Yutaka Yoshitake, Goichiro Yoshida, Akiyo Higashionna
National Institute of Fitness and Sports in Kanoya
This paper, which was based on the findings of some previous studies concerning the effects of underfeeding or fasting on the physical performance capabilities of healthy adults, addressed the impact of short-term underfeeding or fasting on both physical fitness and physical activity. These early studies on the short-term consequences of underfeeding suggest that several days (about 3 days) of underfeeding have an especially high impact on aerobic endurance performance, but at some point, probably related to the magnitude of the energy deficit and the number of days of being underfed, the physical performance will eventually become compromised. This would also lead to a deterioration of the capacity to perform daily tasks. It is therefore desirable that energy (food) should be supplied within phase 1 (72 hr), as the effects of the total energy deficit on physical fitness and physical activity are assumed to be more serious during the aftermath of a disaster, at which time mental stress tends to increase more than under normal conditions. We therefore recommend that food supplies for at least 3 days should be maintained to prevent any deterioration in overall physical fitness as well as any decrease in the daily physical activity.
Key words: Disaster nutrition, underfeeding, Fasting, Physical fitness, Physical activity
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ところで,今回の東日本大震災のような大災害において,エネルギー摂取量不足が被災者にどのような肉 体的・精神的な影響をもたらしたかについては,まだ十分に明らかにされていない.そこで本稿では,災害 時に十分なエネルギーの確保がなされなかった場合,被災者の体力や身体活動にどのような影響を及ぼす可 能性があるか,これまでにボランティアを対象に実施された減食や絶食の研究から検討する3)6)-9).
2.エネルギー必要量
1日の総エネルギー消費量は,基礎代謝,身体活動に伴うエネルギー消費および食事による産熱(食事誘 発性熱産生)で構成されており,その中でも基礎代謝がもっとも多くを占める.表1は,日本人の食事摂取 基準(2010年版)における基礎代謝量を示したものである10).乳児では成長に必要なエネルギーが,また妊 産婦では,妊婦自身の総エネルギー消費量に加えて胎児の成長に必要なエネルギーが,授乳婦では母乳産生 のエネルギーが加わることになる.その詳細については日本人の食事摂取基準(2010年版)10)を参照された い.
一方,1日の総エネルギー消費量は日常の身体活動レベルにより異なる.表2は,身体活動レベル別にみ た活動内容と活動時間の代表例を示したものである10).災害時における食料確保や被災者の健康保持のため にも,性,年齢別などのエネルギー必要量については把握しておく必要があると思われる.
3.摂取エネルギー不足の代謝への影響
一般に,減食や絶食の開始初期には体重の減少が著しいことが知られている3).一方,エネルギー供給面 においては,食事などからの外因性のエネルギー供給が低下または無くなるため,グリコーゲン分解や糖新 生によりグルコースが供給されることになる11).絶食初期では,もっぱら肝臓に貯蔵されたグリコーゲンの 分解によりグルコースが供給される11)が,その貯蔵されたグリコーゲンは約24時間しかもたない12).さらに,
絶食期間が長くなると肝臓や腎臓での糖新生によるグルコース供給に依存することになり11),そのため組織 タンパク質の利用が増大する.また,長期間の減食または絶食の場合,全身組織のエネルギー源は脂肪組織 から動員された遊離脂肪酸やケトン体に大きく依存することになる.図1は,絶食期間と血中ケトン体濃度 の関係を子供と成人で比較したものである13).絶
食による血中ケトン体濃度の上昇は成人より子供 に早期にみられる.低栄養の際に,その障害がもっ とも顕著にあらわれるのは,エネルギー摂取量不 足による障害とタンパク質欠乏による障害であ る.このことから,総摂取エネルギー不足の期間 が長くなると,組織タンパク質の崩壊が亢進し,
それによる身体消耗により生理機能の変調をきた す可能性が大きくなる3).このことは,除脂肪体 重あたりの基礎代謝量が高く,タンパク質の必要 量が高い乳幼児や児童においては,減食または絶 食の影響は早期に現れることを示唆している.こ
図1 給食中のD-3-ヒドロキシ酪酸(BOH)とアセト酢酸(AcAc)
濃度の和の比較,やせた成人の全血(●,▲),肥満した 成人(○,△),5〜7歳の子供(*):●,○静脈血の濃度:
▲,△,動脈もしくは動脈血化した血液の濃度13)
性 別 男 性 女 性 年 齢 基礎代謝基準値
(kcal/kg体重/日)
基礎体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
基礎代謝基準値
(kcal/kg体重/日)
基礎体重
(kg)
基礎代謝量
(kcal/日)
1〜2(歳) 61.0 11.7 710 59.7 11.0 660
3〜5(歳) 54.8 16.2 890 52.2 16.2 850
6〜7(歳) 44.3 22.0 980 41.9 22.0 920
8〜9(歳) 40.8 27.5 1,120 38.3 27.2 1,040
10〜11(歳) 37.4 35.5 1,330 34.8 34.5 1,200
12〜14(歳) 31.0 48.0 1,490 29.6 46.0 1,360
15〜17(歳) 27.0 58.4 1,580 25.3 50.6 1,280
18〜29(歳) 24.0 63.0 1,510 22.1 50.6 1,120
30〜49(歳) 22.3 68.5 1,530 21.7 53.0 1,150
50〜69(歳) 21.5 65.0 1,400 20.7 53.6 1,110
70以上(歳) 21.5 59.7 1,280 20.7 49.0 1,010
表1 日本人の食事摂取基準(2010年版)における基礎代謝量10)
身体活動レベル2 低い(Ⅰ) ふつう(Ⅱ) 高い(Ⅲ)
1.50(1.40〜1.60) 1.75(1.60〜1.90) 2.00(1.90〜2.20)
日常生活の内容3 生活の大部分が座位で,静 的な活動が中心の場合
座位中心の仕事だが,職場 内での移動や立位での作 業・接客等,あるいは通勤・
買物・家事,軽いスポーツ 等のいずれかを含む場合
移動や立位の多い仕事へ の従事者.あるいは,ス ポーツなど余暇における 活発な運動習慣をもって いる場合
個々の活動分類︵時間/日︶
睡眠(0.9)4 7〜8 7〜8 7
座位または立位の静的な
活動(1.5:1.0〜1.9)4 12〜13 11〜12 10 ゆっくりした歩行や家事
など低強度の活動
(2.5:2.0〜2.9)4 3〜4 4 4〜5 長時間持続可能な運動・労
働など中強度の活動(普通 歩行を含む)
(4.5:3.0〜5.9)4
0〜1 1 1〜2
頻繁に休みが必要な運動・
労働など高強度の活動
(7.0:6.0以上)4 0 0 0〜1
表2 日本人の食事摂取基準2010年版に示されている日本人の身体活動レベル区分(15-69歳)10)
1表中の値は,東京近郊在住の成人を対象とした,3日間の活動記録の結果から得られた各活動時間の標準値.二重標識水法及び基礎 代謝量の実測値から得られた身体活動レベルにより3群に分け,各群の標準値を求めた.
2代表値.( )内はおよその範囲.
3活動記録の内容に加え,Black, et al.を参考に,身体活動レベル(PAL)に及ぼす職業の影響が大きいことを考慮して作成.
4( )内はメッツ値(代表値:下限〜上限)
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のことから,食物はできるだけ早期に,しかも乳幼児,子供および妊産婦には優先的に提供されなければな らない.
4.低栄養の体力および身体活動への影響
空腹感は減食のはじまりには非常に強烈であり,身体動作は不活発となり,作業意欲が低下することはよ く知られている3).しかし,今回の東日本大震災のような大災害において,エネルギー摂取不足が被災者に どのような肉体的・精神的な影響をもたらしたかについては,まだ十分に明らかにされていない.そこで本 稿では,災害時に十分なエネルギーの確保がなされなかった場合,被災者の体力や身体活動にどのような影 響を及ぼす可能性があるか,これまでにボランティアを対象に実施された減食や絶食の研究から述べること にする3)6)9).
絶食の体力への影響は短いもので約12時間後に現れ,バランス能力(開眼と閉眼片脚立ち,ファンクショ ナルリーチ)の低下をもたらす8).さらに,減食や絶食期間が数日以上になると,持久能力に著しい低下が 認められるが,下肢筋力や筋パワーの低下は少なく,握力ではほとんど変化が認められていない6)7).数日 間の絶食による持久力の衰えは,絶食中止後3〜5日間に十分なエネルギーを摂取することにより回復がみ られるが,活動中の筋肉痛や疲労感などの回復は遅れることが報告されている6).このことは,通常食に戻っ ても減食による体調不良は体力の回復より遅れることを示唆している.
一方,身体活動については減食の度合いが高くなればなるほど活動によるエネルギー消費量は低下し,特 に活動強度の高い身体活動時のエネルギー消費量の低下は著しくなることが報告されている14).このことは,
短期間のエネルギー摂取不足は低強度の活動より高強度の活動に大きな影響を及ぼすことを示唆している.
ところで,減食や絶食の体力や身体活動への影響は減食の程度やその期間により異なる7)が,フェイズ0 から1の間に著しいエネルギー摂取量の不足が生じた場合,体力や身体活動に影響を及ぼす可能性があるこ とは,上述したとおりである.特に災害当初は空腹感,イライラ,精神作業能や意欲の低下などが強く現れ,
それが更に体力の低下を助長し,作業能に大きな影響を及ぼすことが予想される.また,災害時においては 環境の安全性が必ずしも確保されておらず,しかもエネルギー摂取量が不足した状態での身体活動は疲労の 蓄積を促進するので,災害時における減食状態での屋外作業,特に活動強度の高い作業は安全性の面からも 注意を要する.これまで述べてきた減食や絶食の体力や身体活動への影響に関する研究は,ほとんどが健常 な若者を対象にしたものであることから,被災した高齢者や虚弱者ではエネルギー摂取量不足の身体などへ の影響はさらに大きくなり,通常の食事に戻っても健康や体力の回復が遅れることが予想される.
一方,被災者に十分な食料が配給されるようになっても,避難所生活が長期化すると日常の身体活動量の 低下による糖耐能低下15)など,運動不足の影響についても留意する必要があると思われる.特に,高齢者の 著しい身体活動制限は最大酸素摂取量(持久能力),下肢筋パワー,下肢筋力,筋量等の低下をもたらすこ とが報告されている16)17).これらの結果は,高齢者が慣れない狭い空間での避難所暮らしを長期間強いられ ると,下肢筋力やバランス能力,さらにはこれらに起因する歩行能力の衰えを招来し,廃用症候群の増大を もたらす可能性を示唆している.また,高齢者の活動量(エネルギー消費量)の低下は食欲の衰えをもたらし,
それによる各種栄養素不足(質的栄養不良)が危惧される.このことから,災害時および復旧・復興時にお いては,身体活動量(エネルギー消費量)の低下の健康に及ぼす影響についても考えておく必要があると思