化物 (ホウ素とフッ素が結合した物質)もその中の一つ
であり,以前から処理技術の研究を重ねてきた。 当社では現在,ホウ素処理で課題となっていた 「汚泥発生量」「ランニングコスト」を大幅に削減で きる新技術を開発中で,間もなく実用化できる見込 みである。本稿では,ホウ素・フッ素に関わる排水 規制の現状について述べるとともに,すでに実用化 している処理技術,ならびに開発中新技術について 紹介する。
1
.ホウ素・フッ素に関わる排水規制の現状
ホウ素およびフッ素は,1999 年に WHO の飲用 水質ガイドラインの改訂や,わが国の水道水質基準 などの見直しの結果を受けて,水質汚濁に関わる環 境基準(健康項目)に追加され,ホウ素 1 mg/L, フッ素 0.8 mg/L と定められた(海域は除く)。環 境基準とは政府が定める環境保全行政上の目標値で あって,環境基本法において,「政府は環境基準が 確保されるように努めなければならない」と定めら れていることから,環境基準への追加は排水規制の スタートを意味する。
ホウ素・フッ素の環境基準への追加を受けて,事 業場などへの排水規制の内容について検討がなされ, 2001 年から水質汚濁防止法施行令の排水基準(有 害物質)に追加された。
排水基準は生活環境項目と有害物質の 2 種類に分 類されているが,生活環境項目は排水量が 50 m3/ 日以上の事業場にのみ適用される一方,有害物質は 排水量に関わらず適用される。
ホウ素は以前より関西の 3 府県で独自の規制(い わゆる横出し基準)が存在していたが,排水量に関 わらず,それ以外の地域も網羅的に規制が適用され ることとなった。一方フッ素は,生活環境項目から 有害物質に移行され,かつ海域以外への放流のみ 15 mg/L→8 mg/L に強化されたことから,内陸に 立地している中規模以上の事業場で 8 mg/L を超過 していた事業場や,排水量が少なく以前は規制対象 外であった小規模事業場が新たに対応を迫られるこ ととなった。
一律排水基準,および業種別に定められた暫定排 水基準の経緯は表1の通りである。本年7 月が 3 年 ごとに行われている暫定基準の見直し時期にあたる が,特にホウ素は暫定基準が適用される業種・基準 値ともに6 月以前と全く変わっていない(詳細は環 境省ホームページを参照1))。
* Yuji WADA;NEC ファシリティーズ(株) 環境・建築ソ
リューション事業本部 環境技術推進部
排水中ホウ素・フッ素の法規制・除去・処理技術
表1 ホウ素・フッ素の一律排水基準,および暫定排水基準の推移
業種 ホウ素 暫定排水基準〔mg/L〕
2001/7∼ 2004/7∼ 2007/7∼ 2010/7∼
電子部品製造業 25 10
ホウロウ鉄器製造業 50 → → →
ホウロウうわ薬製造業 50 → → →
かわら用うわ薬製造業 150 → → →
うわ薬かわら製造業 150 → → →
貴金属製造・再生業 150 50 → → 電気めっき業 70 50 → →
下水処理場(一部) 500 50 → →
ほう酸製造業 160 100 80 →
金属鉱業 150 → → →
旅館業(温泉) 500 → → →
上記以外の業種
(一律排水基準)
海域以外に放流する場合:10 mg/L
海域に放流する場合:230 mg/L
業種 1 日排水量 フッ素 暫定排水基準〔mg/L〕
2001/7∼ 2004/7∼ 2007/7∼ 2010/7∼
半導体・電子部品製造業 ― 15 一律
ブラウン管製造業 ― 15 一律
ふっ化水素酸製造業 ― 15 → 一律
石英ガラス製造業 ― 12 一律
鉄鋼業(ステンレス酸洗) ― 15 一律
プラスチック金属複合板製造業 ― 13 → 一律
ホウロウ鉄器製造業 50 m
3/d 未満
25 → → 15
50 m3/d以上 15 → →
ホウロウ用うわ薬製造業 50 m
3/d 未満
25 → → 15
50 m3/d以上 15 → →
電気めっき業 50 m
3/d 未満
70 50 → →
50 m3/d以上 15 → →
化学肥料製造業 ― 15 → 10 →
非鉄金属製錬・精製業 ― 15 13 11 8
貴金属製造・再生業 50 m
3/d 未満 30 12 一律
50 m3/d以上 15 → 一律
一般廃棄物処理業 ― 15 一律
産業廃棄物処理業 ― 15 一律
旅館業 50 m
3/d 未満 50 → → →
50 m3/d以上 50 15 → →
上記以外の業種
(一律排水基準)
海域以外に放流する場合:8 mg/L
海域に放流する場合:15 mg/L
・暫定排水基準は主に海域以外に放流される場合の数値である。
・下水道放流の場合も上記と同様の規制が適用される。ただし海域放流か否かの判断は,事業場の立地ではなく
終末処理場の立地から判断される(下水道法施行令)。
・廃棄物の最終処分場からの排水は水濁法の適用範囲外であるが,ホウ素:50 mg/L,フッ素:15 mg/L(いずれ
も海域以外)を“当分の間”適用することとなった(最終処分場の技術上の基準を定める省令)。
・表中の基準はあくまで最低限守るべき数値であって,都道府県によりさらに厳しい基準(上乗せ基準)が定め
られている場合がある。 一律 一律排水基準に移行
暫定基準を強化
2
.ホウ素・フッ素の水中での形態
ホウ素は工業的にはホウ砂,ホウ酸として使用さ れることが多い。
ホウ砂は Na2B4O7・10H2O と表記されるのが一 般的であるが,より構造的に表現する示性式で表す と Na2[B4O5(OH)4]・8H2O であり,水溶液中では 弱アルカリ性を示す。
ホウ酸(オルトホウ酸)は H3BO3と表記される のが一般的であるが,ホウ素の周囲に OH が 3 つ 結合しているためB(OH)3とも表現できる。酸と いってもきわめて弱い酸であり,H+を直接放出す ることはなく,H2O から OH−(電子対)を受け取 り H+が間接的に放出される,いわゆるルイス酸に 分 類 さ れ る。強ア ル カ リ 条 件 下で あ っ て も,B (OH)4−となり H+が 1 つしか生成しないほどの弱 酸である。
ホウ砂,およびホウ酸水溶液中のホウ素の形態で 特記すべきは,濃度が高くなると高分子化が進行し, ポリホウ酸イオンを形成する点であるが,まだ不明 な点が多いようである。ホウ酸水溶液における各種 イオン分布を図1に示す。
一方フッ素で工業的にもっとも重要なのはフッ酸 (フッ化水素酸・HF)である。弱酸であり,水溶液 中ではほとんどが HFの形態で溶解している。解離 したF−の多くは,さらに HFと反応し,HF
2−を 形成しているとされる。
排水中のフッ素の形態で特記すべきは,ケイ素, ホウ素,硫酸,リンなどと結合した状態で存在する 場合があることである。ケイ素とフッ素の結合はあ まり強くはないため,ケイフッ酸(H2SiF6)の処理 はそれほど難しくないが,難処理物質の代名詞とも いえるホウフッ酸(HBF4)をはじめ,フルオロ硫 酸(FSO3H),フルオロリン酸(HPF6)はきわめ て安定で,処理もきわめて難しい。また,排水処理 の対象となることは少ないが,PFOS,PFOAに代 表される有機フッ素化合物は,さらに安定で,現在 のところ特別な方法でしか処理できない。
3
.従来のホウ素排水処理技術
ホウ素は不溶化しにくい物質であり,排水処理で 一般に用いられている処理剤や凝集剤では,ほとん ど処理ができないか,もしくは処理効率が低い。一 般的な薬剤を使用した凝集沈殿法のうち,硫酸バン ドと消石灰とを併用して強アルカリ性で反応させる 方法に一定の効果のあることが知られている。
一方,ホウ素だけを選択的に吸着するイオン交換 樹脂(ホウ素吸着樹脂)が以前から商品化されてお り,主に低濃度排水に対して適用性が高い。破過後 の樹脂を使い捨てにするとランニングコストが膨大 となるため,定期的に再生して繰り返し使用するこ とが基本となるが,その場合は当然ながら再生廃液 (ホウ素濃縮液)の処理が別途必要となり,上記の
凝集沈殿法を適用することもすでに検討されている。 その他,凝集沈殿法や吸着法としてマグネシウム 塩+ニッケル塩,希土類化合物(ランタン・セリウ ム),ジルコニウム化合物,PVA,鉱物系材料(シ リカ系・ハイドロタルサイトなど)などを用いた方 法が検討され,その他に溶媒抽出,RO膜分離,電 気透析,蒸発濃縮,水熱鉱化処理など,さまざまな 方法が検討されてきた。
硫酸バンド+消石灰による凝集沈殿法では,大量 の汚泥が発生する点が大きい課題であり,また共存 塩化物イオンが効率を低下させる点も指摘されてい る。一方ホウ素吸着樹脂法は低濃度排水への適用に 限られることと,市販品の吸着容量が必ずしも大き くはないこと,さらに再生廃液を硫酸バンド+消石 灰法で処理する場合,硫酸再生の場合は大量の石こ う汚泥(CaSO4・2H2O)が生成する点が課題とし て指摘されている(塩酸再生では塩化物の妨害によ り処理自体が困難である)。
各種処理法について,同一条件下における汚泥発 生量やコストなどを評価することは容易ではないが, 過去に報告されているもののうち,主に薬品の種類 や使用量,汚泥発生量などの条件が明記されている ものを表2にまとめた。一部の不明な部分は計算も しくは推定で入力していることをご了承いただきた いが,従来技術のレベルを感覚的に把握することが
B(OH)3 B(OH)4−
B3O(OH)3 4−
14 12
10 8
6 4
0 20 40 60 80 100
B5O(OH)6 4− B3O(OH)3 52−
B4O(OH)5 42−
〔pH〕
存在率
〔%〕
図1 水溶液中におけるpH とホウ素の存在形態との関係
できる。
表 2 からまずいえることは,凝集沈殿法の効率は きわめて悪いことである。汚泥(脱水後)中のホウ 素含有量は,低濃度排水の場合は 0.1%にも満たず, 濃度が高くなっても 0.2∼0.3% 程度でしかない。当 然ながら,効率が悪いことから薬品を大量に添加し なければならず,汚泥処分費まで含めたランニング コストは必然的に高くなる。
一方,ホウ素をリサイクルできる技術も実用化さ れており,ホウ素資源の循環という一面からは高く 評価できるが,ホウ素の資源価値がさほど高くはな
いこともあってランニングコストがネックといえる。 より規制すべき高負荷の排出源(排水量多,ホウ素 濃度高)であるほど適用が難しくなることが,一律 基準への移行を難しくしている要因ともいえる。
総じて,表2 は汚泥発生量,コストの両面でのホ ウ素処理の難しさを示しているといえる。
4
.ホウ素排水処理システム
NE
-
B
法
本法は,従来の硫酸バンド+消石灰法をベースと して,薬剤使用量,汚泥発生量,ランニングコスト を従来法の半分以下にできる技術であり,排水性状
表2 各種処理法における排水 1 m3あたりのランニングコスト試算結果(用水・下水費用,電力費,樹脂交換費用は除く。*印は
筆者による計算もしくは推定値)
処理方法
ホウ素吸着樹脂
+硫酸バンド+ 消石灰法3)
硫酸バンド+ 消石灰法4)
①
硫酸バンド+ 消石灰法5)
②
鉱物沈殿法6)
ホウ素吸着
樹脂+回収・
リサイクル法6)
硫酸バンド+ 消石灰法7)
③
硫酸バンド+ 消石灰法8)
(セッコウ添加法)
原水・処理水B 濃度 6.04mg/L→
1 mg/L 以下
6.5 mg/L→
1.1 mg/L
16mg/L→
0.1 mg/L未満
20 mg/L→
10 mg/L
21 mg/L→
0.1 mg/L未満
50.6mg/L→
1.3 mg/L
70 mg/L→
ほぼゼロ
原水の種類
実排水
(ごみ焼却場
洗煙排水)
実排水
(ごみ焼却場
洗煙排水)
実排水 (非鉄金属精錬
工場排水)
温泉排水 めっき排水
模擬排水
(ホウ酸+
蒸留水)
模擬排水
(ホウ酸+
蒸留水)
想定単価
(1kg あたり) 使用量 費用 使用量 費用 使用量 費用 使用量 費用 使用量 費用 使用量 費用 使用量 費用
薬 品
・ 汚 泥 な ど
8%硫酸バンド 25円 1.6kg 41円 7.7kg 191円 7.7kg 191円 16.1kg 401円 11.8kg 295円
25%石灰乳 20円 2.3kg* 46円 20.0kg 400円 14.8kg 296円 11.88kg 238円 59.9kg 1,199円 22.2kg 444円
35%塩酸 25円 1.7kg* 4
3円 3.7kg*
93円 0.8kg*
21円 2.3kg*
58円 1.0kg*
26円
75%硫酸 30円 0.6kg 18円
25% 苛性ソーダ 20円 1.9kg 37円
高分子凝集剤 1,000円 0.001kg* 1円 0.005kg* 5円 0.005kg* 5円 0.041kg 41円 0.010kg* 10円 0.010kg* 10円
ボロン-C A 剤 90円 2.95kg 266円
ボロン-C B 剤 67円 1.69kg 113円
基本料金 ― 1系列/月 460円
再生料金 ― 2.7塔/月 1,430円
運賃 ― 2.7塔/月 79円
汚泥
(想定含水率) 30円
5.2kg*
(65%*)155円
16.6kg
(65%*)497円
18.0kg
(65%*)540円
21.0kg
(80%)378円 ―
25.2kg*
(65%*)756円
22.9kg
(65%*)686円
脱水後の汚泥中に含まれる
ホウ素の割合〔%〕 0.13% 0.05% 0.09% 0.05% ― 0.20% 0.31%
ランニングコスト合計
(原水B 濃度1 mg/L あたりの費用)
324円
(54円)
1,186円
(182円)
1,053円
(66円)
1,053円
(53円)
1,969円
(94円)
2,425円
(48円)
1,488円
(21円)
特記事項
・凝沈 pH:
12→10(2段)
・硫バン:1,500
mg/L(Al2O3)
・原水の塩濃度
高い (Cl−
:
31,000 mg/L)
・原水pH:2.8
汚泥処理単価は
文献記載値と同 じ18円/kg と した。
・ホウ素リサイ
クル可能
・イニシャルコ
ストは安価
・セッコウ
飽和度:1.0
により 3つの方法を単独,または組み合わせて適用 する(表3)。
硫酸バンドと消石灰を添加し,強アルカリ性に調 整すると,カルシウムアルミネート系水和物の一種 であるエトリンガイトと呼ばれる物質が生成して処 理に寄与するが,本法はエトリンガイト生成効率を
向上させるものである。
4-1.NE-B法(消石灰2段添加法)
硫酸バンド+消石灰法の処理には最適な薬品添加
比率が存在する。図2に示すように,Ca/Al=5.0 前後(重量比)の狭い範囲でのみ特異点的に極めて 良好な処理性を得ることができる。これは,添加比 率によってエトリンガイト以外のカルシウムアルミ ネート系水和物(ホウ素処理に寄与しないモノサル
表3 ホウ素排水処理システムNE-B法
処理法名称 原理 概略フロー 原水濃度 処理水濃度 適用
消石灰2段 添加法
硫酸バンドと消 石灰の添加量を, ホウ素処理効率
が最大となる比
率に制御する。
次工程で消石灰
を追加添加し,
アルミニウムを
確実に不溶化し
て処理水の白濁
を防止する。
消石炭
消石炭 高分子 酸
硫酸バンド
処理水
脱水機 中和
槽
凝
集
槽
反
応
槽
反
応
槽
沈
殿
槽
原水 B>10 mg
/L
10 mg/L
以下可能
原水性状が安定 している排水
スラリー
返送法
硫酸バンドと消 石灰を添加した
後,高分子凝集 剤を添加する直
前の反応液(ス
ラリー)を反応
工程の上流側に
返送して処理効
率を向上させる。
返送スラリー
酸 消石炭
高分子 硫酸バンド
処理水
脱水機 中和
槽
凝
集
槽
反
応
槽
反
応
槽 沈殿槽
原水 B>10 mg
/L
10 mg/L
以下可能
特に制限なく適
用できる。
低温処理法
硫酸バンドと消 石灰の組み合せ
によるホウ素処 理において,処
理工程を冷却し
てエトリンガイ
ト生成効率を高
め,ホウ素処理
効率を向上させ
る。
凝
集
槽
反
応
槽
冷水
チラー
熱交換器 酸
消石炭
高分子 硫酸バンド
処理水
脱水機 中和
槽
沈
殿
槽
原水 B>10 mg
/L
10 mg/L
以下可能
制限なく適用で
きるが,特に高
温排 水 や,pH
が低い排水(中
和熱が発生する
排水)に適する。
※冷却工程の後 段は,「消石灰2
段添加法」「スラ
リー返送法」の いずれも適用で きる。
処理水 SO4 濃度 SO4 添加濃度 処理水 Ca 濃度 Ca 添加濃度 AL 添加濃度 処理水 AL 濃度 処理水 B 濃度
消石灰添加濃度〔mg/L as Ca〕
12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0
処理水
B・処理水
Al
濃度
〔mg
/
L〕
左軸以外
〔mg / L〕 0 20 40 60 80 100 120 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000
図2 硫酸バンド+消石灰法によるホウ素処理 消石灰添加
量と処理性との関係
フェートなど)が生成するためと考えられる。 本法は,硫酸バンドと消石灰の添加比率を最適範 囲内にシビアに制御し,処理効率を最適化する方法 である。
ただ,その最適比率では添加した硫酸バンド中に
含まれているアルミニウムが完全に不溶化しないと いう問題がある。アルミニウムの残留は後段の中和
工程で濁度の上昇を招く。本法ではアルミニウムの
残留を防止するため,後段に消石灰を追加添加する 工程を加えているのが特徴である。消石灰を 2段添
加することで,良好な処理性を維持しつつ清澄な処 理水を得ることができる。
本法はシビアな比率で薬品注入量を制御するため, 水質が安定している排水に限り適用できる。
4-2.NE-B法(スラリー返送法)
ホウ素処理に限らず,結晶生成反応を利用した排 水処理では,しばしば沈殿槽から反応槽へ汚泥を返
送する方法が採用される。これは,沈殿槽の汚泥を 種晶として作用させ,結晶成長を促進させることが 目的の一つである。しかし硫酸バンドと消石灰を併
用したホウ素処理に限っては,処理性が改善するど ころか逆に悪化して行く場合があることが分かって いる。
一方,筆者らは沈殿槽の汚泥ではなく,高分子凝 集剤を添加する直前の液(スラリー状の反応液)を 反応槽に返送することでこの問題を解決できること を見出している。図3に示す通り,汚泥返送法では 返送回数を経るに従って処理性が悪化して行くのに 対し,スラリー返送法では良好な処理性を維持でき ることが分かる。
本法は硫酸バンドと消石灰の添加比率がシビアで はない点も特徴で,適用幅が広い方法である。 4-3.NE-B法(低温処理法)
エトリンガイトは水温が低いと生成しやすくなる 性質があるため,ホウ素処理も水温により大きい影 響を受ける(図4)。本法は処理工程を冷却して処 理性を向上させる技術である。
冷却のための電力費が新たに必要となるので,処 理性の向上率とコストの増加率の両面から採用の可
否を検討する必要があるが,高温排水や強酸排水 (中和熱が大きい排水)などに適用性が高い方法で
ある。
NE-B法の性能を表2 と同条件で従来技術と比較
すると,処理効率(汚泥中のホウ素含有率)は 2∼ 3倍(汚泥発生量は 1/2∼1/3)である。安価で一般 的な水処理剤を使用することから,ランニングコス トも汚泥発生量にほぼ比例して低下する。また凝集 沈殿法であるため共存 SSはもちろん,多くの重金 属を同時に処理することができ,銅,亜鉛,鉛,砒
素の同時処理設備の納入実績がある。
しかし,フッ素などの他の排水処理と比べれば汚 泥発生量やランニングコストが低い,とはいい難い
面があるので,かねてから処理対象をホウ素だけに 限定してでも,より効率的で低コストの処理技術を 要望されていた。そのような観点から開発中の技術 を以下に紹介する。
汚泥返送 スラリー返送
返送回数
処理水ホウ素濃度
〔mg
/
L〕
8 6
4 2
0 40 35 30 25 20 15 10 5 0
図3 汚泥返送法とスラリー返送法のホウ素処理性の比較
(原水B:100 mg/L,硫酸バンド添加量:500 mg/LasAl)
32±2℃ 23±2℃ 11±2℃
消石灰添加濃度〔mg/L as Ca〕
処理水ホウ素濃度
〔mg
/
L〕
4,000 3,000
2,000 1,000
0 80 70 60 50 40 30 20 10 0
図4 硫酸バンド+消石灰法 水温と処理性との関係
(原水B:60∼75 mg/L,硫酸バンド添加量:300 mg/LasAl)
高濃度対応型 凝集沈殿装置 (アルミニウム化合物)
キレート繊維塔 再生廃液(定期的に排出)
(B:3,000 mg/L前後) 凝集沈殿
処理水
処理水 再生剤(定期的に通液)
(HCl→NaOH) ろ過装置
原水
5
.新開発ホウ素処理技術
本技術は,従来のようにビーズ状のホウ素吸着樹 脂ではなく,吸着速度が格段に速く,かつ吸着容量 も従来樹脂の 1.5倍以上に増強した新型の繊維状吸 着剤(キレスト(株)社製キレストファイバー®)に
よるホウ素吸着設備と,再生廃液を高濃度対応型の 新しい凝集沈殿法で処理する設備とを組み合わせた ものである。フローを図5に示す。
キレストファイバー®は,セルロース繊維上にキ
レート官能基を結合させた安定な素材であり,キレ ート官能基は従来樹脂と同様,ホウ素を選択的にキ
レート交換する N-メチルグルカミン基である。図 6に示すように,官能基が繊維の表面に露出してい るため,吸着・脱着ともに樹脂よりもきわめて高速
であることが大きな特徴である。その他,樹脂より も微粉化しにくいことや,高温排水・高粘度液に対 しても適用性が高いという特徴もある。このような 形態のホウ素吸着材料は国外も含めて他に見あたら ず,全く新しい概念の元に開発された素材である。
キレストファイバー®はホウ素を含む半金属と重
金属用の商品が上市されているが,今回,メーカー と共同で従来品の 1.5倍以上のホウ素吸着能力を有 する商品の開発に成功した。
高性能である一方,従来は繊維状であることによ り装置設計が難しいという課題があった。具体的に は,樹脂よりも流入SS 成分を捕捉しやすいことや, 通水・再生時に水がショートパスしやすいことなど があげられる。今回の開発にあたって,一般的なイ オン交換樹脂塔をベースとした特殊な塔構造にする とともに,前段に高性能のろ過装置を適用すること でそれらの課題を解決した。
新型繊維(試作品)と従来樹脂との比較実験結果 を図7に示す。横軸は通水倍率(通水量が繊維・樹 脂容積の何倍かを示す)であるが,従来樹脂の 2倍
の吸着容量を保有していることが分かる。量産品で は試作品より若干性能が低下すると予想しているが, それでも従来樹脂の 1.5倍以上と推定している。
本法のもう一つの主要な構成要素は,高濃度排水 に対応した再生廃液の処理装置である。アルミニウ ム系薬剤を添加して凝集沈殿処理するものであるが,
従来の硫酸バンド+消石灰法とは原理的に異なるも
のである。塩化物イオンの存在は妨害するどころか, むしろプラスに作用するという特異な性質を確認し ており,新型繊維の再生は塩酸で行うことを基本に している。
本凝集沈殿法は高濃度排水ほど効果が大きくなる 特徴を有するが,新型繊維の吸着容量が高いことに 金属イオン
イオン
キレート官能基
樹脂基材 繊維基材
キレストファイバー ホウ素吸着樹脂
図6 キレストファイバー®
とホウ素吸着樹脂との違い
処理水ホウ素濃度
〔mg
/
L〕
Bed Volume〔mL/mL―fiber.resin〕 5.2 g―B/L―Fiber 処理水 B:1 mg/L 時の
ホウ素吸着量 2.6 g―B/L―Resin 新型キレート繊維(試作品) キレート樹脂
120
100
80
60
40
20
0
0 10 20 30 40 50 60 70 80
図7 ホウ素吸着樹脂と新型キレート繊維(試作品)による ホウ素処理結果
原水B:100 mg/L(ホウ酸+塩化アンモニウム模擬排水),
表4 各種フッ素排水処理技術(従来の凝集沈殿法,および当社処理技術)
処理法名称 原理 概略フロー 原水濃度 処理水濃度 適用
カルシウム法
(従来法)
消石灰や塩化カル シウムなどのカル
シウム化合物を加
え,フッ素をフッ
化 カ ル シ ウ ム
(CaF2)に転換し
て固液分離する。
凝
集
槽
反
応
槽
高分子 カルシウム
処理水
脱水機
沈
殿
槽
原水
20 mg/L 以上
10∼30
mg/L
中濃度∼高濃度
までのフッ素排
水で,NEF-1 法
が適用できない
排 水(NEF 担
体表面へのスケ
ール付着の懸念
等がある場合)。
※カルシウムを
大量添加しても
処理性は向上し
難い。
NEF-1 法
カルシウム法の反
応工程において,
反応促進効果を有
する特殊な粒状担
体を分散・共存さ
せ,フッ素処理性
を向上させる。
担体 分離部 撹拌
反応部
NEF―1 リアクタ
凝
集
槽
凝
集
槽
高分子 PAC カルシウム
処理水
脱水機
沈
殿
槽
原水
20 mg/L 以上
3∼12
mg/L
中濃度∼高濃度 までの一般的な フッ素排水で, 担体表面へ悪影 響を与える物質
を含まない排水。
アルミニウム
法(従来法)
硫 酸 バ ン ド や
PAC などのアル
ミニウム塩を加え
て中性に調整し,
生成する水酸化ア
ルミニウムにフッ
素を吸着させ,固
液分離する。アル
ミニウム添加量に
より処理性を制御
することができる。
凝
集
槽
反
応
槽
高分子 アルミニウム
処理水
脱水機
沈
殿
槽
原水
10∼30
mg/L
5∼10
mg/L
希薄フッ素排水,
もしくはカルシ
ウム処理後の排
水であって,処
理 水 要求値 が
5∼10 mg/L程
度である場合。
※5 mg/L 以下
の処理も可能だ
が,薬 品 使用 量・汚泥発生量 が多くなる。
NEF-2 法
アルミニウム法で
発生した汚泥を沈
殿槽から引き抜き,
酸を加えてフッ素
を溶出させ汚泥を
再活性化させる。
再活性化した汚泥
は処理工程で再利
用し,汚泥発生量 を大幅に削減する。
再活性化時に発生
するフッ素濃縮水
は前段のカルシウ
ム処理工程で処理 する。
凝
集
槽
反
応
槽 沈殿槽
沈
殿
槽
カルシウム 処理工程より
カルシウム 処理工程へ
凝
集
槽
汚
泥
再
生
槽
処理水
酸 高分子
高分子 アルミニウム
10∼30
mg/L
2∼5
mg/L
前段にカルシウ
ム処理工程が存
在し,かつ処理
水要求値が 2∼
5 mg/L程度で
加え,再生速度も速いことから,従来では考えられ ないほどの高濃度の再生廃液(B:3,000 mg/L 前
後)を取り出すことが可能となり,凝集沈殿側の効
率化にも大きく寄与している。
現在実施している実証試験機の結果を反映し,表 2 と同条件で汚泥発生量とコストを試算すると,ホ ウ素 50 mg/L の排水を処理する場合,汚泥発生量 は 3kg/m3以下(汚泥中ホウ素の割合は 2%前後) と,従来技術とは桁違いの性能を確認している。ま た日常的に発生するランニングコストは 300円/m3 前後(用水や電力費,定期的に補充すべき線維の費
用は除く)と,上下水道料金並みとの試算結果が出 ており,汚泥だけでなくコストも大きく削減できる。
本技術の開発は,現在実証試験の最終段階まで到 達しており,間もなく商品化できる見込みである。 新型繊維の「高速通水が可能」「吸着容量が大きい」 という特徴は,吸着塔を小型化できることを意味す ることから,装置のユニット化と合わせて設備コス トの低減も図って行く予定である。
また,将来的にはホウ素リサイクル,地下水浄化, 海水淡水化などへの応用を目指していく予定である。
6
.フッ素排水処理技術(
NEF
-
1
・
NEF
-
2
法)
次に,一般的なフッ素の排水(HF,H2SiF6など の排水)に対応する,従来の凝集沈殿処理法,およ び 2 つの当社処理技術を紹介する(表4)。
6-1.NEF-1法(カルシウム処理の改善技術)
フッ素排水のもっとも基本的な処理法は,排水に 消石灰や塩化カルシウムなどを加えてフッ化カルシ ウムに転換して固液分離する方法であり,もっとも
広く普及している。しかし本法は共存物質の影響を 大きく受け,一般的な工場排水では 10∼30 mg/L
残留する場合が多く,海域以外に適用される排水基 準(8 mg/L)をクリアするのは容易ではない。
NEF-1 法は,カルシウムとフッ素との反応を促
進する粒状担体(写真1)を槽内で分散させ,処理 性を向上させる技術である。本担体の主成分は蛍石 であり,カルシウムとフッ素との反応に対して触媒 的効果を発揮する。
処 理装 置の 中核を な す の は担体を 分散させる NEF-1リアクタである(写真2)。NEF-1リアク タは表 4に示すように,担体を分散させる「撹拌反 応部」と,処理水の流出口にあたる「担体分離部」 から構成されている。「撹拌反応部」では担体を確 実に分散させるための特殊な撹拌機が設置されてお り,「担体分離部」は担体が流出するのを防止する
ために上向流となっている。反応生成物であるフッ 化カルシウム微粒子は後段に流出し,PAC や高分 子凝集剤を添加して凝集させてから沈殿分離して処 理水を得る。特に組成が複雑な排水でなければ,本 法単独で 8 mg/L のクリアが可能である(図8)。
写真1 NEF担体の顕微鏡写真
写真2 NEF-1リアクタ外観
(ホウロウ製造工場排水処理,リアクタ容積8 m3)
処理水 原水
原水・処理水フッ素濃度
〔mg
/
L〕
6/17
6/12
6/7
日付
6/2
50/28
20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
図8 NEF-1 法による実排水処理結果(熱交換器洗浄排水)
(CaCl2添加量:400 mg/LasCa,PAC添加量:30 mg/Las
6-2.NEF-2法(アルミニウム処理の改善技術)
共存物質の種類や量が多く,極めて複雑組成の排 水では NEF-1 法でも 8 mg/L 以下に処理できない ことがあり,その場合,後段に高度処理設備を設置
する必要がある。
NEF-2 法は,従来の高度処理技術として広く用 いられているアルミニウム凝集沈殿法において,脱
水性の悪い汚泥が大量に発生する点を改善するため に開発した技術である。
表 4に示すように,従来の処理ラインに汚泥の再 活性化工程を追加する点が特長である。一度処理に 使用した汚泥を取り出して酸処理し,吸着したフッ 素を溶出させて再活性化してから循環再利用する。 溶出液はフッ素を高濃度で含有しているため,前段
のカルシウム処理工程に移送して処理する。したが ってフッ素は最終的にフッ化カルシウムの形態に転
換されることになる。
本法は従来のアルミニウム法に比べ,汚泥発生量 を最大で 1/5 に低減できることに加え,安定して数
mg/L 前後まで処理できることが特徴である(図 9)。
7
.難処理性フッ素・ホウ素への対応
工場排水の組成は多種多様であり,共存成分によ ってはきわめて処理が難しい排水も存在する。以下, 当社の難処理性フッ素・ホウ素処理技術を紹介する (表5)。
7-1.硫酸とフッ酸の混酸中のフッ素処理
ガラスの化学研磨工程など,ガラスを溶解させる 工程で濃硫酸と濃フッ酸の混酸が用いられることが ある。
この工程排水中のフッ素は極めて処理し難く,前 述したカルシウムやアルミニウムによる処理を行っ ても数百mg/L程度のフッ素が残留することもあ る。また処理性は混酸の調製条件により大きく変わ ることが分かっており,特に混酸調製時の硫酸濃度 の影響が大きい。図10に,混酸調製時の硫酸濃度 によるフッ素処理への影響を示す。
このフッ素処理性の悪化原因は明確ではないが, 硫酸とフッ酸の一部が反応してフルオロ硫酸のよう な化合物を形成し,安定な状態となって存在してい るためと考えている。
このような排水に対しては,混酸に適量の水を加 えてフッ素を処理可能な状態(フッ化物イオンの状 態)に転換する工程を前段に設置することで対応で きる(表5)。図11に示す通り,既存の消石灰処理 設備の前段に分解用水の混合装置を導入し,処理性 を大きく改善することに成功している。
7-2.ホウフッ酸処理(NE-BF法)
ホウフッ酸(HBF4)はフッ素とホウ素が強固に
結合した物質で,一般的なフッ素・ホウ素処理技術 ではほとんど処理ができない。したがって上述の混
酸処理と同様に,前段でフッ酸とホウ酸に分解する 原水
処理水
運転時間〔h〕
原水・処理水フッ素濃度
〔mg
/
L〕
600 500 400 300 200 100 0 80 70 60 50 40 30 20 10 0
図9 NEF-2 による実排水処理結果(半導体工場排水)
(硫酸バンド添加量:20 mg/LasAl,※原水とは消石灰処理
後を意味する。)
75%硫酸 + 50%フッ酸
処理後 85%硫酸
+ 50%フッ酸
処理後 96%硫酸
+ 50%フッ酸
処理後
処
理
水F濃
度〔mg
/
L〕 400350 300 250 200 150 100 50 0
図10 硫酸とフッ酸の混酸希釈水の消石灰処理 混酸調製
時の硫酸濃度とフッ素処理性との関係
(混酸調製比率:硫酸:フッ酸=10:8(容積比),消石灰処
理前の希釈倍率:50倍,消石灰:pH12まで添加)
混合装置 導入
処理水フッ素濃度
〔mg
/
L〕
5/18 5/8 4/28 4/18 日付 4/8 3/29 3/19 140 120 100 80 60 40 20 0
図11 ガラス表面処理工場排水の処理水フッ素濃度
のが基本的な考え方となる。
しかし,短時間で完全分解するためには最低でも 60℃以上,好ましくは 80℃以上の高温に維持する
必要があり,加熱のための特別な装置とエネルギー を必要とする課題がある。また下水道放流の場合は 水温が規制項目となること,さらに,前述したよう に硫酸バンドと消石灰によるホウ素処理は水温依存 性が大きいことから,加熱分解が非効率的であるの はいうまでもない。
NE-BF法はこのような課題を鑑みて開発した方 法であり,常温において HBF4を特殊な条件下で完 全分解した後,消石灰を加えてフッ素とホウ素を同 時処理するシステムである。常温による完全分解に は比 較的長時 間 を 要 し,最 低で も滞 留 6時 間 の 「BF4常温分解槽」を 2 基並列設置することとして いる。したがって排水量が非常に多い場合は設置ス ペース面で課題が生ずることがあるものの,中規模 までの排水量であれば適用性が高い方法である(写
表5 難処理性フッ素・ホウ素排水の当社処理技術
処理法名称 原理 概略フロー 原水濃度 処理水濃度 適用
フルオロ
硫酸処理 法
フッ酸と硫酸の
混合排水に対し,
前段で適量の用
水を加えてフッ
素を処理できる
形態に転換した
後,カルシウム
を加えてフッ素
を処理する。
分解用水
中
和
槽
凝
集
槽
反
応
槽
混
合
装
置
高分子 カルシウム
処理水
脱水機
沈
殿
槽
原水
酸
F>数 万 mg/L
10 mg/L
以下可能
濃硫酸と濃フッ
酸の混酸使用工
程からの排水。
※混合装置の後
段は NEF-1 法 も適用できる。
BF4 凝集沈殿
処理法
(NE-BF法)
硫酸バンドを加
えて常温でホウ
フッ酸を分解し,
フッ素とホウ素
を処理可能な形
態へ転換した後,
消石灰を加えて ホウ素とフッ素
を同時処理する。
硫酸バンドは分
解とホウ素処理
の両方に寄与し,
消石灰はフッ素 処理とホウ素処
理の両方に寄与
する。
中
和
槽
凝
集
槽
反
応
槽
BF4 常温 分解槽 A
BF4 常温 分解槽 B
沈
殿
槽
苛性ソーダ
処理水 消石灰
硫酸バンド 硫酸バンド
脱水機 原水
酸 高分子
F> 20 mg/L
B> 10 mg/L
F・Bともに 10 mg/L
以下可能
ホウフッ酸およ
びその塩類を使
用している工程
排水,またはホ
ウ素とフッ素が
共存する工程排 水。
※分解工程の後
段は,「消石灰2
段 添加 法」「ス
ラリー返送法」
「低 温処 理 法」
のいずれも適用 できる。
BF4
中和乾燥
処理法
安価なアルカリ
剤である炭酸カ ルシウムで中和
し,遊離フッ酸
をフッ化カルシ
ウムの形態に転
換したスラリー
液を得る。
その後蒸気乾燥
して固形物(粉
体)とし,凝縮水 が処理水となる。
中和
ユニット ドライヤドラム
クーリングタワー スクラバ
ユニット
凝縮水(処理水) スチーム
苛性ソーダ 炭酸カルシウム
原水
F>
100 mg/L
B>
1,000 mg/L
F・Bともに 10 mg/L
以下可能
少量で高濃度の
ホウフッ酸排水。
工場内の熱源を
利用できればさ
らに適する。
※乾燥物からホ
ウ素が溶出しや
すいので,乾燥
物の処理方法に
真3)。
硫酸バンドは HBF4分解剤とホウ素処理剤の両方 に寄与し,消石灰はホウ素処理剤とフッ素処理剤の 両方に寄与することとなり,フッ素・ホウ素同時処 理のための最大限の効率化を図っている。
7-3.高濃度ホウフッ酸排水の乾燥処理
NE-BF法では,薬品使用量と汚泥発生量はフッ 素とホウ素の濃度に依存するが,フッ素よりもホウ 素処理が難しい関係から,ホウ素濃度が非常に高い 排水ではランニングコストが高くなる傾向にある。 ホウ素濃度が数千 mg/L 以上の少量かつ濃厚の 排水に対しては,NE-BF法よりも,原水を中和し てから乾燥処理する方がコスト的に安価となること が多い。当社では,カルシウム薬剤を安価な粉末状 態のまま原水と混合し,確実に中和させる装置を実 用化した。中和後は乾燥させ,粉体状の乾燥物を得
ることができる(写真4)。
以上,さまざまな処理技術について紹介してきた が,事業場排水は濃度・共存成分のみならず時間
的・季節的変動などの条件が千差万別で,コスト的 要素も踏まえて総合的に最適な処理方法を立案する のは容易なことではなく,知識のみならず経験も重 要となる。
当社では,このような多種多様なニーズに的確に 応えるため,過去数十年に渡る膨大な実験結果をデ
ータベース化し,迅速に検索できるシステムを構築 している。お客様のニーズに対して第三者的視点で 解決策を提示するだけでなく,必要に応じて処理実 験による確認まで行う「プラント診断ソリューショ ン」を提供している。
今回のテーマであるホウ素やフッ素の排水処理以 外でも,何かお困りのことがあれば是非ともご相談
いただきたい。
参考文献
1) 環境省ホームページ,http://www.env.go.jp/press/press.
php?serial=12561
2) Ingri. N.,EquilibriumstudiesofPolyanions containingB,Si,
Ge,and V,SvenskKemiskTidskrift,75,199∼230(1963) 3) 村川忠夫ほか,都市ごみ焼却プラント洗煙排水処理の概要と
運転実績,日立造船技報,53,95∼101(1992)
4) 伊藤征生ほか,ごみ焼却場洗煙廃水の処理について,用水と 廃水,26,271∼277(1984)
5) 小林厚史ほか,水質規制物質の処理技術(その 5),工業用水, No. 544,45∼54(2004)
6) 環境省ホームページ,http://www.env.go.jp/policy/etv/s02_
c2.html#03
7) 恵藤良弘ほか,新規健康項目に追加されたホウ素の対策,用 水と廃水,41,927∼932(1999)
8) 工藤聡ほか,硫酸アルミニウムと消石灰による排水中ホウ酸
の凝集沈殿処理,日本化学会誌,No. 2. 265∼267(2002) 乾燥物
蒸気乾燥装置
粉末カルシウムホッパ
中和槽
写真4 粉末カルシウム中和ユニット(左図)と蒸気乾燥装置(右図)
(ガラス加工工場排水処理,原水ホウ素:2,300 mg/L,原水フッ素:110,000 mg/L)
写真3 NE-BF法プラント全景