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SEM内での試料加熱への応用

ドキュメント内 荷電粒子線を用いた局所観察法に関する研究 (ページ 117-128)

第 5 章 FIB と大気ガラスマニピュレーターを用いた試料作製法とその場

5.2 FIB と大気ガラスマニピュレーターを用いた、その場観察用試料作製法

5.2.3 SEM内での試料加熱への応用

加熱した際に異種金属間で生じる合金化のプロセスをサブミクロンオーダーで、

その形態及び組成を含めて可視化したいというニーズが接合材料の研究者を中心に 多くある。これに対しては SEM 用の加熱モジュールを用いる方法が有効な手段の となる。本研究ではSEM用加熱モジュールとしてProtochips社製試料加熱システ

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ム(Aduro)をJSM-7100Fに組み込んで実験を行った。

本研究は日本電子の中嶌香織主事、同新美副主査、森田正樹リーダーらと共同で 進められた。

(a)実験方法

試料作製にはFIBを用い、ガラスマニピュレーターでその試料を加熱モジュール 上に搬送した。そして、加工した銅ブロック上のスズブロックが温度上昇により形 態や元素分布が変化する過程を記録した。Aduro の外観を図 5.4a に示す。Aduro は加熱ホルダー(Aduro 100 SEM)と加熱チップ(Aduro Thermal E-chip)からなる。

試料は加熱チップ上の 500μm 角の加熱領域に載せ、間接加熱方式で試料加熱を行 う。加熱領域が小さいため試料ドリフトが小さく、温度変化の応答性が速いのが特 長である。この加熱領域に試料を載せるにはFIBとピックアップ法の組み合わせが 有効である。実験では銅とスズの合金化の実験を行った。本実験に用いた試料の作 製手順を図 5.4bに示す。あらかじめ FIB により銅ブロックを作製する。この銅ブ ロックは基 板とし て使用する ためそ の上に載せ るスズ ブロックよ り大き く(横:

30μm、縦:50μm、厚さ:3μm 程度)作製する。次に同様の手順でスズの試料ブロ ック(横:20μm、縦:10μm、厚さ:1μm程度)を作製し、ガラスマニピュレーター によりあらかじめ加熱チップ上に搬送された銅ブロック上に搬送し、銅、スズの接 触面を作る。図右上はガラスプローブによりピックアップされたスズ試料ブロック、

右下は銅ブロック(基板)上に搬送されたスズブロックの光学顕微鏡写真である。本 プロセスで作製した試料を異種材料の加熱による合金化現象観察用の試料とした。

試料作製完了後に加熱チップを加熱ホルダーに設置後、SEMに挿入して加熱を開始 し、加熱時のSEM像による形態変化とEDS(エネルギー分散型X線分光装置)によ る元素分布変化を記録した。

(b)結果

実験結果を図5.4c に示す。 FIB加工及びピックアップで作製された銅とスズ接 触面の過熱過程のSEM像、元素マッピング像を示す。これらは、EDS(エネルギー 分散型X線分析装置)のプレイバック機能により実験後に抽出されたデータである。

加熱していくと、約 200℃でスズが溶解し銅基板上に浸み出し始めた。また、スズ 試料片上で異なる2つの組成コントラストが確認されたことより、銅がスズ側にも 浸み出していると予測される。約 220℃では銅、スズの浸み出しが更に進行してい る様子がSEM像、EDS元素分布図で認められた。約240℃では各ブロック上に浸 み出したスズが概ね同一強度を示したことより、この接合面では合金化していると 考えられる。更に加熱をしていくと、約 275℃でスズ試料片の表面に凹凸構造が発 生した。その後 300℃まで加熱したが、表面構造および元素分布の変化は認められ

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なかった。以上の結果から、FIBとピックアップ法の組み合わせで、温度変化によ るサブミクロンオーダー合金化現象の可視化ができることが分かった。

(c)考察

ナノメートルオーダーのその場観察において、いずれの研究もダイナミックな試 料変化の可視化が可能となり有効な結果を得ることができた。しかし、現時点では いずれのその場観察の実験においても、試料の扱いはユーザーの技術力に頼る部分 が多く、各分野の研究者が独自の技術を駆使して対応する必要がある。その中でFIB による微細加工とガラスマニピュレーターによる試料搬送は重要な要素技術となっ ていることが本研究結果より確信できた。その他のその場観察の研究 5.18)- 5.20)にお いても、FIBとガラスマニピュレーターは重要な「ツール」となっている。ただし、

要注意事項として Ga イオンの注入に関する影響を把握することが挙げられる。特 に加熱の実験においては Ga との合金化が進むと融点の変化など大きく物性が変化 することが予測される。本研究ではそこまでの知見を得ることができなかったが、

今後の課題として早急に検討をする必要がある。

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図 5.2a バルクピックアップ法を用いたナノインデンターホルダーへの試料取り 付け方

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図5.2b カンチレバーへの負荷試験中のTEM像及び負荷曲線

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図5.3a La0.9Sr1.5Mn0.4における電荷・起動整列の模式図

図5.3b 局所通電用試料作製法1

117 図5.3c 局所通電用試料作製法2

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図5.3d 110Kで観察れた La0.9Sr1.5Mn0.4の暗視野像

図5.4a 加熱モジュール(AduroTM)の外観

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図5.4b 加熱用試料(Cu・Sn合金化実験)の作製法

図5.4c Cu上のSnの加熱による合金化の過程(SEM像、元素マッピング像)

120 参考文献

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