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WTO 政府調達協定への加入動向

ドキュメント内 2005年1月12日・午後2時 (ページ 64-98)

第5章  タイの政府調達制度とWTO政府調達協定との整合性

6. WTO 政府調達協定への加入動向

(1)加入検討組織

現在、WTO政府調達協定への加入を正式に検討する、専門の部会及び委員会は設置され ていない。しかしながら、財務省中央会計院(The Comptroller General’s Department, Ministry of Finance)の「Office of Public Procurement Management」の定例会議にて継 続審議中である。

(2)加入の動向

財務省中央会計院(The Comptroller General’s Department, Ministry of Finance)の

「Office of public Procurement Management」では、WTO政府調達協定への加入を視野 に入れ検討しているが、協定加入後のタイのメリットが不明瞭であるとしている。

7.タイの政府調達制度に対する不服申し立て制度

(1)タイの政府調達制度に関する不服申し立て制度の種類

  タイの政府調達に関する不服申し立て制度は、申し立て先の機関によって、大きく3つ に大別される。

①政府調達委員会への不服申し立て

②行政裁判所への提訴

③国家不正防止取締委員会への申告

(2)政府調達委員会への不服申し立て

  政府調達入札に関して、管轄の行政機関または国営企業に対して不服・苦情がある場合、

或いは行政機関または国営企業との契約において紛争が発生した場合は、政府調達委員会 において審議・仲裁する。

同委員会では、唯一「2002年政府調達に関する首相府規則(第6版)」(Regulation of the office of the prime minister on procurement B.E.2545)に基づいてのみ審議し、調停・和 解案を提示するが法的拘束力は無い。行政裁判所もしくは民事裁判所の判決がある場合は、

裁判所の判決が優先される。

  政府調達に関する紛争は、通常同委員会にて解決されることが多い(同委員会談)が、

和解に至らない場合は行政裁判所もしくは民事裁判所へ提訴する。

申し立て先:政府調達委員会(The Procurement Committee)

期限: 無期限 回答: 60日以内

適用法規: 「2002年政府調達に関する首相府規則(第6版)」(Regulation of the office of the prime minister on procurement B.E.2545)

(3)行政裁判所への提訴

  行政機関または国営企業との契約に関する紛争が発生した場合や、行政機関または国営 企業による義務履行の遅れにより認可取得者(契約者・落札企業)が被害を受けた場合は、

主に行政裁判所(The Administrative Court)へ提訴することができる。提訴期限は事件発 生を認知してから90日以内、または行政機関に不服の申し立てを行ってから90日以内と する。

  政府調達委員会への不服申し立てで解決が得られなかった際にも、同委員会からの回答 後90日以内に行政裁判所へ提訴することができる。

  行政裁判所の判決に対して不服がある場合には、最高行政裁判所へ上告することができ る。

提訴先:行政裁判所(The Administrative Court)

期限: 1) 事件発生を認知してから90日以内 2)行政機関に申し立てを行ってから90日以内

3)行政機関から回答を得てから90日以内

適用法規: 「2004年行政裁判所設立・行政訴訟審理法」(Act on Establishment of Administrative Courts and Administrative Court Procedure B.E.2547)の第1章 第9項 (2)及び第4章 第2条 第49項

但し、該当する行政機関または国営企業が民間と同等の組織である場合は、民事裁判所 へ提訴する。

(4)国家不正防止取締委員会への申告

  政府調達に関する入札に関して、行政機関もしくは国営企業が不正を行った疑いがある 場合は、国家不正防止取締委員会(The National Counter Corruption Commission)へ申 告することができると、「政府機関入札の不正に関する勅令B.E.2542(A.D.1999)」に定め られている。この申告は第3者でも可能としている。

  国家不正防止取締委員会にて審議し、不正の疑いが濃厚と判断した場合は、警察機関に 捜査を依頼する。尚、本委員会は申告者に対して報告の義務はない。

申告先:国家不正防止取締委員会(The National Counter Corruption Commission)

期限: 無期限

適用法規: 「政府機関入札の不正に関する勅令B.E.2542(A.D.1999)」

(5)タイの政府調達制度に関する不服申し立て事例

事例1

被告 :  タイ国初等教育員会(中央政府管轄)及び地域初等教育委員会 原告 :  Burana Thong Construction Co., Ltd.(タイ企業)

時期 :  2003年 申立先 :  行政裁判所

内容 :  Burana Thong Construction Co., Ltd. が、小学校校舎建設費用のうち、地 方政府が未払いであった100万バーツと利息15%分の支払いを求め、タイ国初等 教育員会(中央政府管轄)及び地域初等教育委員会を相手取り行政裁判所へ訴訟 を起こし勝訴した。

事例2

行政機関:  首都圏電力公社(MEA)

申立者 :  Sumitomo Corporation Thailand Ltd.

時期 :  2003年

申立先 :  政府調達委員会

内容 :  首都圏電力公社(MEA)の地中線敷設プロジェクト(JBIC85%)において、

同社が過去の入札実績により指定があり入札準備をしたが、テクニカルプレゼン テーションで基準逸脱とされ失格となった。失格通知に不服申し立てが出来るよ う記載があった為、政府調達委員会へ申し立てを行ったが、委員会から回答期限

(60日)を過ぎても回答がなく、追求したところ15日後に返答があった。内容は、

「入札失格の結論を出すに至る審議経過は、全てタイの法律に基づいて公正に審 査された結果である」との回答であった。同社は現在2回目の不服申し立てを行 っている。同社は行政裁判所への提訴までは望んでいない。政府調達委員会に対 しては、「第3者機関ではないので、公正な審議・対応は行われていない」と感じ ている。

事例3

被告 :  タイ国家警察

原告 :  原告より公開しない旨要請 時期 :  2003年

申立先 :  行政裁判所

内容 :  タイ国家警察の爆発物処理車両購入プロジェクトの入札に絡み、審査・落札 に不正があったとして、タイ国家警察を相手取り行政裁判所へ提訴した。現在審 理中。

参考

行政機関:  TOT Communication Public Co., Ltd.(旧タイ電話公社)

申立者 :  シーメンス・タイランド 時期 :  2005年

申立先 :  行政裁判所(2005年3月10日現在、未告訴)

内容 :  シーメンスがTOT Corporation Public Co., Ltd.から75億バーツで2004年に 落札した一般電話回線増設事業に関し、政府が電子入札による再入札を仄めかし たため、シーメンスが行政裁判所への訴訟の可能性ありと示唆した。(2005 年 3 月10日現在、提訴には踏み切っていない。)

8.タイの政府調達制度に対する日系企業の不満及び被害例

(1)タイの政府調達制度に対する日系企業の捉え方

本制度に対する捉え方は、日系企業の中でも意見が分かれる。政府からの一次受け企業 となる落札企業では、カウンタートレード要求やローカルコンテンツ要求が存在するため に、かなりの負担となっている。入札への参入を辞退する事例もある。

これに対して、カウンタートレードで輸出品目を取り扱う日系商社では、営業上のメリ ットがあり、本制度の現状継続を願っている。

(2)タイの政府調達制度に対する制度上の不満

  日系企業が抱える本制度に対する制度上の不満として、入札の中止、条件の変更、入札 後の価格交渉などが挙げられる。

  以下に、日系企業から取材した本制度に対する不満点を列記する。

入札が突然中止になったり、条件が変わったり、外資参加企業を露骨に降ろすといった ことも決して少なくはない。電子入札のシステム不備でも、却下されたことがある。こう いったケースを防ぐことは非常に難しく、一企業の契約問題に日本政府関係が口を挟むわ けにも行かず、相手に合わせて上手くやってゆくほかはない。(日系商社)

入札最終段階になって、突然 e-オークションに切り替わることがある。ビッドしてから 価格を下げていく手法で、タイ側には価格メリットが発生するのは理解できるが、外国企

業は、本社から与えられている権限から、判断が遅れることがしばしばで、圧倒的に不利 である。今後e-オークション対策せねばならない。(日系商社)

政府(管轄行政機関)の目論見とはずれた入札が途中で中止されたり、再入札になった りするアンフェアな部分が垣間見られる。その度に、準備にかかった費用が無駄になり、

損失を蒙ることがある。ただし、入札の中止や再入札は要綱に記載されており、法的には 対抗できない。(不服申し立て制度は詳しく知らず、活用したことがない。)(日系商社)

政府主催の調達には、入札専門企業がおり参入しにくい。専ら、半官半民のプロジェク トに参加している。(日系繊維)

落札後に様々なネゴシエーションがあり、独特の商習慣に戸惑うことが多い。(日系商社)

制度そのものに対する大きな不満はないが、円借款やJBICプロジェクトを復活させて欲 しい。(日系建設)

円借款等のプロジェクトでは日系企業を有利にして欲しい。また税制面での恩典をはっ きりさせて欲しい。還付VATの支払いが極めて遅く、問題である。(日系建設)

(3)ローカルコンテンツ要求及びカウンタートレード要求に関する不満

  ローカルコンテンツ要求に関する問題点として、タイ製品を使用することで自社の製品 やサービスの品質を保てない等の事由により、入札を躊躇または辞退するケースなどが挙 げられる。

カウンタートレード要求に関する問題点として、販売に困難な製品を指定させるなど、

請負先の商社としても扱いに苦慮することが挙げられる。

  以下に、日系企業から取材した、ローカルコンテンツ要求及びカウンタートレード要求 に対する問題点・被害事例を列記する。

直接カウンタートレードの契約をしたことは無いが、建設業など他業種の調達時に締結 されるカウンタートレード契約の支援をするケースは頻繁にある。従って商社としては、

営業上のメリットがあり、将来的にも無くなって欲しくない制度である。但し、対象とな るタイ商品に関しては、タイの政策でその都度変わっていくが、極めて売りにくい商品も あり、扱いに困ることもある。その場合該当分野に得意な商社まで話が回って行く。(日系 商社)

ローカルコンテンツの要求自体による被害は無いが、鉄鋼・タイルなどタイでは未熟な 分野も含まれており、想定するクオリティ・スペックを満たしていないものまで、ローカ

ドキュメント内 2005年1月12日・午後2時 (ページ 64-98)

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