第 5 章 ZnGeF 6 ・6H 2 O:Mn 4+ 赤色蛍光体の作製と物性評価
5.4 測定結果
5.4.5 Xe lamp 照射による劣化
Fig. 5.10は各laser強度に対する劣化定数を示している。 は以下の式で定義する。
[5.5]
は laser強度IPの増加とともにだんだんと減少していく。 と IPの関係は以下の式で
説明できる。
[5.6]
He-Cd、Ar+、He-Ne laserのαとβの数値はそれぞれα = 6.5 × 104, 4 × 103, 3.3 × 103; β = 0.50,
0.64, 1.66となった。ZnSiF6・6H2O:Mn4+と比較するとαの値は僅かに異なるが、βの値は一
致していた。
5.4.5.1 XRD&PL測定
Fig. 5.12はXe lamp照射前後のXRD&PL測定結果を示している。(a)がXRD測定、(b)
がPL測定結果である。照射時間は5分としたPL測定結果を見ると、Xe lamp照射後では PL強度がおよそ1/100程度に減少していることがわかる。この時、スペクトルは変化しな い。一方でXRD測定結果には変化が見られなかった。この結果よりXe lamp照射前後で 結晶構造の大きな変化はないと推測できる。
5.4.5.2 試料写真
10 20 30 40 50
2 (deg)
XRD intensity (arb. units)
t = 5 min t = 0 min (a)
(110)
(012) (212)
-600 620 640 660
t = 0 min
t = 5 min
×1
×100
PL intensity (arb. units)
Wavelength (nm)
6
6
4
4 3
(b)
Figure 5.12 XRD&PL測定(Xe lamp照射前後)
Figure 5.13 Xe lmap照射前後の試料写真
Fig. 5.13はXe lamp照射前後の試料写真である。(a)はXe lamp照射前の試料、(b)はXe lamp照射後の試料である。照射時間は5分とした。照射前後で試料の色は黄色から少しピ ンクの入った黄色へと変化していた。また、ブラックライト照射時の写真を見ると、Xe lamp 照射後はほぼ発光を示していない事がわかる。
5.4.5.3 拡散反射&光吸収測定
Fig. 5.14はXe lamp照射前後の拡散反射&光吸収測定結果である。光吸収測定結果は拡
散反射測定結果より算出した。図中の黒、青、赤線はそれぞれ ZnGeF6・6H2O、ZnGeF6・ 6H2O:Mn4+ (Xe lamp照射前)、ZnGeF6・6H2O:Mn4+ (Xe lamp照射後)となっている。Xe lamp 照射前では Mn4+に起因する 4A2g → 4T2g、4A2g → 4T1g遷移をそれぞれ~470 nm と~360 nmに観測した。Xe lamp照射後においては明らかに結果が異なることがわかる。特に、~400 nm 以下の紫外領域の吸収が大幅に増加している。また、Mn5+のものとみられるピークを
~2.8 eV付近に観測した。このような光吸収の変化が試料の色の変化を引き起こしたと考え
られる。
1.5 2.0
2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
Photon energy (eV)
R (arb. units)
4A2g→ 4T1g(Mn4+)
3A2g→1T2g(Mn5+)
4A2g→4T2g(Mn4+)
300 400 500 600 700 800 900 1000
×12
×12
(arb. units) Undoped t = 0 min
5 min
Wavelength (nm)
Figure 5.14 Xe lmap照射前後の拡散反射&光吸収測定
5.4.5.4 発光寿命測定
Fig. 5.15はXe lamp照射前後の発光寿命測定である。青線がXe lamp照射前、赤線が
Xe lampを5分間照射した後のデータとなっている。励起光はλex = 355 nm、測定波長は
λem =630 nmで測定を行った。
[5.7]
[5.8]
式[5.7]、[5.8]のexp曲線を使用することでフィッティングを行った。Xe lamp照射前は2 成分でフィッティングできたが、照射後は 3 成分でないとフィッティングできなかった。
それぞれの数値はXe lamp照射前がb1 = 0, b2 = 0.80, τ2 = 0.23 ms, b3 = 0.20, τ3 = 0.45 ms となり、Xe lamp照射後ではb1 = 0.51, τ1 = 0.055ms, b2 = 0.41, τ2 = 0.23 ms, b3 = 0.08, τ3 =
0.45 msとなった。このようにXe lamp照射後では非常に速い成分が現れていることが分
かる。これはMn4+の価数変化による電荷補償によるものと考えられる。
[5.9]
平均発光寿命は式[5.9]を用いて算出した。Xe lamp照射前がτeff = 0.27 ms、照射後がτeff =
0.16 msであった。
0 1 2 3
10-3 10-2 10-1 100
t = 0 min 5 min
PL intensity (normalized)
Time (ms)
em=630 nm
ex =355 nm
Figure 5.15 Xe lmap照射前後の発光寿命測定
5.4.5.5 ESR測定
Fig. 5.16 は Xe lamp 照射前後の ESR 測定結果である。図中の線はぞれぞれ(a)Pure
ZnGeF6・6H2O、(b) ZnGeF6・6H2O:Mn4+ (Xe lamp照射前)、(c) ZnGeF6・6H2O:Mn4+(Xe lamp 5 分間照射後)のデータとなっている。ESR測定においてMn4+イオンはMnの核スピンI = 5/2 に起因した6本の超微細構造線を示す。実際の測定においても(b)、(c)のいずれもMn4+を賦 活した試料では~330 mT付近に6本のピークを観測した。Xe lamp照射後ではピーク強度 が減少していることがわかる。Mn4+の価数変化によりMn3+またはMn5+が生じていたとし てもESR測定においてはMn3+、Mn5+は検出することができない。そのため、この実験だ けではMn4+が何に変化したのかは判断できない。
Xe lamp照射前後の実験において母体結晶の構造変化はない、PL強度のみが劣化して
いくなどより、光照射による劣化現象はMn4+の価数変化が原因であると推測した。具体的 には光酸化による
[5.10]
または、価数の不均化反応による
[5.11]
のどちらか、または両方が発生し、ドープされていたMn4+の量が減りPL強度の減少につ ながったと考えられる。
200 250 300 350 400 450
(a) Pure ZnGeF
6·6H
2O
(b) t = 0 min
(c) t = 5 min
Magnetic field (mT)
E S R s igna l ( a rb. uni ts )
×100Figure 5.16 Xe lmap照射前後のESR測定