3. Age-environment model ( AE モデル)
3.8. 結び
年齢効果:
Figure 3.7.3-b に加齢効果(年齢効果の1階差分,
µ = 0
,α
2−α
1=0
を仮定)の推定値を示す.図から,加齢効果の推定値は,「M字カーブ」を呈している.これは,一般に知られている
「20代前半の新卒採用→結婚,出産そして子育てに伴う離職→子育て終了による復職」による 労働力率の変化傾向と一致している.
0.00
-1.07 -0.36
-0.28
-0.50 -0.65
-0.79 -0.02
0.09
-1.20 -1.00 -0.80 -0.60 -0.40 -0.20 0.00 0.20
20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64
age interval ˆi ˆi1
α α− −
Figure 3.7.3-b:
µ = 0
,α
2−α
1=0
の制約下での加齢効果(年齢効果の1階差分)の推定値(女子労働力人口).
かの最低影響年齢に関しては,AEモデルはAPモデルよりデータへ良く当てはまることを示し た.さらに,環境効果の推定値から,「1980年代の女性の高学歴化」,「1980年代の女性の職 場環境の改善」,「バブル経済崩壊に伴う不況による女子大生の就職難」,「第1次,2次オイ ルショックに伴う不況」そして「世界恐慌および第2次大戦後の経済混乱」が女子労働力率に与 えた影響を読み取ることができた.
3.8.2. リマーク(Remark) Remark 3.1:
Hanayama(2001)は,多段階癌成長モデル(multi-stage cancer model; Armitage, Doll 1954,
Moolgavkar, 1978参照)を参照しながら,年齢・時代区分別に観測された癌死亡率データを解析
するためのsimple two stage model(STSモデル)を提案している.(STSモデルについては,本論 文の第4章で紹介する.)STSモデルは,環境効果を暴露されてからの経過時間に依って変化す る暴露経過時間効果(time-since-exposure effect)で重みを付けて累積するモデルである.そこ で,STSモデルを乳癌死亡率データへ当てはめることも考えられるが,乳癌では年齢に関係す るリスクが知られているが,STSモデルは年齢に関わるパラメータを含んでいない.この意味 で,乳癌死亡率データの解析には,年齢効果を持つAEモデルの方がSTSモデルより適している と考えられる.さらに,STSモデルは,非線形ポアソン回帰モデルのクラスに属するため,適 切な初期値を与えないと最尤推定値を見つけることができない.実際,本論文で解析した日本 の乳癌死亡率データにSTSモデルを当てはめても,最尤解を見つけることはできなかった.
Remark 3.2:
(3.2.2-a)や(3.4.1-a)で定義されているAEモデルでは,環境効果は,一律に重み1を課して累
積されている.これは,時間的一定絶対リスク(UNSCEAR, 1994参照)の考えに基いている.
しかしながら,この考えは,環境要因への暴露に関係するリスクの趨勢を映し出すには,単純 過ぎて不自然かもしれない.一方,次章で提案するSimple-two-stage model(STSモデル)では,
暴露されてからの経過時間に依るパラメータを重みとして課して,環境効果を累積している.
この意味で,次章のSTSモデルは,本章のAEモデルを発展させたものと考えることができる.
Remark 3.3:
3.6節と3.7節で行った実データの解析では,Robertson, Boyle(1989)の提案している“出生区分 の重複しない”APCモデル(副節2.3.2参照)も参照モデルに加えるべきかもしれない.(
W
ij0と
W
ij1へのデータの振り分けは,死亡者数を単純に2で割る方法を取ることで,このモデルを 我々のデータへ当てはめることができる.)しかし,異なるタイプのAPCモデルを参照モデルに用いることで発生する混乱を避けるため,本論文では,彼等のAPCモデルは参照モデルとして 採用しなかった.
Remark 3.4:
Holford et al.(1994)は,多段階癌成長モデル(multi-stage cancer model)を参考に,特殊なタ イプのAPCモデルを提案している.そこでは,年齢効果について上に凸な曲線を仮定している.
彼等の年齢効果に対する仮定は,北欧4ヶ国についてAEモデルを当てはめた結果とは整合する が,日本のデータへ当てはめてた結果とは整合しない.