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X, Y 及び Z-cut 基板を用いた SWNT 合成 .1 実験と結果

5.4.4 5.4 節の結論

5.5 X, Y 及び Z-cut 水晶基板の配向メカニズム

5.5.1 X, Y 及び Z-cut 基板を用いた SWNT 合成 .1 実験と結果

X,Y及びZ-cut基板(京セラキンセキ)を用いてSWNT合成実験を行った.それぞれの基 板は同行程のもと製作されており,切削後ポリッシュ加工を行い,精密洗浄として水晶の 溶解度が非常に低いトモリムーブに常温で 5 分間浸すことで微量エッチングされ,その後 RBS5%希釈液,純水で洗浄されている.

それぞれの基板についてアニーリング処理を行っていないものと,大気中900°Cでアニー リング処理を13時間行ったものに,Fe/Co触媒を担持したzeoliteを散布しアルコールCVD 合成を行った.合成されたSWNTを観察したSEM像をFig. 5.18,CVD実験前のそれぞれ の基板表面を観察したAFM像をFig. 5.19に示す.

SEM像から,X-cut基板ではZ方向に配向性をもつこと,またアニーリング行うと若干悪 化していることが観察される.Y-cut基板についてアニーリングする前はまったく配向性を もたないが,アニーリングすると X 方向から少し角度が傾いた配向性をもつことか観察さ れる.Z-cut基板は全く配向性をもたないことが分かる.

(a) X-cut

R3

R4 r3

r4 M4 M3

M

3

r

3

R

3

r

4

R

4

M

4

30° すべて47° 30°

各R, r面の配向方向 Z

Y

(a) X-cut

R3

R4 r3

r4 M4 M3

M

3

r

3

R

3

r

4

R

4

M

4

30° すべて47° 30°

M

3

r

3

R

3

r

4

R

4

M

4

30° すべて47° 30°

各R, r面の配向方向 Z

Y Z

Y

(b) Y-cut

R3 R2

R5 r2

r5 r4

M2 M5 M4

R

3

r

2

R

2

M

4

M

2

M

5

r

4

R

5

r

5

67° 38° 67° 60° 0° 60° 67° 38° 67°

Z X

(b) Y-cut

R3 R2

R5 r2

r5 r4

M2 M5 M4

R

3

r

2

R

2

M

4

M

2

M

5

r

4

R

5

r

5

67° 38° 67° 60° 0° 60° 67° 38° 67°

R

3

r

2

R

2

M

4

M

2

M

5

r

4

R

5

r

5

67° 38° 67° 60° 0° 60° 67° 38° 67°

Z X Z

X

(c) Z-cut

R2 R3 R1 r2

r3 r1

R

1

r

1

R

2

r

2

R

3

r

3

すべて52°

X Y

(c) Z-cut

R2 R3 R1 r2

r3 r1

R

1

r

1

R

2

r

2

R

3

r

3

すべて52°

R

1

r

1

R

2

r

2

R

3

r

3

すべて52°

X Y X

Y

Fig. 5.17 Schematic element images of X, Y, Z-cut crystal quartz surfaces.

第五章 水晶基板のSWNT配向メカニズム 60

AFM像から,X, Y-cut基板では表面の高低差は約1, 0.5 nmと小さいが所々約5 nmの深い 窪みが観察される.また Y-cut 基板のみ表面にステップ構造が見える.Z-cut 基板も表面高 低差は1-2 nmと小さいが,高さ約3 nmの突起形状が観察された.

(a)

20μm 20μm

Y Z Y

Z 20μm20μm

Y Z Y

Z (b)

(c)

20μm 20μm

Z X Z

X 20μm20μm

Z X Z

X (d)

20μm 20μm

Y X Y

X (e)

20μm 20μm

Z X Z

X (f)

Fig. 5.18 SEM images of SWNTs grown on (a, b) X, (c, d) Y, (e, f) Z-cut crystal quartz substrates.

Annealing time; (a, c, e) 0h, (b, d, f) 13h.

(a)

Z Y (a) (a)

Z Y

Z Y

(b)

Z Y (b) (b) (b)

Z Y

Z Y

(g)

0 500

15 20 25

Position(nm)

Height(nm)

(g)

0 500

15 20 25

Position(nm)

Height(nm)

(c)

X Z (c) (c)

X Z Z X

(d)

X Z (d)

X Z Z X

(h)

0 200 400

15 16 17

Position(nm)

Height(nm)

(h)

0 200 400

15 16 17

Position(nm)

Height(nm)

(e)

(e) (f) (f) (f)

(i)

0 1000

0 2 4

Positon(nm)

Height(nm)

(i)

0 1000

0 2 4

Positon(nm)

Height(nm)

Fig. 5.19 (a-f)AFM images of crystal quartz substrates, (a, b)X, (c, d)Y, (e, f)Z.

Annealing time; (a, c, e) 0h, (b, d, f) 13h.

(g-i)Section diagrams of each blue line.

第五章 水晶基板のSWNT配向メカニズム 62

5.5.1.2 X, Y, Z-cut 基板での配向性の考察

X-cut基板について考える.Fig. 5.18のSEM像から分かるように,X-cut基板上での合成 では,Y-cut基板や5.4節のST, R-cut基板に比べアニーリングしてもSWNTの配向性に向上 は見られない.むしろ配向性が若干悪くなっていると観察される.しかもアニーリングし ない場合はST, AT-cut基板と比べて配向性は高いにも関わらず,アニーリング13時間では ST, AT-cut基板に比べ配向性が劣っている.またFig. 5.17で示した結晶面での配向性の考え 方ではカーボンナノチューブはY方向に配向性を持つのに対して,実際はZ方向に配向性 をもつ.これらから考えるに,X-cut 基板だけ他の基板とは異なり,X-cut 基板のカット面 の結晶構造にSWNTをZ方向に配向させる作用があり,アニーリングすることでR, r面が 表面に影響しようとすることでカット面の配向性が悪くなっている可能性が考えられる.

Y-cutについて考える.Y-cutはアニーリングしないと全く配向性を示さなかった.5.5.1節で 説明したように,R面やr面はカット面に対して大きい角度で傾きを持っていて,切削され た後洗浄用微量エッチングされただけでは,カーボンナノチューブを配向させるほどには R, r面は表面に出現していなかったと考えられる.また表面にステップ構造が見えていたこ とから,加工後のY-cut基板の表面はm面[(010)結晶面]のステップ構造であると考えることが できる.しかしアニーリングすることでm面の結晶構造で構成されていた表面にr2, R5といっ た面の影響が現れることでX方向に配向性をもつようになったと考えられる.Fig. 5.20に (010)結晶面(m面)の2層分の原子構造をX軸方向から観察した模式図を示す.Fig. 5.19(h)から Y-cut基板に見られるステップ構造の高低差約0.4 nmであるので,Y-cut基板に見られるステ ップ構造はm面の結晶面1層分であると分かる.しかしFig. 5.20からm面1層分のステップに R, r面がそれぞれ原子3個の高さで存在することが分かる.したがって表面にステップ構造 のm面が現れていても,アニーリングをすることでステップの面構造にR, r面の影響が現れ てくると考えられる.

Z-cutについて考える.Z-cut基板はアニーリングしても全く配向性を示さなかったことか ら,予想されたように表面の現れてくる面の配向作用がそれぞれ打ち消しあって,配向性 が見られなかったと分かる.