700MHz/800MHz/900MHz 帯/
1.5 GHz 帯/1.7GHz 帯/2GHz 帯 200mW
音声通話サービスや、メール・インターネットなどのデータ通信サービスが提供されています。
現在これら携帯電話サービスでは、700MHz 帯、800MHz 帯、900MHz 帯、1.5GHz 帯、
1.7GHz
帯、2GHz 帯の周波数が利用されています。また、近年の携帯電話サービスは複数の方式や周波数を組み合わせてサービスを提供することが一般的です。
表 10 我が国における携帯電話システムの概要
無線アクセス方式 無線周波数 公称最大送信電力
(携帯電話端末)
第
3
世代(W-CDMA)800MHz
帯/900MHz帯/1.5GHz
帯/1.7GHz帯/2GHz帯250mW
第3
世代(CDMA2000)800MHz
帯/2GHz帯250mW
第3.9
世代(LTE)第
4
世代(LTE-Advanced)700MHz/800MHz/900MHz
帯/1.5GHz
帯/1.7GHz帯/2GHz帯200mW
なお、第
2
世代の携帯電話は、携帯電話端末の最大送信電力が800mW
で、現在運用され ている携帯電話に比較して非常に大きな送信電力となっていました。日本では、平成24年7月を もって、全ての第2
世代携帯電話サービスは終了し、以降の携帯電話の最大送信電力は250mW
へと大きく下がりました。これに伴い、携帯電話が発する電波が医用機器等へ与える影響は小さくなっています。
(2)無線チャンネルの確認
携帯電話については無線チャンネルの確認は不要です。
(3)携帯電話の電波環境の確認方法(簡易な方法)
携帯電話の電波は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)に届く基地局からの電波と、携帯 電話端末から発射される電波に分けられます。
医療機関内では携帯電話端末から発射される電波が医用電気機器に影響を与えるおそれが ありますので、この電波の状況を知ることが大切です。
以下に医療機関で実施できる簡易な電波状況を知る方法を記します。なお、この方法は医療 機関内に基地局から届いているおおよその電波の強さの状況を把握し、目安とするものであり、
携帯電話端末が発射する電波の強さを特定することはできません。あくまで、医療機関内で携 帯電話が使えるか否かの傾向を確認する程度のものです。
注)特定の場所における携帯電話の電波の強度を正確に確認するためには、電波調査事業者な どの専門業者が専用の測定ツールを用いて評価する必要があります。詳細は携帯電話事業 者等に相談してください。
【測定の手順】
1.基地局から届く電波の強度は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)に表示されるアンテ ナ本数が目安になります。一般にアンテナ本数が多い場合、その場所では基地局の電波が 強く届いている可能性があります。
2.携帯電話が広く普及した現在、屋外ではアンテナ本数が少ない場所は少なくなってきてい ますが、病院内の手術室や検査室等、金属壁が多くなる建物内では、アンテナ本数が最大 値より少ない状況となる場合があります。
3.病院内での電波状況の傾向を確認するには、病院内の各場所で携帯電話端末に示される アンテナ本数を記録することが最も簡易な方法となります。アンテナ本数を確認するとき は、各場所で携帯電話端末の向きを変えてアンテナ本数の表示が最も少なくなった時の状 況を記録します。
4.病院内の測定場所とアンテナ本数の表示値を合わせて示すと、携帯電話の電波状況のお およその傾向を知ることができます。
【結果の判定】
○アンテナ本数が少ない場所は、携帯電話の電波状況がよくないと考えられ、携帯電話端末
(スマートフォンを含む)から発射される電波の強さは比較的大きくなる傾向にあります。電 波環境を改善する場合は、携帯電話事業者に相談してください。
○近年の携帯電話システムでは、アンテナ本数が多く電波状況がよい場所でも、ベストエフ ォート制御により一時的に携帯電話端末が強い電波を発射する場合があるため、医用電気 機器への影響に注意が必要です。また、電波状況の表示方法は端末機種により異なる場合 があることを考慮する必要があります。
図 34 携帯電話の状況確認結果例(アンテナ表示が最大4本の場合)
(4)携帯電話に関する課題
携帯電話が広く普及したこと、電波に対する医用電気機器の性能が向上したこと、第2世代携 帯電話サービス(現在提供されている第3世代携帯電話サービスに比べて送信電力が大きい)
が終了したことなどから、携帯電話の利用を拡大する医療機関が増加しています。
しかしながら、マナーの問題や医用電気機器への電波の影響が危惧されることから利用に踏 み切れない医療機関も一定数存在します。
医療機関では、建物の構造的な特性(金属が壁・天井・床・扉等で多く用いられている等)に よる電波遮へいの影響により、屋外基地局からの電波が届きにくい場所が存在します。手術室な どでは、特に金属が多用されていることからその傾向が顕著です。このように、電波が届きにく く、受信状況が悪い場合には、携帯電話端末からの送信電力が高くなる傾向があります。ただし、
電波が十分に届き、受信状況が良い場合であっても、携帯電話端末の送信電力は大幅に変わる ことがあります。これは、ベストエフォート制御により、例えば大量のデータを高速に伝送するた めに一時的に携帯電話端末が強い電波を発射する場合があるためで、医療機関での利用におい て注意を必要とします。
図 35 携帯電話の受信状況と送信電力
(図中「1」「2」「3」は携帯電話のアンテナ表示がそれぞれ1本、2本、3本であったことを示し、
記載の無い箇所はアンテナ表示が4本(最大)であったことを示す。)
図 36 医療機関における実測事例
図36は、医療機関での実測事例です。受信レベルが良くなれば、携帯電話端末からの出力電 力が小さくなる傾向があるという結果を示しています。
携帯電話端末が発する電波は、医用電気機器に干渉を与え動作に影響を及ぼすことがあり、
医療機関内での利用においては干渉を回避する対策が必要です。一般に携帯電話端末が発す る電波が医用電気機器に干渉を及ぼしうる距離は、携帯電話端末の送信電力に大きく依存し、
送信電力が小さくなれば干渉が発生する距離も小さくなります。
送信電力が高い場合、医用電気機器への影響も生じやすくなるおそれがあることから、対策が 必要となる場合があります。
影響を低減する対策として通信インフラを整備し受信状況を改善することが有効な方法です が、一般にコストが比較的大きくなることが多く、医療機関における導入時の課題となっていま す。
(5)医療機関における対応策
携帯電話に関する医療機関、携帯電話事業者、他関係機関における取組のフロー図を以下に 示します。
図 37 携帯電話に関する取組(フロー図)
導入にあたっては、関係者の支援を受け、以下のような取組を必要に応じて実施しましょう。
その際、電波管理責任者や電波利用安全管理委員会(仮称)(4-1.及び
4-2.を参照)を中心とし
て部門横断で情報の共有・連携を図ることが望ましいと考えられます。表 11 携帯電話導入の際の取組(医療機関)
導入検討
医療機関での携帯電話サービスの利用にあたっては、各医療機関において以下の点に留意して、携帯電話 サービスを導入することによるリスク判断を含めた検討を行うことが必要です。その際、携帯電話事業者、病 院建設業者等から、サービス提案に加え、技術的支援や情報を受けましょう。
また、各事項について、病院の事情等と比較して対応の可否について検討しましょう。
①利用に伴うメリット、デメリッ ト等の確認
携帯電話の利用に関して、表3のようなメリットとデメリット等があることを 確認しましょう。
②現状の確認 必要に応じて医療機関内の電波状況や医用電気機器への影響の実態を自 ら把握(他病院における導入事例や実測による影響結果を参照することも 有用)しましょう。
③利用したいサービス・利用形 態の検討
院内で利用したい携帯電話サービスの具体的内容を検討しましょう。
④対策方法の検討 ・ 利用したいエリアで携帯電話の電波状況が良好な場合は、特段の対策 は不要です。
・ 携帯電話の屋内用基地局装置(図38)や屋内アンテナ(レピータ、フェ ムトセルなどを含む)(表13)を設置するなどにより医療機関内の基地局 設計を適切に行い、屋内の携帯電話端末の受信レベルを一定以上に向 上(携帯電話端末の送信電力を小さく制限できる)することで、医用電 気機器への携帯電話による影響を低減することが可能です。
注 ) 携 帯 電 話 に 関 す る 技 術 仕 様 が 定 め ら れ て い る 国 際 標 準 規 格
(3GPP)では、携帯電話端末の送信電力を小さく制限するための 送信電力制御に関する機能が規定されています。今後、このような 機能も必要に応じて併せて活用されていくことも期待されます。
・ 基地局設計を適切なものとするためには、屋外基地局などで対処する方 法もありますが、一般に医療機関などの複雑な建物内を広範囲に対処 するには十分な効果が得られない場合があります。また、医療機関ごと に環境や要望が異なり、緻密なエリア設計が必要となるため、対策にお いては携帯電話事業者などの専門業者に相談し進める必要があります。
④必要経費・工期等 導入にあたり必要となる経費(運用時の経費も含む)、工期等について確 認しましょう。