・
・前回のザンビアでのmEGDTのRCTの死亡率をもとに, 死亡率を65 %と仮定.
・死亡率の絶対危険度20 %低下を検出する.(前回のザ ンビアでの試験での相対危険度30.8 %低下に相当.)
・検出⼒= 80 % 有意⽔準α= 0.5 以上よりsample sizeを212とした.
・Modified intention-to-treat
→割り付け後にinclusion criteriaを満たさないことが判 明した患者(3 ⼈)は対象から除外.
結果的に対象患者は209 ⼈.
STATISTICAL ANALYSIS
・連続変数:平均値・標準偏差または中央値・四分位範囲.
・カテゴリー変数:頻度・割合.
・グループ間のparametric連続変数:t 検定
・グループ間のnonparametric連続変数:Mann-Whitney検定
・カテゴリーデータ:χ2検定
・⽣存期間:log-rank検定
・2群間の院内死亡率:χ2検定
・Subgroup解析:Mantel-Haenszel検定
・解析はStata version 12.1を使⽤.
Results
Patients
Entry 3515除外症例:⼈3133⼈Met inclusion criteria:382⼈↓ 除外症例:
・Met exclusion Criteria :127⼈
・ 満たしたが不参加:43⼈ 試験対象:212⼈↓
Protocol群:107⼈
Usual care群:105⼈
↓ 割り付け後除外:3⼈ Protocol群:106人
Usual care群:103人
↓ Follow up失敗:15⼈
Protocol群:97⼈
Usual care群:97⼈
Characteristic
低栄養
若年(36.7 歳)
高いHIV陽性率 免疫不全多い 結核の既往多い
患者背景に有意 差を認めない. 208/209人は人 工呼吸器のない 一般病棟で管理. 乳酸低値もいる
・呼吸器感染症が最多.
・肺結核が⾼頻度で, 全体の38.3 %は肺結核を合併.
・両群間で抗⽣剤投与開始までの時間に有意差を認めない.
Diagnosis and time to antibiotics
Microbial pathogens
・先進国では稀な結核・マラリア陽性患者を認める.
Primary outcome (院内死亡率)
Protocol群 vs usual care群= 48.1 % vs 33.0 % (p = 0.3)
・Protocol群で有意に院内死亡率が⾼い.
Secondary outcome ( Hemodynamic )
・総補液量はprotocol群で有意に多い.
・Protocol 群の41⼈(38.7 %)は, 4 Lまたはprotocolに反し て4 L以上投与した.
・Protocol群の65 ⼈(61.3 %)は, 溢⽔所⾒を認めたため, 4 L補液する前に補液を中⽌した.
Usual care 群の補液量
・補液のbolus投与を施⾏し
たのは, usual care群の50⼈ (48.3 %).
・Usual care群では, 補液の bolus投与をせず, 治療介⼊後 から24 hで合計3 L投与した 患者が最も多かった.
Secondary outcome
( Change from baseline after enrollment )
・乳酸値はprotocol群で有意に改善したが, 両群間で⾎圧 の変化に有意差を認めない.
・Protocol群で有意に呼吸状態の増悪を認める.
Secondary outcome
( Vasopressor, transfusion )
・Dopamineの使⽤率はprotocol群で有意に多い.
・輸⾎率は両群に有意差を認めない.
Secondary outcome ( Adverse events )
・有害事象については, 両群で有意差を認めない.
Subgroup 解析
・HIV陽性患者では, protocol群の⽅が死亡率が有意に⾼い. その他 のsubgroup解析では重症度によらずprotocol群の⽅が死亡率が有意 に⾼い.
Discussion
・現在の先進国のRCTでは, EGDTは標準治療と治療効 果は変わらないという⾒解.
・しかし, 今回の途上国ザンビアでのRCTでは, EGDTに 準ずる治療(protocol群)は院内死亡率上昇・呼吸状 態の増悪を来すという結果.
↓
なぜか?
Discussion ①
Discussion ②
(⼈⼯呼吸器の不⾜)
①
・途上国では, HIV陽性患者, 結核既往患者が多く, 補液のbolus投与 による肺⽔腫や呼吸不全のリスクが先進国より⾼い可能性あり.
・今回のRCTでは, 呼吸状態の増悪は protocol > usual care.
→途上国のprotocol群は治療後の呼吸不全のリスク⼤.
②先進国ならば, 呼吸不全の患者に対して⼈⼯呼吸器管理が可能 だが, 途上国では⼈⼯呼吸器が使⽤できずに呼吸状態が増悪した 患者を挿管せずに病棟管理.
①+②
=⼈⼯呼吸器という医療資源の不⾜が, 呼吸不全を来しやすい途
上国のprotocol群で死亡率を増悪させた?
Discussion ③
(中⼼静脈カテーテルの不⾜)
①総補液量・呼吸状態の増悪は protocol > usual care.
②
・今回のRCTでは, 中⼼静脈カテーテルがなかったため, EGDTの評 価項⽬のCVPをJVPで代⽤.
・しかし呼吸状態が増悪した患者のうちJVPの上昇を認めたのは 10 %未満であり, JVPの上昇は容量負荷の指標として有⽤でな かった可能性がある.
①+②
=中⼼静脈カテーテルという医療資源の不⾜のために使⽤した JVPが溢⽔を⾒逃してしまい, 補液過剰となりやすいprotocol群で 死亡率が増悪した?
Discussion ④
( 昇圧⼿段が dopamine のみ)
Crit Care Med. 2012;40(3):725-730
①昇圧剤の使⽤率は
protocol群で有意に多い.
②ショック患者に対する 昇圧は, dopamineの⽅が norepinephirineよりも死亡 率が⾼い.
①+②
=昇圧⼿段が死亡率の⾼
いdopamineのみであった ため, 昇圧剤使⽤頻度の⾼
いprotocol群において死亡 率が上昇した?
Strength
・ランダム化されていること.
・割り付け時は医療者・患者は盲検化されていたこと.
・データの観察や記録や収集は, 盲検化された研究グ ループが施⾏したこと.
・従来のEGDTのRCTと異なり, protocol群とusual care群 との間に①輸液のbolus投与の有無②総補液量の有意差 があり, これらの敗血症への影響を検証できる.
Limitation
・中規模の単施設研究であること.
→普遍性に⽋ける.
・発症のonsetが介⼊よりも数⽇-1週間前の症例あり.
→治療内容の違い(protocol or usual care)とはべつに, 敗⾎
症への治療介⼊時期の違いが死亡率に影響を及ぼし得る.
・割り付け後は, 医療者や患者は盲検化されていない.
→バイアスの原因になり得る.
・JVPという信頼性の低い指標を⽤いたこと.
→JVPが容量負荷を反映していない可能性.
・全患者のうち, 集中治療室で治療できたのは1⼈のみ.
→途上国の医療を反映しているが, ⼀般化はしづらい.
Conclusion
・HIV, 結核の罹患率が⾼く, 医療資源に制限がある途上
国では, EGDTに準じた治療(輸液のbolus投与・昇圧)は
usual careに⽐べて院内死亡率を⾼める.
・途上国の敗⾎症治療における輸液のbolus投与・昇圧 の有⽤性について更なる検証を要する.
Editorial
JAMA. 2017 Oct 3;318(13):1225-1227
今回の RCT の問題点・課題
(本⽂の limitation で指摘されたもの以外 )
・Protocol自体に補液過剰のriskがあり, 今後の改善が望まれる.
①初回のbolus投与が⼀律2 L. (体重の記載はないが, SSCGで推奨 されている20-30 mL/kgを明らかに上回る. )
②Bolus投与後の補液は, 溢⽔所⾒さえなければ⾎圧が改善して
いたとしても, 2 Lを4 時間で追加投与.
③その溢⽔の評価も, 補液1 Lを追加するタイミングのみであり 少ない. (1時毎に評価するなど, より頻回におこなうべき.)
・対象に純粋な感染症(not 敗血症)が含まれていた可能性あり.
①対象に多い低栄養患者はしばしば低⾎圧を合併する.
②乳酸値が上昇していない患者も含まれている.
③usual care群では無治療で⾎圧が改善した患者がいる.
・治療介⼊群とコントロール群の区別が明確.
・設定したoutcomeについて患者の追跡を⼗分におこ なっている.
・Subgroup解析とsecondary outcomeに⼀貫性がある.
・途上国の敗⾎症死亡率を改善させるためには, ⼤規模 臨床研究とそれにより⾒出されたprotocolの作成が必要. 今回の研究はその先駆的な存在である.
今回の RCT の評価すべき点①
・今回のRCTでは, ①輸液のbolus投与の有無②総補液量の違いで 両群を割り付けることができた.
(cf. 従来のEGDTのRCTでは, ①対象全員が割り付け前に輸液の bolus投与②両群間の総補液量の有意差がないものが多い.)
→ 輸液のbolus投与や過剰な補液が敗血症の院内死亡率を高める
可能性が示唆された.
N Engl J Med. 2017 Jun 8;376(23):2235-2244
N Engl J Med. 2011 Jun 30;364(26):2483-95
・敗⾎症において, 輸液の初回bolus投与(30 mL/kg)と院内死亡 率は相関しない.
・アフリカの⼩児に対して輸液のbolus投与は有意に死亡率を
⾼めた.
→敗血症の初期蘇生protocolにおける輸液のbolus投与の意義に 疑問. これについての更なる検証が望まれる.
今回の RCT の評価すべき点②
私⾒
・今回のRCTがおこなわれたザンビアは, ⽇本と医療資源や患者 背景が⼤きく異なるため, ⽇本における今後の敗⾎症の治療⽅
針として参考になる点は確かに少ない.
・今までの先進国でのEGDTのRCTでは, EGDT群とusual care群の 間に総補液量や輸液のbolus投与の有無に違いはなかった結果, 呼吸不全→⼈⼯呼吸器使⽤率に有意差を認めなかったとも考え られる. 途上国のみならず先進国でも, 総補液量の違いや輸液の
bolus投与の有無についてのRCTを⾏い, 敗⾎症治療における適
切な補液について検討してもよいのではないだろうか.
・先進国には補液過剰による呼吸不全に対して⼈⼯呼吸器とい う⼿段があるが, 漫然と補液を⾏っていいということにはなら
ない. SSCGが推奨する補液量は過剰である可能性があり, 今後は
この点を念頭に治療にあたると共に, 今後の知⾒に注⽬したい.