EG Ⅲ
不明 1
不明 2
図 34 蒸解スギと稲わらの培養上清の比較(1.稲わら,2.蒸解スギ)
(3)スギ分解微生物群の解析
平成 23 年度に構築した微生物群を平成 24 年度に T-RFLP で解析した。その結果、稲わ らを炭素源とする RS50では、120bp – 180bpに 3本のメインピークがあるが、スギチップ を炭素源とする CC50 では 280bpに大きなピークが見られるなど、群集構造は二者の間で 大きく異なっていた(図 35)。
培養中の微生物群の培養上清のタンパク濃度および酵素活性の測定結果を図 36 に示し た。
バイアル培養液を遠心して、上清液に関して SDS-PAGE を行なった結果を図 37 に示し た。 その結果、世代間の違いはあまり観察されなかったが、基質間におけるプロファイル の違いが観察された。すなわち、スギと稲わら、異なった炭素源に対して異なったタンパ ク質が分泌されていることが明らかになった。
平成24 年10月現在、両者の違いについて、構成する微生物群、および分泌されている タンパクを明らかにするため、詳細な解析を行っている。
85
Pre
2nd
4th
Pre
2nd
4th
図35 微生物集団のTRFLP解析(左:スギ、右:わら)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 2 4 6 8
タンパク濃度(g/L)
キシラナーゼ活性(IU/ml)
日数( 日)
キシラナーゼ活性 タンパク濃度
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 0.5 1 1.5 2 2.5
0 2 4 6 8 10 12
タンパク濃度(g/L)
キシラナーゼ活性(IU/ml)
日数( 日)
キシラナーゼ活性 タンパク濃度
図 36 微生物集団の培養上清の解析(左:スギ、右:わら)
スギ
1st 2nd 3rd 4th 1st 2nd 3rd 4th わら 図37 培養上清のSDS-PAGE
86
(4)糖液の評価
プラントで作成された濃縮糖液について、発酵試験を行うことで評価を行った。実証試 験にあたり早稲田大学でエバポレーターによる濃縮と RO膜による濃縮の検討がされてい
る(図 38)。早稲田で行われていた試験結果を踏襲し、評価試験を行った。評価は合成培
地と実糖液を比較し、発酵阻害の有無で行った。
試験は、高エタノール生産として知られている X-33、Ethanol-red、清酒用の酵母として 知られている Mauriake Fujiの3種類を用いた。結果を図39~41に示した。
いずれの酵母においても、実糖液での発酵阻害は確認されなかった。以上の結果から、
プラントで作成された濃縮糖液は酵母の種類を問わず、エタノール生産に適した物である と強く示唆された。
0 20 40 60
0 20 40 60 80
0 20 40 60
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度(g/L)
0 20 40 60
0 20 40 60 80
0 20 40 60
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度(g/L)
実糖液 ■:グルコース濃度, ●:エタノール濃度, ▲:キシロース濃度 モデル糖液 □:グルコース濃度, ○:エタノール濃度, △:キシロース濃度
図 38 早稲田大学による検討結果(左:RO膜濃縮、右:エバポレーターによる濃縮)
0 10 20 30 40 50 60
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度 (g/ L)
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
時間( h )
濃度 (g/ L)
実糖液 ■:グルコース濃度, ●:エタノール濃度, ▲:キシロース濃度 モデル糖液 □:グルコース濃度, ○:エタノール濃度, △:キシロース濃度
図 39 X-33 による発酵試験(左:糖濃度5%、右:糖濃度 10%)
87
0 10 20 30 40 50 60
0 20 40 60 80
0 10 20 30 40 50 60
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度 (g/ L)
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度 (g/ L)
実糖液 ■:グルコース濃度, ●:エタノール濃度, ▲:キシロース濃度 モデル糖液 □:グルコース濃度, ○:エタノール濃度, △:キシロース濃度
図 40 Ethnaol Redによる発酵試験(左:糖濃度5%、右:糖濃度10%)
0 10 20 30 40 50 60
0 20 40 60 80
0 10 20 30 40 50 60
0 20 40 60 80
時間( h )
濃度 (g/ L)
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
0 20 40 60 80 100 120
0 20 40 60 80
時間(h)
濃度 (g/ L)
実糖液 ■:グルコース濃度, ●:エタノール濃度, ▲:キシロース濃度 モデル糖液 □:グルコース濃度, ○:エタノール濃度, △:キシロース濃度
図41 Mauriake Fujiによる発酵試験(左:糖濃度 5%、右:糖濃度10%)
6-2-4-6 実施期間全体の達成状況・問題点
(1)酵素カクテルによる糖化
提供された蒸解スギについて糖化試験を行い、当初はキシラナーゼ活性が重要と推測し たが、年度を重ねるにつれて、蒸解スギの性状が、いかなる酵素でも糖化可能な性状とな っていることを確認した。
(2)T.reeseiによる酵素の誘導
蒸解スギを炭素源として用いることで、他の基質とは明らかに異なる構成の酵素が誘導 されることが明らかになった。現在分泌酵素の違いについて詳細な検討を行っている。
(3)スギ分解微生物群の構築
スギを堆肥化することを経て、スギ分解微生物群をバイアルにて構築することができた。
スギで構築された微生物群は、稲わらで構築された物とは異なる微生物で構成されており、
また培養上清も異なっていた。これらの違いとスギ分解の関連性については残された期間 で検討を行う予定である。
88 6-3 糖化技術の効率化
6-3-1 実証目的及び課題
糖 化 反 応 の 最 適 化 に よ る 酵 素 使 用 量 の 削 減 は ラ ン ニ ン グ コ ス ト 低 減 の 決 め 手 と な る も のである。そのため、ソーダ蒸解前処理したスギ材に対して活性の高い酵素を大量生産す る技術実証およびソーダ蒸解前処理したスギ材の大型タンクを使った効率的な酵素糖化の 技術実証が必要となっている。
6-3-2 解決方法
酵素の大量生産技術については、実験室での培養条件の確立と実証施設でのオンサイト 生産条件を探ることで解決する。また、酵素生産コスト削減のため、炭素源としてソーダ 蒸解前処理したスギ材を使用する技術を確立する。
酵素糖化反応の最適化については、糖化による C6 糖の収率の向上を図り、コスト低減の ため酵素使用量を削減できる条件を探ることで解決する。また、5000ℓ の糖化・発酵槽を 使ったソーダ蒸解前処理したスギ材の糖化反応を実施することで大型化に伴う問題点を解 決する。
6-3-3 達成目標
オンサイト酵素生産では設備償却を含めずに、エタノール 1ℓ当たりの酵素コスト15円 を目標とする。また、酵素糖化反応では糖化開始時のパルプ濃度を 3.5%以上、糖化時間 72 時間以内、パルプからのC6糖収率を 95%以上となるような糖化技術を開発することを 目標とする。
6-3-4 達成状況及び問題点
6-3-4-1 アルカリ蒸解パルプの実証施設での同時糖化発酵試験および糖化・発酵 工程の分離への変更
平成 21 年度に、実際のプラント製造での問題点を明確にする目的で、実証プラントを 使って同時糖化発酵条件の検討を行った。
9月の実証試験では、投入パルプ固形分 53kg に対して、5.3ℓの市販酵素(ジェネンコア:
GC220)を初期投入し、50℃で反応を開始した。24h後 2.6 ℓ,40h後 2.7ℓ酵素を追加し、
最終的に 10.6ℓの投入とした。また、当初3%スラリーでの運転を想定していたが、1.5%ス
ラリーでの運転となった。糖分析の結果、45h 反応で糖化はほぼ終了し、0.2%グルコース 液を得た。この低い糖化率の原因については、次の3つの点が挙げられる。(1)前処理工 程での未蒸解の木質の除去が不十分であった。(2)糖化・発酵槽での撹拌が不十分であっ た。(3)タンクの壁にパルプが付着し、酵素分解できないパルプがかなり存在した。
この結果を受けて、前処理工程での未蒸解物の除去が適正に実施できるよう対策するこ ととした。また、撹拌効率向上のため、糖化・発酵槽(M-405A)のエアーノズル改造工事 を実施し、撹拌が効率的に行えるように改良した。
また、パルプの撹拌性が非常に低いことから、糖化・発酵槽で運転可能なパルプ濃度の 上限は最大でも5%と考えられた。そのため同時糖化発酵で得られるエタノール濃度は3%
程度と推定された。3%エタノールの蒸留では、エネルギーが大量に必要となるため、製造 工程を同時糖化発酵から、低濃度パルプの糖化、糖化液の膜濃縮、濃縮糖液の発酵という 工程に変更し、このための条件検討を進めた。また、糖化液の膜濃縮のための設備を設置 した。
6-3-4-2 オンサイト酵素生産実証の準備・確認
89
オンサイトでの酵素生産に関しては平成 21 年度から森林総研本所(つくば)で条件検 討を実施するとともに、3 月には酵素のオンサイト生産に供するためのセルラーゼ生産微 生物(Trichoderma reesei)の前培養を北秋田で実施し、微生物の順調な生育を確認し、平 成 22年度以降の酵素のオンサイト生産の準備とした。
6-3-4-3 ジャーファーメンターによるセルロース粉末を炭素源とした酵素生産培 養試験
6-3-4-3-1 植菌量が酵素生産に及ぼす影響
実証プラントでのオンサイト生産では、培養タンクの容量(セルラーゼタンク 1000 ℓ、 C6酵母タンク 500 ℓ)に対して前培養の容量(3 ℓ x 2)が小さいため、本培養開始時の植 菌量を通常の量(5 ~ 10%)よりもかなり減らさざるを得ず、酵素生産菌の生育に影響が出 る可能性がある。そこで実証プラントでのオンサイト生産に先立ち、平成22 年度にジャー ファーメンターを用いて植菌量が酵素生産培養に及ぼす影響を検討した。
酵素生産培養は、前培養(一次培養、二次培養)と本培養からなり、培養液組成と培養 方法は基本的にSchellらの方法(Appl. Biochem. Biotech. (1990) 24/25 287-297)に従った。
一次培養は300 ml容バッフル付フラスコにグルコース(1%)を炭素源とした培養液100 ml を作成して滅菌した後、PDAプレート上のTrichoderma reesei ATCC66589(5 mm角)を植菌 し、温度28℃、旋回振とう200 rpmで行った。二次培養は実証プラントでの操作を再現する
ため、3-ℓ容バッフル付フラスコを用いた。α-セルロース(1%)を炭素源とする培養液1500
mlに、二日間培養した一次培養液(75 ml、5%量)を加え、温度28℃、旋回振とう200 rpm で二日間培養した。本培養は、実験室では3 ℓ容のジャーファーメンター(丸菱バイオエン ジMDN-3L)を用いた。培養液量1500 mlに対し、二次培養液を15 ml(1%量)もしくは75 ml
(5%量)を加えて、回転速度275 rpm、通気量2.0 vvmで酵素生産培養を行った。本培養液 は経時的にサンプリングし、培養上清中のタンパク質量はBradford法(バイオラッド)で、
セルラーゼ活性はGhoseの方法(Pure & Appl. Chem. 59. (1987) 59 257-268)によって測定し た。
酵素生産実験の培養条件と培養液中のタンパク質量を表 19 に示した。植菌量の違いが 最終的なタンパク質生産量に与える影響は無く(条件 1および 2)、植菌量が本培養液量の 1%程度でも酵 素生産に 大きな影響を与 えるこ となくオンサイ ト生産 が可能であると 判断 した。
表 19 ジャーファーメンターによる酵素生産実験の培養条件と培養終了時の タンパク質生産量