さて,これらの準備の下に,我々の相関不等式を書くことができる.まず最初に:
Theorem A.2.1 (Griffiths I inequality). (A.1.2)-(A.1.3)で定義されるスピンモデルに対しては,JA≥0,か つη が偶関数である限り,
ϕA
≥0 (A.2.1)
が成立する.これを Griffiths I inequalityと言う.
Griffiths IがあるからにはGriffiths II もある:
Theorem A.2.2 (Griffiths II inequality). (A.1.2)-(A.1.3)で定義されるスピンモデルに対しては,JA≥0,か つη が偶関数である限り,
ϕA;ϕB
≡ ϕAϕB
−
ϕA ϕB
≥0 (A.2.2)
が成立する.これを Griffiths II inequalityと言う.
Remark. FBC, PBC, +BCはいずれも(A.1.2)-(A.1.3) の形に書けるから,上の不等式は当然,Ising modelの FBC, PBCと+BC,およびϕ4 モデルのFBC, PBCにたいしても成立する.
Remark. これらの不等式はまず,有限体積で証明するが,その後で無限体積の極限をとることにより,無限体積
極限に対しても成立することが保証される.
A.2.1 Griffiths I Inequality の証明
Proof of Theorem A.2.1.
まず有限体積で証明し,後で極限をとる.(と言っても,ここは有限体積の話だったか.) ZΛ>0だから,期待値の定義での分子の非負性,つまり
ϕAe−H
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
≥0 (A.2.3)
を言えばよい.さて定義から,(A.1.2)の形のハミルトニアンの指数関数を展開すると,JB ≥0である限り,
e−H= exp
B
JBϕB
=
B
cBϕB, cB ≥0 (A.2.4)
の形に,係数が全て正の級数が得られることがわかる.従って,期待値の定義の分子の和(積分)の中身は ϕAe−H=
B
cBϕAϕB (A.2.5)
のように正の係数の和になっていて,これをsingle site measure で平均すれば分子が得られる.つまり,分子は
ϕAe−H
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
=
B
cB
ϕAϕB
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
(A.2.6) となる.最後の段階では,格子が有限であることと指数関数の展開が絶対収束している事から,B についての和と ϕでの積分の順序を入れ替えた.
さて,(A.2.6)の積分はそれぞれのサイトでの積分に分解する.つまり,A, Bの中にサイトxの出てくる回数を nxと書くと,
ϕAϕB=
x∈Λ
ϕnx (A.2.7)
と積の形に書けるので,
ϕAϕB
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
=
y∈Λ
ϕny
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
=
x∈Λ
ϕnxη(ϕx)dϕx (A.2.8)
と,積分の積になってしまう.ところが,Ising modelやϕ4モデルでは,それぞれのϕxについての積分測度はϕx の符号を変える変換に対して不変だから,
ϕnxη(ϕx)dϕx=
正 (nxが偶数の時)
0 (nxが奇数の時)
(A.2.9)
が成立し,こいつの積である(A.2.8)については
ϕAϕB
x∈Λ
η(ϕx)dϕx
=
正 (全てのサイトでnxが偶数の時)
0 (上以外の時)
(A.2.10)
が成立する.ともかくこのようにして,(A.2.6)の和は非負であることがわかるので,(A.2.3)が示された.
A.2.2 Griffiths II Inequality の証明
Proof of Theorem A.2.2.
今度はtruncated expectationなのでちと厄介である.この問題を解決するために,duplicated variable method を導入する.今,考えている格子Λ上のスピン系で全く同じものを独立に2つ用意し,それぞれが今考えているス
ピン分布に従うものとする.つまり,これらのスピンをϕx, ψx(x∈Λ)と書く事にすると,両方のスピンに関す る期待値は(記述を簡単にするためdΛη(Φ)≡
x∈Λ
η(ϕx)dϕx と書くことにした)
· · ·dup= 1 ZΛ2
dΛη(Φ)
dλη(Ψ) exp
−HΛ(ϕ)−HΛ(ψ)
(· · ·) (A.2.11)
となる.さて,このduplicated variablesの利点は ϕA
=
ϕA
dup,
ϕA ϕB
=
ϕA
dup
ψB
dup=
ϕAψB
dup (A.2.12)
と,2つの期待値の積をϕとψの積の1つの期待値として書ける事である.これから,
ϕA;ϕB
=
ϕAϕB
dup−
ϕAψB
dup=1 2
(ϕA−ψA)(ϕB−ψB)
dup (A.2.13)
と書けることがわかる.ここで更に,新しいスピン変数 sx=ϕx+ψx
2 , tx=ϕx−ψx
2 (A.2.14)
を導入しよう.するとϕA−ψA は ϕA−ψA=
x∈A
ϕx−
x∈A
ψx=
x∈A
(sx+tx)−
x∈A
(sx−tx) =
D∈A
CDsDtA\D, CD≥0 (A.2.15) と,非負の係数CD を用いて展開できる.従って,(A.2.13)の期待値の中身も
(ϕA−ψA)(ϕB−ψB) =
D,E
CDE sDtE (A.2.16)
の形に適当な非負の係数CDE を用いて書ける.一方,{ϕ}と{ψ} の分布を表す−H({ϕ})− H({ψ})をs, tで表 すと,(A.1.2)の形ならやはり
−H({ϕ})− H({ψ}) =
B
JB(ϕB+ψB) =
B
JB
x∈B
(sx+tx) +
x∈B
(sx−tx)
=
D,E
CDE sDtE (A.2.17) と,正の係数CDE を用いて書けるので,{sx, tx} で与えられるスピン系は強磁性的であることがわかる.そこで e−H({ϕ})−H({ψ})を(i)でやったように展開すると,
e−H({ϕ})−H({ψ})=
F,G
CF G sFtG (A.2.18)
の形に非負の係数{CF G } を用いて書ける.よって結局期待値(A.2.13)の分子の期待値に出てくる量は e−H({ϕ})−H({ψ})(ϕA−ψA)(ϕB−ψB) =
D,E
CDEsDtE (A.2.19)
と非負の係数{CDE} を用いて書け,(A.2.13)の分子自身は ((A.2.13)の分子) =
dΛ(Φ)
dΛ(Ψ)e−H({ϕ})−H({ψ})(ϕA−ψA)(ϕB−ψB)
=
D,E
CDE
dΛ(Φ)
dΛ(Ψ)sDtE
=
D,E
CDE
x∈Λ
dϕxη(ϕx) (sx)nx
dψxη(ψx) (tx)mx
(A.2.20) と積の形に書ける.ここでD 中のsx の出現回数をnx,tx の出現回数をmx と書いた—これらはD, E による が,記号を簡単にするためにその依然性は書いていない.
ここまで来ればこれからどのように進むかは明白であろう.Griffiths Iの証明でも行ったように,積分測度の偶 関数性などを用いて,(A.2.20)の積分が非負だと言いたいわけだ.問題はsx, tx は ϕx, ψx によって定義されてい るのであり,積分測度の不変性が自明でないところにある.
これに関しては以下のように考える.もともと,ϕx とψx は独立であり,積分密度η(ϕx)η(ψx)は ϕx, ψxのそ れぞれの符号を独立に変える変換に対して不変であった.つまり,
T1: ϕx の符号を変える変換,
T2: ψx の符号を変える変換,
のそれぞれがη(ϕx)η(ψx)を不変にする.このそれぞれがsx, tx の言葉でどのような変換になっているかと言うと,
T1: ϕx の符号を変える変換は,「sx とtx を交換した上で,更にsxとtx両方の符号を変える」変換 T2: ψx の符号を変える変換は,「sxと tx を交換する」変換
になっている(sx, txの定義を見て納得せよ).従って T1, T2の変換を続けて行うことにより T3: sxと tx 両方の符号を同時に変える変換(T3=T2◦T1)
を作ることができる.つまり,この変換T3に関してη(ϕx)η(ψx)は不変である.
これだけではまだ足りない.幸いなことにη(ϕx)η(ψx)は T4: ϕx とψx を交換する変換
についてもtrivialに不変である.この変換はsx, tx の言葉では T4: tx のみの符号を変える変換
となる.更にT3と T4 を続けて行うことで,
T5: sxのみの符号を変える変換(T5=T4◦T3) も作ることができる.
結果的に η(ϕx)η(ψx)は,「sx とtx の符号を独立に変える変換」に関して不変なことがわかった.
従って,(A.2.20)の右辺に出てくる積分は全てのnx, mxが偶数の時は正の値,それ以外は全てゼロ,となること がわかり,(A.2.20)が非負の項の和であること結論される.(A.2.13)の分母は勿論正であるから,これで(A.2.13) 自身が非負であることが結論できた.