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第三章 20 位ヒドロキシビタミン D および側鎖切断型 誘導体の合成に関する研究

Scheme 18 Synthesis of novel 20-hydroxyvitamin D analogues (76-82) with cleaved side chain

特許申請等の目的で一部 非公開としています.

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6.20位ヒドロキシビタミンD誘導体の活性評価

合成した誘導体(76-82)はウシ胸腺VDRを用いた結合能試験を行った.結果をTable

8Fig. 37 に示す.側鎖切断は不活性化のプロセスであるため,側鎖を短縮するよう

な修飾は,これまで全く吟味されていなかったといえる.

イソブチル側鎖誘導体(74)に比べ,20位エピ体(76)は2倍の活性を示した.さら に,(74)を減炭素したイソプロピル側鎖誘導体(77)は 5-6 倍作用が増強した.これ は25位ヒドロキシ基を有する誘導体(73)に匹敵した.驚くべきことに(77)に不飽 和結合を導入した誘導体(79)は(77)の3倍,さらにその20位エピ体(80)は(79)

の20倍以上も親和性が強く,1α,25(OH)2D32)のおよそ3分の1という高活性を示し た.これは20位ヒドロキシビタミンD誘導体として短い側鎖を持ちながら大きく親和 性が上昇したはじめての例である.一方,22 位にさらにヒドロキシ基が導入された誘 導体(81)(82)は,20位立体に関わらず親和性は低下していた.第三章では,天然と 異なる20 位異性化と側鎖長の短い20位ヒドロキシビタミン D誘導体が高い親和性を 示すという重要な結果が得られた.

Table 8 Relative VDR binding affinity of the 20-hydroxyvitamin D analogues.

aBovine thymus

bPotency of 1α,25-dihydroxyvitamin D3 is normalized 100 by definition.

特許申請 等の目的 で一部 非公開と していま す.

Fig. 37 Structures of 20-hydroxyvitamin D analogues.

7.20位ヒドロキシビタミンD誘導体のX線結晶解析

前述の高活性の化合物(80)について,その由来を調べるべく,X線結晶解析を行っ た(Fig. 38).CD環の側鎖部分の配座は,カップリング前のCD環部(99b)と同様に メチレン部分と20位ヒドロキシ基がエクリプス型配座となっていた.Table 9は側鎖部 の重要なtorsion angleをまとめたものである.1α,25(OH)2D32)の20位エピ体(113) は高活性を示すことが知られ40)98)(Fig. 39),親和性上昇は側鎖部が相互作用できる領 域が変化することや21位メチル基がアミノ酸残基とのファンデルワールス相互作用が あることが理由とされている 97).1α,25(OH)2D3(2)や 20 位エピ体(113)は VDR と の複合体結晶が報告されている 97).そこで 21位メチル基について 20 位エピイソプロ ペニル側鎖誘導体(80)と比較した.すなわちC16-17-20-21で規定されるtorsion angle

特許申請等の目的で一部 非公開としています.

Fig. 38 X-ray crystal structure of 80.

を比べると20位エピ体(113)は56°で合成した誘導体(80)は54°とほぼ一致した(Table 9).従って,誘導体(80)の親和性上昇には21位メチル基が一部寄与していると考え られる.また20位ヒドロキシ基と不飽和結合の組み合わせは側鎖部をこれまでにない 配座に規定することが明らかとなった.これは先述の CD 環部の X 線結晶解析で得ら れた結果とも一致する.C17-20-22-23で規定されるtorsion angle では1α,25(OH)2D(3 2) は-154°でその20位エピ体(113)は178°であった(Table 9).それに対し誘導体(80)

は124°とどちらとも異なる角度を示していた.

一般に受容体-リガンド結合にはエントロピーロスが伴うので,それを補うだけのエ ネルギー,水素結合やイオン,双極子,疎水性相互作用などが存在すれば複合体形成が

Fig. 39 Structures of 1α,25(OH)2D3 and 20-epi ligands.

特許申請等の目的 で一部非公開 としています.

Table 9 Key torsion angles of the side chain based on the X-ray crystal structures.

有利となる.側鎖部のアルキル鎖の短縮により,ファンデルワールス相互作用が減少し,

さ ら に 重 要 な 25 位 の 水 素 結 合 を 失 う こ と か ら , こ のイ ソ プ ロ ペ ニ ル側 鎖 は

1α,25(OH)2D32)に比べエンタルピー的には不利にはたらくと予測できる.さらに柔

軟性の高い側鎖部が短縮によりリガンド自体のエントロピーが減少すると考えられる.

つまり,エントロピーの減少と,水素結合を欠くことで不利なエンタルピー変化が存在 していると考えられる.実際の受容体との親和性試験の結果をみると合成した他の誘導 体に比べイソプロぺニル側鎖は親和性が上昇した.さらにイソプロピル側鎖においては 大きな親和性上昇効果がないことから,新たな相互作用は π 電子が関与していると考 えられる.それらを考慮するとこの修飾では新たな相互作用を獲得することで有利なエ ンタルピー変化の結果,親和性が上昇したといえる.他の可能性としてはイソプロペニ ル側鎖が受容体とフィットすることで疎水性空間に存在している水分子を追い出して 親和性が上昇するなどが考えられる.

20位エピ体(113)のVDR親和性上昇効果も重要だが,もう一つ注目すべきことは,

分化誘導能である.20位エピ体(113)は1α,25(OH)2D3(2)に比べ約30倍以上高い分 化誘導能を有する.さらに2αメチル基を有する場合,相乗的に分化誘導能が上昇する

98).今回合成したイソプロペニル側鎖誘導体は20位エピ体(113)同様に 20位立体依 存的に親和性が上昇したことや,21 位のメチル基の指向性が同じであった事から,分 化誘導能に影響している可能性がある.仮に同様の傾向が観測できれば21位のメチル 基の位置関係が分化誘導能への切り替えに重要である可能性がある.さらに二重結合は あらたな相互作用の存在が示唆されることから,こちらについてもこれをリード化合物 として類縁体を合成し,相互作用を明らかにする必要がある.

8.側鎖部に関するさらなる構造展開

Fig. 40 Structures of isopropenyl side chain analogues.

驚くべきことに VDR に対し高活性を示した 20 位ヒドロキシ基を有するイソプロぺ ニル誘導体(79, 80)は側鎖部が大きく切断されており,親和性上昇効果は25位ヒドロ キシ基の水素結合によらないと予測された.そこで,オレフィン導入による π 電子の 相互作用あるいはアリルアルコール構造が側鎖部を規定する効果によるものと考えた.

20位近傍はLeu-230, Ile-268, Val-300など疎水的空間で囲まれているため20位ヒドロキ

シ基は不利にはたらいている可能性がある.そこで,これらの化合物の親和性上昇効果 を明らかにする目的で,20 位ヒドロキシ基を欠く誘導体を設計し,その合成法を確立 することにした(Fig. 40).

9.逆合成解析(2)

逆合成解析をScheme 19 に示す.今後22位へオレフィンを有し,種々側鎖部への構 造展開が可能な合成スキームを構築した.すなわち,Scheme 19はGrignard試薬やWittig 反応による種々ホスホニウム塩を変更することで,22 位にオレフィンを有する様々な 側鎖部構築が可能である.