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Fig. 20 Differential CD and UV spectra of the C1-benzoates (59a and 59b) and their corresponding parents (30a and 30b) in ethanol. The concentration of each compound was adjusted to 83 μM by using an ε value of 18,000 at 265 nm, which was obtained by UV spectroscopy.

Hzであり,誘導体(59a,b)の1位置換基はいずれもアキシャル位をわずかに優先して いた.これはCDスペクトルの観測結果を支持するものであった.

A環3位ヒドロキシ基の絶対配置決定

次に3位ヒドロキシ基に関して検討を行った.3位ヒドロキ シ基はアリルアルコール構造ではない.しかし,空間的に距離 のある場合でも励起子相互作用は存在する.例えば,ジベンゾ エート系では月夜茸の成分illudin Sの絶対配置は,そのフェノ ール性ジベンゾエート誘導体(60)のCDスペクトルにより決 定された(Fig. 2175).この場合は,1,4-ジベンゾエート系で あり,励起子キラリティー法は離れた相互作用系にも適用できる.励起子キラリティー

法を用いた絶対配置決定を用いるときは電気遷移モーメント間のキラリティーが空間 的に明瞭である必要がある.合成した誘導体3位ヒドロキシ基に対しこの方法を適用し

た場合,C(10)-19エキソメチレンとは対角線上の位置関係にあるため,主にジエン部と

のキラリティーによる Cotton 効果が観測されると考えられる.しかし,励起子相互作 用は電気遷移モーメント間の距離と負の相関関係にあり,距離が離れるほど弱くなる.

加えてトリエン部自身がキラリティーを有することから CD スペクトルによる絶対配 置決定に影響する可能性がある.そこで,まず立体化学が明らかなビタミン D3を用い て予試験を行った.

ビタミンD31)をジクロロメタン溶液中,DMAP存在下,ベンジルクロリドを反応 させ,ベンゾエート体(61a)へと収率 93%で変換した(Scheme 9).さらにビタミン D3を光延反応により,THF溶液中,Ph3P と安息香酸,DEADを加え反応させ 3-epi-ビ タミンD3のベンゾエート体(61b)を収率14%で得た.このとき,副生成物が得られ,

MSスペクトルや13C NMR,DEPTでの第三級炭素数の変化から3位脱離体と推定した.

また1H NMRでδ 5.73 (1 H, dt, J = 9.6, 4.0 Hz) とδ 6.07 (1 H, d, J = 9.6 Hz)のシグナルが 観測されたことから,脱離体(62)が生成したと推定した(Scheme 9).脱離体(62

は収率77%と多く生成したが,単工程で目的化合物(61b)を合成できたためこのまま

進めることとした.さらにベンゾエート(61b)を加水分解を行い,3-epi-ビタミン D3

(63)を収率58%で得た.合成した3-epi-ビタミンD3は,報告されている1H NMRと 一致した30).合成したベンゾエート体(61a,b)のCDスペクトルを測定した(Fig. 22). その結果,それぞれの親化合物(1)(63)と差スペクトルをとると先ほどと同様にUV においてベンゾエートの吸収スペクトルが明らかとなった.しかし,CDスペクトルで

は Cotton 効果の正負は確認できたが明瞭なスペクトルを得たとはいえなかった.励起

子キラリティー法を適用する際の注意として励起子キラリティーが明瞭である必要が あり,不明瞭なスペクトルでは結果が入れ替わることもある.より明確なCotton効果