1g lignin 3g lignin
0 (-Al) 0 Lignin 1g lignin(前) 5.7 4.1 4.1 1g lignin(後) 5.7 4.1 4.2 3g lignin(前) 5.8 4.2 4.2 3g lignin(後) 5.7 4.1 4.2
175
と化合沈澱して難溶性となることが原因であると知られている。このリン酸の例のよう に、添加したアルミニウムが土壌中の他の養分と化合沈殿する等して、養分が植物 にとって摂取しにくい形態となり、障害が生じた。
c) AlCl3のカウンターアニオンであるCl-の過剰害が発生した。
d) 上記の a)~c) の複合的な要因により障害が生じた。
2.2 塩酸添加土壌を用いた検討
2.2.1 添加HCl量を変えた土壌を用いた実験系の確立
2.1 での検討では添加した塩化アルミニウム量が比較的多かったために、別の障害が発 生した可能性も考えられる。そこで、本実験以降は土に塩酸水溶液を添加して擬似的に酸 性土壌を作りだし、実験に用いることとした。土壌の pH を下げるのに塩酸を用いた理由と して、2.1 で添加した塩化アルミニウムと同じカウンターアニオン(Cl-)を有すること、
および予備実験の結果より、塩酸水溶液を添加した土壌の pH (H2O) は本実験期間内では それほど変動しなかったこと(塩酸の揮発による土壌の pH (H2O) の変動がそれほどなか ったこと)があげられる。
塩酸水溶液の濃度を変えて添加した系でのハツカダイコンの主根の生長量、および土耕 実験前後における土の pH (H2O) の値を、それぞれ図 103および表 41に示す。
図 103 添加HCl濃度を変えた系でのハツカダイコンの主根の生長量
表 41 塩酸添加土壌を用いた系での土耕実験前後における土の pH (H2O)
添加HClの濃度が 0.75 M以降の系では塩酸無添加の系に比べ、根の生長量が有意に抑制 されることが確認できた。また、添加 HCl濃度が 0.75 Mの場合の pH (H2O) の値は、塩化 アル ミ ニ ウム 添 加 土壌 にお い て 根の 生 長 量の 抑制 が 見 られ は じ めた 添 加 AlCl3 溶液 濃 度 0.3 Mの系での値とほぼ同じ値であった。これらのことより、添加HCl濃度が0.75 M 以降 の系で根の生長量が抑制された原因として、下記の 3点が推測できる。
①土壌の低pH (H2O) そのものが原因で、pH (H2O)の値が 4.1近辺まで低下してくると根の 0
1 2 3 4 5 6
0 0.25 0.5 0.75 1
Root elongation, cm
Concentration of HCl, M
HCl 濃度, M 0 0.25 0.5 0.75 1.0 pH (H2O)前 5.7 4.8 4.3 4.1 3.9 pH (H2O)後 5.7 4.9 4.4 4.0 4.0
176 生長量に影響が生じる。
②既往の知見により、黒ボク土では土壌の pHが 5以下になるとアルミニウムが溶出しはじ め、pH 4.5以下になるとその溶出濃度が急激に上昇することが報告されている。本実験 で用いた系では、土壌の pH (H2O)の値が4.1近辺まで低下するとはじめて根の生長量に 害を与えるようなアルミニウム量が溶出してくる可能性も考えられる。
③上記の①と②の複合要因により根の生長量が抑制される。
以降の実験では、根の生長量の抑制が確認された添加 HCl 濃度 0.75 M の系で擬似的に 酸性土壌を調製し、検討を行った。
2.2.2 塩酸添加土壌および改質リグニンを用いた土耕実験
2.2.1 での検討により、塩酸添加土壌においてハツカダイコンの主根の生長量が抑制さ
れる条件が確認できたことより、本実験ではALを添加することにより、ハツカダイコンの 主根の生長量が回復するかを検討した。また比較検討のために、これまでアルミニウム毒 性 の 除 去 に 有 効 で あ る こ と が 確 認 さ れ て い る ア ル カ リ 処 理 オ ゾ ン 酸 化 ク ラ フ ト リ グ ニン
(2.0-O3A、4.0-O3A)を用いた検討も行った。土耕実験の結果を図104、および土耕実験前 後における土のpH (H2O) の値を表42 に示す。
図104 AL、およびアルカリ処理オゾン酸化クラフトリグニン
(2.0-O3A、4.0-O3A)を用いた塩酸添加土壌での土耕実験
表 42 AL、およびアルカリ処理オゾン酸化クラフトリグニン
(2.0-O3A、4.0-O3A)を用いた土耕実験前後における土のpH (H2O) 0
1 2 3 4 5 6 7
Control 0 Lignin
R oot e lon gat ion , c m
Condition
AL 2.0-O3A 4.0-O3A
Control 0 Lignin
AL(前) 5.7 4.1 4.0
AL(後) 5.6 4.0 4.0
2.0-O3A(前) 5.8 4.1 4.0 2.0-O3A(後) 5.7 4.1 4.2 4.0-O3A(前) 5.8 4.0 4.1 4.0-O3A(後) 5.8 4.2 4.3
177
図 104 に示す通り、塩酸添加土壌を用いた系でも AL は根の生長量の回復に効果がない ことが確認された。今回用いたAL は、アルカリ処理クラフトリグニンと同程度のアルミニ ウムとの錯体形成能およびその毒性除去能を有していることをこれまでに報告している。
アルカリ処理クラフトリグニンよりも、よりアルミニウム毒性除去能が高いアルカリ処理 オゾン酸化クラフトリグニン(2.0-O3A、4.0-O3A)も用いて同様に検討した。結果、アル カリ処理オゾン酸化クラフトリグニンを用いた系では塩酸無添加の系(Control)と比べ、
同等程度の根の伸長量が得られた。ただし有意差検定の結果では、2.0-O3A を添加した系
(Lignin)では Control と同程度かつ塩酸添加土壌(0)とは有意な差が確認されたが、
4.0-O3A を用いた系では塩酸添加土壌(0)の根の生長量が良かったために、Control、0、
4.0-O3A添加土壌(Lignin)のいずれも有意な差がないという結果となった。
3. 成果
今回の検討では、アルカリ処理オゾン酸化クラフトリグニンである 2.0-O3A を用いた場 合のみ有意な差で根の生長量の回復が確認できた。
4. 課題(問題点)
AL についてもアルカリ処理およびオゾン酸化を行うことによって、塩酸添加土壌におけ る根の生長量の回復に有効となる可能性が考えられる。塩酸添加土壌での根の生長量の抑 制がアルミニウム毒性によるものとするならば、アルカリ処理およびオゾン酸化が上記の 効果発現に有効である理由として、同処理はリグニンの水溶性の向上に有効であること、
およびアルミニウムとの錯体形成に有効なカルボキシル基を導入できる点があげられる。
これらの効果により、改質リグニンのアルミニウムとの接触効率が向上し、ならびにアル ミニウムとの錯体形成能が向上した結果、アルミニウム毒性除去能が向上したことが推測 できる。
(3)平成24 年度
アルカリリグニンを用いた土壌改良資材の作成に関しては、通常、酸性土壌の改善に石 灰質肥料・資材が使われることから、土壌が酸性のままアルミニウム除去資材を添加して 植物を育てることは少ないものと思われる。こうしたことから、アルカリリグニンを炭酸 カルシウム等の中和剤と比較して緩衝曲線を作成して異なった pH の土壌を調製し植物の 生育試験を実施した。
1. 実験
1.1 土壌前処理とその後の pH確認
実験に用いる黒ボク土(採取地;秋田県鹿角郡小坂町上向高寺)の pH を 4.5 以下にす るため、硫黄を用いて前処理を行った。まず、採取した土壌をよく混合、風乾した後、2 mm のふるいに通し、石や根などを取り除いた。その後、乾土 1 kgに対して1.71 g の硫黄を 添加し、土壌最大容水量の50%となるよう蒸留水を加えてよく混合した。混合した土壌は、
グロースチャンバー内において、無灯下、30℃で3週間養生した。養生した土壌は風乾後、
4 gの土壌に対し蒸留水10 mlを添加し、1時間振とうした。その後、ガラス電極でpH を 測定した。
1.2 緩衝曲線の作成
pH 調整した土壌に必要な中和剤量を算出するため、炭酸カルシウム(CaCO3)、アルカリ リグニン(AL)、水酸化ナトリウム(NaOH)に対する緩衝曲線を作成した。尚、アルカリリ グニンは、スプレードライヤーで乾燥処理したものであり、中和等の処理は全く行ってい
178 ない。
緩衝曲線の作成は、ポリ容器に乾土 5 gを入れ、各中和剤を段階的に加えた後、蒸留水 12.5 mlを加えてよく混ぜてから24時間静置した。尚、CaCO3、ALは粉末、NaOH は溶液を 添加した。静置後、更に 5時間振とうし、細口のシリコン管を連結したエアーポンプを用
い 2 L/分で 1分間の空気を通気後、直ちにガラス電極で pH を測定した。緩衝曲線は、そ
れぞれの中和剤に対し作成した。
1.3 植害回復試験
緩衝曲線から算出した中和剤を、硫黄で前処理した土壌に加えて pH5.0、6.0、6.8の土 壌を調整し、ポットでの食害回復試験を行った。
ポットはノイバウエルポット(樹脂製、内径 11.3 cm、高さ 6.5 cm)、植物はコマツナ
(品種名;新黒葉小松菜)を用いた。なお、コマツナの種については、蒸留水を用いて比 重選別を行った。pH 調整後の土壌水分量については、あらかじめ最大容水量の60%となる よう蒸留水で調整し、その後、1 ポットに土壌を 350 g 充填し、選別したコマツナの種を 25 粒播種した。肥料は、市販の化成肥料(N:P2O5:K2O=8:8:8)を 61.25 mg/ポット施用 した。ポット数は、中和剤を添加しないブランクも含め、2ポット/条件とした。
試験は、20℃及び約 10,000 lux、明期 12時間、暗期12 時間のグロースチャンバー内で 行った。試験期間は21 日間とした。試験期間中の水分調整については、試験開始後10 日 間は減水重量分を蒸留水で給水し、その後は植物の生育に応じて適宜補給した。生育期間 中は記録写真を撮り、21日目に各個体の新鮮重量を計測し平均値を算出した。
2. 結果
2.1 前処理後の土壌pH
硫黄を添加して養生した土壌の pHは4.5であった。
2.2 緩衝曲線
図 105にCaCO3、AL、及びNaOH それぞれの緩衝曲線を示す。緩衝曲線は中和剤によって 異なるものの、CaCO3と AL においてはpH7 程度までは比較的よく似た挙動を示すことが確 認された。図 106より算出した結果、中和剤添加量は表 43の通りとした。