〜ラパヘルのさらなる高みを目指して〜
細径鉗子を用いた腹腔鏡下膨潤TAPP法の有用性
【背景】鼠径ヘルニアに対するTAPP法は一般に行われており,最近 では単孔式で行う施設も増えている.当院では,ヘルニアタイプの理解 が容易、対側の観察が可能、術野が広く解剖の理解が容易、腹膜閉鎖 が容易などの理由により高位腹膜切開アプローチによる単孔式TAPP を導入し,これまでに299例327病変に行ったので,その術式および成 績ついて報告する.【方法】手術は臍正中切開、原則Multiple trocar 法にて行う。上前腸骨棘の高さで腹膜を切開して腹膜外腔に入り,外 腔の剥離とヘルニア嚢周囲の剥離を行う.ヘルニア嚢は体外結紮後切 離する。補強はヘルニア用メッシュを用い吸収性または非吸収性体内 固定用組織ステープルにて4~5箇所固定する.腹膜はステープルで腹 膜断端を重ねるように吸収性体内固定用組織ステープルを打針して閉 鎖する.【結果】1例にポート追加が必要であった.術中術後で重篤な 合併症は認めなかった.手術時間は片側86.5 ±30.0分,両側130.6
±28.1分,出血量は少量であった.再発1例(0.3%),漿液腫16例
(5.4%),血腫2例(0.6%),大腿皮神経領域の一時的な知覚鈍麻2 例(0.6%)を認めた.【結語】我々が行っている単孔式TAPP の手術 成績は短期間において従来式と比べて遜色なく,整容性にも優れてい ると考えられるが,さらなる工夫や検討が必要であると考えられた.
田上 和夫、松田 博光、金澤 昌満、上野毅一郎
うえの病院
鼠径ヘルニアに対する高位腹膜切開アプローチ単孔 式腹腔鏡下TAPPの手術成績
【目的】鼠径ヘルニアに対する第一選択として単孔式TEP(TANKO-TEP)を施行しているのでその成績と難治例への対処を報告する。
【方法】2004年以後鼠径ヘルニアに対してTEP(3Port)を第一選 択とし、2010年4月にTANKO-TEPを開始した。また、TEP法500例 を対象に手術成績と困難例への対処を検討した。手技の変遷や工夫に ついても検討した。【結果】TEPからTAPPへConvertした症例は5例
(1%)で、前立腺術後、再発例、下腹部手術(結腸癌)術後、巨大Sac が原因であった。TEPの再発は2例に認めた。TANKO-TEP は臍下 15mm弧状切開を加えマルチポートを装着して施行。施行した136例 の成績は出血は平均2.7g、手術時間平均48分、平均術後在院日数は 3.3日。術後の疼痛、緊張などの愁訴は極めて少なかった。合併症は陰 嚢水腫3例、鼠径部血腫2例で再発は認めなかった。時期のずれはあ るたTANKOは通常法と比較して手術操作性に変わりはなく、手術時 間は短い傾向があった。【結語】TANKO-TEPは鼠径ヘルニア治療の 第一選択として十分なクオリティを有していると考えられたが、困難例 はTAPへのConvertを要した。
小西 晃造
広島赤十字・原爆病院 外科
鼠径ヘルニアに対する単孔式TEP法の成績と困難例
への対処
O17-2 O17-1
O17-3
【はじめに】鼠径ヘルニアに対するLPEC法が考案され20年を越え た。小児症例についてはその有用性や安全性は十分に確立されてい る。近年、成人に対するLPEC法の報告も増えているが、その適応につ いてはまだ議論が分かれている。そこで当科における15歳以上の若年 者症例について検討した。
【対象・方法】2005年1月から2017年12月までに、慈恵医大本院・分 院および関連施設でLPEC法が施行された15歳以上の症例について 後方視的に解析した。
【結果】対象症例は13例で、平均年齢18.6歳(15-32歳)、男:女=
2:11と女性に多かった。平均手術時間は68.4分で手術合併症は認 めなった。平均術後観察期間は47.2か月で1例(7.6%)に再発を認め た。術式に関しては施設や術者によって異なっていたが、ヘルニア門の 2重結紮、3重結紮が多く行われ、2例にAdvanced LPEC法が施行さ れていた。
【結論】LPEC法は、整容性に優れた手術であり、後壁補強の必要な い若年者の鼠径ヘルニア(I-1or I-2型)に対してよい適応と考えられ る。また痛みも少なく、対側のヘルニアも同時に評価と手術が可能であ る。再発した場合も、癒着がないため鼠径部からのアプローチが容易 である。若年者においては、LPEC法で基本的に問題ないと考えるが、
1例再発があり長期成績ならびに症例を重ねて評価しながら適応年齢 を拡大していきたい。
当院では小児鼠経ヘルニア手術の多くをLPECが占めるようになっ てきた。また小児の外科研修における初期段階で関わることも多いた め、定型化するにあたり特に守るようにしている個所を中心に報告す る。1)運針前におけるPPVの詳細な観察のため、内鼠経輪周囲の襞 をゆっくりといろいろな方向に引っ張るようにしてきたが、内鼠経輪の 背側にPPVが存在する症例では、腹膜に鉗子をあてて背側に押し下 げることを併用する。また運針により腹膜が引っ張られることにより、
PPVが見つかることもあり、針先のみではなく、周囲も含めて観察す る。2)運針時には腹膜が平坦となる状態に鉗子でカウンタートラク ションをかけながら運針する。3)男児における問題点として、輸精管 を超える部分の運針に苦労する場合があるが、内鼠経輪のDimple の背側端から5mm以上背側まで輸精管と平行に運針後、輸精管と直 角方向になるように横移動させ、針の先端が1~2mm程度出た時点 で、縦方向に1cm程度進めると、針の先端は輸精管から離れるように なり、その後の通常の運針が容易となる。この時点で輸精管周囲の組 織が糸にやや引っ張られこともあるが、一度糸を引っ張り上げると、糸 は内鼠経輪周囲に収束し、輸精管周囲との癒着がはずれて、確認時に は輸精管が完全に離れていることが確認できる。観察に時間をとるた めに手術時間はやや長くなる傾向にあるが、この方法で運針での苦労 は軽減した。
大橋 伸介、福島 尚子、長谷川拓男、吉田 和彦
清水 保延1)、田中 守嗣1)、早川 哲史2)、小林 健司1)、山本 稔1)、 高嶋 伸宏1)、宮井 博隆1)、藤幡 士郎1)、野々山敬介1)、原田真之資1)、 犬飼 公一1)、北山 陽介1)、上原 崇平1)、辻 恵理1)
東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 外科
1)刈谷豊田総合病院 消化器・一般外科、2)刈谷豊田総合病院 腹腔鏡ヘルニアセンター
LPEC法の成人症例への適応拡大の可能性
LPECにおける工夫
【緒言】近年、成人鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘ ルニア閉鎖術(Laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure:以下LPEC)の適応について議論されている。当院では 2014年から小児鼠径ヘルニアに対して単孔式LPEC法を導入してお り、この技術が成人鼠径ヘルニアの対側腹膜鞘状突起開存(Patent processes vaginalis:以下PPV)の閉鎖や、症例によっては根治術 として昇華し得るのではないかと考えた。【対象と方法】LPEC法適応 の条件として、年齢は問わず、外鼠径ヘルニアであり、腹腔鏡下計測で ヘルニア門の大きさが2cm以下であることとした。【結果】2017年12 月までにLPEC法による根治術症例を8例(男5例 女3例、両側1例、
右:左=3:6、平均年齢61.3歳)、PPVへのLPEC法症例を6例(男 5 例 女1例、右:左=4:2、平均年齢66.3歳)経験した。LPEC法による 根治術症例の手術時間は41.8±10.8分で、入院期間は3.4±1.0日で あった。術後経過は全症例において良好で、現在までに再発は認めて いない。【考察】当院での成人症例へのLPEC法は年齢やヘルニア門 の大きさにおいて適応条件を広げたものだが、現時点では再発も含め た合併症を認めていない。しかし、症例数が少なく、今後も十分な検討 が必要と考える。
佐竹 亮介1)、木暮 道夫2)、池袋 賢一1)
1)医療法人社団誠弘会池袋病院 小児外科、2)医療法人社団誠弘 会池袋病院 消化器・一般外科
当院における腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術 の適応について
O17-4
【はじめに】小児鼠経ヘルニアに対する腹腔鏡下経皮的腹膜外閉 鎖術(LPEC)施行時に大網がヘルニア嚢内に陥頓または非還納症 例に遭遇することがある。当院にて本疾患に対しLPEC法による治 療をおこなった症例について文献的考察を加えて報告する。【症例】
2012年9月から2017年8月までに当院でLPECを施行した223例中6 例(2.7%)に大網陥頓および非還納を認めた。手術時年齢は2歳7ヵ 月から14歳8ヵ月(中央値:5歳5ヵ月)、男児が4例、左側発症が4例 であった。6例中1例のみ大網の癒着を認めず、気腹後鉗子にて大網を 引っ張ることで速やかに還納することが可能であった。残りの5例は電 気メス(1例のみ超音波凝固メスを併用)での切離および止血処置を必 要とした。5歳男児の1例に術後著明な陰嚢腫脹を認めたが時間ととも に自然に軽快した。【まとめ】小児鼠経ヘルニアにおける大網陥頓およ び非還納症例では、多くの症例が大網の癒着を認め電気メスによる切 離を要した。術後に遺残した大網の一部が炎症を起こしたと考えられ る陰嚢腫脹を経験したことから、ヘルニア嚢内に癒着した大網は極力 遺残のない様に切離・還納することが肝要と思われる。
本多 昌平、宮城 久之、荒 桃子、川村 秀樹、武冨 紹信
北海道大学大学院医学研究院 消化器外科学教室Ι