• 検索結果がありません。

STS モデルの導出とその推定可能関数

4. Simple-two-stage model ( STS モデル)

4.2. STS モデルの導出とその推定可能関数

4.2.1. 連続死亡強度に対するSTSモデル

まず,年齢

u

∈[0,a)と時点(年)

v

∈[0,b)の全癌死亡強度関数を

µ ( , ) u v

と表し,以下を仮定

する.

(i)時刻

t

(−

a

,

b)で生存している個人の体内の細胞が,微小時間区分

[

t, t+dt)に発癌物 質によって癌化の第1段階へ進まされてしまう危険強度(環境危険強度と呼ぶ)は,時刻

t

だけ

に依存する.(この仮定は,暗に,各個人が全て同じ数の正常細胞を持ち,それが年齢や時刻に よって変化しないことを含んでいることに注意.)

(ii)発癌物質によって時刻

t

(−

a

,

b)に癌化の第1段階へ進まされた細胞が,微小時間区分

[

s,s+ds)st

s

∈[0, b)

st

∈[0, a)に末期癌にまで成長してしまう危険強度(成長 危険強度)は

st

だけに依存する.

これらの仮定の下で,環境危険強度を

ξ (t)

で,成長危険強度を

ψ (

st)で表すと,全癌死亡強

µ ( , ) u v

( , )

v

( ) ( )

u v v u t v t dt

µ ξ ψ

=

. 4.2.1-a

と表される.ただし,上のモデルでは,問題を簡単にするため,

ψ (s

t)ds

st

年前に癌化 の第1段階へ進んだ細胞から,クローンとして派生した腫瘍が末期癌に成長してしまう確率を含 んでいるものとする.また,時刻

t

に源を発する悪性腫瘍は,他の時刻に源を発する悪性腫瘍 と独立に成長すると仮定している.(Figure 4.2.1-a は,モデル(4.2.1-a)をレクシス・ダイアグ ラム上で表したものである.)

age

0

v

time

(

v t

)

ψ

( )

t dt

ξ

vu t u

µ (u,v ) = ξ ( t) ψ (v − t)dt

v−u

v age

0

v

time

(

v t

)

ψ

( )

t dt

ξ

vu t u

µ (u,v ) = ξ ( t) ψ (v − t)dt

v−u

v

Figure 4.2.1-a:連続死亡強度についてのSTSモデルの考え方.

  発癌物質による第1段階への進展とその後の成長だけを考えれば,モデル(4.2.1-a)は癌によ る死亡強度を表すのに妥当なモデルである.また,

ξ (t)

ψ (s

t

)

は共に危険強度と定義され ているため,正の値をとるはずである.しかしながら,最近では,癌は免疫性,つまり,悪性 腫瘍にたいして免疫系が監視役を務め,悪性腫瘍はその成長過程で免疫系によって除外されう ることが知られている(Kripke, 1986 を参照).癌に対する免疫機能は,発癌物質によって細胞 が癌化の第1段階へ進まされた時点で強化されると考えられるため,免疫機能の強さの期待値は,

癌化の第1段階へ進まされた細胞の数に比例すると仮定できるであろう.つまり,時刻

v

u

であるような個人の体内の癌に対する免疫力は

ξ (

t)dt

v−u

v に比例すると仮定できるのである.

このような事情を鑑みると,モデル(4.2.1-a)は

ξ (t) ψ (v − t)dt

v−u

v

=

v−u

ξ (t) ψ *(v t)dt

v

φ

vu

ξ ( t)dt

v , (4.2.1-b)

と解釈することができる.ただし,

φ

>

0

は比例定数を表し,

ψ *(v − t)

は免疫機能を考えない

場合の純粋な成長危険強度である.この解釈から,

(u,

v)∈[0, a)

× [0,

b

)

上の全ての点におい

µ (u,

v)>

0

が保たれる限り,

ψ (v

t)=

ψ

*

(v

t)

φ

∈(−∞,∞);

vt

∈[0, a),つまり,

ψ (

st)は負の値を取りうると仮定する.

4.2.2. PCIモデルに対するSTSモデル

モデル(4.2.1-a)は,STSモデルの基本的な考え方を表しているが,我々が解析しようとするデ ータは年齢・時代区分別(区間長は5歳と5年)に与えられた癌死亡者数と対応する人口である ため,(4.2.1-a)を直接適用することはできない.

  そこでここでは,年齢・時代区分データの解析にSTSモデルを適用できるように,PCIモデル

(副節2.1.2参照)としてのSTSモデルを次のように定義する.

1 1

( )

j

ij ij k j k

k j i

µ µ ξ ψ

− +

= − +

= θ ≡ ∑

, 4.2.2-a

た だ し ,

θ

( , ψ

1 ⋅⋅⋅

, ψ

I

, ξ

2−I

,⋅⋅⋅ , ξ

J

) ′

Θ

{ | θ ψ

1>

0

,

ψ

i

(−∞,

∞);i=

2, ⋅⋅⋅ , I

,

ξ

k

> 0

k = 2 − I , ⋅⋅⋅, J

,

µ θ

ij

( ) > 0

for

i = 1, ⋅⋅⋅, I

; j=

1,

⋅⋅⋅,J}である.また,

µ θ

1j

( ) > 0

ξ

j

> 0

を仮定するため,

ψ

1>

0

である.

  STSモデルとレクシス・ダイアグラム上のPCIモデルとの関係を理解するためにFigure 4.2.2-a

を示す.また,モデル(4.2.2-a)は,I =

3

J =

4

のとき,環境危険強度を回帰係数とした回 帰モデル,または,環境危険強度を要因効果とした実験計画で用いられる分散分析型モデル

(ANOVAモデル)の形で表すと,

11 1

12 1

13 1

14 1

21 2 1

22 2 1

23 2 1

24 2 1

31 3 2 1

32 3 2 1

33 3 2 1

34 3 2 1

0 0 0 0 0

0 0 0 0 0

0 0 0 0 0

0 0 0 0 0

0 0 0 0

0 0 0 0

0 0 0 0

0 0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0 0

0 0 0

µ ψ

µ ψ

µ ψ

µ ψ

µ ψ ψ

µ ψ ψ

µ ψ ψ

µ ψ ψ

µ ψ ψ ψ

µ ψ ψ ψ

µ ψ ψ ψ

µ ψ ψ ψ

⎛ ⎞ ⎛ ⎞

⎜ ⎟ ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜ ⎟

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜=

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎜ ⎟ ⎜

⎝ ⎠ ⎝ ⎠

2 1 0 1 2 3

ξ ξ ξ ξ ξ ξ

⎛ ⎞

⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟⎜ ⎟

⎟ ⎜⎝ ⎟⎠

⎟⎟

⎟⎟

⎟⎟

(4.2.2-b)

と表される.この表現を用いると,STSモデルは,回帰モデル,または,ANOVAモデルの計画 行列にパラメータが入った形をしていることが分かる.

age

time

µ

ij

=

1

ξ

j i− +

P

j 1

P

j 1

P

j i− +

• • •

• • •

ξ

j+1

• • •

A

0

A

1

A

i

A

I

P

J

P

0

ψ

1

ψ

i • • •• • •

1 j

ψ ξ

+

+

1 i j i

ψ ξ

− +

Figure 4.2.2-a:PCIモデルについてのSTSモデルの考え方.

関連したドキュメント