• 検索結果がありません。

SCV による混合気分布の最適化

ドキュメント内 第2章 (ページ 49-59)

各SCV開度における計算結果から,SCVを25 deg.に設定した場合が,両ピストンともに 最も良好な混合気分布を示すことが確認された.なお,SCVはclosedが0 deg.,openedが

90 deg.である.また,SCVが25 deg.での定常流試験でのSRは1.5であった.図2.38に各

ピストンにおける点火タイミング付近の20 deg. BTDCでのY2断面での混合気分布を等当 量比線図で示した.両条件ともに当量比が1.0以上の混合気をスパークプラグ周辺に集めら れているのがわかる.図2.36の同EOIでのSCVがclosedの条件と比べるとスパークプラグ 近傍の当量比1.0以上の領域が広がっている.また,インジェクタ下方への混合気の拡散は 確認されない.次に,図2.39に当量比が0.25以上の領域を示す.ピストンAでは,スワー ル流が減少した影響から排気側へのキャビティ外へ流出する混合気は減少しているが,依 然多量の混合気がピストンキャビティ外へ流出している.一方,ピストン B では,ほぼ全 ての燃料がキャビティ内に留めることができている.

混合気への点火の安定性を把握するために,スパークプラグ近傍の混合気濃度の時間履 歴について比較した.図2.40にスパークプラグを中心とした半径4 mmの球内の当量比の 平均から標準偏差を加減した値を示した.図からわかるように,ピストンA の方が混合気 濃度の時間変化は大きいが,両ピストンとも点火時期相当の30~20 deg. BTDC付近で安定し た値を示した.計算結果から,SCVを最適化することにより,SCVがclosedの場合に比べ 混合気濃度の時間変化は安定する傾向が認められた.しかしながら,ピストンAでは20 deg.

BTDC付近で,下限値が当量比1を下回った.このようにピストン Bの方が,混合気の時 間履歴が安定していることから,点火の安定性においては勝っていると推測される.

次に,HC やスモーク発生の一因となる筒内燃料付着量について比較した結果を図 2.41 に示す.図よりピストンAがBに比べて燃料付着量が増加していることがわかる.これは 先に述べたように,ピストンAのキャビティ深さがBより浅くインジェクタとピストンと の距離が短くなったためと考えられる.

以上の結果から,ピストンAでSCVを最適化した場合,インジェクタ下方側への混合気 の拡散を抑制し,適切な混合気塊をスパークプラグ近傍に形成できるが,キャビティが浅 く,容積が小さいことから混合気塊をキャビティ内に留めることができず,燃料付着量も 増加することがわかった.これらの改善のためにピストンキャビティを深くし,容積を増 加させることが考えられるが,ピストン A はガイドを有しており,圧縮比等の制約から,

容積の増大は困難である.一方,ピストンBではSCVを最適化することにより,良好な混 合気分布を形成し,スパークプラグ近傍平均の当量比の時間変化もピストンAに比較して,

安定した結果となった.また,付着量もキャビティ底面とインジェクタとの距離が長いた めピストンAに比べ減少することが明らかとなった.

このように,混合気をキャビティ内に留めるためには,キャビティ容積を確保する必要 があり,同時に付着量の観点からキャビティ深さも確保することが重要である.

Fig.2.38 Mixture preparation comparison (Crank angle: 20 deg BTDC, Cross section: Y2, SCV: 25 deg.)

Fig.2.39 Comparison of isovolume of equivalence ratio above 0.25 (Crank angle: 20 deg. BTDC, SCV: 25 deg.)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55

Crank angle deg. BTDC

Equivalence ratio @ spark plug A SR 1.5 (-std. dev.)

A SR 1.5 (+std. dev.) B SR 1.5 (-std. dev.) B SR 1.5 (+std. dev.)

Fig.2.40 Spark gap equivalence ratio (4 mm spheres average)

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65

Crank angle deg. BTDC

Wallfilm liquid mass %

A SR 1.5 B SR 1.5

Fig.2.41 Wall film liquid mass

2.7.6 各運転条件における燃費性能比較

ピストン B を対象に,前節までに示した筒内流れ場と混合気の最適化の手法を,各条件 に適用し,運転パラメータを最適化し,実機性能試験を行った.PFIエンジンに対する代表 運転条件でのBSFCの改善割合を図2.42に示す.なお,各条件ともに表2.8に示す排出ガス 基準値を達成した状態で評価を行った.代表運転条件を表2.9に示すが,2500 rpmでBMEP

が450 kPaの条件は,早期噴射で運転している.その他の条件は成層燃焼領域である.全て

の運転条件でPFIの燃費を上回る結果が得られ,特に,ポンピングロスの低減により,低回 転低負荷領域では,10 %以上の改善率を示した.このように,数値計算手法を用いて混合 気挙動を把握し,混合気分布を最適化することは,小型DISIエンジンの開発においても有 効なことを確認することができた.

Table 2.8 Emission target

EINOx g/kg fuel 10

EITHC g/kg fuel 50

EICO g/kg fuel 50

Table 2.9 Evaluation operation points

Number Engine speed rpm BMEP kPa

1 650 Idle

2 1500 189

3 2000 200

4 2000 284

5 2500 331

6 2500 450

0 5 10 15 20 25 30

650/Idle 1550/189 2000/200 2000/284 2500/331 2500/450

BSFC improvement rate for PFI %

Evaluation operation points

Fig.2.42 Fuel consumption improvement compared with PFI engine

2.8 高温燃料噴霧による冷間始動時の燃費及び排出ガス性能の改善

前項までの結果から,成層燃焼を用いることで燃費は大幅に改善した.この結果,さら なる燃費向上のためには,始動時や暖機時での向上が求められる.そこで,本項では高温 燃料噴霧特性を利用して,冷間始動時における燃費と排出ガス性能に関する改善の可能性 について,数値計算により検討した.

2.8.1 高温燃料噴霧特性の把握

燃料温度が噴霧特性に与える影響を把握するために,レーザシート法を用いて噴霧断面 形状計測を行った.表2.10に実験条件を示すが,ここでは雰囲気圧力は,0.1 Paと0.3 MPa とし,燃料温度は,298 Kから423 Kまで変化させて行った.燃料温度は,インジェクタホ ルダ内部に高温のオイルを循環させることで調整している.このため,燃料温度に伴い容 器内温度が表2.10のように変化する.

Table 2.10 Experimental conditions for hot fuel spray cross section visualization

Ambient pressure MPa 0.1, 0.3

Ambient temperature K 298~323

Fuel Iso-octane

Fuel temperature K 298~423

Injector type Swirl injector

Spray angle (design spec.) deg. 50

Static flow rate cc/min 700 (fuel pressure: 5 MPa)

Fuel pressure MPa 5.0

Injection duration ms 1.5

Injection quantity g 0.012

Camera ICCD

Image resolution pixels 384×576

Camera lens UV Nikkor 105mm F/4.5

Optical filter nm (Half band width) Band pass 265 (10)

Light source ND-YAG

Wave length nm 266

LASER power mJ 50

LASER pulse frequency Hz 10

LASER light sheet thickness mm 1

図2.43に雰囲気圧力0.1 MPaでの計測結果を示す.撮影時期は,噴射後1.5 msである.

噴霧形状は,燃料温度が348 K付近までは,常温での噴霧形状と大きな違いはない.一方,

燃料温度が373 K まで上昇すると本研究で用いたスワールインジェクタの特性である噴霧 先端の巻き上がりや先立ち噴霧が確認できるものの主噴霧の円錐形状が崩れ始める.さら

に373 Kを超えて燃料温度を上昇させると,噴霧形状は急激に変化し,燃料温度が423 Kで

は噴霧幅は非常に細くなり,貫徹距離は大きく増加していることが分かる.また,燃料温

度が高い条件では画像輝度が非常に強くなっていることから,噴霧液滴の粒径が小さくな って,噴霧液滴の数密度が増加しているものと推測される.

次に雰囲気圧力が0.3 MPaにおける実験結果を図2.44に示す.雰囲気圧力が高い条件に おいては,燃料温度が低い場合はこれまでに示したように噴射軸付近に噴霧が集まり潰れ た形状となる高圧場での噴霧特性を示す.燃料温度を上昇させると噴霧形状は貫徹距離が 増加するものの,雰囲気圧力が0.1 MPa時のような急激な変化は観察されなかった.

燃料温度に対する噴霧形状の変化を定量的に把握するために,雰囲気圧力0.1 MPaにおけ る主噴霧の貫徹距離,噴霧幅及び初期噴霧角を画像から計測した結果を図2.45 に示す.図 から燃料温度を上昇させていくと370 K付近から急激に変化し,さらに燃料温度を上昇させ

400 Kを超えると噴霧幅と貫徹距離の変化は減少する.

以上のように雰囲気圧力が0.1 MPaの場合,燃料温度が上昇すると噴霧形状が急激に変化 するのは,インジェクタ内部で加圧された燃料が雰囲気場の飽和蒸気温度以上に加熱され,

噴射直後に減圧沸騰が起ったためであると考えられる(35)~(39).イソオクタンの0.1 MPaでの 飽和蒸気温度はおよそ372 Kであり,この温度を超えると減圧沸騰の影響を受け噴霧形状が 急激に変化すると考えられる.一方,雰囲気圧力0.3 MPaの飽和蒸気温度は420 K程度であ るので実験を行った温度域では,減圧沸騰の影響を受けない領域であると考えられる.

Van Der Wege(38)らは,アセトンとシクロヘキサンの実験結果から蒸発過程が噴霧形状に与

える影響を以下の3つの場合に分類した.

A. 噴霧形状は,蒸発により変化せず十分に発達した円錐形状を示す.微小に蒸発した燃料 蒸気が,噴霧中心の流れに乗って中心軸下流に運ばれる.この領域では,噴霧が生成し た流れや液滴分布が支配的である.

B. 燃料温度の上昇により,燃料の物性が温度により変化し噴霧形状にも変化を与えるが,

噴霧形状が崩れるほどの大きな変化には至らない.噴霧形状の変化は,蒸発に加えて燃 料の物性の変化による影響が含まれる.

C. さらに燃料温度が上昇し,減圧沸騰を伴うような急激な蒸発により,噴霧形状は常温で の特徴を留めない.また,インジェクタ近傍での噴霧角は広がり,液滴の粒径は非常に 小さくなる.

実験結果から,本インジェクタ噴霧では,AからBへの遷移域は373 K付近であり,Bか らCへの遷移域は398 K付近であると考えられる.398 K以上の画像の輝度が増加している ことからも減圧沸騰の影響が大きくなっていると考えられる.

ドキュメント内 第2章 (ページ 49-59)

関連したドキュメント