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r= ‑.82 

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20  30  40  50  60  70  8

0  ADHD symptoms score 

Fig.3  在中前頭間 (BA10)に お け る %MR signal  changeとAD/HD症状得点との相関

short‑interval条件では,低AD/HD症状群に比べ,高AD/HD症状群で

1 L

尾状核の活動が有 意に低かった。 Fig.2に差がみられた左毘状核の領域を示す。

前頭前野における 2群関の活動の違いとして左右上前頭回(BA9, BA 10),左右中前頭国 (BA 10, BA 8) ,左内側前頭回(BA9)に有意な差がみられた。これらの領域での活動は低AD/

HD症状群に比べ高AD/HD症状群で低かった。また, Fig.3に示すように, AD/HD症状得点 と左中前頭間 (BA10)における%出Rsignal changeに強い負の相関がみられた (r=一.82)。

3.2.2.  long‑interval条件

longinterval条件でも,低AD/HD症状群に比べ,高AD/HD症状群で左尾状核の活動が有 意にイ品かった。

左右前部帯状回の活動は低AD/HD症状群に比べ高AD/HD症状群で有意に低かった。 Fig. 4に差がみられた左前部帯状回の領域を示す。

一方,左右前橋足運動野(BA6)の活動は低AD/HD症状群に比べ高AD/HD症状群で有意 に高かった。

4.考察

本研究では, eventrelatedfMRIを用いて,低AD/HD疲状群と高AD/HD疲状群における 行動抑制時の脳活動を比較検討した。その際に,No‑go試行に先行する Go試行の連続関数が少 ないshort‑interval条件と連続囲数が多いlong‑interval条件を設けた。そして,先行する Go 試行の連続回数により操作した認知的文脈の違いが,前群における行動抑制時の脳活動の違い にどう影響するのかを検討した。結果として,行動指標では

2

群間に有意な差はみられなかっ たが, fMRIから行動抑制の神経基擦とされる脳領域の活動に有意な差がみられた。

適応E自警生メカニズムの解明をめざして

2 2 1  

F i g . 4  

AO/HO

症状群で活動の低さがみられた左前部帯状回

4 . 1 .   l o n g / s h o r t ‑ i n t e r v a l

条件共通の群間差

両条件において 2群間の脳活動に顕著な差がみられた領域は尾状核であった。大脳基底核 は大脳皮質の非常に多くの領域から入力される情報をもとに行動の抑制を実行する

( C a s e y

D u r s t o n

, & 

F o s s e l l a

, 

2 0 0 1 )

。また,

Go/N  o ‑ g o  t a s k  

遂行時の小見と成人の脳活動を比較した 研究から,この尾状核を含む前頭線条体回路の成熟は抑制制御機能の発達と強〈関係すること が示されている

( D u r s t o n

Thomas

, 

Yang

, Ul

ug

, 

Zimmerman

, & 

Casey

, 

2 0 0 2 )

。本研究にお ける高

AD/HD

症状群での尾状核活動の低さは,

AD/HD

症状と尾状核における行動抑制機能 に関連があるという先行研究の報告を支持する結果である

( D u r s t o n

Tottenham

, 

Thomas

, 

D a v i d s o n

, 

E i g s t i

, 

Yang

, 

e t   a

 ,.l

2 0 0 3 ;  Vaidya

, 

A u s t i n

, 

K i r k o r i a n

, 

R i d l e h u b e r

, 

Desmond

, 

G l o v e r

, 

e t  a

 ,.l

1 9 9 8 )  

0 そして,

AD/HD

症状の程度による,行動抑制の実行処理機能の違いは,

認知的文脈に関わらず顕在化していることが示唆された。

4 . 2 .   s h o r t ‑ i n t e r v a l

条件のみの群間差

s h o r t  ‑ i n t e r v a l

条件においてのみ

2

群間の脳活動に鎖著な差がみられた領域は,前頭前野で あった。低

AD/HD

症状群に比べ,高

AD/HD

疲状群で上前頭間

(BA9

, 

BA  1 0 )

,中前頭間

(BA 8

, 

BA  1 0 )

,内側部頭四

(BA9 )

の活動が有意に低かった。また,行動抑制時における左 中前頭回の活動と

AD/HD

症状得点には強い負の相関がみられた。このことから,

AD/HD

症 状得点が高い者ほど行動抑制時における前頭前野の活動が低いことが示された。

s h o r t ‑ i n t e r v a l

条件では,直前の

No‑go

試行との聞の

Go

試行の連続回数が少ないため,目標である

Go

という 情報処理から,それとは競合した

No‑go

という情報処理への柔軟な切り替えが求められる。こ のような事態において行動を適切に制御するためには,目標関連'清報をアクティブに保持する こと,そして,それぞれの認知処理に対し柔軟に注意資源を配分することが求められる。 fMRI を用いた研究から,日標行動に関連する情報は前頭前野において内的表象として保持されると 考えられている。そして,それぞれの認知処理に配分される注意資源の制御にも前頭前野が寄

していることが示唆されている

( F u n a h a s h i

2 0 0 1 )

。本研究において

2

群間で前頭前野の 活動に差がみられたことから,

AD/HD

症状の程度により目襟関連情報の保持機能や注意資源 の艶分機能に違いがあることが示唆される。この結果は

s h o r t ‑ i n t e r v a l

条件のみにみられたこ

とから,自標関連情報の保持機詑や注意資源の配分機能の違いは「反応」と「抑制IJJの切り替 え間関が短い認知的文脈において顕在化すると考えられる。

4.3.  lon1沼gεεε.凶 嗣 叩 .

long‑interval条件においてのみ2群間の脳活動に顕箸な差がみられた領域は,前部帯状回 (BA 24)であった。 fM引を用いた研究から,目標行動に関する内的表象と外界から入力され た外的表象との認知的競合を検出する神経基盤の中根として前部帯状副が示唆されている (Bush, Frazier, Rauch, Seidman, Whalen, Jenike, et a ,.l

1 9 9 9 )  

longinterval条件では先行 する Go反応、が長〈連続するため,内的な目標表象として竪聞なGo表象が形成されると考え られる。そのような文脈下でNogo刺激が入力される事態では,内的表象との不一致が大きい ために,高い認知的競合が生じると考えられる。そして,認知的競合が高い事態において,前 部帯状関の活動はより高くなることが報告されている (Durston,Davidson, Thomas, W orden,  Tottenham, Martinez, et a ,.l 2003)。本研究において 2群間で前部帯状盟の活動に差がみら れたことは, AD/HD疲状の程度により認知的競合を検出する機能に違いがあることを示唆し ている。この結果がlong‑interval条件のみにみられたことから,認知的競合を検出する機能の 違いは行動抑制時の認知的競合が高い文脈において顕在化すると考えられる。

long ‑interval条件においてのみ前補足運動野 (BA6)の活動にも 2群間に顕著な差がみられ た。高AD/HD症 状 群 は 低AD/HD症状群よりもこの領域の活動が有意に高かった。 long‑ interval条件では,直前のNo‑go試行との間のGo試行の連続回数が多いため, No‑go時の運 動準備レベルが高くなると考えられる。fMRI研究から,前補足運動野は運動反応、を遂行するた めの準備処理に寄与することが報告されている (Cunnington,Windischberger, Deecke, & 

Moser, 2002)。高AD/HD症状群が低AD/HD症状群に比べて前補足運動野の高い活動を示し たことは,行動抑制時における運動準備レベルが高AD/HD群でより高いことを示唆してい る。そして,このような違いはlongωinterval条件のみに示されたことから, AD/狂D症状の程 度による運動準備レベルの違いは,反応実行が多く連続した認知的文脈において顕在化するこ

とが示唆される。

4.4.  AD/HDメカニズムとの関連性

これまでの多くのAD/HD研究は, AD/HDの中核障害として行動抑制機能の問題を示唆し てきた。しかしながら,行動抑制!の遂行に関与する多くの認知処理のうち,どの認知処理がAD/

HDにおいて本質的に問題なのか,またどのような認知的文脈により問題が顕在

f

ちするのかに ついては明らかにされてこなかった。本研究では健常成人被験者をAD/HD症状尺度の得点を もとに低AD/HD症状群と高AD/HD疲状群に分類し, No‑go試行に先行する Go試行の連続 回数により操作した異なる認知的文脈において

2

群聞の行動抑制時の脳活動を比較した。結 果として, AD/HD症状の程度による,行動抑制の実行処理機能の違いは,認知的文脈に関わら ず顕在北していることが示唆された。一方,目標情報の保持機能や適切な注意資源の配分機能,

認知的競合の検出機能,運動準備レベルの制御機能の違いは,特定の認知的文派において顕在 イじすることが示唆された。これらのことから, AD/HDの認知神経心理学的メカニズムにおい て, AD/HDの本霊的病態は行動抑制の実行処理機能の不全で、あることが示唆される。また,認

i慶応、 E困難メカニズムの解明をめ~して

2 2 3  

知的文脈の変化により顕在化する脆弱的機能として, 目標情報の保持機能や適切な控意資源の 配分機能,認知的競合の検出機能,運動準備レベルの制御機能があり,それらがAD/HDの行 動抑制をより困難にしている可能性が示唆される。しかし,今回の研究は健常者を対象とした

ものであり,診断群を対象としてさらに検討する必要がある。

4.5.  AD/HDのある子どもたちへの教育的支援の可能性

AD/HDの逸脱行動は新しい環境で顕著になり,その原悶にはAD/HDにおける行動抑制機 能の問題が関係していると考えられている。本研究の結巣は,行動抑制機能の神経義援に脆弱 性をもっAD/HDのある子どもに対し,どのような介入が有効で、あるかについての示唆を与え

ると思われる。

AD/HDの本賞的病態は行動抑制の実行処理機能不全であることが示唆されたが, AD/HD  のある子どもが行動抑制に著しい国難を抱える要因には,特定の認知的文脈で顕在化する他の 認知機能における問題の重捜が関与していると考えられる。その認知機能とは r反応」と「抑 制

J J

の切り替え間関が短い認知的文脈において顕在化する、目標情報の保持機能かや、適切な 注意資源の配分機能ぺ行動抑制時の認知的競合が強い文脈において顕在化するホ認知的競合の 検出機能ヘそして,反応実行が多く連続した認知的文脈において顕在イじする、運動準備レベル の制御機能汐である。

脆弱的機能と考えられる、目標情報の保持機能グや、適切な注意資源の配分機能グの問題を 顕在化させないためには,与える情報の負荷を軽減することが有効で、ある。そうすることによ り,情報保持機能への負担は少なくなるだけではなし他の認知機能の遂行がより確実になる。

そして,与える情報の負荷が軽減すると情報処理に必要となる在意資源が少なくなるので,

意資源の配分機能に問題があると考えられる AD/HDには有効であろう。

1E

知的競合の検出機能かの問題を顕在化させないためには,より「わかりやすく」競合情報 を呈示することが重要で、ある。「何が今までと異なるのかJを明瞭に示すことは,それを検出す ることが閤難なAD/HDのある子どもに対して有効で、ある。

、運動準備レベルの制御機能グの問題を顕在イじさせないためには,行動停止の声がけのタイミ ングを健常児・者に比べて早い段時ですることが有効で、ある。このことは行動抑制時の異常に 高い運動準備レベルを防ぎ,よりスムーズに行動を抑制しやすくなると考えられる。

[引用文献]

Alexander, G. E., DeLong, M. R.,  & Strick, P. L. 1986 Parallel organization of functionally segregated  circuits linking basal ganglia and cortex. Annual Review 01 Neuroscience, 9, 357381 

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Barkley, R. A. 1997 Behavioral inhibition, sustained attention, and executive functions: constructing a  unifying theory of ADHD. Psychological Bullet121, 6594. 

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Barkley, R. A., & Murphy, K. R. 1998 Attention‑Dejicit同IteractiviむlDi・S:order:A Clinical  Workbook, 2th  ed. New York, NY; The Guilford Press. 

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