3. ω 水酸化脂質による涙液バリア形成機構の解明
3.2. 結果
3.2.7. Tg-Cyp4f39 −/− マウスにおける CE および WE 量の増加
Cyp4f39の欠損によるOAHFAおよびOAHFA代謝物(Type 1/2ω WdiEと
Chl-OAHFA)以外のマイバム脂質産生への影響を明らかとするために,コントロー
ルマウスと Tg-Cyp4f39−/−マウスのマイバム脂質を順相系の薄層クロマトグラフ ィー(TLC)によって分離した。順相系 TLC では,薄層板表面のシラノール基 との相互作用によって,極性物質がより強く保持されるため,疎水性の高い物質 の移動度は大きくなる。本研究では,マイバム脂質全体を分離するための展開系
(展開系1)とCEやWEといった疎水性の高い脂質の分離を目的とした展開系
(展開系2)の2種類の展開系を使用した。分離の結果,CEやWEはいずれの 展開系でも最も移動度の大きい位置に検出されたことから,マイバム脂質の中 でも最も疎水性が高い脂質クラスであることが確認された(図 26A)。一方の
OAHFAはChlやリン脂質などの高極性脂質と同様に,いずれの展開系でも移動
度は小さかった。OAHFA代謝物については,代謝物間で分離はほとんどみられ ず,CE/WEとOAHFAの中間の移動度の位置に検出された。したがって,WdiE
やChl-OAHFAはCEやWEとOAHFAの中間程度の極性を有していると考えら
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図 25. Tg-Cyp4f39−/−マウスマイボーム腺における Type 1ω WdiE および
Chl-OAHFAの消失
(A,B)12ヶ月齢のコントロールマウス [Tg-Cyp4f39+/+(n=3)] とTg-Cyp4f39
−/−マウス(n=3)のマイボーム腺から脂質を抽出し,Type 1 WdiE(A)および Chl-OAHFA(B)についてLC-MS/MSによるMRM解析を行った。Type 1 WdiEを構 成するFA,水酸化FA,FAlおよびChl-OAHFAを構成するFA,水酸化FAの総 炭素数と総不飽和度ごとのピーク面積(A, B 左図)とピーク面積の合計(A, B 右図)を示す。グラフの下に各脂質クラスの簡略化した構造を示す。グラフの値 は平均値±標準偏差を示し,Student’s t-検定によって有意差を求めた。*P<0.05;
**P< 0.01; nd, not detected
れる。
TLCによるマイバム脂質の分離と検出の結果,CEとWEについてTg-Cyp4f39
−/−マウスでコントロールマウスよりも増加がみられた。そこで,増加している分 子種の詳細を明らかとするために,CE について LC-MS/MS による解析を行っ た。コントロールマウスにおいてはC16–30 の飽和 FAおよび C16–36 の一価不 飽和FAを含むCEが検出された(図26B)。一方のTg-Cyp4f39−/−マウスにおいて は,多くの分子種がコントロールマウスよりも多く検出され,CEの総量ではコ ントロールの約1.7倍に増加していた。また,特に一価不飽和型の≥C32のFAを 含む分子種について顕著な増加がみられた。この結果は,≥C32 FA が通常は
Cyp4f39 の基質として使用されるのに対し,Tg-Cyp4f39−/−マウスにおいては,
Cyp4f39の欠損によってこれらのFAがω-ΟΗ FAとならずに,CE合成に使用さ
れたためと考えられる。
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図26. Tg-Cyp4f39−/−マウスマイボーム腺におけるCEとWEの増加
(A)12ヶ月齢のコントロールマウス(Tg-Cyp4f39+/+)およびTg-Cyp4f39−/−マウ スの眼瞼からマイバム脂質を抽出し,展開系 1 [hexane/diethyl ether/acetic acid (90:25:1, v/v)] または展開系2 [hexane/toluene (1:1, v/v)] を用いてTLCによる分 離を行い,銅リン酸試薬による検出を行った。アスタリスクは未同定の脂質分子 種を示す。(B)12 ヶ月齢のコントロールマウス [Tg-Cyp4f39+/+(n=3)] と
Tg-Cyp4f39−/−マウス(n=3)のマイボーム腺から脂質を抽出し,CE 分子種について
LC-MS/MSによるMRM解析を行った。CEを構成する FAの総炭素数と総不飽
和度ごとのピーク面積と,図中にピーク面積の合計を示す。グラフの下にCEの 簡略化した構造を示す。グラフの値は平均値±標準偏差を示し,Student’s t-検定 によって有意差を求めた。*P<0.05; **P< 0.01; TG, トリアシルグリセロール; PL, リン脂質
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