2. ω 水酸化脂質による皮膚バリア形成機構の解明
2.4. 材料と方法
2.4.1. Cyp4f39−/−マウスの作製
Cyp4f39−/−マウスは,CRISPR/Cas9 システムを用いて作製した。Cyp4f39 遺伝 子のエキソン11内にPAM(Protospacer Adjacent Motif)配列に隣接する23塩基 のガイド RNA 標的配列を設定し,最終的に Cas9タンパク質による切断の標的 となるように,ガイドRNA標的配列を含むプライマーペア(f1およびf2; Table 1)を設計し,アニーリングさせたものを,ガイドRNAとCas9タンパク質を共 発現させる CRISPR/Cas9 ベクターである pX330(Addgene, Watertown, MA)の BbsⅠサイトにクローニングした。このプラスミドを C57BL/6J マウスの受精卵 に注入し,仮親へ移植した。産道感染の可能性を排除するため,帝王切開して蘇 生した新生仔を里親に育てさせた。産仔の尾からゲノムDNAを抽出し,エキソ ン 11 の標的配列周辺を増幅するプライマーを用いて PCR を行い,増幅断片の シークエンス解析を行った結果,32 塩基が欠失し,フレームシフトによるナン センス変異が生じた個体が得られた。このマウスを C57BL/6J マウスと交配し,
Cyp4f39+/−マウス系統を確立した。Cyp4f39−/−マウスは,Cyp4f39+/−マウスを交配 することで作製した。マウスのジェノタイピングはマウステールから抽出した ゲノム DNA,プライマー(p1 および p2; 表 1)を用いて PCR による増幅のの ち,制限酵素AflⅢで処理することで確定させた。CRISPR/Cas9システムによっ て欠損した32塩基中にAflⅢサイトが含まれているため,Cyp4f39−/−マウスに由 来するPCR産物を制限酵素処理した場合,AflⅢによる切断が生じないことを利 用している。
2.4.2. マウスの飼育
マウスの飼育は,SPF環境下,室温23 ± 1 °C湿度50 ± 5 %,12時間毎に明/暗 のサイクルを繰り返す条件で行い,摂餌と給水は自由に行える状態で行った。妊 娠可能な雌を一晩雄と同居させて交配を行い,翌日の正午に雄を別のケージに 移し,この時点を胎生 0.5 日とした。胎生 18.5 日で帝王切開により胎仔を摘出 し,蘇生を行ったのちに解析に使用した。動物実験はすべて,北海道大学動物実 験委員会の規定に従い行った。
2.4.3. 皮膚バリアアッセイ
経表皮水分損失量の測定は,胎生 18.5日の時点で帝王切開により摘出した仔 マ ウ ス の 背 部 に 対 し て , 生 存 し た 状 態 で 経 表 皮 水 分 蒸 散 計 AS-VT100RS evaporimeter(Asahi Biomed, Yokohama, Japan)を用いて閉鎖式チャンバー法にて 行った。
トルイジンブルー観察は,胎生 18.5日の時点で帝王切開により摘出した仔マ
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ウスをメタノールに5分間浸したのち,PBSでリンスした状態で0.1 %(w/v %) トルイジンブルー溶液で 30 分間染色を行った。染色後,PBS で再度リンスし,
観察に使用した。
2.4.4. 皮膚の形態観察
ヘマトキシリン/エオジン染色は,胎生18.5日の時点で帝王切開により摘出し た仔マウスの背部の皮膚を使用した。マウスから剥離させた皮膚を10 %中性緩 衝ホルマリン溶液(pH 7.2)で48時間室温にて固定した。固定した皮膚をメタ ノールで脱水したのちキシレンで洗浄し,密閉式自動固定包埋装置(Tissue-Tek
VIP-6; Sakura,Torrance,CA)を使用してパラフィンを浸透させた。これをパラ
フィンブロック包埋装置(TEC-P-DC; Sakura)によってブロック化した。皮膚の パラフィンブロックを,ミクロトームREM-710(Yamato Kohki,Asaka,Japan) を使用して切断し,4 μmの切片を作製した。切片は自動染色装置(Tissue-Tek DRS
2000; Sakura)を使用してキシレンとエタノールで脱パラフィン処理,水洗のの
ちヘマトキシリン/エオジン溶液で染色し,再度エタノールとキシレンで脱水し た。染色された切片はLeika DM5000B microscope(Leica Microsystems,Wetzlar, Germany)を用いて明視野観察を行い,DFC295 digital color cameraで撮影した。
透過型電子顕微鏡解析は,胎生 18.5日の時点で帝王切開により摘出した仔マ ウスの背部の皮膚を使用した。剥離させた皮膚を5 %グルタルアルデヒド/0.1 M カコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)に浸し,4 °Cで72時間固定した。固定 した皮膚は0.1 Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)で一晩さらに固定した のち,1 % OsO4/0.05 Mカコジル酸緩衝液(pH 7.4)で60分および0.5 % RuO4で 30分処理した(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)。固定した皮膚をエタ ノールと酸化プロピレンで段階的に脱水し,Epon 812 resin(Taab Laboratories, Berkshire, United Kingdom)に包埋したのち,70 °Cで4日間処理した。これを厚
さ 70 nm の超薄切片に切断し,酢酸ウラニルとクエン酸鉛で染色した。切片の
解析はJEM-1400Plus(JEOL, Tokyo, Japan)で行った。撮影はCCD camera(EM-14830RUBY2; JEOL)で行った。
2.4.5. 表皮脂質組成解析
脂質抽出は,胎生 18.5日の時点で帝王切開により摘出した仔マウスの背部の 皮膚から行った。剥離させた皮膚は,600 μLのPBSに浸し,55 °Cで3 分間加 温したのち,ピンセットを用いて表皮と真皮を分離した。採取した表皮10–20 mg を乾熱滅菌したホモジェナイザーにいれ,2 mL の chloroform/methanol/water
(30:60:8, v/v/v)を加え,約10分間粉砕操作を行った。抽出物を50 °Cで15分 加温後,800 × gで15分遠心し,上清を回収した。抽出操作を3回行い,上清は
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すべてまとめた。集めた上清に4.8 mLの水を加え,二層分配を行った。800 × g で15分遠心し,有機層を回収した。乾固させた有機層はchloroform/methanol(2:1, v/v)で再溶解し,TLCおよびLC-MS/MS解析に使用した。
表皮 1 mg 分の脂質を順相 TLC(Silica Gel 60 TLC plates; Merck Darmstadt,
Germany)を用いて3つの溶媒によって分離した。
1. chloroform/methanol/water (40:10:1, v/v)で底辺から2 cmまで展開後乾燥させ,
再度底辺から5 cmまで展開。
2. chloroform/methanol/acetic acid (47:2:0.5, v/v)で底辺から8.5 cmまで展開。
3. hexane/diethylether/acetic acid (65:35:1, v/v)で底辺から9.5 cmまで展開した。
分離した脂質は銅リン酸試薬 [3 % (w/v) CuSO4 in 8 % (v/v)リン酸溶液]の噴霧と
180 °C 3分の加熱によって呈色させた。
表皮125 ng分の脂質はLC-MS/MS解析に使用した。脂質の分離および検出は,
超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)連結三連四重極型質量分析計(Xebo
TQ-S; Waters, Milford, MA)を用いて行った。UPLCによる脂質の分離は,グラジエ
ントシステムを用い,移動相 A [acetonitrile/water (3:2, v/v) + 5 mM ammonium formate]と移動相B [acetonitrile/2-propanol (1:9, v/v) + 5 mM ammonium formate] の 混合比を変えて行った(表3)。カラムは逆相系カラム(ACQUITY UPLC CSH C18 column; 粒子径, 1.7 μm; 内径, 2.1; 長さ, 100 mm; Waters)を用い,測定中のカラ
ム温度は55 °C で測定を行った。アシルセラミド,ω-OHセラミド,α-OH セラ
ミド,セラミドの検出は,イオン化にエレクトロスプレーイオン化法を用い,
MRMでポジティブイオンの検出を行った。Q1およびQ3の値とコーン電圧,コ リジョンエネルギーは各分子種に特異的な値を用いた(表 5–7)。測定したデー タの解析はMassLynx software(Waters)を用いて行った。
2.4.6. 定量的RT-PCR
総 RNA 抽出は,胎生 18.5 日の時点で帝王切開により摘出した仔マウスの背部 の皮膚から行った。剥離させた皮膚は,600 μLのPBS に浸し,55 °Cで3分間 加温したのち,ピンセットを用いて表皮と真皮を分離した。総 RNA 抽出は NucleoSpin RNA kit(Machery-Nagel, Dueren, Germany)を用いて行った。RT-PCR は,50 ng/μLに調節した総RNA,プライマー(表2),One step TB Green PrimeScript RT-PCR kitⅡ(Takara Bio)を用いて行った。サーマルサイクラーは,CFX96 Touch real-time PCR detection system(Bio-Rad, Hercules, CA)を使用し,50 °Cで30分,
94 °Cで2分のインキュベートののち,94 °Cで30秒,60 °Cで30秒,72 °Cで 1分を35サイクル行った。mRNA発現量はそれぞれHprtの発現量で補正した。
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3. ω水酸化脂質による涙液バリア形成機構の解明