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Japanese Language & Corporate Culture Symposium

ドキュメント内 23 ヨーロッパ日本語教育 (ページ 60-87)

日本語教育と企業文化シンポジウム

Japanese Language & Corporate Culture

日本語教育と企業文化シンポジウム-- Business Japanese and Corporate Culture Symposium

趣旨説明

平和な世界のための人材育成―ビジネス日本語教育の視点から、経済や企業は、世 界にバランスや平和を作り出すうえで、非常に大きな役割を担っている。グローバ ル化が進めば進むほど、経済や企業の内部には解決しなければならない「経営上の コンフリクト」が増えていき、不平等や世界の秩序に目を向けるという社会的責任 も増していく。日本語を教える/学ぶことで、「異文化間」コミュニケーションに携 わっている人びとは、こうした責任とどのように向き合えばいいのだろうか。BJT ビジネス日本語能力テストやビジネス日本語に関わる専門家と、この責任について ラウンドテーブルで話し合う。

Scientific Committee:シンポジウム企画委員会

Marcella MARIOTTI (UCF) -- マルチェッラ・マリオッティ(ヴェネツィア・カフォ スカリ大学)

Keiko HORII (Musashino University) -- 堀井惠子(武蔵野大学) Executive coordinator: 実行委員長

Akemi HAMADA (University of Tübingen) -- 濵田朱美(テュービンゲン大学)

【パネル1】平和な世界のための人材育成—企業要求とビジネス日本語教育 伊勢田兼之 (在イタリア日本商工会)

『日系企業が求める人材とビジネス機会についての考察』

細田牧 (イタリア三菱商事)

『企業側から見た日本語人材のニーズ』

八田香里 (漢検、ビジネス日本語能力テスト)

『BJTビジネス日本語能力テストが測定する能力とBJTが果たす役割』

奥田純子 (ビジネス日本語研究会)

『ビジネス日本語教育・研究のこれまでとこれから』

【パネル2】ビジネス日本語教育実践の意味—世界各地からの現状報告 ハラルドコンラット (イギリス、シェフィールド大学)

『海外の日本学卒業生における日本への就労準備について』

ウォーカー泉 (シンガポール国立大学)

『シンガポールにおけるビジネス日本語教育の実践と意義』

古崎陽子 (エチオピア、メケレ大学)

『エチオピアにおける日本企業による投資活性化のための架け橋としての日本語教 育の可能性』

ジョーンズ佳子 (イギリス、ロンドン大学SOAS)

『ビジネス日本語コース及びビジネス日本語スピーチコンテストの報告』

高見智子 (アメリカ、ペンシルヴァニア大学)

『米国大学における次世代グローバル人材の育成をめざす教育実践』

日本企業が求める海外人材とは

伊勢田 兼之 在イタリア日本商工会議所

要旨

急速に進む少子高齢化や人手不足など日本を取り巻く環境変化に伴い、成長が期待され る海外市場への投資や、海外の人材を活用した人手不足の解消が、今後の日本企業の成長 を支えるひとつの鍵と見なされている。これに伴い、今後日本企業が求める海外人材像や 能力も急速に変化していくことが推測される。ここでは、筆者の海外留学・駐在の実体験、

ならびに在イタリア日本商工会議所会員企業を対象に実施したアンケートをもとに、海外 に進出している日本企業がいかなる資質を現地人材に期待するかを検証、日本語教育者な らびに日本語学習者の研究・学習活動の一助に資することを期待する。

【キーワード】 日本語教育2.0

Keywords: Japanese Language Education 2.0

1 はじめに

本章では、アンケートの母体となった在イタリア日本商工会議所ならびにアンケートの 概要について触れる。

1.1 在イタリア日本商工会議所

在イタリア日本商工会議所は、日本とイタリア間の経済・通商及び親善交流の推進、会 員相互の交流・協力などを目的としてイタリア・ミラノに1973年に設立された。ローマと トリノにそれぞれ支部を持ち、日本企業の普通会員約 140 社、賛助会員約 60 社、合計約 200社で構成される(2018年7月時点)。

イタリアの主要産業は食品やファッションとのイメージが強いものの、実際には機械な どものづくりに強みがあり、イタリアに進出している日本企業の業種も機械分野が30%と 圧倒的に多いことが見て取れる。

尚、2017年にはヴェネツィア・カ・フォスカリ大学と人材採用に係わる協力協定を結び、

現地学生の日本企業への就職支援にも貢献している。

1.2 アンケート概要

今回のアンケートは在イタリア日本商工会議所普通会員約140 社を対象として 2018年 6 月に実施し、日本語能力を有する現地人材に、どのような職種、資質、能力などを期待 するかを調査した。約2週間と短いアンケート期間であったにも拘わらず、対象約140社 の半数の会員企業より回答があり、日本語能力を有する人材の採用に日本企業が高い関心 を持っていることを裏付ける結果となった。

1.3 筆者経歴

筆者は、日本のメガバンクのミラノ支店長を兼務しており、約50人強の現地人材を統率 している。ミラノ駐在以前は、米国にて大学院留学・駐在、また中東にても5年弱駐在。

これらの経験を通し、各地の現地人とのコミュニケーションや日本語学習者に対するサポ ートの重要性を現場で体感している。ここではアンケート結果に加え、筆者の経験を交え ながら、日本企業が求める日本語能力を有する人材に関して考察していきたい。

2 日本を取り巻く環境と動向

本章では、アンケート結果の考察に先立ち、少子高齢化やそれに伴う人手不足など日本 を取り巻く社会問題が、日本企業の人材ニーズにどのように関わっているかを検証する。

2.1 少子高齢化と人手不足

諸先進諸国と同様、日本は総人口における高齢化率が既に20%を越えており、約50 年 後の2065年には総人口が1億人を下回り高齢化率は38%に達すると予想されている。少 子高齢化による深刻な労働力不足、また総人口の減少による国内消費・国内市場の縮小に より日本国内の経済成長は頭打ちとなると予想されている。

これらはあくまでも推定ではあるものの、日本の企業はこれらのデータを元に将来に備 えた経営戦略の策定を求められている。

図1 総人口と高齢化率の推移

2..2 日本企業の海外市場への進出

日本国内での市場縮小や経済成長の減速を見越し、日本企業は海外市場への進出を積極 的に進めている。日本企業による海外企業の買収案件M&Aの件数は、2008年発生したリ ーマン・ショック後一時的な落ち込みがあったのを除き、毎年ほぼ右肩上がりで増加傾向 にある。

イタリアに限らず海外進出に際し、日本企業は言語のみならず、文化、法制、税制の違 いなど高い壁に直面するものの、企業戦略の一環として海外に出て行かなければならない

のが現実である。

図2 日本から海外への投資(企業買収)

3 アンケートから読み解く採用傾向

成長する市場を求めて加速する日本企業の海外進出と、それに伴う言語や現地規制など の壁を克服するため、現地人材採用の需要、期待は高まっていると考えられる。本章では、

かかる状況下、日本企業がいかなる現地人材を求めているのか、期待する資質は何かを、

上述の在イタリア日本商工会議所会員企業に対して実施したアンケートをもとに検証する。

3.1 アンケート内容

アンケートは、日本語ならびにイタリア語で設問。設問は (1) 日本語能力を有する人材 の採用実績の有無、(2) 商工会議所分科会区分の業種、(3) 採用または採用予定職種、(4) 会 員企業のビスネス・ステージ(進出立ち上げ直後、立ち上げ完了・邦人駐在員トップ経営、

完全ローカル化)、(5) 日本語能力を有する人材の採用にあたり重視または重視するであろ う資質、(6) 経営トップのローカル化の際重視また重視するであろう資質、以上 6 項目に 関し、予め提示された選択肢からのプルダウン形式にて実施された。

本稿では、(3) 採用職種または採用予定職種、ならびに (5)日本語能力を有する人材の採 用にあたり重視または重視するであろう資質、以上2項目に焦点を当てる。尚、全体のア ンケート結果は在イタリア日本商工会議所ホームページ( https://ccigi.org/ja/2018convegno-internazionale-sulleducazioni-della-lingua-giapponese/)にて掲載している。

3.2日本語能力を有する人材の採用

アンケートに協力のあった企業の約半数が、既に日本語能力を有する人材の採用の実績 があると回答。一方で採用実績が無い企業は5割強あり、イタリアでの今後の採用拡大の 余地は十分残されているとうかがえる結果となった。

3.3 採用職種

日本語能力を有する人材を過去に採用した実績がある企業では、「事務職」や「管理部門」

が採用職種の約7割を占めていた。これは日本企業の内部管理体制が厳しい傾向にあり、

本邦本社へのレポートなど日本語でのコミュニケーションが不可欠のため、採用の際に日 本語能力が重視されたものと考えられる。一方、「営業職」、「専門技術職」への採用・配属 は合計でも2割弱と極めて低く、過去日本語能力を有する人材採用にあたっては、邦人駐 在員の補佐的な役割が期待されている傾向があったことが読み取れる。

一方、 今後日本語能力を有する人材の採用を検討中、または採用するであろう職種は

「事務職」が半減し、「営業職」がほぼ3割、「専門技術職」が2割と配属予定の職種のほ ぼ5割を占める結果となった。過去採用実績有りの職種との比較では「営業職」と「専門 技術職」の増加が非常に顕著な結果となった。

図3 採用職種の推移

3.4 採用資質

日本語能力を有する人材を過去に採用した実績がある企業が、採用の際に重視した資質 は、「日本語力」が2割強でトップにあがり、続き「事務能力」2割弱、「協調性」が1割 強と上位3位を占める結果となった。一方「英語力」ならびに「日本文化理解度」は1割 に及ばず意外な結果となった。この結果からも、従来日本語能力を有する人材採用にあた っては、日本語力且つ事務能力の高い、邦人駐在員の補佐的な役割が期待されていたこと が読み取れる。

一方、採用検討中または今後採用するであろう日本語能力を有する人材に求める資質の トップは「専門知識」が2割弱で、採用実績有りの回答結果の2倍以上となり、差が顕著 となった。また重視する資質2位では「日本語力」と「英語力」が1.5割と拮抗し、従来 あまり重視されていなかった「英語力」が「日本語力」と併せて求められるとの結果とな った。

「専門知識」が今後重視する資質のトップにあがった背景は、日本企業が求める現地人 材が従来の日本人駐在員の補佐的な役割から、本業のビジネスを支える中核的・実践的な 役割に変化してきており、期待される能力水準が高まっているものと考えられる。

また「英語力」重視の背景は、日本企業のグローバル化の進行があると考えられる。過

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