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Karunee Kwanbunjan**

Department of Tropical Nutrition and Food Science,

Faculty of Tropical Medicine, Mahidol University, 420/6 Rachawiti rd. Bangkok 10400, Thailand

 The “Tsunami” on 26th, December, 2004 caused enormous damage in the whole of eleven countries in Southeast Asia and Africa. Six provinces in the southern part of Thailand were struck by the direct onslaught of the tsunami. The survivors were soon accommodated in temporary shelters built after the occurrence of the tsunami. A prompt assessment concerning risks for a mass outbreak of infectious diseases, sanitation, and the living environment and mental health of inhabitants was performed and then measures for them were taken. An enormous environmental change caused by the tsunami resulted in an increased occurrence of infectious diseases different from usually observed infectious diseases. The victims felt uncomfortable to live in the temporary shelter. The disaster caused by the tsunami influenced not only the life, housing, and job of the victims directly but also the health and nutrition conditions of the victims indirectly. Supports and measures including health promotion programs were required for the victims who had suffered the Tsunami to come back their original life.

 The tsunami on 26 December 2004, which was devastating, caused massive displacement of entire communities in eleven countries in Southeast Asia and Africa. It immediately attacked six provinces in south Thailand. The survivors were accommodated in temporary shelter which rapidly constructed. Outbreak risks and sanitation, environmental, and community mental health needs were rapidly assessed and addressed.

The tsunami resulted in significant environmental damage and disturbance, leading to increase different infectious diseases. The living situation in the temporary shelters was unpleasant. The disaster impact was not only on lives, habitations, occupations, but also indirect effected on health and nutrition situation of the tsunami victims, especially the population at risk. This vulnerable population required support and encouragement to get back into their lives, including health promotion programs.

Key words: tsunami, Southeast Asia, Thailand, health, nutrition status

本論文は,緊急企画「災害栄養」のために,特別にご寄稿頂いたオリジナル論文(タイ語)である.著者の許可を得て,

翻訳したものである.R. Asadondecha, 渡邊敏明訳

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 1.津波被害の概要

 これまでインド洋では強い津波が起こらないと言われていた.その根拠として,インド洋の東側にインド・

オーストラリアプレートとユーラシアプレートが接する場所であるため,しばしば地震が起こったが,これ まで津波によって人命や建物に被害を受けた経験がなかった.しかし,2004年12月26日にタイでは初め て津波の恐ろしさを実感した.これは約22万人以上の死者を出す世界で第三番目の自然災害になった.

 地震の中心はインドネシアの北スマトラ島の西海岸の海底で,津波はインド洋全体に渡ってインドやスリ ランカの東南海岸にまで及んだ.その上一部の津波がアフリカ大陸の東海岸にまでも及んだ.今回の津波で 死者が出て被害を受けた国は計11ヶ国で,インドネシア,マレーシア,タイ,ミャンマー,インド,バン グラデシュ,スリランカ,モルデーブ,ソマリア,タンザニアおよびケニアである.

 タイでは津波の被害が国民全体に大きなショックを与えた.インド洋沿いにあるタイ南部地域の6県,プー ゲット(プーケット),パンガー,ラノーン,グラビー,トラングおよびサトウルで,多くの死者と住宅が 失われた.とくにパンガー,グラビーおよびプーゲット県が一番被害を受けた.

 津波は速いスピードで激しい破壊力を持つ自然災害で,かつ予測できなかったため,事前の注意や対策の 用意ができていなかった.津波の破壊は人命,住宅および家財を失っただけでなく,住民の仕事までも奪っ てしまった.タイ南部は美しい海岸がある観光地だったため,多くの観光客にも死者が出た1).津波は人命 や財産も奪ったほかに,地域の地形や環境の変化,そして被災者に精神的なダメージも与えた.

 2.被害を受けた地域での緊急問題と対策

 津波が去った後に直ちにレスキュー隊が多く被災者の人命を救助した.多数の負傷者がいたので,多くの 医師,看護師およびボランテイアが必要であった.津波による被災地のインフラが壊滅状態になり,地域経 済も破綻し,食料や飲料水も不足であった.災害を受けた地域が熱帯地区のため,多くの被災者がいる場所 に感染症などが発生するリスクも高かった.支援活動ではとくに公衆衛生の面に注意しなければならなかっ た.リスクの高い感染症としてはコレラ,赤痢,腸チフス,A型およびB型肝炎であった2)

 タイは緊急対応がよく整っていた.壊滅的に破壊されたものの片付けなども迅速であった.タイ厚生省

(MOPH)も速やかに,しかも効果的に対応したことやいくつかの国際機構の技術的な支援活動で被災者の健 康や衛生面の問題に全力を挙げたことによって,感染症の拡大を防ぐことができた.国際機構としては,ア メリカのCDC(Thai MOPH-U.S.CDC Collaboration:TUC),The Armed Forces Research Institute of Medical

Sci-ences(AFRIMS),およびWHO (国際世界保健機構)で,それらによる協力があった3)

 津波により住宅を失った被災者に仮設住宅を与えなければならなかった.簡易的に造られ,あまり丈夫で ない住宅に大勢が共同生活をするため,窮屈で風通しの悪く,ゴミや汚物の処理が不十分であり,さらに日 中は非常に暑いことが問題であった.被害を受けた初期においては,多くの人や財団などから物資の援助が あった.寄付された物資として食料,飲料水,日常必需品などが届いた.しかし,不十分な生活環境,衛生 面の悪さ,居住しているところの窮屈さによって,被災者の健康状態にいろいろな問題が起こった.とくに 被災者の中でもっとも不幸な人は,家族全員を失い,しかも家,財産および職業をすべて失った人であった.

これらの被災者は精神が不安定になったり,落ち込んだりして,精神的な病を患っていった.

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 3.被災者の栄養問題

 被害を受けた地域における緊急問題は,基本的に食料の安全性である.食料の安全が維持されなければ,

下痢の発症や被災者の間に感染症が広がる恐れがあるため,食料と飲料水の管理が重要であった.また病気 などに罹り易い小児,高齢者および妊婦や授乳婦は栄養不良の問題につながる可能性があった.幸にタイで は食料や飲料水の管理が上手くできていたため,これらの問題はなかった.このほか,津波で農業をする地 域が浸水されたため,食料の生産地が少なくなり,食料不足につながり,最終的に食料を安定に確保をする ことが問題になった.(Figs.1. 2. 3. 4)

 2006年にスリランカのJayatissa(ジャヤテッサ) 調査グループによると,津波で被害を受けた人々が仮設 住宅において,団体共同生活が原因で被災者が栄養不良になったとの報告があった.とくに0〜5歳までの 子供たちの調査結果では,878名の子供において津波被害の前に比べると,病気として呼吸器系の疾患や下 痢に罹る回数が多くなった.仮設住宅における食料の配給が良くなかったため,食料が十分に与えられなかっ た子供がおり,子供の中に栄養不良の問題があった(るい痩,16.1%;栄養不良,20.2%;低体重34.7%).

このほか,妊婦および授乳婦においては栄養失調や太り過ぎの問題があった.ストレスによって母乳の量が

Fig.1 仮設住宅 Fig.2 貯水タンク

Fig.3 仮設住宅を回っている引き売り Fig.4 仮設住宅における津波被災者による食品販売

減る女性もみられた4)

 インドネシアのAceh (アチェ)州も同じ津波に襲われた後,建物,公共事業,食料や日常品の倉庫,医療 器具,水道管や排水管,橋,道路および港などが破壊された.そのうえ,この 地域が長年の紛争があった ため,Aceh州に出入りすることができず,被災現場までの援助が困難であった.Aceh 州の被災者は,外部 から孤立していた.津波による死者の外にコレラや感染症で亡くなる人も少なくなかった.

 UNICEF/CDC 調査によると,仮設住宅で共同生活をしているAceh州の0〜5歳までの600名の幼児のうち,

12.7%が栄養不良,1.5%がひどい状態の栄養失調であった5).スリランカの人々とAceh州の人々が栄養不

良であり,ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が不足している人や栄養不良になる可能性の高い境界領域 の人たちに対しては,今回の津波の被害は栄養問題をさらに悪化させることになった.

 栄養不良は短期的な問題ではなく,問題の範囲が広く,いろいろな観点からみる必要があった.その栄養 不良の主要な原因は津波による被害ではなく,日ごろの食生活の問題であった.すなわち,津波災害の初期 から体に栄養を十分に与えられないで,その時には病状がまだ現れないまま進んでいて栄養失調になった.

逆に必要以上に栄養を与えて太りすぎが問題になり,最終的に肥満になった.それに加えて,津波の被害は 栄養不足の問題を悪化させ,より複雑にし,その問題をより解決しにくくさせた.

 現在,アジアは食料による栄養補給不足の問題の移り変わりの時期である.重要で慢性的になっている栄 養不足の問題としては,鉄不足による貧血症,ビタミンA不足,ヨウ素不足,それと同時に肥満がある.

 栄養不良への対策は2段階に分けられる.第一段階は,緊急対策として大災害によって多数の死者が出て,

家や建物が破壊された時,直ちに被災者に住む場所を与え,良い公衆衛生計画と管理,住む場所を提供する こと,排気すること,ゴミと廃棄物処理,そして安全な食料と飲料水を与えることである.それに加えて,

緊急に被災者の精神状態を取り戻すことと,被災者の経済的な安定を戻すために職業などを与えること,こ れらと並行して健康のために十分に栄養を与えることである.

 第二段階は長期的な対策として,被災者がこれから元の良い暮らしを取り戻すために,安定した住む場所 や職業を持つことである.そして,継続的に健康を維持するために衛生や栄養関係の知識を被災者に理解し てもらうことである.また,食料の安定な供給を確保するために,農業をする場所を取り戻す必要がある.

 4.パンガー県で行われた調査:津波の影響に対する被災者の栄養状態

 マヒドン大学の熱帯医学部の健康科学調査チームが,パンガー県で津波の影響に対する被災者の栄養状態 の調査を行った.パンガー県を対象にした理由は公衆施設のほとんどが破壊され,死者5,313名,重軽傷者

5,597名,行方不明者1,865名,また住民25,000名が家,家族そして職業をすべて失ったためである.健康

診断の結果,2,474名が感染症に罹り,下痢,呼吸器疾患,出血病およびMeloidosis であった.負傷者がプ ロテウス属(Proteus)や嫌気性(Anaerobic)の細菌に感染していた.このほか,ストレスや情緒不安定によっ て精神的に不安定となった被災者もいた.

 2005年2月に津波の後,調査チームがパンガー県のタクアパー区で環境の変化に対する被災者の栄養状 態の調査を行った6).その調査結果によると,津波の影響で以前より海水が海岸内に入ってきたため,川な どが変化した.河川水,天然水および村人が造った貯水池の水質調査を行い,津波で影響を受けた水と影響