6.3 考察
6.3.1 SECI モデルとの適合性に関する考察
いずれの方式においても,自身の暗黙知を形式知に変換する表出化する過程を満た している.提案方式,Blog,Wiki,梅田らの方式はテキスト情報だけでなくバリナリ データ(動画像,Word,Excelファイル等)を扱うことや,独自の入力支援(文法拡張 など)を行っているため,単純なテキスト情報に比べ優位であると判断した.SNS に 関しては,テキスト情報での表現が一般的であるが,一部のサービスにおいては動画
6.3 考察
像にも対応しているため,他のサービスよりも順位を下げた.
連結化においては,形式知同士の連携を強く実現する提案方式および梅田らの方式 が優位であると判断した.Wikiや河村らの方式はハイパーリンクによってコンテンツ 同士をリンクできるが,それ以上の連携を行うには至らないため,提案方式と比べ順 位を下げた.BlogはTrackBackを用いることにより実現可能であるが,そのつなが りは緩やかであるため,他方式よりも順位を下げた.SNS においては,他の形式知と 連結する機能を実現していないため,支援できていないと判断した.
内面化は,形式知から暗黙知へと変換する過程を表している.ここでは,蓄積され ている知識情報を利用者がどの程度理解しやすいかを示す.断片的な知識情報は連結 化の過程を経て知識情報同士がつなぎ合わせられることによって,より理解しやすく なると考えられる.提案方式および梅田らの方式は,自管理フィールド内で様々な知 識情報を組み合わせることが可能である.また,Wikiは多くの利用者によって様々な 見地から知識情報が編纂されていくため,次第に洗練された形式知が生み出されると 考えられる.いずれの方式も,質の高い形式知を生み出す支援を行っているため,高 く評価した.また,その他のシステムも多くの利用者が形式知を多く蓄積することに より,内面化を支援することができると判断した.
共同化においては,暗黙知を新たな機会に継承することによって支援できる.言い 換えるならば,人と人とを結びつけることによって,その機会を創出できると考えら れる.提案方式,SNS,河村らの方式はいずれもKnowWho情報が明確であり,他の 利用者とのコミュニケーションが円滑に進められる仕組みを有していることから,優 位性があると判断できる.一方,Wikiや梅田らの方式では,他のユーザとのコミュニ ケーションを図る機能が実装されていないが,コメント等でつながりを生み出すこと ができるため,運用次第で実現できると判断した.
6.3 考察
6.3.2 集合知収集の手順との適合性に関する考察
いずれのシステムも知識情報を公開するという考え方が原則となっているため,「公 開」の手順は全て強く支援できると判断できる.
「連鎖」の手順においては,情報と情報を何かしらの指標に基づき関連付けし,新 たな気付きを誘発させる必要がある.提案方式はタグによるつながり,キーワード検 索による発見,他ユーザの公開フィールドの閲覧機能などを有しているため,強い連 鎖が起きると考えられる.また,梅田らの方式においても,知識情報に付与されたメ タデータを通じて連鎖が可能であると考えられる.河村らの方式では,組織中に存在 する様々なグループを動的に生み出し,その中で情報共有を行うため,グループ間同 士のつながりが新しい気付きを創出すると考えられる.河村らの方式に機能的に近い SNSは,静的なグループ内での情報共有に留まるため,順位を下げた.また,Blogや WikiはハイパーリンクおよびTrackBackによる関連付けが生まれるため,支援でき ると判断した.
「選別」の手順においては,自らが必要な知識情報とそうではない知識情報とを区別 する機能が求められる.提案方式に限り,独自の管理フィールドを設け,その中で知 識情報同士を組み合わせることができる機能を実装しているため,優位性があると判 断した.SNSおよび河村らの方式においては,自身と関わりのないグループには参加 しないという判断を利用者が下せるため,運用次第では実現できると考えられる.他 の方式においては,そのようなシステム的な支援がなく,ただ「見る」か「見ない」か の判断に依存するため,支援できないと判断した.
「評価」の手順においては,公開されている知識情報にどの程度フィードバックが与 えられるかを指標とした.BlogはTrackBackやコメント機能が実装されているため,
知識情報公開者に対して強い評価が下せると判断した.また,河村らの方式において は,コメント機能に加え,その知識情報が有用であるかどうかの評価を数値的に与え る機能が実装されている.よって,適切に支援できると判断した.梅田らの方式以外
6.3 考察
はコメント機能を実装しているため,Blogや河村らの方式に比べて劣るが,支援でき ていると判断した.
第 7 章
結論
本論文では,第2章において,ナレッジマネジメントの必要性について述べ,共有 される知識情報の定義について示した.また,近年注目されている集合知について述 べた.
第3章では,Web2.0時代のWebサービスとその特徴について述べた.Web2.0の 登場により,インターネットユーザの行動が受動的な活動から,能動的な参加型の活 動へと変化したことについて触れた.そして,近年注目されているWebサービスの 特徴と,それらを組織におけるナレッジマネジメントへ応用する際の課題について述 べた.
第4章では,従来から提案されている様々なナレッジマネジメントシステムの概要 と,その特徴を解説した.また,集合知を獲得するまでの手順と位置づけながら,シ ステムの問題点について指摘した.
第5 章では,前章までの背景を踏襲したナレッジマネジメントシステムの提案を 行った.集合知収集に適したシステム構築を目的とし,その特徴について述べた.ま た,提案システムを支える情報アーキテクチャであるFolksonomyについて解説した.
その後,提案システムが取り扱う知識情報のデータ構造やシステムの機能について述 べ,開発環境について触れた.
第6章では,第 5章で提案したシステムと第3章および第4章で挙げたシステム とを,SECIモデルおよび集合知収集の手順における適合性について機能比較を行い,
その差について考察した.
最後に,今後の課題としては,組織内に蓄積された情報からエージェントが代わり
にインターネット上の様々なシステム(Blog,Wiki等)と連携しながらコンテンツの 推薦を行う機能の実装を挙げる.さらに,同じような趣向や嗜好を持つユーザ同士を 動的につなぎ合わせられる仕組みを設け,さらに知識の相互流通を支援する必要があ ると考えられる.そして,それらの機能を実装した後,長期間の運用試験を経て,定 量的な評価を行う必要がある.
謝辞
本研究の遂行と論文作成にあたって,言葉では言い表せないほどのご指導,ご助言 をいただきました高知工科大学フロンティア工学コース清水教授に心より感謝し厚く 御礼申し上げます.
本論文に関して,高知工科大学フロンティア工学コース渡邊教授,村上教授から適 切かつ多大なご助言をいただきまして,深くお礼申し上げます.
また,提案方式実装にご協力いただきました清水研究室,中原知也氏に心より感謝 いたします.
最後に,清水研究室全ての関係者に深く感謝いたします.
参考文献
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