音声学概論 第26回(2/1)
宇都木 昭
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復習
以下の用語を説明しなさい。
強勢
核音調
声調
今日の授業内容
韻律(つづき)
韻律の類型論
韻律の表記法
強勢とは何か?
単語の特定の音節を「強く」発音するとき,そ
の音節には強勢(stress)があるという。
強勢が伴いうる物理的特徴:
物理的強度,持続時間,F0,
母音の音質に関わる特徴,etc.
ただし,強勢がどのような物理的特徴を伴う
かは言語によって異なる(Berinstein 1979)。
声調とは何か?
「声調とは,語の意味を区別するのに役立つ
ような声の高さの段階,またはその変化のう
ちで,個々の音節について定まっているもの
をいう。」(『言語学大辞典 第6巻 術語編』,
1996)
問題:日本語東京方言は強勢を持つ言語や声
調を持つ言語と韻律的にどのような共通点を
持っているか考えなさい。
また,韻律の類型論の中でどのように位置づ
ければよいか考えなさい。
分類1
アクセント
声調
強勢アクセント
ピッチアクセント
例:英語,ドイツ語,
例:日本語東京方言, バスク語のいくつかの方言
例:中国語,タイ語,
例えば, ( ),早田( )
分類2
ピッチアクセント
●
例:英語,ドイツ語,
例:日本語東京方言, バスク語のいくつかの方言
例:中国語,タイ語,
強勢
声調
分類2b
●
例:英語,ドイツ語,
例:日本語東京方言, バスク語のいくつかの方言
例:中国語,タイ語,
強勢
(この間に様々なバリ エーションがある。)
ケーススタディ1:スウェーデン語
例:anden
1. ‘the duck’ 2. ‘the ghost’
どちらも第1音節に強勢がある。では,両者の
違いはどこにある?
ケーススタディ2:朝鮮語ソウル方言
韻律が弁別的な機能を一切担わない。(いわゆる「無
アクセント言語」)
単語を単独で発音したときのパターンには傾向性が
あり,規則によって説明できる(Jun 1993,宇都木
2004)。
例)3音節語:2音節目にピッチのピークが現れる。
미나리 「セリ」
당나귀 「ロバ」
※ただし,語頭の子音がピッチパターンに影響を与えること
がある。
「無アクセント言語」
韻律が弁別的な機能を担わない言語
※ これとは異なる定義もある(例えば,上野 1989)。
例:フランス語,ベンガル語,
日本語のいくつかの方言(茨城,熊本,etc.)
韻律が「弁別的な」機能を担わないだけであり,韻
律に関して何の特徴も持たないわけではない点に
注意。
分類3
強勢を持つか?
Yes No
ピッチが 弁別的 機能を 担うか
Yes
スウェーデン語 中国語,日本語東
京方言
No
英語,ドイツ語 朝鮮語ソウル方言
,日本語茨城方言
( !! , !! )," ##( , !! )
韻律の表記法:IPAの場合
強勢:強勢のある音節の左上に をつける
例: phonetics
第二強勢のある音節には左下に をつける。
例: phonetician
声調
韻律の表記法:ToBI(1)
ToBI(Tones and Break Indices)とは?
個々の言語の韻律的特徴を記述するための手法の
一つ。
音声コーパスに対するラベリング(labeling)によく用
いられる。
IPAにおける韻律の記号群とToBIの違い
IPA:特定の言語によらず用いることができる。
ToBI:個別言語ごとに,その言語の韻律の音韻的特
徴に基づいて定められている。(音声学というよりは
音韻論的な記述を行う。)
ToBI(2)
様々な言語のToBI
英語:ToBI or MAE_ToBI
日本語(東京方言):
J_ToBI(オリジナルのもの)
X-JToBI(国立国語研究所による改良版)
ドイツ語:GToBI
朝鮮語(ソウル方言):K-ToBI
$% &に関する情報は以下のサイトに詳しい。 ' % %() # * %+
X-JToBIの実例
$% 層:アクセント核,句 頭音調,境界音調などを 記述
&層:単語の切れ目の強 さを ~ の数値で記述
前川喜久雄他( !!,) ,
参考文献
秋永一枝. (編). (2001). 『新明解日本語アクセント辞典』. 三省堂. Beckman, M. (1986). Stress and non-stress accent. Dordrecht: Foris.
Berinstein, A. (1979). A cross-linguistic study: the perception and production of stress. UCLA Working Papers in Phonetics, 47.
早田輝洋. (1999). 『音調のタイポロジー』. 大修館書店. Hyman, L. M. (2006). Word-prosodic typology. Phonology, 23.
Hyman, L. M. (2009). How (not) to do phonological typology: the case of pitch-accent. Language Sciences, 31.
Ladd, D. R. (2008). Intonational phonology (2nd ed.). Cambridge: Cambridge University Press.
前川喜久雄 他. (2004). 「『日本語話し言葉コーパス』のイントネーションラベリング」 . http://web.mac.com/jen.venditti/iWeb/Site/Japanese%20ToBI_files/XJToBI2004.pdf 宇都木昭. (2004). 「朝鮮語ソウル方言における引用形のピッチパターン」『朝鮮語研究 2』. くろしお出版.
上野善道. (1989). 「日本語のアクセント」. 『日本語の音声・音韻 (上)』. 明治書院.