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Simon の不等式

ドキュメント内 数理物理学特論 (ページ 36-41)

  T1: ϕx の符号を変える変換,

  T2: ψx の符号を変える変換,

のそれぞれがη(ϕx)η(ψx)を不変にする.このそれぞれがsx, tx の言葉でどのような変換になっているかと言うと,

  T1: ϕx の符号を変える変換は,「sxtx を交換した上で,更にsxtx両方の符号を変える」変換   T2: ψx の符号を変える変換は,「sxtx を交換する」変換

になっている(sx, txの定義を見て納得せよ).従って T1, T2の変換を続けて行うことにより   T3: sxtx 両方の符号を同時に変える変換(T3=T2◦T1

を作ることができる.つまり,この変換T3に関してη(ϕx)η(ψx)は不変である.

これだけではまだ足りない.幸いなことにη(ϕx)η(ψx)は   T4: ϕxψx を交換する変換

についてもtrivialに不変である.この変換はsx, tx の言葉では   T4: tx のみの符号を変える変換

となる.更にT3T4 を続けて行うことで,

  T5: sxのみの符号を変える変換(T5=T4◦T3) も作ることができる.

結果的に η(ϕx)η(ψx)は,「sxtx の符号を独立に変える変換」に関して不変なことがわかった.

従って,(A.2.20)の右辺に出てくる積分は全てのnx, mxが偶数の時は正の値,それ以外は全てゼロ,となること がわかり,(A.2.20)が非負の項の和であること結論される.(A.2.13)の分母は勿論正であるから,これで(A.2.13) 自身が非負であることが結論できた.

A.4.1 Simon’s Inequalityの証明 Proof of (ii).

Jcut≡ {{u, v}:u∈A, v∈C}とし,t[0,1]に対して Ht≡ −

{u,v}∈Jcut

Juvϕuϕv−t

{u,v}∈Jcut

Juvϕuϕv (A.4.3)

と定義し,このHtによる期待値を·tと書くことにする.この期待値はx∈A, y∈C のとき,

ϕxϕyt=



ϕxϕy (t= 1)

0 (t= 0)

(A.4.4) を満たす.実際,t= 0ではA 内のスピンとC 内のスピンは互いに独立に分布しているから,相関はない.従っ て,tを0 から1までinterpolateして,

ϕxϕy=ϕxϕy1− ϕxϕy0= 1

0

dtd

dtϕxϕyt= 1

0

dt

ϕxϕy;

{u,v}∈Jcut

Juvϕuϕv

t (A.4.5)

と書ける.ところで,最後の非積分関数はLebowitz ineq. (A.3.1)を用いて,

ϕxϕy;ϕuϕvt≤ ϕxϕutϕyϕvt+ϕxϕvtϕyϕut≤ ϕxϕu ϕyϕv+ϕxϕv ϕyϕu (A.4.6) と押さえられる(最後のところではϕxϕut などのtに関する単調性を用いた).従って,(A.4.5)より

ϕxϕy

{u,v}∈Jcut

Juv 1

0

dt$

ϕxϕu ϕyϕv+ϕxϕv ϕyϕu%

(A.4.7) を得るが,これは(A.4.2)そのものである.

なお,(i)の証明はこの講義ノートに述べたことからすぐには導かれない.原著論文[4]を参照されたい.

B Random Walk Representation

相関不等式を証明するための強力な方法の一つにrandom walk representationがある.これはスピン系を重みつ きランダムウォークの系に書き直すものであるが,副産物として強力な不等式が割合簡単に証明できる.

この節は大変に急いで打ち込んだのでかなり不満なママになっている.この節の内容に関する一般的なreference として,[7]を挙げておく.

考えるのは

−H=1 2

x,y∈Λ

Jxyϕxϕy (Jxy0, hx0) (B.0.8) で与えられるハミルトニアンを持つスピン系である.Single site measureηxx)についての条件は追々,追加して いくことにする.

B.1 Random Walk Representation

まず,全ての出発点になるrandom walk representationを作っておく.

B.1.1 逆行列に対する公式

少々天下りであるが,ここでは以下の命題を示す.JˆをΛ×Λ 上の行列で,その成分がJxy (x, yΛ)で与え られるものとし,

Jxx= 0,

y∈Λ

|Jxy|<∞, Jxy=Jyx (B.1.1)

を仮定する.また,Lx (xΛ)を,

Lx= 0, |Lx|>

y∈Λ

|Jxy| (B.1.2)

を満たす数として行列Lˆ−Jˆを Lˆ−Jˆ

xy=Lxδxy−Jxy (B.1.3)

を定義し,その逆行列

Lˆ−Jˆ −1

を考える.

我々の目的はこの逆行列をランダムウォークについての和として表すことである.そのために,いくつかの用語 を定義しよう.

x, y∈Λ に対してxからyへのランダムウォークω とは,

ω= (x, z1, z2, . . . , zn, y) (B.1.4) のように,xを出発してy へ至るサイトの順序づけられた集合のことである.

この場合,x, y, z1, z2, . . .の間にいくら重複があっても構わない.また,xからxへのランダムウォークと言 う場合には{x} 一点からなるものも含めて考える.

行列Jˆとランダムウォークω (B.1.4)に対して

Jω≡Jxz1Jz1z2 . . . Jzny (B.1.5) と定義する.対応するJzi,zi+1 の成分がないときは,勿論,Jω= 0とみなす.

ランダムウォークω= (z0, z1, z2, . . . , zN)に対して,|ω| ≡N と定義する(ランダムウォークのステップ数).

また,

n(z, ω)≡ N i=0

δz,zi = ωzを訪れた回数 (B.1.6) と書くことにする.

以上の準備の下で,

Proposition B.1.1.

Lˆ−Jˆ−1

xy=

ω:x→y

Jω

z∈Λ

L−n(z,ω)z (B.1.7)

が成り立つ.

Proof. 厳密性は少し犠牲にして,大体のところを述べよう.出発点は有限次元の行列A, B に対する公式

(A−B)−1=A−1+A−1B A−1+A−1B A−1B A−1+A−1B A−1B A−1B A−1+· · · (B.1.8) である.この公式は収束を気にしないならば,両辺に(A−B) をかけて項別に右辺を計算できることで確かめら れる.

この公式をA= ˆL, B= ˆJ として用いると,

Lˆ−Jˆ−1

= ˆL−1+ ˆL−1JˆLˆ−1+ ˆL−1JˆLˆ−1JˆLˆ−1+· · · (B.1.9) となる.この各項のx, y 成分を書き下すと,

Lˆ−Jˆ−1

xy =Lˆ−1

xy+

z1,z2

Lˆ−1

xz1Jz1z2Lˆ−1

z2y+

z1,z2,z3,z4

Lˆ−1

xz1Jz1z2Lˆ−1

z2z3Jz3z4Lˆ−1

z4y+· · ·

= 1

Lxδxy+ 1 LxJxy 1

Ly +

z

1 LxJxz 1

LzJzy 1

Ly +· · · (B.1.10)

となり,各項はx→y なるランダムウォークについての和と見なせて(B.1.7)を得る.

B.1.2 「部分積分」の公式

以下はガウス型積分に対する部分積分の公式の拡張になっている.ここで考えるのは

−H= 1 2

x,y

Jxyϕxϕy,

Jxx= 0, Jxy=Jyx0

(B.1.11) かつ

ηx(ϕ) =gx2x) (B.1.12)

と書けているようなモデルである.gxについては[0,∞)で連続で非負,かつ

t→∞lim gx(t)ect= 0 ∀c∈R (B.1.13)

であることを要求する.少し記号を導入しよう.

非負の整数nに対して

n(t)





δ(t)dt (n= 0) tn−1I[t≥0]

(n1)! dt (n1) (B.1.14)

ランダムウォークωt={tx}x∈Λに対して

ω(t)≡

x∈Λ

n(x,ω)(tx) (B.1.15)

と定義する.

各点x∈Λでtx0 が与えられたとき,

$F(φ)%

t

x∈Λ

gx2x+ 2tx)x

e−HF(ϕ) (B.1.16)

Zt$ 1%

t, (B.1.17)

Ft

$F%

$ t

1%

t

(B.1.18) と定義する.tx0 の量が,我々が見たい量である.

以上の下で,

Proposition B.1.2. 少なくとも一回は微分可能で,高々多項式程度でしか増加しない x}x∈Λ の関数F に対

して, $

ϕxF({ϕz}z∈Λ)%

=

y∈Λ

ω:x→y

Jω

ω(t)∂F

∂ϕy

t (B.1.19)

が成立する.

この定理の証明には,まずgaussianの場合の類似の公式を証明しておくと役に立つ:

Lemma B.1.3. Λ上の実対称行列 A, B があり,特にA は正定値とする.このとき,微分可能で多項式程度の増 加であるF に対し,

z∈Λ

z

ϕxF(φ) exp 1

2

uv

(Auv+iBuvuϕv

=

y∈Λ

(A+iB)−1

xy z∈Λ

z ∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

(Auv+iBuvuϕv

(B.1.20)

が成立する.

Proof. 基本的.例えば対角化してやる.特にB= 0 の場合を先にやればよい.

Proposition B.1.2の証明

初等的ではあるが,少し計算が厄介である.証明はまず,F やgxが無限階微分可能である場合について行う.そ の後で無限階微分可能でないものを微分可能なもので近似することにより,証明を完結させる.ここでは前半部分 に力を入れて述べる.

Step 1. gx2x)などが無限階微分可能と仮定する.非積分関数(の一部)を以下のように書き直す(Lx2#

yJxy ととる):

x

gx2x)

exp 1

2

uv

Juvϕuϕv

=

x

gx2x)eLxϕ2x/2

exp 1

2

uv

(Juv−Luδuvuϕv

(B.1.21) 更に

hx(t)



gx(t)eLxt/2 (t0) gx(−t)eLxt/2 (t <0)

(B.1.22) と定義すると,gx(t)が無限階微分可能であるからhx(t)は急減少関数になる.従って,hxのフーリエ変換を用いて

hx(tx) =

−∞daxe−iaxtxˆhx(ax) (B.1.23) と表すことができる.

よって,

$ϕxF%

=

z

zhz2z)

exp 1

2

uv

(Juv−Luδuvuϕv

ϕxF (B.1.24)

であるが,ここでAxy≡Lxδxy−Jxy を導入して

=

z

zhz2z)

exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

ϕxF (B.1.25)

更にhz のフーリエ変換を用いて

=

z

zdaze−iazϕ2zˆhz(az)

exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

ϕxF (B.1.26)

となる.ここでazϕz の積分の順序を交換すると

=

z

dazˆhz(az)

z

ze−iazϕ2z

exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

ϕxF

=

z

dazˆhz(az)

z

z

exp 1

2

uv

(Auv+ 2iauδuvuϕv

ϕxF (B.1.27) となる.ここで内側の積分にLemma B.1.3を適用すると(Auv =Luδuv−Juv, Buv= 2auδuv),

$ϕxF%

=

z

dazhˆz(az)

z

z

y∈Λ

(A+iB)−1

xy

∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

(Auv+iBuvuϕv

(B.1.28)

となるが,逆行列(A+iB)−1にProposition B.1.1を適用すると

=

y z

dazhˆz(az)

z

z ∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

(Auv+iBuvuϕv ×

×

ω:x→y

Jω

w

(Lw+ 2iaw)−n(w,ω)

=

y

ω:x→y

Jω

z

z

z

dazˆhz(az)e−iazϕ2z ∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

×

w

(Lw+ 2iaw)−n(w,ω) (B.1.29)

となる.ここでL >0 では

(L+ 2ia)−n=

−∞n(t)e−(L+2ia)t (B.1.30) が成立することに注意すると,

$ϕxF%

=

y

ω:x→y

Jω

z

z

z

dazˆhz(az)e−iazϕ2z ω(t) ∂F

∂ϕy

×exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

u

(Lu+ 2iau)tu

(B.1.31)

となる.ここでaz に関する積分を行うと

=

y

ω:x→y

Jω

ω(t)

z

zhz2z+ 2tz) ∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

Auvϕuϕv

u

Lutu

=

y

ω:x→y

Jω

ω(t)

z

zgz2z+ 2tz) ∂F

∂ϕy exp 1

2

uv

Juvϕuϕv

=

y

ω:x→y

Jω

ω(t)∂F

∂ϕy

t (B.1.32)

となって,求める式が証明された.

B.1.3 諸量の表式

以上でランダムウォーク表示が得られたので,今後重要になるいくつかの場合を明示しておこう.

まず,Proposition B.1.2で F =ϕy ととることにより,

$ϕxϕy%

=

ω:x→y

Jω

ω(t) 1

t=

ω:x→y

Jω

ω(t)Zt (B.1.33)

すなわち

ϕxϕy=

ω:x→y

Jω

ω(t)Zt

Z (B.1.34)

が得られる.つまり,xとy の2点関数は,重み

ω(t)Zt

Z を持つランダムウォークを足し会わせることによっ て得られる.また,F =ϕyϕzϕu ととることにより,

ϕxϕyϕzϕu=

ω:x→y

Jω

ω(t)Zt

Z ϕzϕut+

ω:x→z

Jω

ω(t)Zt

Z ϕyϕut+

ω:x→u

Jω

ω(t)Zt

Z ϕyϕzt (B.1.35) も得られる.以下ではこれらの表式を用いて必要な相関不等式を導いていこう.

ドキュメント内 数理物理学特論 (ページ 36-41)

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