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CWS-NP の全身投与型

がん免疫療法への応用

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【緒言】

BCG生菌の膀胱内注入療法は表在性膀胱がんや膀胱内上皮がんに対して90%近い奏効率 を示してきた最も成功したがん免疫療法である[27, 28]。しかしながら、がんは他の部位に も発生し、様々な症状を引き起こすことから、BCG生菌の膀胱内注入による高い治療効果 を他のがんへ応用できれば非常に有効な治療法になることが予想される。他のがんへ応用 するためには膀胱以外への投与を行う必要があるが、BCG生菌を他の部位へ投与すること で菌血症、さらに細菌性髄膜炎、心内膜炎などの感染由来の深刻な副作用が懸念されること から、BCG生菌の他の部位への応用は不可能である。

BCG生菌の免疫活性化中心であるBCG-CWSは鉱物油とTween 80によってO/Wエマ ルション化され、皮下及び筋肉内投与によりがん患者の生存期間が延長したという報告が ある[37-40]。この報告より BCG 生菌だけではなく、BCG-CWS もがん免疫療法に有用で ある可能性は示されている。しかしながらBCG-CWSのエマルションは静脈内投与できず、

全身のがんへの応用は未だ不可能である。

それに対し、LEEL法によって調製されたCWS-NPは非感染性であり、緩衝液中にて安 定した分散性を有することから静脈内投与が可能である。これにより、これまで膀胱がんに 対して高い実績を挙げてきた BCG 生菌の免疫活性化中心である BCG-CWS を内封した

CWS-NP の全身投与により免疫系を活性化させることで、全身のがんを治療するという画

期的ながん免疫治療法を開拓できると考えた(Figure 2-1)。

第2章ではCWS-NPの全身投与型アジュバントとしての有用性の評価を目的とし、

CWS-NP静脈内投与による免疫活性化および抗腫瘍効果の評価を試みた。

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Figure 2-1 本章の研究概要。BCG 生菌の膀胱内注入療法は最も成功したがん免疫療法であるが感染性 副作用のため、膀胱に限られており静注は不可能である。免疫活性化中心であるBCG-CWSも凝集性及 び難溶性のため静注は不可能である。CWS-NPは非感染性であり、緩衝液中にて安定した分散性を有す ることから静脈内投与が可能である。これにより、これまで膀胱がんに対して高い実績を挙げてきた BCG生菌の免疫活性化中心であるBCG-CWSを内封したCWS-NPの全身投与により免疫系を活性化さ せることで、全身のがんを治療するという画期的ながん免疫治療法を開拓できると考えた。

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【実験結果】

2-1 CWS-NPの血中安定性評価

CWS-NPの全身投与型アジュバントとしての有用性を評価するため、最初にCWS-NP静

脈内投与後の血中安定性の評価を目的とし、血清中での凝集の有無を調べた。CWS-NP を 分散させた5 mM HEPES pH 7.4を用意し、マウスから採取した血清と体積比1:1で混

合し2時間37℃でインキュベートし波長660 nmにおける吸光度の変化を濁度として算出

した。凝集を示すポジティブコントロールとしてDSPE-PEG 2kを抜いた空のリポソーム

(Control NP)を用意した(Figure 2-2 A)。濁度変化量は血清中の濁度をHEPES中の濁 度で除算して計算した。その結果、Control NPでは血清中において約8倍の濁度変化を示 したのに対し、CWS-NPはマウス血清中でもほぼ濁度に変化を示さなかったことから、血 中での凝集を回避でき、安定である可能性が示唆された(Figure 2-2 B)。

Figure 2-2 CWS-NPのマウス血清中での濁度変化。(A)実験手順の概要(B)CWS-NPおよびControl NP の血清中、HEPES中の濁度比較。CWS-NPを分散させた5 mM HEPES pH 7.4とマウス血清を体積比 1:1で混合し2時間37℃インキュベートした。波長660 nmにおけるCWS-NP分散による吸光度の変化 を濁度とし、血清中の濁度÷HEPES 中の濁度=濁度変化として算出した。凝集を示すポジティブコント ロールとしてControl NP :POPC/chol/DOTAP=40/30/30 mol ratioを用いた。n=3 mean±SD **P<0.01 Student’s t test

A

B

36 2-2 CWS-NPの生体内分布

CWS-NPを静脈内投与した際、肺、肝臓、脾臓への分布の割合を調べるため、蛍光色素DiD

で標識したCWS-NPを尾静脈内投与し、1時間後に肺、肝臓、脾臓を回収しそれぞれへの 分布量を蛍光強度より算出した(Figure 2-3 A)。その結果、全投与量のうち、肝臓に約70%

分布し、脾臓に約 14%分布した。一方で肺には殆ど分布が確認されなかった(Figure 2-3 B)。リンパ組織である脾臓へと分布したことから、CWS-NPによる免疫活性化が期待され た。

Figure 2-3 CWS-NP尾静脈内投与による臓器分布。(A)実験の概要(B)各臓器あたりの移行量DiD CWS-NPを尾静脈内投与1時間後に各臓器を回収しホモジナイズした。蛍光強度(λex = 641 nm λem

= 685 nm)を測定し臓器あたりの移行量を算出した。n=3 mean±SD A

B

37 2-3 CWS-NPの脾臓内分布

次に脾臓に分布したCWS-NP の脾臓内細胞への分布を調べるため、CWS-NP投与1時 間後の脾臓内に存在する細胞への分布の割合をフローサイトメトリーにて解析した。本実 験では MHC-II+細胞を抗原提示細胞、MHC-II+CD11c+細胞を樹状細胞とした。その結果、

CWS-NP は全脾臓細胞のうち約 3.3%に取り込まれ(Figure 2-4 A)、そのうち約 96%が

MHC-II+細胞であり、さらに樹状細胞CWS-NPを取り込んだ脾臓細胞のうち約9%であっ

た(Figure 2-4 B)。またMHC-II+細胞のうち、CWS-NPを取り込んだ割合は約6%であっ た(Figure 2-4 D)。それに対し、樹状細胞のうちCWS-NPを取り込んだ割合は約54%と 効率よい取り込みを示した(Figure 2-4 E)。

Figure 2-4 CWS-NPの脾臓内分布。 DiD標識CWS-NPをマウスに尾静脈内投与し1時間後に脾臓を回 収した。脾臓から細胞を取り出し抗体染色しフローサイトメーターで脾臓内の CWS-NP を取り込んだ細 胞の割合を解析した。(A)CWS-NPを取り込んだ脾臓細胞のヒストグラムプロット(B)CWS-NPを取り 込んだ細胞のうち、MHC-II+細胞と樹状細胞(CD11c+ MHC-II+)の割合 (C)脾臓細胞のDensity plot

(D)MHC-II+のうちCWS-NPを取り込んだ細胞の割合 (E)樹状細胞のうちCWS-NPを取り込んだ細 胞の割合n=3 mean±SD

A

B

C

D

E

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2-4 CWS-NPによる脾臓内樹状細胞の活性化評価

CWS-NP を効率よく取り込んだ樹状細胞は強力な抗原提示細胞であり、自然免疫と獲得

免疫の橋渡しを行う[41]。樹状細胞が抗原提示する際、樹状細胞の表面にT細胞を活性化さ せるために活性化マーカーを発現することが知られている[42]。CWS-NP 投与による脾臓 内樹状細胞の活性化評価を目的とし、CWS-NP、CWS-NP

と同組成の空リポソーム(Ctrl-NP)及びVehicle(溶媒のみ)を静脈内投与し、24時間後に脾臓細胞を回収し、樹状細胞

表面の活性化マーカー(CD40、CD80、CD86、MHC-I)をフローサイトメーター用いて評

価した。Vehicleにおける蛍光強度の幾何平均値を1として各サンプルにおける変化量を算

出した。その結果、ヒストグラムプロットにおいてCWS-NP投与により各種マーカーのピ ーク(赤)が右側にシフトした(Figure 2-5 A)。それぞれのピークの蛍光強度の幾何平均 値を基に変化量を算出した結果、CWS-NP投与によりCD40とCD86において有意に発現 が亢進した。またCD80とMHC-Iにおいて有意差は確認されなかったがCWS-NP投与に よって増加傾向が観察された(Figure 2-5 B)。この結果より、CWS-NP投与によって脾臓 内樹状細胞を活性化できることが示唆された。

A B

Figure 2-5 CWS-NPによる樹状細胞活性化評価。(A)各活性化マーカーのヒストグラム(B)各活性化マ ーカーについて、Vehicleを基準とし蛍光強度の幾何平均値の変化量を示したグラフ。CWS-NPをマウス に尾静脈内投与し 24 時間後に脾臓を回収、樹状細胞に発現する活性化マーカーの変動をフローサイトメ ーターにより解析した。n=3 mean±SD *P<0.05 **P<0.01 ANOVA followed by Tukey-Kramer test N.S.:

not significant

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2-5-1 STR-R8修飾OVA封入リポソーム(OVA-NP)の調製

がん免疫反応はがん細胞から放出されるがん抗原特異的なCTLによる細胞傷害反応と考 えられている。CWS-NP静脈内投与による樹状細胞の活性化が確認できたため、抗原特異 的CTLの活性化が期待できた。モデル抗原としてオボアルブミン(Ovalbumin:OVA)を 用いてCTLの活性化を評価するにあたり、CWS-NPとOVAを共投与するために混合した。

その結果、粒子径は1400 nm程度を示し凝集が確認された(Table 2-1)。凝集により粒子 径や電荷に大きな変化が生じることで体内動態に変化が生じ、樹状細胞の活性化に影響を 及ぼす恐れがある。そこでCWS-NPとの凝集を回避するために同じカチオン性を持つOVA 封入リポソーム(OVA-NP)を用いることとした。OVA-NPはSTR-R8 を修飾しているた めカチオン性を持つ粒子径210 nm程度の均一性の高い粒子となった。CWS-NPと OVA-NPを混合した結果、粒子径は232 nmを示した。この結果よりOVAをカチオン性ナノ粒 子化することでCWS-NPとの凝集を回避することに成功した。

Table 2-1 CWS-NPOVAの凝集評価、OVA-NPの物性及びOVA-NPの凝集評価

2-5-2 CWS-NPによるCTL活性化

次に抗原(OVA)特異的CTL活性化の評価を行うため、CTLアッセイを行った。マウス の脾臓細胞を濃度の異なる蛍光色素5-(and -6)-Carboxyfluorescein diacetate, succinimidyl

ester(CFSE)で染色し、片方にモデル抗原としてOVAペプチドを提示させ、2種類の脾

臓細胞を混合した。事前にOVA特異的免疫を付与させたマウスに混合したCFSE染色脾臓 細胞懸濁液を尾静脈内投与し、それぞれの細胞数の変動をフローサイトメーターで計測し、

CTL活性を算出した(Figure 2-6 A)。その結果、OVA-NP単独と比較してCWS-NPを併 用することで有意なCTL活性の増強が確認された。また2回投与することで段階的なCTL 活性の増強も確認された(Figure 2-6 B)。結果より、CWS-NP投与は抗原特異的CTLを 活性化させることが示唆された。

OVA-NP物性 n=3 mean±SD CWS-NP+OVA混合、CWS-NP+OVA-NP 混合 n=1

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