第 6 章 非線形光学 59
6.6 n 次の非線形光学現象
一般にn次の非線形光学過程においては,n次の非線形感受率の存在により,角周波数ωi(i=1,· · ·,n) の成分を持つ入射電場により角周波数ωp=∑n
i=1±ωiを持つ非線形分極が発生する。(ここで,±はそ れぞれのiについて+と−のどちらをとってもよいこととする。)その結果,それらの入射電場とωp
の電場との間で混合が起きるので,この過程を一般に(n+1)光波混合((n+1)-wave mixing)と呼ぶ ことがある。このとき入射電場の波数ベクトルをki(i=1,· · ·,n)とすると,非線形分極は波数ベクト ルkp =∑n
i=1±kiを持つ。したがって,この(n+1)光波混合過程によって新たに発生する電場は角周 波数ωr=ωpを持ち,またその波数ベクトルkrがkr=kpを満たすときに,電場が伝搬距離に比例し て大きくなる。すなわち,この場合の位相整合条件は
kr=
∑n i=1
±ki (6.119)
であり,このとき角周波数に関しては,
ωr=
∑n i=1
±ωi (6.120)
が成り立つ。ここで,上の二つの等式の総和における符号は,±のどちらをとってもよいが,krの式 とωrの式とで同じiに対しては共通にする必要がある。
(n+1)光波混合過程を光子描像で考えると,角周波数ωi(i=1,· · · ,n)を持つ光子がそれぞれ消滅し たり生成したりした結果,角周波数ωpの光子が一つ生成されたとみなすことができる。そのように 考えると,式(6.120)は光子の間のエネルギー保存則を,また式(6.119)は運動量保存則を表している。
章末問題
1. 1µmと1.2µmの波長の光を用いた非線形光学効果による波長変換について,以下の問いに答 えよ。
(a) 1µmの光の第2高調波,第3高調波,第4高調波の波長は,それぞれいくらか。また,そ
れらのうち可視光はどれか。
(b) 1.2µmの光の第2高調波,第3高調波,第4高調波の波長は,それぞれいくらか。また,
それらのうち可視光はどれか。
(c) 2次の非線形光学過程のみを用いて第3高調波,第4高調波を発生させるにはどうすれば
よいか。
(d) 1µmと1.2µmの光の和周波の光の波長はいくらか。また,この和周波発生過程に対する
位相整合条件を,それぞれの波長(1µm,1.2µm,和周波)における媒質の屈折率を用い て表せ。ただし,入射光の進行方向は同じとする。
(e) 1µmと1.2µmの光の差周波の光の波長はいくらか。また,この差周波発生過程に対する
位相整合条件を,それぞれの波長における媒質の屈折率を用いて表せ。ただし,入射光の 進行方向は同じとする。
索 引
アーク・ランプ, 29 アイドラー光, 73
アインシュタインのA係数,B係数, 12, 57 アルゴンイオンレーザー, 32
異常光線, 72 異常分散, 47 位相緩和, 55 位相整合, 65, 71 位相速度, 38 1光子吸収, 77 一軸性結晶, 71 1重項, 34 因果律, 42 運動量保存, 72 エキシマー, 33
エキシマーレーザー, 32, 33 エタロン, 27
エックス線レーザー, 35 エネルギー保存, 72 エネルギー密度, 44 LBO, 69
エルビウム添加ファイバー増幅器, 31 遠赤外レーザー, 34
オームの法則, 38
オプトエレクトロニクス, 1 音響光学効果, 25, 28 音響光学変調素子, 28 カー効果, 28
CARS, 79
カー・レンズ効果, 76
カー・レンズ・モード同期, 26, 76 カイザー, 2
回折格子, 27 回転波近似, 53, 56 ガウス関数, 49
化学レーザー, 35 鏡, 27
可干渉性, 4 可視光, 1
過渡的回折格子, 78, 79 過飽和吸収体, 26, 76 GaAs, 69
GaP, 69
緩包絡波近似, 64 緩和, 55
幾何光学, 1
希ガスイオンレーザー, 32 気体レーザー, 32
基本波, 66 逆ラマン効果, 75
キャビティ・ダンパー, 28 吸光度, 46
吸収係数, 41 吸収断面積, 45 吸収飽和, 74, 75, 77 Qスイッチ, 23, 28 Q値, 22
共振器, 16 共振器モード, 17 許容遷移, 53 均一広がり, 49 禁制遷移, 53
金属蒸気レーザー, 34 空間的コヒーレンス, 4 屈折率, 40
クラインマンの対称性, 68
クラマース・クローニッヒの関係式, 42 クリプトンイオンレーザー, 32
群屈折率, 40 群速度, 40 KDP, 69
KTP, 69 光学, 1
光学損傷, 27, 76 光学密度, 46 項間交差, 34 光子, 1, 8 光子描像, 72 光線光学, 1 光速, 1 黒体, 7 黒体放射, 7 固体レーザー, 29 コヒーレンス, 4, 55 コヒーレンス長, 65, 70 コヒーレント, 4
コヒーレント光学過程, 55
コヒーレント・反ストークス・ラマン散乱, 79 コヒーレント・ブリユアン散乱, 74
コヒーレント・ラマン散乱, 74, 79 最高占有分子軌道, 77
最低非占有分子軌道, 77 差周波発生, 65
3重項, 34
3準位レーザー, 13, 16 時間的コヒーレンス, 4 色素レーザー, 34 シグナル光, 73 自己集束, 76 自然放出, 10, 12 実効的感受率, 75
実効的非線形光学係数, 70
自発的パラメトリック下方変換, 73 ジャイアントパルス, 23
自由電子レーザー, 35 縮退因子, 62
縮退四光波混合, 73 縮約表現, 69
シュテファン・ボルツマンの放射法則, 9 受動モード同期, 25, 76
シュレーディンガー方程式, 51 常光線, 72
消衰係数, 40
真空のインピーダンス, 43
真空の誘電率, 36 sinc関数, 64 ZnTe, 69
振動子強度, 48, 57 振動磁場, 43 振動分極, 55
スペクトル広がり, 48 正常分散, 47, 71 石英, 28
摂動, 67 遷移確率, 55
遷移双極子モーメント, 52 線形光学, 59
選択則, 53 双極子近似, 52
双極子モーメント, 36, 47, 52, 55 相互作用ハミルトニアン, 51, 52 損失変調, 25
ダイクロイックミラー, 27 第3高調波発生, 73 第2高調波, 30 第2高調波発生, 65 タイプII位相整合, 72 タイプI位相整合, 72 太陽光スペクトル, 10 多光子イオン化, 78 多光子吸収, 76, 78 多光子蛍光, 78 多光子励起, 78 縦モード, 17
炭酸ガスレーザー, 33
チタンサファイアレーザー, 31, 76 窒素レーザー, 32, 34
チャープミラー, 27 超音波, 28
超高速現象, 77 超広帯域光発生, 76 超短光パルス, 4, 31 定常状態, 51 テラヘルツ波, 1 テラヘルツレーザー, 34
ZnTe, 69 電気感受率, 36 電気光学効果, 23, 28 電気光学変調素子, 28 電気伝導度, 38 電磁波, 1, 36 電束密度, 36 同期励起, 25
銅蒸気レーザー, 32, 34 透磁率, 36
等分配則, 7
ドップラー広がり, 49 ニオブ酸リチウム, 69 2光子吸収, 74, 75, 77 2光子吸収係数, 78 2光子励起顕微鏡, 78 二重性, 1
Nd:YAGレーザー, 30 能動モード同期, 25 波数, 2
波束, 40 発振線幅, 32
発振のしきい値, 19, 20 波動光学, 1
波動方程式, 38, 39 パリティ, 53 半古典論, 51 半値全幅, 49 反転対称性, 53, 60 反転分布, 12, 13 半透鏡, 27
半導体リソグラフィー, 33 半導体レーザー, 35 バンドパスフィルター, 27 BBO, 69
ビームスプリッター, 27 GaAs, 69
光カー効果, 73, 75 光カー・シャッター, 77 光記録, 4
光計測, 4
光整流, 65 光ソリトン, 76 光損傷, 78 光通信, 1, 4 光の吸収, 10 光の強度, 41, 43 光の増幅, 13, 19 光の放出, 11
光パラメトリック過程, 73 光パラメトリック増幅, 65, 73 光パラメトリック増幅器, 73 光パラメトリック発振, 73 光パラメトリック発振器, 73 光ファイバー, 76
光物性, 1 非古典光, 73 非線形感受率, 59 非線形屈折率, 75 非線形光学, 59 非線形光学係数, 66 非線形分極, 59 非調和振動子, 67 非調和性, 67
ファブリー・ペロー共振器, 16, 19, 24 フィルター, 27
フェムト, 25 フェムト秒, 25 フォークト関数, 50 負温度状態, 13 不確定性関係, 49 不均一広がり, 49 複屈折, 71
複屈折フィルター, 28 複素感受率, 5, 39 複素屈折率, 39 複素表現, 5 複素誘電率, 39 物理光学, 1
フラッシュ・ランプ, 29 プランクの熱放射式, 7 プリズム, 27
プリズム対, 27 ブリュースター角, 29 ブリュースター面, 28