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ドキュメント内 p (ページ 40-46)

写真1 雨水利用国際会議出席者 ブラジル 

ジュアゼイロ● 

リオ・デ・ 

ジャネイロ 

●  ● 

サンパウロ 

大西洋沿岸地方では,多湿な熱帯性気候だ。中間 気温が23〜27℃くらいで,湿度は比較的高く,5 月から11月にかけての乾季の間にも,しばしば夕 立が降る。

ブラジル内陸の高原では,その高度によって気 候はぐっと涼しくなる。はっきりと乾季が存在し,

気温は17.7〜21℃である。

リオから南へ行くと,四季がはっきりし,年間 の気温の変化は大きい。短いが冬もあり,山間地 方ではうっすらと雪が降るところもある。

ブラジル南部は,国内で唯一の温帯性気候に属 する地方だ。小麦の主要産地でもある。

東北部は,国内でもっとも暑く,乾燥した地方 だ。5月から11月の乾季には,37℃以上の気温が 普通であるが,年平均気温は28℃を超えない。こ の地方の降雨は不規則である。いったん降ると,

深刻な洪水を引き起こすことがしばしばある。ま た,東北部の内陸の雨は,ある季節に片寄ってお り,平均年間降雨量は700mm以下である。

国際会議開催地のペトロリーナ市は,ブラジル 最大の商業都市サンパウロから北へ約2,500km離 れたブラジル東北部にある。年間を通して30℃を 超える高温の地域で,年間降雨量は約600mmで あり,7月から9月の冬場には雨はほとんど降ら ない。そうした気候から果物栽培に適し,ブドウ,

マンゴウ,アセロラ,やしの実などが1軒あたり 約50haの大規模農園を中心に作られている。

人口約6万人のペトロリーナ市,隣接する人口 約4万5,000人のジュアゼイロ市では,河川水を

水源とした水道が普及している。水道水を生で飲 む家庭もあるが,スーパーマーケットや商店で売 られているボトル水を買って飲用にする家庭も多 い。スーパーでは,水は20リットルで3.49レアル

(約240円,1レアル=約70円,1999年7月1日現 在)である。

両市の間には,川幅が500mを超え,2,700km以 上の長さを持つサンフランシスコ川があり,豊富 な水量を運んでいる。河川の流域の大規模農家に 対しては,行政がサンフランシスコ川から,かん がい用水を供給している。

川から数十km離れた農村部では,水道が敷設 されていない。場所によって,かんがい用に運ば れた川の水を,素焼きの円筒型壷を使い濾過

して 飲料水にする。素焼きの壷のなかには,粒状セラ ミックスの濾過材が入った,握りこぶし大の円筒 型カートリッジ容器が組み込まれている。

イ ル パ は ,Instituto Regional da Pequena Agropecuaria Apropriada(小規模農家に合った適 正農業の研究所)の頭文字「IRPAA」をとった略 称である。実質的な活動内容からは,小規模な農 業と畜産業とを地域に根づかせる農業支援団体の 一つと考えていいだろう。

イルパは1990年より,ブラジル国内のカトリッ ク系宗教団体から支援を受けながら活動を始め た。ジュアゼイロ市にある事務所建物は2年前に 完成され,14人が専従となっている。そのうち11 3.雨水利用を推進するイルパ(農業支援

団体)の活動

写真2 濾過材が入った素焼きの円筒型壺

3つのポイントを踏まえたブラジル東北部の小規模 農家(第9回雨水利用国際会議資料から)

人が技術専門家である。拠点は,ジュアゼイロ市 とその北部地域だ。農業技術の伝授,農業指導者 の育成,若者の農村流出防止などを目的にしてい る。

その目的達成のため,次のような三つを重要点 に上げる。

①気候と水の管理……気候が農業にどのように作 用するか,その結果を見きわめること。雨期に雨 水を貯めて,乾期に備えること。

②気候に適した畜産……乾期でも適当なえさがあ り,飼いやすい小型のヒツジやヤギを飼育するこ と。

③乾燥地農業……少雨でも育ち,乾燥に強いソル ガムなどの品種を植えること。

屋根に降った雨を貯め生活用水にする「雨水利 用」については,その普及を組織が確立される以 前から行い,貯留用タンク造りの指導者が2人い る。

ジュアゼイロ市の平均年間降雨量は約600mm だが,降雨が不規則でほとんどが雨期の12月から 3月までの4カ月に降る。地下水も限られていて,

高温な気候から水分の蒸発量が多い。こうした背 景を考えた,1年間貯えられる雨水の資源化が,

農村生活を安定させ,都市への人口流出防止の鍵 を握っている。

カンポ・アレグリ・ルールデス市では,5,000 家族中1,800〜1,900の雨水貯留タンク(容量15ト ン)を作った。98年は,ブラジル政府から200基 分の予算が出た。

人口5万人のヘマンスト市では,月予算1万 5,000レアルで容量20トンの雨水貯留タンク30基 を作る。市の予算の3%である。以前は,市の車 が水を運んでいた。これから6年で,全戸に雨水 貯留タンクをつける予定だ。ただし,大きな川の 両端6kmの範囲は川の水を利用できるので,雨 水貯留タンクは必要ないと考えている。

タンク1基の費用について,政府の場合1,500 レアル,個人の場合500レアルかかる。個人のケ ースは住民が共同で作るため,人件費が浮く計算 である。容量15〜20トンの鉄筋コンクリート製雨 水貯留タンクの完成日数は約1週間だ。

イルパの今後の活動の問題点は大きく二つあ る。一つは経済的問題で資金が少ないことである。

州によっては予算が出るが,政府は,大筋ではサ ンフランシスコ川から導水してかんがい用水を供 給したい意向だという。もう一つの問題点は,そ うした政府の考えとイルパの活動が合わないこと だ。

イルパは,活動内容の紹介や雨水利用の知識普 及などを目的にしたカレンダーを作り,広く配布

写真3 モデルハウスと雨水貯留タンク

(ジュアゼイロ市郊外トレーニングセンター)

写真4 地下埋設型雨水貯留タンク

(ジュアゼイロ市郊外トレーニングセンター)

写真5 研修生宿泊所と雨水貯留タンク

(ジュアゼイロ市郊外トレーニングセンター)

している。住民がカレンダーを見て,「私も雨水 貯留タンクが欲しい」と思わせるのも一つのねら いだそうだ。

ジュアゼイロ市郊外にあるイルパの農業指導者 トレーニングセンターには,将来の農業指導者を 育成するための施設がある。教室,農場,雨水利 用を取り入れた農家のモデルハウス,研修生宿泊 所……。

モデルハウスは4人家族用として,屋根面積は 約60m2,平屋の床面積は約50m2である。

このモデルハウス横に,円筒型コンクリート製 雨水貯留タンクが半分地下に埋設される形で置か れている。階段で下りた水槽下部に蛇口が付けら れ,水を汲む場所となっている。水槽上部には,

点検用の蓋が付けられている。

モデルハウスの屋根はレンガ色の波型瓦であ り,トタン製の雨樋がある。屋根に降った雨は,

樋から管を通り雨水貯留槽へ運ばれる。

このモデルハウスの雨水貯留タンク以外に,納 屋横の円周12.9mの卵型コンクリート製雨水貯留 タンク,研修生宿泊所横の2基のコンクリート製 タンクなどが作られている。1基あたり約20トン である。雨水貯留タンクの脇には,タンクの材質 を示すため,タンクの一部分を切りとった形で展 示している。それは,雨水貯留タンク作りの参考 とするためである。鉄筋コンクリートの外側をセ メントで固めた水槽駆体の厚さは,約10cmだ。

海外からの国際会議出席者はトレーニングセン ター内を見ながら,「雨水貯留タンク上部の蓋に 4.イルパの農業指導者トレーニングセン

ター

隙間があり,虫が入って汚染される」「炎天下に 置くのではなく,建物に近づけて,日陰に設置す べきだ」と,感想を述べた。

また,水を処理する素焼きの壷の濾過装置が展 示されている。壷のなかには,上から小石,荒い 砂,木炭,砂の4層が2段に積められて,濾材に なっている。

トレーニングセンターから車で30分ほど走る と,サンフランシスコ川にぶつかる。一帯の農地 の上空には,360度に雲が広がっている。

川の一部にかんがい用の導水場所がある。取水 口から運ばれた川の水は,幅約20mの国営水路を 流れる。50haを超えるような農地をもつ大規模 農家には国が用水路を建設してくれるが,2,3 haの小規模農家に対しての用水路はないという。

各農家に引かれた用水路にはメーターが設置さ れ,量に応じた料金が徴収される。

ジュアゼイロ市でマンゴウ,アセロラ,ブドウ など約60haの農園経営をする日系2世のアナト ーリョ岩田さん(57歳)は,「果物の大規模栽培 には,高温で雨がほとんど降らないほうがいいの です。水分補給はかんがい用水があるから調整が できます。ただし小さい農家は水が運ばれないの で,雨がときどき欲しいと考えています」と話 す。

ペトロリーナ市で同規模の果物栽培をする三村 輝

てるし

さん(67歳)の農園には,水を運ぶゴム管が敷 かれ,自動散水装置が所々に設けられている。

広大なブラジル国内にくまなく水道を敷くこと は難しい。人口が集まる都市では水道が普及して いるが,都市から離れた農村部では水道がないと ころもあり,かんがい用水を生活用水に使ってい るところも多い。

農村の住民の水質に対する衛生知識は,以前は 乏しかった。前出の岩田さんは,「例えば,きれ いな水が溜まった池があるとします。馬を連れた 農夫は,最初に馬を洗い,それから自分の体を洗 い,最後に池の水を口に含んだのです」と,説明 する。

6.ブラジルの水事情と雨水利用の特徴 5.農村のかんがい用水の確保

写真6 かんがい用水路(ジュアゼイロ市郊外)

ドキュメント内 p (ページ 40-46)

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