Fuel temperature:
300 K 373 K 423 K
Timing: 0.4 msec. ASOI
0.9 msec. ASOI Calculation Experiment
Calculation Experiment
1.3 msec. ASOI
Fig.2.47 Comparison of spray cross section shapes between experiment and calculation at various fuel temperatures
次に,図 2.48 に主噴霧貫徹距離と噴霧幅の実験結果と計算結果の比較を示す.図から高 温燃料噴霧においても噴霧形状を正確に再現できていることがわかる.また,図2.49 に各 温度における SMD を示す.燃料温度が増加するに従い,SMD が減少していく傾向を計算 モデルにより再現できていることがわかる.対象とした全ての条件において,おおよそ実 験値と一致している.これらの結果から,高温噴霧のモデル化が妥当であることが示され た.
0 20 40 60 80 100 120
0 0.5 1 1.5 2 2.5
Time ms Li quid fuel axial/r a dial penetration m m
Cal. Fuel temperature: 373 K Cal. Fuel temperature: 423 K Exp. Fuel tempereture: 373 K Exp. Fuel temperature: 423 K
Main spray axial penetration
Main spray radial penetration
Fig.2.48 Spray characteristics comparison at various fuel temperatures
0 10 20 30 40 50 60
0 0.5 1 1.5 2
Time ms
Sauter Mean Diameter μ m
Cal. Fuel temperature: 300 KCal. Fuel tempereture: 373 K Cal. Fuel temperature: 423 K Exp. Fuel temperature: 300 K Exp. Fuel temperature: 373 K Exp. Fuel temperature: 423 K
Fig.2.49 Sauter mean diameter comparison at various fuel temperatures
2.8.3 冷間始動時燃焼改善の可能性
冷間始動時の燃費性能を向上させるには,燃料の蒸発速度を高めることにより,投入燃 料量を削減することが必要である.また,燃料の壁面付着はスモーク排出を招く一因であ り(34),燃料壁面付着量の削減も望まれる.本節では,これらの項目に着目し,高温燃料が 筒内混合気形成に与える影響とその有効性について考察する.
前節で示した3つの燃料温度条件でDISIエンジンの始動時における噴霧解析を行った.
表2.12に計算条件を示す.始動時を想定し,エンジン回転数は300 rpmとした.計算は,
吸気バルブが0.5 mm開いたタイミングを開始点とし,計算時間を削減するために,噴射時 期を実機の値から多少変更し,噴射開始を339.5 deg. BTDC,噴射終了を316.1 deg. BTDC とした.
Table 2.12 Calculation conditions for cold start condition
Engine speed 300
Fuel Gasoline Start of injection deg. BTDC 339.5
End of injection deg. BTDC 316.1
Injection quantity mg 112.15
Intake pressure kPa 101.325
Intake temperature K 298
Initial temperature in cylinder K 298
Cylinder wall temperature K 298
Number of parcel 40000
Piston B SCV opened
図2.50に各燃料温度における噴射から30 deg.までの燃料噴霧挙動を示す.また,噴射後
20 deg.の気相速度ベクトル図を図2.51に示す.なお,液滴サイズは液滴の質量を表し,気
相速度ベクトル図はシリンダ中心断面における速度ベクトルを表示している.常温燃料で は,主噴霧の巻き上がりや広い噴霧角により,キャビティ内に広く燃料液滴が分散してい る.燃料噴霧の一部はキャビティ内へ導入されず,インジェクタ下方のピストン面に衝突 しているのがわかる.キャビティ内に導入された燃料液滴は壁面に沿ってピストンキャビ ティのリエントラント部に移動し,キャビティ内に生成される大規模な流れに乗ってリエ ントラント部から点火プラグ部周辺へ上昇していく.高温燃料においても,同様の挙動を 示すが,噴霧貫徹距離が長いため,筒内に生成される渦は常温燃料のものと比べて強く,
液滴の移流を促進している.
図2.52に噴射開始後9 ms後の混合気濃度分布を示す.図から,前述したように,高温燃 料の噴霧の蒸発量は多く噴霧貫徹力が強いため,高濃度の燃料混合気が燃焼室内に急激に 広がっていることが確認できる.
Fig.2.50 Spray motion at various fuel temperatures
300K 373K 423K
Fuel temperature:
300K 373K 423K
Fuel temperature:
Fig. 2.51 Velocity distribution on Y2 at various fuel temperatures (Crank angle:
400 deg. ATDC)
Fuel concentration
300K 373K 423K
Fuel temperature:
Fuel concentration
300K 373K 423K
Fuel temperature:
Fig.2.52 Fuel distributions at various fuel temperatures
図 2.53 に各燃料温度における噴射終了直後の付着燃料厚さを示す.噴射された燃料の多 くがキャビティ内に付着し,また,キャビティに付着せずピストンリエントラント部から 上昇した燃料が大量にシリンダヘッドへ付着していることがわかる.また,付着量は燃料 温度が高くなるに従って減少している.インジェクタ噴口近傍に形成される液膜は,キャ ビティ内に導入されずピストン冠面で反射した燃料噴霧や噴口から直接付着したものが原 因であるが,これも燃料温度を上昇させることによって減少する.
300 K 373 K 423 K
Cylinder head
Piston
Wallfilm height m
Fuel temperature:
300 K 373 K 423 K
Cylinder head
Piston
Wallfilm height m
Fuel temperature:
Fig.2.53 Wall film height on cylinder head and piston surface
それぞれ図2.54と図2.55に壁面に付着した液滴を除いた筒内の液滴量と壁面燃料付着量 の時系列結果を示す.図より,燃料温度が高くなるほど噴射直後の蒸発が急激になるため,
初期に液相燃料として筒内に存在する量が少なく,常温燃料が最大で6.2 %であるのに対し て,燃料温度が423 Kの条件では,最大2.5 %程度まで蒸発が促進されていることがわかる.
また,壁面燃料付着量に関しては,IVC近傍の560 deg. ATDCにおいて,常温燃料では全燃
料の75 %程度が壁面に付着しているのに対して,燃料温度が423 Kの条件では34 %程度と
極端に減少していることがわかる.このことから,高温燃料噴霧において,噴霧貫徹力が 増加するにかかわらず燃料の壁面付着量が減少するのは,常温燃料に比べ大量の液滴燃料 が壁面に付着する前に蒸発するためであると推測できる.なお,噴射終了後の付着量がほ とんど減少しないのは筒内壁面温度が低いことによると考えられる.
0 1 2 3 4 5 6 7
380 430 480 530
Crank Angle deg. ATDC
Particle Mass %
300 K 373 K 423 K Fuel temperature:
Fig.2.54 Particle mass at various fuel temperatures
0 20 40 60 80 100
380 430 480 530 580
Crank Angle deg. ATDC
Wal lfi lm Mass %
300 K 373 K 423 K Fuel temperature:
Fig.2.55 Wall film mass at various fuel temperatures
図2.56に蒸発した燃料量の時系列結果を示す.図から明らかなように点火時期付近の710
deg. ATDCにおいて,燃料温度が423 Kの場合は,常温の条件に対して蒸発量が約3倍に増
加している.また,圧縮行程中には壁面付着燃料からの蒸発はほとんどないことから,噴 射初期に蒸発を促進させ,壁面への燃料の付着を減少させることが,点火時期における蒸 発燃料量を増加させるためには有効であると考えられる.
0 20 40 60 80 100
380 480 580 680
Crank Angle deg. ATDC
Total Vaporized Mass %
300 K 373 K 423 K Fuel temperature:
Fig.2.56 Vaporized mass at various fuel temperatures
0 20 40 60 80 100
300 373 423
Fuel temperature K
Mass Fra cti on %
Wallfilm Particles Vapor
Fig.2.57 Fuel status at 720 deg. ATDC
図 2.57 に圧縮上死点における燃焼室内の燃料状態を質量分率で示した.図において,質
量分率が100 %に達していないのは,吸気ポートへ逆流した燃料が存在するためである.図
より燃料温度を300 Kから423 Kに増加させることで壁面付着量は約66 %減少することが わかる.この高温燃料噴霧による燃料壁面付着量の削減は,スモーク排出量の低減につな がる可能性がある.また,燃料温度が300 Kの条件では投入燃料の約18 %が蒸発燃料とし て存在することになる.この条件でエンジンが始動可能であるとすると,423 Kの条件の場 合,蒸発燃料が約58 %であることから,常温燃料に対して投入燃料を1/3程度に削減でき る可能性がある.さらに投入燃料を削減できることは,THC 排出量低減につながることを 示している.
以上のことから,燃料を適正な高温にまで加熱することで,DISI エンジンにおける冷間 始動時の燃費と排出ガス性能を改善できることを明らかにした.