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第 4 章 基礎物理過程とシミュレーション手法 35

4.2 状態方程式

4.2.2 Shen の状態方程式

µ=∂F/∂nB|Ye,T として

P = P =Ph = nFh−nhF nh−n

(4.89) µ = µ=µh = Fh−F

nh−n

(4.90) を得る。他の熱力学量は

ˆ

µ = µe+nh−nB

nh−nµ−µe,ℓ) + nB−n

nh−nµh−µe,h) (4.91)

µn = µ+Yeµ−µe) (4.92)

ns = nh−nB nh−n

sn+nB−n nh−n

shnh (4.93)

となる。以上の手順によって自由エネルギーを最小化するモデルパラメータから熱力学量を計算 するのが、Lattimer & Swestyの状態方程式である。

m mσ mω mρ gσ

938.0 511.19777 783.0 770.0 10.02892 gω gρ g2 [fm1] g3 c3 12.61394 4.63219 -7.23247 0.61833 71.30747

表4.2: LShen中の各種パラメータの表。g2を除き、全てのパラメータの値はMeV単位で与えた。

値はShen et al. (2011)から取っている。

するために導入した項である。g2,3c3は中間子の自己結合定数である。各パラメータは原子核の 性質を再現するために表4.2のように与える。いま、この系に平均場近似を適用する。すなわち、

中間子の場に関しては古典的に扱い、時間的に一定、空間的に一様であるとする。すると、残る 非零成分はσ =⟨σ⟩ (右辺のσは場としてのσで左辺は平均値)、ω =⟨ω0ρ=⟨ρ30となる。こ れらを支配するEuler-Lagrange方程式は

σ = −gσ

m2σ⟨ψψ¯ ⟩ − 1

m2σ(g2σ2+g3σ3) (4.98) ω = gω

m2ω⟨ψγ¯ 0ψ⟩ − c3

m2ωω3 (4.99)

ρ = gρ

m2ρ⟨ψτ¯ 3γ0ψ⟩ (4.100)

であり、核子のDirac方程式はt= p,nをアイソスピンを示す添字として {−iγ0γkk+γ0(m+gσσ) +gω+gρτ3ρ

}

ψts=Etsψts (4.101) となる。ただし、sはエネルギー準位の添字でEtsは核子tのエネルギー準位sにおけるエネルギー 固有値である。核子tがあるエネルギー準位sを占める確率はFermi-Dirac分布

fts= 1

1 + exp((√

k2+ (m+gσσ)2−µ0t)/T) (4.102) で与えられる。ただしkは運動量でµ0tは質量を含まない化学ポテンシャルである。反粒子を考え る場合は化学ポテンシャルの符号が変わる。ここで、化学ポテンシャルと核子tの数密度は

nt= 1 π2

0

dkk2(ftk−f¯tk) (4.103) で結び付けられる。ただし、エネルギー準位を表す添字sの代わりに運動量kを用い、核子tの反 粒子を¯tとした。いま、バリオン数密度nB =np+nn、陽子存在比Yp=np/nBおよび温度T は 与えられたものとすると、そこから化学ポテンシャルがσの関数として決まり、以上の方程式を 自己無撞着に解くことができる。

以上からエネルギー固有値と平均場の値が求まると、種々の熱力学量を求めることができる。内 部エネルギー密度は

e = ∑

t

1 π2

0

dkk2

k2+ (M +gσσ)2(ftk+f¯tk) + 1

2m2σσ2+ 1

3g2σ3+1

4g3σ4+1

2m2ωω2+3

4c3ω4+1

2m2ρρ2 (4.104)

であり、圧力は

P = ∑

t

1 3π2

0

dkk2 k2

k2+ (M+gσσ)2(ftk+f¯tk)

1

2m2σσ21

3g2σ31

4g3σ4+ 1

2m2ωω2+ 1

4c3ω4+1

2m2ρρ2 (4.105) さらにエントロピー密度は

s=∑

t

1 π2

0

dkk2

{−ftklnftk(1−ftk) ln(1−ftk)−f¯tklnf¯tk(1−f¯tk) ln(1−ft¯k) } (4.106) と計算できる。

次に非一様核物質の場合を考える。ここでは、以下に示すモデルに従って自由エネルギーを計 算し、その停留点を探す。考えるモデルはLattimer & Swestyと同様に、核子とレプトンで満た された気体の中に一種類の代表的な重原子核が存在しているような状態である。ここでも、レプ トンは一様に分布する相互作用しない相対論的粒子として扱い、寄与は別にして考える。代表的 原子核は体心立方格子を構成し、格子あたりのバリオン数NBと平均的なバリオン数密度nBを用 いて格子の体積Vcと格子定数aVc =a3 =NB/nBと定義する。ここで、体心立方格子を同体 積の球(Wigner-Seitzセル)とみなし、核子t= n,pの数密度分布nt(r)を

nt(r) =



(nt,i−nt,o) {

1(

r Rt

)pt}3

+nt,o, 0≤r < Rt nt,o, Rt≤r ≤Rc

(4.107)

と仮定する。ただしrはWigner-Seitzセルの中心からの距離でRcVc= 3 R3cから決める。nt,int,oは核子tのセル中心および原子核外での密度で、Rtptは原子核の大きさと表面の厚さを決 めるパラメータである。いま、バリオン数密度nB、陽子存在比Yp、温度Tを与えた状態でこの 状態の自由エネルギー密度

F = (E−T S)/a3 (4.108)

を計算する。ここで、E=Ebulk+Es+ECと分解でき、

Ebulk =

cell

d3re(nn(r), np(r)) (4.109) S =

cell

d3rs(nn(r), np(r)) (4.110) である。e(nn, np)、s(nn, np)は、相対論的平均場理論により一様物質の時にnBYpすなわちnnnpを与えて計算した内部エネルギー密度、エントロピー密度である。表面項はすなわち密度勾 配がもつエネルギーなので、

Es=

cell

d3rF0|∇(nn(r) +np(r))|2 (4.111) として計算する。ただし、F0= 70 MeVfm5である。さらに、Coulombポテンシャルの項は

EC= 1 2

cell

d3re{np(r)−ne}ϕ(r) +CBCC(Znone)2

a (4.112)

と計算できる。ここで、eは電子電荷でne=YpnBは一様に分布した電子の電荷、CBCC = 0.006562

状態方程式 Lattimer & Swesty Shen

Ks[MeV] 375 220 180 281

中性子星最大質量 [M] 2.72 2.04 1.83 2.24

表4.3: 中性子星のとりうる最大重力質量の状態方程式に対する依存性。O’Connor and Ott (2011) で計算されている。

は体心立方格子に対してWigner-Seitzセルからのずれを表す定数で、Oyamatsu (1993)に値が示 されている。さらに、

Znon =

Rp

0

4πr2dr(np,i−np,o) {

1 ( r

Rp

)tp}3

(4.113) はセル内の電荷分布の非一様部分である。また、ϕ(r)はWigner-Seitzセルを考えた場合の静電ポ テンシャルで、Poisson方程式

2ϕ(r) = 4πe{np(r)−ne} (4.114) の解である。以上のモデルから自由エネルギーを計算し、それを最小化するモデルパラメータann,inn,oRnpnnp,inp,oRpppの組を見つける。ここで、バリオン数の保存則と電荷保 存則から、モデルパラメータは9個あるが実際の自由度は7である。

最終的に得られる自由エネルギーを一様核物質と非一様核物質の場合とで比較し、小さくなる 方の形態が実現されるとして熱力学量を求める。これがShenの状態方程式である。ここで、一 様か非一様かを分ける密度はだいたい1014g/cm3程度になる。また、Lattimer & Swestyの状態 方程式との比較のために書いておくと、Shenの状態方程式から得られる非圧縮性パラメータは Ks = 281 MeV、対称エネルギーはSv= 36.9 MeVとなっている。

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