要 旨
国土地理院は,今後の国土の基本的な情報のあり 方を検討するため,平成24年2月に学識経験者等から なる「電子国土基本図のあり方検討会」(以下,「検 討会」という.)を設置した.検討会では6回の会議 を経て,平成25年7月30日に「利用者に価値ある使い やすい電子国土基本図を目指した提言」が取りまと められた.この提言では,電子国土基本図が利用者 にとって価値ある使いやすいものとなるよう,電子 国土基本図のデータの取得,表現,提供,活用の観 点から今後の方策が示されており,これを受けて刊 行された「数値地図(国土基本情報)」や「電子地
形図25000」の内容は,この提言を踏まえたものとな
っている.本稿では検討会における取り組みについ て,この提言を中心として報告する.
1. はじめに
電子国土基本図は,平成21年に定められた第7次 の基本測量に関する長期計画(以下,「長期計画」と いう.)に基づき整備することとされたデジタル形式 の新たな地図である.
長期計画を定めるに当たり,新たな地図情報の体 系を検討するため,平成20年に国土地理院の外部の 有識者からなる「国土地形基盤検討委員会」が設置 された.委員会においては,新図式案の検討,電子 国土等の表現について,専門的な観点から討議がな され,その議論を踏まえ,長期計画においてデジタ ル時代に対応した新たな国土の基本情報としての地 図情報の整備の方向性や,電子国土基本図という名 称が定められた.
その後,平成21年12月より電子国土Web上で試 験公開がなされ,その間並行して整備も進められ,
平成24年7月には,電子国土基本図の位置情報であ る数値地図(国土基本情報)(ベクトルデータ)と,
電子地形図25000(画像データ)が提供されること となった.(画像データは紙地図とは異なり標準以外 の縮尺の出力も容易なことから2万5千分1地形図 に相当する情報レベルを表示するものとして「25000」 を使用している.)
平成24年2月に,電子国土基本図がさらに利用者
に価値のある使いやすいものとなるよう,改善すべ き事項を提言するため,本検討会が設置された.検 討会では,平成24年7月に当面の方向性を提示した 中間提言をとりまとめ,その内容に基づき,新たに 電子地形図や数値地図(国土基本情報)が提供され ている.
またその後,標準的な表現を示すための地形図(印 刷図)の色表現について検討を行うとともに,20万 分の1等,2万5千分の1よりも小さな縮尺で我が 国の基本図たる電子国土基本図として位置づけるべ き地図・データについても,検討を行ってきた.
提言は,検討会の議論を踏まえ,電子および印刷 図としての標準的な仕様や,小縮尺データ・地図と しての仕様を含め,電子国土基本図のあり方につい て検討した内容を提言としてとりまとめたものであ る.
1.1 検討会委員(平成25 年7 月現在,五十音順)
(委員長)
森田 喬 法政大学デザイン工学部都市環境デザ イン工学科 教授
(委 員)
有川 正俊 東京大学空間情報科学研究センター 教 授
池内 幸司 国土交通省水管理・国土保全局 河川計 画課長
今尾 恵介 著述業
太田 弘 慶應義塾普通部 教諭
大場 亨 市川市経済部商工振興課 主幹
重高 浩一 国土技術政策総合研究所 高度情報化研 究センター 情報基盤研究室長 鈴木 厚志 立正大学地球環境科学部 地理学科 教
授
鈴木 雄一 防衛省陸上幕僚監部 運用支援・情報部 情報課 基盤情報班長
関矢 博己 神奈川県県土整備局道路部 道路管理課 長(第4回~)(安田 泰二 神奈川県県 土整備局道路部 参事(~第3回))
田代 博 筑波大学附属高校 教諭
古田 明 海上保安庁海洋情報部 技術・国際課 主
3)電子国土基本図に対する指摘事項と対応の考え方 について
4)中間提言(素案)について 5)今後のスケジュール
第4回 電子国土基本図のあり方検討会
平成24年11月20日(火) 1)電子国土基本図のあり方の検討について
2)電子地形図25000等の対応状況について 3)2万5千分の1の地形図の表現について 4)小縮尺地図のあり方について
5)今後の電子国土Webのあり方について 6)今後のスケジュール
第5回 電子国土基本図のあり方検討会
平成25年3月5日(火) 1)電子国土基本図のあり方に関する検討について 2)電子地形図等の対応状況について
3)電子国土Web.NEXTについて 4)今後のスケジュール
第6回 電子国土基本図のあり方検討会
平成25年7月11日(木) 1)電子国土基本図のあり方に関する検討について 2)電子地形図25000の対応状況について
3)新仕様の2万5千分の1地形図(印刷図)について 4)20万分の1レベル等小縮尺データの対応につい
て
5)電子国土Webにおける対応等について 6)提言について
以上の検討会の議論の内容を踏まえ,電子国土基 本図のあり方検討会としての提言が取りまとめられ た.提言の概要は図-1のとおりであるが、本稿では,
以下,同提言の内容のうち,利用者等からの意見と これまでの対応及び今後の課題を中心に述べる.
2. 電子国土基本図に対する利用者等からの意見と これまでの対応
デジタルデータである電子国土基本図は,平成24 年7月までは電子国土Webの地図としての提供に限 られ,また,その取得基準・表示基準を従来の地形 図から変更した部分がある(この段階のものを「初 期段階の電子国土基本図」という.).
それに対して,利用者から指摘や意見などが示さ れてきたところであるが,その意見の概要や改善方 策の概要は以下のとおりである.
2.1 利用者等からの主な指摘・意見
2.1.1 地形図から初期段階の電子国土基本図への取
得基準の変更
1)取得されなくなったもの:送電線,記念碑,植生
界,短距離の高架部分などがあり,これらについ ては,維持管理が困難であることが大きな要因で ある.
2)新たに整備することとしたもの:踏切など.
3)取得する範囲が変更されたもの:高塔や電波塔に
ついては高さを60m以上に,また土崖については 高さ5m以上かつ長さを500m以上のものに限定し た.表記がある程度厳密に決められたため,新た な課題として,これまで記載されていたもののう ち多くが記載されない問題が生じることとなった.
4)また,市街地の建物については個々の建物を表記
し,総描を行わなくなった.
このように取得基準が変更されたことにより,利 用者から以下の点が指摘されてきた.
送電線:特に目印のない山道における道迷いの懸 念がある.
植生界・記念碑:地域の歴史的・地理的な把握が 困難になった.
土崖:歴史的に著名な地形を含め細かな地形の把 握が困難になった.
高塔・電波塔:目立つものが記入されなくなり自 分の位置が分かりにくくなった.
踏切:踏切位置が誤っているものがある.表記の 必要性も少ない.
総描表現:建物が細かく分かる一方で,見づらい ケースもある.
水準点:一部が表記されていない.(基盤地図情 報に整合する平面位置の精度を有していない もの)
2.1.2 地形図から初期段階の電子国土基本図への表
示基準の変更
表示基準で変更があった主なものは以下の通りで ある.
堰:黒で堰を模式的に表す表現から,青色の破線 となった.
道路:都市域では記号道路の表現から真幅道路の 表現となった.
国道番号:標識記号となり,隠れる部分が大きく なった.
徒歩道:破線の途切れた部分の割合が大きくなり, 連続した道路と捉えにくくなった.
普通建物:黒色から灰色に変更された.
湿地・万年雪:地形図独特の地紋表現からべた塗 りの表現になった.
行政界:鎖線であったのが,緑色の太い線となっ た.
注記:注記の字大・フォントの区分が減り,総称・ 任技術・国際官(第3回~)(鮫島 真
吾 海上保安庁海洋情報部 技術・国際 課 主任技術・国際官(~第2回))
三浦 真紀 国土交通省道路局 国道・防災課長 (オブザーバー)
稲垣 秀夫 (一社)地図調製技術協会 業務執行理事 福島 康博 (一財)日本建設情報総合センター
(JACIC)経営企画部 参事(第6回)(海 津 優 (一財)日本建設情報総合センタ ー (JACIC)システム高度化研究部長
(~第5回))
小竹 正倫 (一社)地図協会 理事長
斉藤 和也 (公財)日本測量調査技術協会 常務理事 篠原 茂明 (公社)日本測量協会 理事 測量技術セ
ンター副所長
三村 清志 (一財)日本地図センター 地図研究所 研究第一部長(第6回)(津沢 正晴 (一 財)日本地図センター 地図研究所長
(~第5回))
溝畑 武生 防衛省陸上幕僚監部運用支援・情報部情 報課基盤情報班
八木 新太郎 (一財)デジタル道路地図協会 (DRM) 特別研究員
1.2検討会における検討の経緯
検討会各回の議事概要は以下のとおりである.
第1回 電子国土基本図のあり方検討会
平成24年2月23日(木)
1)電子国土基本図について
2)電子国土基本図の更新計画(フレッシュマップ 2011)について
3)地理院マップシートの紹介 4)主な指摘事項とこれへの対応
第2回 電子国土基本図のあり方検討会
平成24年3月26日(月)
1)電子国土基本図のあり方に関する検討について 2)オンデマンド地形図について
3)主な指摘事項と対応の考え方 4)今後のスケジュール
第3回 電子国土基本図のあり方検討会
平成24年6月26日(火)
1)電子国土基本図のあり方の検討について
2)電子国土基本図の提供に関する取組状況について
図-1 提言の概要