石川島播磨重工業株式会社
*担当事業内容は下記○番号を参照
委託先等名 石川島播磨重工業株式会社
石川島播磨重工業株式会社 横浜エンジニアリングセンター 機械事業本部及び技術開発本部
〒235‑8501 横浜市磯子区新中原町1番地
氏名 所属・役職 担当事業内容
研究実施場所 及び
登録研究員
中西 保 阿部 充 高田 秀一 鵜飼 幸治 佐分 茂 水谷 朋史 遊佐 覚 寺崎 聡 伊東 貴司 飯田 雅
風水力機械設計部 部長
〃 課長
〃 部員
〃 部員
基盤技術研究所機械要素研究部 部長代理 〃 研究員 基盤技術研究所材料研究部 課長 〃 研究員 生産技術センター生産技術開発部 研究員 技術開発本部管理部 部長
①〜⑩の業務管理
①〜⑩の技術管理 ①〜⑩
〃
①、③及び⑩ ①、③及び⑩
②及び⑩
②及び⑩
①、③及び⑩
②
① 高圧水素用ピストンリング、ロッドパッキン材料の調査
② 高圧水素用主要構造材料の調査
③ 水素雰囲気中でのピストンリング、ロッドパッキン材料の磨耗試験
④ 高圧水素条件下での設計法の検討
⑤ 圧縮機ユニットの基本設計
⑥ 圧縮機ユニット部品の基本設計/詳細設計
⑦ 圧縮機ユニットの製作
⑧ 圧縮機ユニットの据付・運転
⑨ 遠隔監視システムの開発
⑩ 圧縮機寿命確認試験及び改良試験
2.3 研究管理の運営管理
回転機械事業部長を委員長とする研究開発委員会で、実施計画・予算・研究成果等を審議
(6 回程度/年)。 社内審査会議では文献調査結果、試験データ、設計検討結果をもとに研究開発レ ビュー及び開発設計レビューを実施(1 回程度/月)。
3.情勢変化への対応
以下に事業開始後、社会的、研究開発上の情勢変化に対する対応を示す。
当初、圧縮機の製作はH17年度に計画していたが、水素インフラに関する研究開発の促進のため 予算を増額し、H16年度に行うことになった。
H16.11.15 詳細設計計算の結果、圧縮機フレーム軸受をオイルレス(グリース潤滑)から油潤滑に変 更。また、圧縮機形式を星型から水平対向型に変更。
Ⅲ.研究開発成果について
1.事業全体の成果
1.1 平成15〜16年度研究の概要
平成15〜16年度は、下記の研究開発を行っている。
① 高圧水素用ピストンリング、ロッドパッキン等摺動部材料の調査
② 高圧水素用主要構造部材料の調査
③ 水素雰囲気中でのピストンリング、ロッドパッキン材料の磨耗試験
④ 高圧水素条件下での設計法の検討
⑤ 圧縮機ユニットの基本設計
⑥ 圧縮機ユニット部品の基本設計及び詳細設計
⑦ 圧縮機ユニットの製作
1.2 平成16年11月までの研究成果
① 高圧水素用ピストンリング、ロッドパッキン等摺動部材料の調査 1)高分子材料における摺動部材調査
摺動部材として用いられる高分子材料としては、汎用の PE からスーパーエンプラ級の PEEKまで様々であるが、いずれの材料においても通常は強化材の充填やアロイ化などの改質 が行われている。高温・高負荷条件における適用の一例として、複写機ではPTFE、PTFE-PPS アロイ、PI、PEEKなどが用いられており、本研究においてもこれらの材料が摺動部材料とし て有望であると考えられる。現在製品化されている主な摺動材料として PI 系のオーラム(三 井化学)、ベスペル(デュポン)および PBI(クラリアント・ジャパン)があるが、オーラム は磨耗量が多いこと、ベスペルは成形法が粉末圧縮のみであり実用的でないこと、PBIは非常 に高価でありコストの面で実用的でないことにより,いずれの材料もそのまま用いることは出 来ない。しかし、オーラムは充填材の改善により特性向上の余地があると考えられる。
2)高圧水素雰囲気下における高分子材料の研究・適用例調査
研究事例については水素ガスの透過に関する事例のみであった。適用事例についてはNAS Aにおける水素関連機器に関する資料よりシール材などへの利用指針に関する情報を得た。本 資料より、特にフッ素系材料をシール部材に用いていることがわかった。しかし、本資料は宇 宙関連機器向けのものであるため長期間に渡る繰り返し負荷については対象外とも考えられ、
この点については今後検討が必要である。
3)ライナ摺動材料の調査
ピストンリング、ロッドパッキンの耐久性向上には、それ自身の材質はもちろん、相手摺動 材料(ライナ、ピストンロッド)も大きな影響を及ぼす。最近では、構造材としての材料の表 面に、コーティング等の処理を施し、摺動特性を向上させることが一般的に行われている。
コーティング等についての調査を行った。調査の対象としたのは、スパッタリング、イオンプ レーティング、DLC系、樹脂含侵表面処理材、離型コーティング、溶射、微粒子ピーニングあ るいはそれらを複合した処理等。その結果、溶射の中でもとくに、WC(タングステンカーバ イド)を半溶融状態の粒子として高速で被コーティング材に激突させて成膜する手法(HVOF、
爆発溶射等)が、高圧のレシプロ圧縮機で主流になりつつあることが確認された。
よって本研究においては、WCのHVOFを摩耗試験に供することとした。このほかのコーティ ングについても、今後検討を進め、有望なものを摩耗試験に供する。
また、DLCが水素バリア性を有することがわかり、摺動特性についても水素環境の影響を受 けにくく良い特性を示すことが予想される。
② 高圧水素用主要構造部材料の調査
高圧の水素に曝される構造部材については水素脆化による損傷が懸念される。このため、水 素圧縮機に用いられる主要構造材料の環境と応力を一覧表にまとめ、文献調査および社外の専 門家からの助言をもとに各材料の水素脆化に関する検討を行なった。その結果、基本的な考え 方として、金属材料に関しては、強度の高い材料は水素脆化し易く、水素環境中での亀裂進展 が著しく加速されることから適用を避けるべきであり、鉄鋼材料の中ではオーステナイト系の 材料が比較的水素脆性能に対する耐性を持つとのことである。
圧縮機の構造材の中では、シリンダの候補材である析出硬化系のステンレス鋼、シリンダライ ナの候補材である鋳鉄系材料、ピストンロッドの候補材である合金鋼、およびバルブの開閉に 用いられるバネのバネ鋼などには注意が必要であることがわかった。これらの材料の中には容 易に代替材を選定できないものもあり、そのような場合には熱処理条件の変更などで水素脆化 を低減させることが必要である。
また、メッキ、溶射などのコーティング材に関しては、コーティング材自身の水素脆化、お よび母材への水素浸入のバリア効果などはよくわかっておらず、今後の課題として検討する必 要がある。
さらに、高圧水素環境に直接暴露され、かつ耐磨耗性の観点から高い強度が要求されるシリ ンダライナ材に対象を絞り、何種類か候補材を選定して比較的高い圧力の水素環境下での基礎 的な材料特性の調査を進めており、以下に述べる摩耗試験結果も考慮し、シリンダライナ材を 選定する。
③ 水素雰囲気中でのピストンリング、ロッドパッキン材料の摩耗試験
水素雰囲気中において、H15 年度では、2 種類の磨耗試験機を用いて摩耗試験を実施した。
全雰囲気試験はピンオンディスク型試験機、卓上型試験は2円筒点接触型試験機による摩耗試 験である。
1)摺動部材試験片および相手摺動材材質
下表に示す摺動部材試験片と相手摺動材(相手材)の組み合わせで試験を行った。
試験片
No. 主成分 相手材
A-1 PTFE A-2 PTFE、Cu A-3 PEEK
特殊鋳鉄 合金鋼 A-4 PTFE、PPS
A-5 PTFE、PPS A-6 PTFE、C、Cu B-1 PTFE、PPS
特殊鋳鉄 合金鋼 WC溶射 2)試験条件
試験条件を下表に示す。
試験機 全雰囲気試験機 卓上型試験機
荷重/面圧 1 MPa 10N
摺動速度 3.5 m/sec 3.5 m/sec 雰囲気ガス 水素ガス(99.99%) 水素ガス(99.99%)
試験時間 20 hr 24 hr
3)試験結果
各種摺動部材(樹脂材料)は、相手摺動材の違いにより、その摩耗特性が大きく変化した。
全ての試験で良好な摩耗特性を示したのはA-5である。この材料はPTFEとPPSを主成分と しており、当面はこの系統の材料の改良を中心に、ピストンリング、ロッドパッキン材料の最 適材を選定していくにした。
4)追加摩耗試験
上記試験結果では、同じ材料組合せでも2種類の試験方法で摩耗量に大きな差が生じた。接 触形態について検討した結果、卓上型試験よりも全雰囲気試験の方が実機に近いと判断し、今 後の試験は全雰囲気試験(ピンオンディスク型試験)のみを実施することとした。
現在、上記試験結果を基に、ピストンリングを対象とした樹脂材とシリンダライナを対象と した相手摺動材に関してさらに以下に示す候補材を挙げ、その中から数種類の材料組合せを抽 出し、追加摩耗試験を進めており、耐摩耗性のよいピストンリング材とシリンダライナの組合 せを選定する。
<樹脂材料の候補材>
A-5改良材(主成分:PTFE、PPS)
PTFE+カーボンファイバー+グラファイト+PEEK
メルトタイプふっ素樹脂ベース材料 特殊ポリイミド材料
オーラムベース材料