第 3 章 マイクロ波整流用のショットキーダイオード
3.3.1 TLM 法
TLM(Transmission Line Model)測定は、半導体のシート抵抗と電極と半導体間のコンタ クト抵抗を測定できる方法である。オーミック電極間の距離を変化させ、抵抗を測定する。
抵抗値は電極距離Lに比例し、電極幅Wに反比例する。したがって測定される抵抗は以下 のように表される。
W R W
L
R= RS +2 C (3.3.1)
ここでR=抵抗[Ω]、L=電極間の距離[mm]、W=電極幅[mm]、Rs=シート抵抗[Ω/□]、Rc=コ
ンタクト抵抗[Ωmm]とする。
式(3.3.1)より、X軸を電極間距離、Y軸を抵抗値としてグラフを書くと、その傾きからシ ート抵抗Rs、Y軸切片からコンタクト抵抗Rcを求めることができる。
測定にはプローバと半導体パラメータアナライザー(Agilent 4155C)を用いた。測定に用 いたTLMパターンとその立体構造を図3.3.1、図3.3.2に示す。
電極ひとつあたりの大きさは、90μm×90μmで、電極間距離4,6,10,50μmという間隔で用 意した。
図3.3.1 (a) TLM測定パターン(マスク)
図3.3.1 (b) TLM測定パターン(顕微鏡写真)
図3.3.2 TLM測定パターンの立体図
測定結果を図3.3.3に示す。測定データは3点だが、測定できなかったパターンがあった ためNo.2とNo.4のデータ数はそれぞれ2点と1点である。
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
1 2 3 4 5 6
サンプルNo.
Rc[Ωmm]
図3.3.3 コンタクト抵抗比較(TLM法)
この結果から、電極材料がTi/Al/Ti/Auでアニール条件850℃1min+850℃3minのサンプ ルとTi/Al/Ti/Auでアニール条件 850℃1minのサンプルのコンタクト抵抗が大きくなって いることが分かる。
また、n+-GaN層のシート抵抗は平均約25.9 Ω/□であった。n+-GaN層の厚さはオー バーエッチングを考慮すると2.9μmである。
3.3.2 クロスケルビン法
クロスケルビン法の測定パターンを図3.3.4に接触部の拡大図を図3.3.5に示す。測定し たい異種材料を図3.3.5のように十字にクロスし、面積aで接触させ、測定パッドを図3.3.4 のように番号をつけるとする。測定の際には、No.1とNo.2間に電流を流し、No.3とNo.4 で電圧を測る。こうすることで、異種材料間のコンタクト抵抗による電圧降下を測定する ことができ、そこからコンタクト抵抗が求められる。つまりコンタクト抵抗ρc[Ωcm2]は
I a V
c 12
= 34
ρ (3.3.2)
で求めることができる。
2
3 4
1
接触面積a
2
3 4
1
接触面積a
図3.3.4 クロスケルビンパターン
V
34I
12V
34I
12図3.3.5 接触部の拡大断面図
クロスケルビン法で測定したn+-GaN 層とオーミック金属のコンタクト抵抗を図 3.3.6 に示す。測定データは3点だが、No.3は測定データが取れなかったため2点である。No.2 とNo.4のサンプルは抵抗が極めて大きく、比較にならないので排除した。
0.0E+00 5.0E-06 1.0E-05 1.5E-05 2.0E-05 2.5E-05 3.0E-05 3.5E-05
1 3 5 6
サンプルNo.
コンタクト抵抗ρc[Ωcm2]
図3.3.6 n+-GaN層とオーミック金属のコンタクト抵抗
図3.3.6から平均値はおおむね同じだが、No.6はバラツキが大きいことが分かる。
次に、オーミック金属とカバー金属間のコンタクト抵抗を図3.3.7に示す。測定データは 3点だが、No.3は測定データが取れなかったため1点である。No.2とNo.4のサンプルは 抵抗が極めて大きく、比較にならないので排除した。
1.0E-10 1.0E-09 1.0E-08 1.0E-07 1.0E-06 1.0E-05
1 3 5 6
サンプルNo.
コンタクト抵抗ρc[Ωcm2]
図3.3.7 オーミック金属とカバー金属間のコンタクト抵抗
図3.3.7 を見ると、No.3のコンタクト抵抗が他のものより一桁ほど大きくなっているこ
とが分かる。また、No.1がNo.5、No.6よりも大きい。
次に、下地金属と金メッキ間のコンタクト抵抗を図3.3.8に示す。測定データは3点だが、
No.1は測定データが取れなかったため2点である。No.4のサンプルは抵抗が極めて大きく、
比較にならないので排除した。
1.0E-10 1.0E-09 1.0E-08 1.0E-07 1.0E-06 1.0E-05
1 2 3 5 6
サンプルNo.
コンタクト抵抗ρc[Ωcm2]
図3.3.8 下地金属と金メッキ間のコンタクト抵抗
図3.3.8 を見ると、No.3 の下地金属と金メッキ間のコンタクト抵抗が他のものより一桁以
上大きい。
3.4 円形ショットキーダイオードの評価
ここでは円形のショットキーバリアダイオードを用いて評価を行う。C-V 測定で不純物 濃度を、I-V測定でショットキー特性の算出や耐圧の測定を行っていく。図4に円形ダイオ ードの評価パターンの顕微鏡写真を示す。
カソード アノード
図4 円形ショットキーダイオード評価パターン
3.4.1 C-V測定
作製したデバイスのC-V特性と、そこから算出した不純物分布を図3.4.1~3.4.6に示す。
測定にはLCRメータ(旧HP社製、4284C)を用いて、周波数1MHz、印加電圧2~-10Vま で-0.1Vstep、Hold Time 1s、Delay Time 1s、積分時間longで行った。測定パターンは半 径50μmの円形ダイオードを用いた。
0.0E+00 1.0E-12 2.0E-12 3.0E-12 4.0E-12 5.0E-12 6.0E-12 7.0E-12 8.0E-12 9.0E-12
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
Capacitance(F)
図3.4.1(a) aのC-V特性 図3.4.1(b) aの不純物分布
0 1E+16 2E+16 3E+16 4E+16 5E+16 6E+16 7E+16 8E+16 9E+16 1E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
深さ[μm]
Nd[cm-3]
0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
Capacitance(F)
E+00 E-12 E-12 E-12 E-12 E-11 E-11 E-11 E-11 E-11 E-11
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
図3.4.2(a) bのC-V特性 図3.4.2(b) bの不純物分布
1E+17 2E+17 3E+17 4E+17 5E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
深さ[μm]
Nd[cm-3]
0.0E 2.0E 4.0E 6.0E 8.0E 1.0E 1.2E 1.4E 1.6E 1.8E 2.0E
Capacitance(F)
+00 -12 -12 -12 -12 -11 -11 -11 -11 -11 -11
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
図3.4.3(a) cのC-V特性 図3.4.3(b) cの不純物分布
0 1E+17 2E+17 3E+17 4E+17 5E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
深さ[μm]
Nd[cm-3]
0.0E+00 1.0E-12 2.0E-12 3.0E-12 4.0E-12 5.0E-12 6.0E-12 7.0E-12 8.0E-12 9.0E-12 1.0E-11
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
Capacitance(F)
図3.4.4(a) dのC-V特性 図3.4.4(b) dの不純物分布
0.0E+00 2.0E+16 4.0E+16 6.0E+16 8.0E+16 1.0E+17 1.2E+17 1.4E+17 1.6E+17 1.8E+17 2.0E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
深さ[μm]
Nd[cm-3]
a の不純物濃度は設計どおりの 5~6×1016cm-3となった。b は設計値の 3×1017cm-3 と比べて少し高く3.3~3.5×1017cm-3となった。c は 0.1μm までは設計値どおりの1×
1017cm-3だが、高濃度層は設計値の 3×1017cm-3と比べて少し高く 3.5×1017cm-3とな った。d、e、fは設計値1×1017cm-3に対して8×1016cm-3となった。
C-V 特性から解析した不純物濃度から、理論耐圧はそれぞれ、aは約230V、b は約33 V~約35V、cはbと同程度からそれ以上、d、e、fは約144Vと予想される。
0.0E 2.0E 4.0E 6.0E 8.0E 1.0E 1.2E
Capacitance(F)
+00 -12 -12 -12 -12 -11 -11
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
図3.4.5(a) eのC-V特性 図3.4.5(b) eの不純物分布
0.0E+00 2.0E+16 4.0E+16 6.0E+16 8.0E+16 1.0E+17 1.2E+17 1.4E+17 1.6E+17 1.8E+17 2.0E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
深さ[μm]
Nd[cm-3]
0.0E 2.0E 4.0E 6.0E 8.0E 1.0E 1.2E
Capacitance(F)
+00 -12 -12 -12 -12 -11 -11
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
0.0E+00 2.0E+16 4.0E+16 6.0E+16 8.0E+16 1.0E+17 1.2E+17 1.4E+17 1.6E+17 1.8E+17 2.0E+17
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
深さ[μm]
Nd[cm-3]
図3.4.6(b) fの不純物分布 図3.4.6(a) fのC-V特性
3.4.2 I-V測定
次にダイオードのI-V測定の結果を図3.4.7に示す。測定には半導体パラメータアナライ ザを用いて、印加電圧2~-10Vまで順方向-0.02Vstep,逆方向-0.1Vstep、Hold Time 1s、
Delay Time 0.01s、積分時間mediumで行った。測定パターンは直径50μmの円形ダイオ ードを用いた。データはそれぞれサンプルごとに3箇所のデータをのせている。
1.E-13 1.E-12 1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00
-10 -8 -6 -4 -2 0 2
Voltage(V)
Cu rr en t( A ) b c d f
e
a
図3.4.7 I-V特性比較
逆方向リーク電流はaとeがほかのサンプルより2~3桁程小さくなっていることが分か る。
次にI-V特性から算出したn値、Φb、ON電圧をそれぞれ図3.4.8、図3.4.9、図3.4.10 に示す。ON電圧は電流密度が200[A/cm2]点での電圧とする。それぞれのデータは12箇所 の測定データの平均で表している。
0.9 0.95 1 1.05 1.1 1.15 1.2
a b c d
Sample Name
n
e f
図3.4.8 n値比較
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5
a b c d e f
Sample Name
Φb[eV]
図3.4.9 Φb比較
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5
a b c d
Sample Name
ON電圧[V]
e f
図3.4.10 ON電圧比較
n値を見ると、bとeとfのサンプルが大きくなっている。このことから、ほかのものに 比べてショットキー特性が悪くなっていることが考えられる。これは、bのドーピング濃 度が高いことや、e、fはエッチングを行っているためエッチングダメージの影響などが考 えられる。また、ΦbとON電圧には相関が見られ、値はΦbのほうが約0.05~0.1Vほど 高くなっている。これらの値を表3.4.1にまとめて示す。
a b c d e f
n 1.04 1.14 1.06 1.05 1.14 1.10
Φb[eV] 0.949 0.882 0.912 0.902 0.873 0.674
Von[V] 0.897 0.838 0.803 0.808 0.824 0.612
3.4.3 耐圧
次に耐圧を測定した。測定は半導体パラメータアナライザで行い、印加電圧2~-100Vま で順方向-0.02Vstep,逆方向-0.5Vstep、Hold Time 1s、Delay Time 0.01s、積分時間medium で行った。測定パターンは直径50μmの円形ダイオードを用いた。データはそれぞれサン プルごとに3箇所のデータをのせている。図3.4.11に逆方向耐圧特性を示す。
1.E-12 1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01
-100 -90 -80 -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 Voltage(V)
C u rr ent (A )
a
c b f
d e
図3.4.11 逆方向耐圧特性の比較
aは過去の研究にもあったように耐圧100V以上達成している。bの耐圧は理論耐圧が約33
から約35Vに対してほぼ理論値どおりの約 33Vとなった。cの耐圧は約-42Vであった。c
のように表面に薄い低濃度GaN層をのせることで、bよりも高い耐圧になった。dの耐圧
は約 90Vとなった。これは理論耐圧約 144Vよりも低い値である。e は表面をエッチング
することで耐圧の向上を図ったが最高でも-78Vとむしろ下がってしまった。f は電極エッ ジに p 層を導入することで耐圧の向上を図ったが約-63Vとこちらも下がってしまった。e は耐圧にバラツキが見られること、n値が高いことを考慮すると、表面エッチングによるダ メージによりショットキー界面が悪化してしまったことが要因ではないかと考えられる。f に関しては、通常ならばプロセスを始める前に p 層を活性化させる目的でアニールを行う pn接合ができなかったことが原因と考えられる。
3.5 フィンガー型ショットキーダイオードの評価
ここでは、フィンガー型のショットキーダイオードの評価を行い、ON抵抗や寄生容量を 算出する。用いたサンプルはb、c、dの3種類である。図 5にフィンガー型ダイオードの 顕微鏡写真を示す。
カソード アノード
図5フィンガー型ショットキーダイオードの評価パターン 3.5.1 ON抵抗
2μm×50μmのフィンガータイプのショットキーダイオードのI-V測定を行った。測定
には半導体パラメータアナライザを用いて、印加電圧5~-10Vまで順方向-0.02Vstep,逆方 向-0.1Vstep、Hold Time 1s、Delay Time 0.01s、積分時間mediumで行った。図3.5.1に I-V特性を示す。I-V特性から算出した ON抵抗を図3.5.2 に示す。I-V特性はデータ数 3 点、ON抵抗はデータ数8点である。
1.E-12 1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00
-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4
Voltage(V)
Current(A)
d
c b
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09 0.1
0 1 2 3 4
Voltage(V)
Current(A)
5
0 10 20 30
b c d
Sample Name
Ro n
図3.5.1(b) I-V特性(順方向リニア)
図3.5.2 ON抵抗比較
b c
d
bはON抵抗が約5.44Ω、cは約9.2Ω、dは約23.9Ωとなった。
ここで、ON抵抗の解析を行う。ON抵抗は図3.5.3のように活性層抵抗R1とアクセス層抵 抗R2とオーミック電極のコンタクト抵抗R3に分解される。
R
1R
2R
2R
3R
3R
1R
2R
2R
3R
3図 3.5.3 ON抵抗の概略図 まず、R2の抵抗を考える。
t W L
t W L
図3.5.4 半導体の模式図 図3.5.4のような物体の抵抗は、
tW L qn tW
R= L = ×
ρ
1μ
(3.5.1) で表される。ゆえに、アクセス層のシート抵抗をRs2とすると、R2は
L R d
R2 = s2 (3.5.2 と表される。ここで、dはアノード電極とカソード電極の距離、Lはアノード電極の長さで ある。またR3は、カソード電極とのコンタクト抵抗Rc と電流経路の幅(ここではアノー ド電極の長さ)の2つが分かれば良いので、
L
R3 = Rc (3.5.3) と表される。アクセス層の抵抗成分は図3.5.3のように並列に接続されていると考えること
ができるので、ON 抵抗には(R2+Rc)/2 となって表れる。よって、I-V 測定から求めた ON 抵抗から(R2+Rc)/2を差し引くと、活性層のみの抵抗R1を求めることができる。表3.5.1に はb、c、dそれぞれのON抵抗をR1、R2、Rcに分解して示す。ここでR2、Rcは1/2の値 で示している。
表3.5.1 ON抵抗
b c d
R1[Ω] 2.70 5.51 18.3
R2[Ω] 2.00 1.81 2.05
R3[Ω] 0.74 1.88 3.54
RON[Ω] 5.44 9.2 23.9
また、式(3.5.1)から抵抗とキャリア濃度が分かれば、電子の移動度が計算できる。表
3.5.2に活性層、アクセス層の電子移動度を示す。アクセス層の移動度とキャリア濃度は不
明なため、ウェハ提供会社が示すウェハ全体の移動度のデータ(約 300cm2/Vs)から仮定 したキャリア濃度、また図3.5.5に示した移動度のキャリア濃度依存性の実験値から推定し た移動度とキャリア濃度の二つを示す。
表3.5.2 移動度
b c d
活性層1 220
(1×1017cm-3) 活性層2 280
(3.3×1017cm-3)
200 (3.5×1017cm-3)
430 (8×1016cm-3) μ[cm2/Vs]
アクセス層
300 (6.4×1018cm-3)
126 (6.4×1018cm-3)
300 (3.0×1018cm-3)
124 (7.2×1018cm-3)
300 (3.6×1018cm-3)
127 (6.2×1018cm-3)