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(1)

平成

18

年度

フロンティアプロジェクト

修士学位論文

集合知収集に適したナレッジマネジメント

システムの構築

Building a Knowledge Management System for

Acquiring Wisdom of Crowds

1095701

有瀬 和徳

指導教員

清水 明宏

2007

3

16

(2)

要 旨

集合知収集に適したナレッジマネジメントシステムの構築

有瀬 和徳

近年,組織におけるナレッジマネジメントが注目されている.それに伴い,ナレッ ジマネジメントを支援するシステムが多く開発されている.しかし,ナレッジマネジ メントシステムを利用することへの心理的ハードルの問題や,社内に存在する様々な コミュニケーションツールとの併用が難しく,効率的に運用される例は少ない.一方,

BlogやWikiをはじめとするWebサービスをナレッジマネジメントに適応させる取 組も行われている. 本稿では,現在提案されている様々なナレッジマネジメントシステムに求められる 機能と,様々なWebサービスの長所を兼ね備えたナレッジマネジメントシステムの開 発を行う.また,様々なWebサービスとの違いを明らかにし,提案システムの利用形 態について考察する. キーワード ノウハウ,集合知,情報共有,ナレッジマネジメント

(3)

Abstract

Building a Knowledge Management System for Acquiring

Wisdom of Crowds

Kazunori ARUSE

In recent years, many organizations are concerning about sharing information systems. Many approachs which can help the sharing information are suggested. However, there are many problems. To use the knowledge management system has extra stress to users. In addition, it is difficult to use various communication tools together. Therefore, there are few examples to which the knowledge management system is efficiently applied in the organizations. On the other hand, the case using a system like Blog or Wiki as knowledge management is increasing.

In this paper, the knowledge management system which has the strong point of various Web services is proposed. Furthermore, this paper shows the differences between our system and other web services and considers the usage of the model.

key words know-how, wisdom of crowds, information sharing, knowledge management

(4)

目次

1章 緒論 12章 ナレッジマネジメント 3 2.1 ナレッジマネジメントとは . . . 3 2.2 集合知 . . . 5 第3Webサービスを用いたナレッジマネジメント 7 3.1 Web2.0の台頭に伴うインターネットユーザの行動変化. . . 7 3.2 Blog . . . 9 3.3 Wiki . . . 10

3.4 Social Networking Site . . . 11

4章 関連研究 14 4.1 知識メモを活用した研究情報共有方式の提案 . . . 14 4.2 マルチグループにおけるノウハウ共有支援システム . . . 15 第5章 集合知収集に適したナレッジマネジメントシステム 18 5.1 システムに求められる要件 . . . 18 5.2 システムの概要 . . . 19 5.3 提案システムを支える情報アーキテクチャ . . . 20 5.4 データ構造 . . . 22 5.5 提案システムの詳細 . . . 23 5.6 開発環境 . . . 25 第6章 機能比較と考察 26 6.1 SECIモデルとの適合性 . . . 26

(5)

目次 6.2 集合知収集の手順との適合性 . . . 27 6.3 考察 . . . 27 6.3.1 SECIモデルとの適合性に関する考察 . . . 27 6.3.2 集合知収集の手順との適合性に関する考察 . . . 29 第7章 結論 31 謝辞 33 参考文献 34

(6)

図目次

2.1 SECIモデル . . . 4 2.2 集合知を構築する手順 . . . 6 3.1 研究室におけるOpen PNEを用いたコミュニティサイト . . . 12 4.1 企業における複数のグループ例 . . . 16 4.2 グループによる情報組織化のイメージ . . . 16 5.1 提案システムの機能概要図 . . . 20 5.2 Folksonomyの概念図 . . . 21 5.3 データ構造 . . . 23 5.4 知識情報登録画面 . . . 24 5.5 コメントの追加画面 . . . 24 5.6 知識情報の全文検索画面および一覧表示画面 . . . 25

(7)

表目次

3.1 Web1.0からWeb2.0への遷移 . . . 8 4.1 梅田らの方式で使用したデジタル文書のメタデータ . . . 15 5.1 開発環境 . . . 25 6.1 SECIモデルとの適合性 . . . 26 6.2 集合知収集の手順との適合性 . . . 27

(8)

1

緒論

近年,組織やグループ内で所属するメンバーがもつ知識情報を共有することで知的 生産性の向上を図る,ナレッジマネジメントが注目されている.1990年代半ばに野中 郁次郎[1]によって,「暗黙知」と呼ばれるはっきり明示化されていないナレッジと,「形 式知」と呼ばれる明確な言語・数字・図表で表現されるナレッジとがあり,相互に作用 し合い,スパイラル状に循環して向上していくSECIモデルが提唱された.そして現 在に至るまで,ナレッジマネジメントを推進するためのシステムが数多く提案されて きた. 知識情報をテキストで記述し,それを予め定められたカテゴリに登録し共有を行う 単純なシステムや,知識情報をひとつのカードとし,関連する知識情報(カード)とを ハイパーリンクで結び,断片化した知識情報を効率よく収集できる高度なシステムら が提案された.しかしながら,いずれのシステムも組織内で効率的に活用される事例 は少なく,多くのナレッジマネジメントが失敗に至ることとなった.これらの失敗例 における最大の要因は,いずれのシステムも他人のために知識情報を公開するという 心理的抵抗が主であるとされている[2].

一方,近年ではBlogやWiki,SNS(Social Networking Site)といったWebサービ スが社内にナレッジマネジメントシステムとして数多く取り入れられている.その理 由の背景として,前述した各サービスが広く社会に認知され,多くのユーザを獲得し ていることが挙げられる.特にBlogの認知度は高く,多くのインターネットユーザが 自身のBlogサイトを開設するようになった.

(9)

コンテンツ管理システムも多くの注目を集めている.複数人が協同でWebサイトを 構築していく利用法を想定しており,閲覧者が容易にページを修正したり,加筆する ことが可能である. 次に,SNSと呼ばれる人と人とのつながりを促進・サポートする,コミュニティ型 のWebサイトも登場している.SNS内に存在するコミュニティ内で様々なトピックに 基づいて情報が交換され,それと同時に参加者の知識レベルが向上する仕組みとなっ ている. これらの Webサービスを組織内でナレッジマネジメントを支援するツールとして 導入する事例が増えている.しかし,いずれのサービスもナレッジマネジメントその ものを推進するためのシステムではないため,複数のサービスを組み合わせる等,運 用するための工夫が必要となる. 本論文では,ナレッジマネジメントと,それに纏わる知識の定義について示す.次 に,Webサービスを用いたナレッジマネジメントについて考察を行った後,ナレッジ マネジメントシステムに求められる機能的要件を明らかにする.そして,要件を満た すナレッジマネジメントシステムの提案および提案システムの特徴について解説し, 前述したシステムとの機能比較を行う.最後に本システムの有用性について議論を 行う.

(10)

2

ナレッジマネジメント

近年,コンピュータシステムと情報ネットワークの発展と普及により,企業をはじ めとする様々な組織を取り巻く情報環境も急速に変化しつつある.また同時に,仕様 書やマニュアルのような形式的なものだけでなく,業務を遂行していく中で発生する コツやノウハウのような非形式的な知識情報を蓄積・共有するナレッジマネジメント への関心も高まっている[3][4].本章では,組織内に存在する知識である,暗黙知およ び形式知について述べ,続いてそれらの集合体である集合知について述べる.

2.1

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは,個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し,有効に活 用することで業績を上げようとする経営手法である.この場合の知識とは,単なる データの集合体ではなく,組織内で蓄積されているドキュメントやメール文書である 「形式知」および,業務を遂行するなかで獲得できる経験則や仕事のノウハウといっ た,普段はあまり言語化されない「暗黙知」までを含んだ幅広いものを指す. これからの企業経営の重要な要素となると言われており,米国を中心に,対応を急 ぐ企業も増えつつある.ナレッジマネジメントを浸透させることにより,個人の能力 の育成や,組織全体の生産性の向上,意思決定スピードの向上,業務の改善や革新の 場の提供が実現できるとされている[5]. ナレッジマネジメントにおいて,新しい知識が創造される過程は,図2.1に示す通 り,SECIモデルに従って,暗黙知と形式知を相互に変換し,スパイラルに向上させ

(11)

2.1 ナレッジマネジメントとは ることを原則としている.SECIモデルは,表出化・連結化・内面化・共同化のフェー ズから構成され,人が頭の中に保持している言語化しがたい知識,経験,ノウハウな ど(暗黙知)を第三者が共有できる形(形式知)に書き下ろす(表出化)ことで成り立つ. 第三者はそれらの形式知を組み合わせて(連結化)し,自己のものとして理解し(内面 化),それを新たな機会に暗黙知として継承する(共同化). 図2.1 SECIモデル これらの知識は,形式化され蓄積されていくため,人手で管理する知識ベースを管 理者や利用者が作成,編集,共有,検索し利用される.ナレッジマネジメントの流行 により,導入初期は利用率が高く,多くの知識交換がなされるが,それを継続してい くにはいくつかの課題があることが明らかとなった.例えば,知識を形式化し提供す る利用者の貢献度が業績に反映されないなどのインセンティブの問題や,自らの知識 を他の利用者に伝えることによる不利益など,ネガティブな印象もあるとされ,モチ

(12)

2.2 集合知 ベーションの維持が困難であった.これら様々な理由により,SECIモデルが正しく循 環しない状態に陥るとされた.[2]

2.2

集合知

暗黙知および形式知が個人に纏わる知識と定義される中,集合知[6]と呼ばれる知 識が注目されている.集合知とは,個から発信された情報を集め,何かしらの加工を 施し,新たな価値を生み出したものを指す.また,様々な意見や議論によって磨かれ た言説でもある.

集合知は,Tim O’ReillyのWhat is Web 2.0[7]という論文の中で定義された新し い考え方である.多くのユーザが参加して,彼らの判断や知識を集めることにより, それ自身が非常に価値の高い知識となり,その知識が集合知であるとされている.例 えば,近年では多くのTrackbackを受けたBlog記事などは論文に引用されることも 多いことなどが挙げられる.また,Wikipediaは非常に多くの利用者が集まり,その 分野分野の専門家が独自に編纂し,その集合体としてオンライン百科事典としての機 能を果たしている. 集合知を収集しやすくなる場を構築するためには,4つの手順を踏む必要がある. 図2.2にその手順を示す. 1. 公開 原則的に情報を私物化せず,全て公開する. 2. 連鎖 情報と情報を何かしらの指標に基づき関連付けし,新たな気付きを誘発する. 3. 選別 自らが必要な情報とそうではない情報とを区別し,必要な情報だけを管理対象と する. 4. 評価

(13)

2.2 集合知 コメントやポイント付与などの行為によって公開されている情報を評価し,優先 順位をつける. 図2.2 集合知を構築する手順 これらの手順を踏むことにより,集合知が収集しやすくなるとされており [6],集合 知収集に適したナレッジマネジメントシステムを構築する際には,前述したSECIモ デルと併せてシステムの設計を行う必要がある.

(14)

3

Web

サービスを用いたナレッジ

マネジメント

前章では,ナレッジマネジメントとその基本原則である暗黙知・形式知の知識変換 および,集合知を構築する手順について示した. 本章では,近年注目されている様々なWebサービスについて解説した後,それらを ナレッジマネジメントに用いる際の課題について明らかにし,その比較を行う.

3.1

Web2.0

の台頭に伴うインターネットユーザの行動

変化

近年,表 3.1に示す通り,様々なWeb サービスが登場し,インターネットユーザ のWeb に対する利用の変化が顕著である.従来は個人Webサイトとして,HTML などのマークアップ言語を駆使した情報公開がなされてきた.しかしながら,個人が Webサイトを公開するためには,多くのスキルを身につける必要があり,積極的な 情報配信には至っていない.しかしながら,BlogやWikiといったコンテンツマネジ メントシステムの登場により,誰もが容易にデジタルコンテンツを配信することが可 能となった.また,インターネット初心者なども積極的に情報配信を行うことによっ て,「情報を公開する」ことに対する精神的なハードルが大きく低下した.このことは, 前章で述べたナレッジマネジメントを一層推進するための,ひとつの革新でもある. Web2.0[7]の定義では,次のような事柄が特徴として挙げられる.

(15)

3.1 Web2.0の台頭に伴うインターネットユーザの行動変化

表3.1 Web1.0からWeb2.0への遷移

Web1.0 Web2.0

DoubleClick → Google AdSense

Ofoto → Flickr

Akamai → BitTorrent

mp3.com → Napster

Britannica Online → Wikipedia

個人Webサイト → Blog

evite → upcoming.org and EVDB

ドメイン名の投機 → SEO ページビュー → クリック単価 スクリーン・スクレイピング → ウェブサービス パブリッシング → 参加 コンテンツ管理システム → Wikis ディレクトリ(Taxonomy) → タグ付け(Folksonomy) スティッキネス → シンジケーション 1. ユーザの手による情報の自由な整理 従来のWebでは,Yahoo!ディレクトリなどのように情報をカテゴリによって整 理・管理していた.これに対してWeb2.0では,ユーザの手によってカテゴリの 枠組みに捉われることなく,自由に情報を管理することができる. 2. 貢献者としてのユーザ Web2.0では,ユーザによるレビューや評価がコンテンツの構築に大きく貢献し ており,結果としてそのフィードバックがサービスとして蓄積される.インター ネット上に存在する様々なコンテンツに対して自由に評価を下すことができるた

(16)

3.2 Blog め,コンテンツの品質がボトムアップ的に向上する可能性を秘めている. 3. ユーザ参加 従来のWeb では,情報提供者側と提供される側との間に明確な境界線が引かれ ていた.これにより,一方的な情報配信がなされ,コンテンツの品質の向上はあ まり期待できなかった.Web2.0では,WikiやSNSといったサービス等,多くの ユーザが参加することにより成り立つサービスが成功している. いずれの特徴も,Webサービスに対するユーザの積極的な行動が目立つ.この理由と して,各Webサービスがユーザの積極的な参加を受け入れていることもあるが,イン ターネットユーザがWebに対する新しい価値を見出したことが考えられる. 近年では,様々なWebサービスを社内においてナレッジマネジメントシステムとし て用いる例も多くなっている.次にそれらのサービスの特徴と,ナレッジマネジメン トシステムとして利用する際の機能面からの考察を行う.

3.2

Blog

BlogとはWeblogの略称であり,個人や数人のグループで運営され,日々更新され る日記的なWebサイトを指す.Blogはコンテンツマネジメントシステムとしての側 面を重視しており,時系列にページを自動生成する機能や,他Blog記事との連携機能 (TrackBack)およびコメント機能を有している. 検索エンジンを用いて何かしらのキーワードで検索を行うと,個人ユーザの記事が が数多く登場するようになった.一方,Blogを会社などの組織で利用する機会も増え ている.会社などの組織でBlogを運用する場合,リッチなコンテンツをテキストを交 えながら配信することができる等多くのメリットがある.また,日常でBlogを書いて いるユーザにとっては,さほど心理的抵抗も高くないため,積極的な利用が期待でき る.また,社内Blogということもあり,一般のインターネットユーザに公開する時ほ どの緊張感がなく,より込み入った情報を公開する例もある.

(17)

3.3 Wiki 一方,Blogは個人単位で記述することが多く,他のユーザとの関連性がTrackBack のみでしか表現できないことが挙げられる.また,TrackBackは原則としてコンテン ツ間の連携を行う機能であり,ユーザ同士を結ぶものではない.よって,集合知構築 の手順にある「連鎖」や「選別」を行うことが困難である.連鎖・選別を行うために は,各Blog記事を個別に管理するブックマークツールなどを別に導入する必要があ り,単体で集合知を獲得するには至らない.

3.3

Wiki

Wikiとは,Webブラウザから簡単にWebページの発行・編集が行えるコンテンツ 管理システムである.Wikiは,ハワイ語の「Wikiwiki」が語源であり,「速い」,「急 ぐ」,「形式張らない」といった意味がある.名前でも表現されている通り,自由にコン テンツを編集することができ,柔軟性の高いシステムである. Wikiは閲覧者が簡単にページを修正したり加筆することができるため,多くのユー ザで大量のデジタル文書を公開するようなシーンに適している.特に,Wikipedia∗1は 2001年1月15日に英語版が発足し,英語版だけで 2007年1月現在で160万件近く のコンテンツが編纂されている. コンテンツに対する関係者が常にコンテンツを管理することになるため,掲載され ている情報の正当性が高いことが特徴に挙げられる.Blogとは異なり,時系列でデー タが管理されないため,古いデータがあまり参照されないという問題点が発生しに くい. また,Wikiには独特の文法が予め定められており,HTMLなどの知識がなくとも 容易にコンテンツを編集することが可能である.また,システム内に蓄積されたコン テンツをハイパーリンクで結ぶことが可能であるため,コンテンツ間の連携がとりや すい. ∗1

(18)

3.4 Social Networking Site 社内においてWikiをナレッジマネジメントシステムとして用いることは非常に有 用である.例えば,あるプロジェクト毎にWikiのデータベースを構築することで,ス テークホルダ同士で情報を共有することが可能となる.しかしながら,一様にコンテ ンツが管理されるため,コンテンツの選別を行うことが難しく,集合知収集の手順で ある「選別」を満たすには至らない.また,Wikiの特徴である,誰もが自由にコンテ ンツを編集することができる機能により,記事執筆者の知識レベルに大きく品質が依 存してしまう問題がある.Blogなどの場合,不必要な利用者の記事は事前に参照を行 わない等の判断が可能である.しかし,Wikiではあるテーマに基づいたコンテンツを 誰もが編集できるために,「誰の情報」という判断が難しい. ナレッジマネジメントの基本原則である暗黙知の考え方では,特に「誰の情報」か が重要である.この「誰の情報」をKnowWho情報と定義している.KnowWho情報 が明らかではない場合,ナレッジマネジメントシステムの要件を満たすことができな いため,Wikiを導入する際には,明示的に誰の情報かを記す必要があり,また,その 人の情報のみに絞って情報収集できるような仕組みが求められる.

3.4

Social Networking Site

Social Networking Site(SNS)とは,人と人とのつながりを促進・支援するコミュニ

ティ型のWebサイトである.知人・友人間のコミュニケーションを円滑にする手段や 場を提供したり,趣味や嗜好,居住地域・出身校,あるいは「友人の友人」といったつ ながりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供する. 日本では会員数 800 万人を超える (2007年2月現在) 巨大なコミュニティサイト, mixi∗2がが有名であり,あるテーマに基づくコミュニティ内で様々な議論がなされて いる.SNSの最大の特徴は,知人や友人といった人のつながりがシステムの基盤を支 えていることにある.また,知人や友人でなくとも,同じような趣向を持つ利用者同 ∗2

(19)

3.4 Social Networking Site

図3.1 研究室におけるOpen PNEを用いたコミュニティサイト

士が出会い,新しい人間関係を築く機会が創出される.

mixi以外のSNSとしては,オープンソースでSNSシステムを提供している「Open PNE∗3」が有名である.Open PNEは,誰でも自由にSNSを構築することが可能と なる.図3.1に示す様に,Open PNEなどのSNSシステムを組織内で導入し,円滑 なコミュニケーションを支援する取組がある[8].このようにSNSを組織内で導入し, ナレッジマネジメントシステムとして利用する例が増えている.特にSNSには個人と 個人の関係性が明確であったり,また,コミュニティのトピックに基づく情報共有がな されるため,集合知収集の全ての手順に関して満たしていると言える.しかし,SNS はあくまでもコミュニケーション支援を行うためのシステムであると位置づけられて ∗3

(20)

3.4 Social Networking Site おり,知識情報を流通させるためにはいくつかの課題が生じる. SNS にはBlogやWikiのような強力なコンテンツ編集機能がなく,ユーザが暗黙 知を形式知化する際に多くの工夫が必要となる.また,BlogのTrackBackのような コンテンツ間の連携を促進する機能がないため,あるテーマに基づく情報を収集する ことは容易であるが,一方,そのテーマに類する情報を提供するといった支援がなさ れない.これにより,SECIモデルにおける,連結化のフェーズが行われづらいという 問題がある.

(21)

4

関連研究

前章ではBlog, Wiki, SNSの特徴に関して述べ,それらのシステムをナレッジマネ ジメントシステムとして用いる際の課題について明らかにした. 本章では,いくつかのナレッジマネジメントシステムについてそれぞれを比較した 後に,集合知収集に適したナレッジマネジメントシステムに求められる要件について 述べる.

4.1

知識メモを活用した研究情報共有方式の提案

梅田らによって,知識メモを活用した研究情報共有方式が提案されている [9].この 方式では,学術研究を行う上で,論文やレポート,発表資料といった一定の形にまと められた文書が作り出されることに着目している.梅田らの提案方式では,様々な文 書が作り出されていく仮定において発生する定型化されていない知識情報をメモとし て整理し,かつ,デジタル文書やメモを関連付けしていく.梅田らの方式は学術研究 を遂行する上で発生する知識情報を共有するためのものであるが,組織において一定 の業務を遂行していく中で発生する定型化されていない情報を集約する場合において も応用が可能であると考えられる. 梅田らの方式では,蓄積するデジタル文書に対してメタデータを付与している.表 4.1に示す通り,デジタル文書のタイトルや内容を表すキーワードがある.これによ り,同じキーワードを持つデジタル文書を同時に参照することができるため,SECIモ デルにおける連結化や集合知収集手順における連鎖を支援することができる.その他

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4.2 マルチグループにおけるノウハウ共有支援システム 表4.1 梅田らの方式で使用したデジタル文書のメタデータ 論文のタイトル DC.Title 著者 DC.Creator キーワード DC.Subject 要旨 DC.Description データ形式 DC.Format URL DC.Identifier 登録番号 ID 登録日 Date の機能として,メモを記述する際に独自のマークアップ言語を拡張しており,重要な 部分にハイライトの意味として,<hi>といったタグを設けている.しかしながら,こ うした独自のマークアップ言語には汎用性がないため,Wikiなどの文法を移植する方 が,利用者のユーザビリティの観点から望ましいと考えられる.

4.2

マルチグループにおけるノウハウ共有支援システム

前節のシステムでは,デジタル文書同士の関連性をメタデータおよび独自のマーク アップ言語によって記述し,知識情報間の連携を強めていた.一方,ナレッジマネジ メントにおいては,人と人との関係性が重視されている. 河村らは,組織を構成する個人の背景について考慮した,情報共有の方式を提案し ている[10].組織中には,図4.1に示すように,複数のグループが存在している.部門 による横割りの関係だけでなく,役職などによる縦割りの関係も存在している.さら に,業務内容だけでなく,プロジェクトや一時的な業務内容によって構成される,縦・ 横の分け方に留まらない様々なグループも存在している.そうした組織の中に存在す る複雑に絡み合ったグループに存在しているメンバをうまく分類することで,効率的

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4.2 マルチグループにおけるノウハウ共有支援システム に情報の共有を図っている. ▤ℂ⡯ ਛၷ ᣂੱ 㐿⊒ ੱ੐ ༡ᬺ ળ␠⚵❱ 図4.1 企業における複数のグループ例 河村らの提案したシステムでは,図4.2で示すように組織を構成するメンバの背景 についても考慮している.そして,この背景や前提を共有するグループを一つのカテ ゴリとして捉え,グループのメンバが所有するノウハウを,そのままグループのノウ ハウとすることによって,カテゴリによって分類したグループ間での情報共有を実現 している. 図4.2 グループによる情報組織化のイメージ

(24)

4.2 マルチグループにおけるノウハウ共有支援システム 河村らの方式では,集合知収集手順における,公開・連鎖・評価に対して支援がなさ れている.しかしながら,選別を行うために,自らのデータ管理フィールドが準備さ れておらず,予め作成されたグループ内における知識情報全てが管理対象となる.こ のことは,システムを長期間利用していく上で,自分にとって必要な情報とそうでは ない情報との区別が煩雑化してしまう.また,グループ内での知識共有に留まるため, グループを超えた知識情報の流通が期待できない.

(25)

5

集合知収集に適したナレッジマネ

ジメントシステム

前章では,近年提案されているナレッジマネジメントシステムとその特徴について 述べた.また,集合知収集を行う上で課題となる点を明らかにした. 本章では,集合知収集に適したナレッジマネジメントシステムに求められる要件に ついてまとめた後に,それを満たすシステムについて解説する.さらに,システムが 持つ情報アーキテクチャについて述べる.

5.1

システムに求められる要件

集合知収集に適したナレッジマネジメントシステムに対して求められる要件として, 以下のような項目が挙げられる. 1. 心理的抵抗を抑えるため,他人のために情報を公開するのではなく,自分のため のメモを自分の管理フィールド内で管理するインタフェースを有すること. 2. 原則的に蓄積する情報は全て公開する.ただし,個人が情報を管理するという観 点から,プライベートな情報などは非公開設定を行える機能を有すること. 3. 情報と人や人と人などを何かしらの指標に基づき関連付けできること. 4. 他人の情報の中から利用者の判断に基づいて,必要なものは自分の管理フィール ドにコピーすることができること. 5. デジタル文書などの業務を遂行する中で作成される情報も取り扱えること.

(26)

5.2 システムの概要 6. 蓄積された情報に対してコメントを付与することができること. 7. プレインテキストではなく,リッチなテキスト文書を作成できる機能を取り入れ ること. 8. 全文検索やタグ検索ができること. 9. システム管理者の負担を軽減するため,利用者のボトムアップ的な利用を促進す ること. 以上の要件を満たすことにより,SECIモデルの循環および,集合知収集を支援す ることができると考えられる.

5.2

システムの概要

前述した要件を満たす,ナレッジマネジメントシステムの概要を図 5.1に示す.図 5.1では,利用者A,B,Cおよび検索者をシステムの利用者と定義する.また,外 枠の矩形は各利用者の知識情報管理フィールドと定義する.内側の矩形はそれぞれの 知識情報を表し,→ 右側にあるテキストが知識情報に意味情報を付与するタグと定義 する. 例えば,利用者Aは“Java”と“Programming”について言及している知識情報を 公開している.その知識情報に対して利用者Bが補足し,更に利用者Aが反応を返し ている.この一連のやり取りを全て形式知としてシステムはみなすものとする. 次に,利用者Cの知識情報を利用者Aのフィールドに複製している.このように, 利用者は自分自身が必要となる知識情報を自らのフィールド内で収集加工管理するこ とができる.これにより,個人の中での暗黙知⇔形式知変換が促進され,組織全体と して質の高い知識が蓄積されることになる. 図下部の利用者が“Java” というキーワードで,組織に属するメンバーの知識情報 を横断的に検索している.このように,点在している知識情報をタグを通して集約す ることにより,集合知の獲得を支援することができる.また,組織全体としての知識

(27)

5.3 提案システムを支える情報アーキテクチャ だけでなく,検索結果から得られる「誰の情報であるか」というKnowWho情報から も知識を獲得することができる. このようにして,知識情報や個人を相互に結びつけることにより,利用者が求める 知識情報をより獲得しやすい状況を創り上げることができる.

B

A

Java Programming Java Programming Apache Setting Apache Setting A Testing Testing B A JUnit JUnit A Book Algorithm Book Algorithm C Book Algorithm Book Algorithm C Copy Publish Comment Reply Web2.0 Ajax Web2.0 Ajax C #source.tar.gz Java Web C Upload PHP MySQL Setting PHP MySQL Setting B Apache Setting Apache Setting A

#Import Files from the Internet.

Vulnerability Penetration

Knowledge. This user can get these

Search: Java The Internet

B

C

図5.1 提案システムの機能概要図

5.3

提案システムを支える情報アーキテクチャ

提案システムを支える情報アーキテクチャとして,Folksonomy[11] を採用して いる.Folksonomy とは,folks(人々)+taxonomy(分類学) からできた造語である.

Folksonomyは,図5.2 に示すように,ユーザがコンテンツに対して「タグ」と呼ば

れるメタデータ(キーワード) を付与することができ,つけた「タグ」を共有する情 報アーキテクチャである.タグを通してそれぞれのコンテンツに対して利用者同士で アクセスし合い,様々なコンテンツを発見することができる.Folksonomyを用いた

(28)

5.3 提案システムを支える情報アーキテクチャ

Contents

tag 1 tag 2 tag 3 tag 4 tag 5 tag 6

tags in a name space

The Group A members attach the tag 1 and the tag 2 to the Contents.

Example:

attaching and referring

sharing

Contents Creator

group A group B group C group D

図5.2 Folksonomyの概念図 サービスの代表例として,flikcr∗1やdel.icio.us∗2が挙げられる.前者は写真をタグを 用いて管理・共有するサービスであり,後者はブックマークを管理・共有するサービス である.近年,様々なWebサービスがこのアーキテクチャを採用する背景には,コン テンツを管理する際の柔軟さや,未知のコンテンツを発見しやすいという特性がある. ユーザが独自にタグを付与することができるため,例えば,「Windows上で動作する

Javaの開発環境にはNetBeansやEclipseがあります.」というコンテンツに対して

「Windows」,「Java」,「開発環境」,「プログラミング」等のタグを付与することが考え られる.カテゴリ構造のような厳密さがないため,気軽に管理することが可能となる. さらに,他のユーザが付与しているタグを辿ることにより,自身の知らなかったコン テンツに対してアクセスが可能である. ∗1http://www.flickr.com/ ∗2

(29)

5.4 データ構造 これらの特徴は,ナレッジマネジメントシステムに求められる要件の 1,2,3,4, 5,8,9を満足することができると言える.

5.4

データ構造

Folksonomyを用いる提案システムでは,タグを付与する対象の知識情報のデータ 構造を図5.3の様に定める.各項目について以下に詳細を述べる. データ型 テキスト情報だけでなく,業務を遂行していく上で作成されたドキュメント (Wordファイルや Excelファイル等)も本システム上では一様に扱うため,その 知識情報のデータ形式を格納する. 日付 ナレッジマネジメントでは,知識情報の新しさが非常に重要となるため,登録さ れた日付を格納する. 作成者 KnowWho情報を参照できるようにするため,製作者IDを格納する. タグ 前述したFolksonomyを実現するためのタグ(複数)を格納する. タイトル 知識情報のタイトルを格納する. 概要 バイナリデータをキーワード検索するため,知識情報の概要を格納する. 関連知識情報 知識情報製作者が明示的に関連する関連知識情報を格納する. リンク元 リンケージ元の知識情報のアドレスを格納する.

(30)

5.5 提案システムの詳細 アドレス 知識情報を参照するためのシステム上のアドレスを格納する. 内容 テキストデータの場合のみ知識情報の本文を格納する. 様々な様式での検索を可能とするため,「日付」,「製作者」,「タグ」,「タイトル」, 「概要」,「内容」がキーワード検索の対象範囲と定める. 図5.3 データ構造

5.5

提案システムの詳細

提案システムには,5.1節に示した,ナレッジマネジメントに求められるいくつか の機能を実装している.以下にその詳細を示す. 図5.4に示す知識情報登録画面において,ユーザが知識情報の登録を行いやすい よう,Wikiの文法をサポートする.これにより,単純なテキスト情報だけではな

(31)

5.5 提案システムの詳細 く,ウェブサイトを作るする感覚で知識情報が作成できる. 図5.4 知識情報登録画面 他ユーザが公開している知識情報の一覧表示を行うことにより,KnowWho情報 から様々な知識情報を習得することができる.また,図5.5に示すように,知識 情報に対してコメントの付与を行うことができる. 図5.5 コメントの追加画面 知識情報に対して公開・非公開のアクセス権を付与することにより,自身にとって は非常に有益であるが,何かしらの理由によって公開したくない知識情報も管理 することが可能となる.例えば,作成途中のコンテンツなどを非公開に定め,作 成が完了した後に,全体へ公開することが可能となる. 他ユーザの知識情報を自管理フィールドに複製することによって,自身の中で形 式知同士の連結化を図ることができる.また,断片的な複数の知識情報を組み合

(32)

5.6 開発環境 わせることにより,新しい暗黙知の発想を支援することができる. ユーザに対して関連知識情報を推薦することによって,気づきの創出を支援する. 図5.6に示す通り,知識情報の全文検索を実装することで,知識情報を探す際に, タグ検索以外の手段を確保することができる.知識情報を辿る際の手段を増加さ せることによって,知識情報の発見率を高めることが可能となる. 図5.6 知識情報の全文検索画面および一覧表示画面 日付を検索キーとして,新しい知識情報を利用者に通知することで,蓄積される 知識情報の流行や話題を知ることが可能となる.

5.6

開発環境

提案システムを開発する上で使用した開発環境について表5.1に示す. 表5.1 開発環境 OS Windows XP SP2 Webサーバ WEBrick 1.3.1 開発言語 Ruby 1.8.5 開発フレームワーク Ruby on Rails 1.2.1 データベース MySQL 5.0.26-community-nt

(33)

6

機能比較と考察

前章で提案したシステムが,近年ナレッジマネジメントに求められている要件を 機能的に満たしているかの比較検討を行う.比較対象として,組織内においてBlog, Wiki,およびSNSの各Webサービスと,4章で述べたナレッジマネジメントシステ ムを挙げる.

6.1

SECI

モデルとの適合性

ナレッジマネジメントにおける知識循環の原則である SECIモデルを適切に支援で きるかについて,機能的に比較した結果を表6.1で示す.強く支援できる場合は◎,支 援できる場合は○,運用次第では支援できる場合を△,そして支援できない場合を× とする. 表6.1 SECIモデルとの適合性 表出化 連結化 内面化 共同化 提案方式 ◎ ◎ ◎ ◎ Blog ◎ ○ ○ ○ Wiki ◎ ○ ◎ △ SNS △ ○ ○ ◎ 梅田らの方式 ◎ ◎ ◎ △ 河村らの方式 ○ ○ ○ ◎

(34)

6.2 集合知収集の手順との適合性

6.2

集合知収集の手順との適合性

集合知収集における手順である「公開」,「連鎖」,「選別」,「評価」の各項目について 適切に支援できるかについて,機能的に比較した結果を表6.2で示す.強く支援でき る場合は◎,支援できる場合は○,運用次第では支援できる場合を△,そして支援で きない場合を×とする. 表6.2 集合知収集の手順との適合性 公開 連鎖 選別 評価 提案方式 ◎ ◎ ◎ ○ Blog ◎ ○ × ◎ Wiki ◎ ○ × ○ SNS ◎ ○ △ ○ 梅田らの方式 ◎ ◎ × △ 河村らの方式 ◎ ◎ △ ◎

6.3

考察

6.1節および6.2節で示した比較に関する考察を行う.

6.3.1

SECI

モデルとの適合性に関する考察

いずれの方式においても,自身の暗黙知を形式知に変換する表出化する過程を満た している.提案方式,Blog,Wiki,梅田らの方式はテキスト情報だけでなくバリナリ データ(動画像,Word,Excelファイル等)を扱うことや,独自の入力支援(文法拡張 など)を行っているため,単純なテキスト情報に比べ優位であると判断した.SNS に 関しては,テキスト情報での表現が一般的であるが,一部のサービスにおいては動画

(35)

6.3 考察 像にも対応しているため,他のサービスよりも順位を下げた. 連結化においては,形式知同士の連携を強く実現する提案方式および梅田らの方式 が優位であると判断した.Wikiや河村らの方式はハイパーリンクによってコンテンツ 同士をリンクできるが,それ以上の連携を行うには至らないため,提案方式と比べ順 位を下げた.BlogはTrackBackを用いることにより実現可能であるが,そのつなが りは緩やかであるため,他方式よりも順位を下げた.SNS においては,他の形式知と 連結する機能を実現していないため,支援できていないと判断した. 内面化は,形式知から暗黙知へと変換する過程を表している.ここでは,蓄積され ている知識情報を利用者がどの程度理解しやすいかを示す.断片的な知識情報は連結 化の過程を経て知識情報同士がつなぎ合わせられることによって,より理解しやすく なると考えられる.提案方式および梅田らの方式は,自管理フィールド内で様々な知 識情報を組み合わせることが可能である.また,Wikiは多くの利用者によって様々な 見地から知識情報が編纂されていくため,次第に洗練された形式知が生み出されると 考えられる.いずれの方式も,質の高い形式知を生み出す支援を行っているため,高 く評価した.また,その他のシステムも多くの利用者が形式知を多く蓄積することに より,内面化を支援することができると判断した. 共同化においては,暗黙知を新たな機会に継承することによって支援できる.言い 換えるならば,人と人とを結びつけることによって,その機会を創出できると考えら れる.提案方式,SNS,河村らの方式はいずれもKnowWho情報が明確であり,他の 利用者とのコミュニケーションが円滑に進められる仕組みを有していることから,優 位性があると判断できる.一方,Wikiや梅田らの方式では,他のユーザとのコミュニ ケーションを図る機能が実装されていないが,コメント等でつながりを生み出すこと ができるため,運用次第で実現できると判断した.

(36)

6.3 考察

6.3.2

集合知収集の手順との適合性に関する考察

いずれのシステムも知識情報を公開するという考え方が原則となっているため,「公 開」の手順は全て強く支援できると判断できる. 「連鎖」の手順においては,情報と情報を何かしらの指標に基づき関連付けし,新 たな気付きを誘発させる必要がある.提案方式はタグによるつながり,キーワード検 索による発見,他ユーザの公開フィールドの閲覧機能などを有しているため,強い連 鎖が起きると考えられる.また,梅田らの方式においても,知識情報に付与されたメ タデータを通じて連鎖が可能であると考えられる.河村らの方式では,組織中に存在 する様々なグループを動的に生み出し,その中で情報共有を行うため,グループ間同 士のつながりが新しい気付きを創出すると考えられる.河村らの方式に機能的に近い SNSは,静的なグループ内での情報共有に留まるため,順位を下げた.また,Blogや WikiはハイパーリンクおよびTrackBackによる関連付けが生まれるため,支援でき ると判断した. 「選別」の手順においては,自らが必要な知識情報とそうではない知識情報とを区別 する機能が求められる.提案方式に限り,独自の管理フィールドを設け,その中で知 識情報同士を組み合わせることができる機能を実装しているため,優位性があると判 断した.SNSおよび河村らの方式においては,自身と関わりのないグループには参加 しないという判断を利用者が下せるため,運用次第では実現できると考えられる.他 の方式においては,そのようなシステム的な支援がなく,ただ「見る」か「見ない」か の判断に依存するため,支援できないと判断した. 「評価」の手順においては,公開されている知識情報にどの程度フィードバックが与 えられるかを指標とした.BlogはTrackBackやコメント機能が実装されているため, 知識情報公開者に対して強い評価が下せると判断した.また,河村らの方式において は,コメント機能に加え,その知識情報が有用であるかどうかの評価を数値的に与え る機能が実装されている.よって,適切に支援できると判断した.梅田らの方式以外

(37)

6.3 考察

はコメント機能を実装しているため,Blogや河村らの方式に比べて劣るが,支援でき ていると判断した.

(38)

7

結論

本論文では,第2章において,ナレッジマネジメントの必要性について述べ,共有 される知識情報の定義について示した.また,近年注目されている集合知について述 べた.

第3章では,Web2.0時代のWebサービスとその特徴について述べた.Web2.0の

登場により,インターネットユーザの行動が受動的な活動から,能動的な参加型の活 動へと変化したことについて触れた.そして,近年注目されているWebサービスの 特徴と,それらを組織におけるナレッジマネジメントへ応用する際の課題について述 べた. 第4章では,従来から提案されている様々なナレッジマネジメントシステムの概要 と,その特徴を解説した.また,集合知を獲得するまでの手順と位置づけながら,シ ステムの問題点について指摘した. 第5 章では,前章までの背景を踏襲したナレッジマネジメントシステムの提案を 行った.集合知収集に適したシステム構築を目的とし,その特徴について述べた.ま た,提案システムを支える情報アーキテクチャであるFolksonomyについて解説した. その後,提案システムが取り扱う知識情報のデータ構造やシステムの機能について述 べ,開発環境について触れた. 第6章では,第 5章で提案したシステムと第3章および第4章で挙げたシステム とを,SECIモデルおよび集合知収集の手順における適合性について機能比較を行い, その差について考察した. 最後に,今後の課題としては,組織内に蓄積された情報からエージェントが代わり

(39)

にインターネット上の様々なシステム(Blog,Wiki等)と連携しながらコンテンツの 推薦を行う機能の実装を挙げる.さらに,同じような趣向や嗜好を持つユーザ同士を 動的につなぎ合わせられる仕組みを設け,さらに知識の相互流通を支援する必要があ ると考えられる.そして,それらの機能を実装した後,長期間の運用試験を経て,定 量的な評価を行う必要がある.

(40)

謝辞

本研究の遂行と論文作成にあたって,言葉では言い表せないほどのご指導,ご助言 をいただきました高知工科大学フロンティア工学コース清水教授に心より感謝し厚く 御礼申し上げます. 本論文に関して,高知工科大学フロンティア工学コース渡邊教授,村上教授から適 切かつ多大なご助言をいただきまして,深くお礼申し上げます. また,提案方式実装にご協力いただきました清水研究室,中原知也氏に心より感謝 いたします. 最後に,清水研究室全ての関係者に深く感謝いたします.

(41)

参考文献

[1] 野中郁次郎ほか, “知識創造企業,” 東洋経済新報社, 1996.

[2] 情報共有化と部門事情による限界, “日本セキュリティ・マネジメント学会全国大 会,” 日本セキュリティ・マネジメント学会, セキュリティ・マネジメント第10号, pp.51-57, Mar. 1997.

[3] J.VASCONCELOS, C KIMBLE & F.R.GOUVEIA, “A Design for a Group Memory System using Ontologies,” Proceedings of 5th UKAIS Conference, April 2000.

[4] 大澤 幸夫,“知識マネジメント,” 情報処理学会編集, オーム社, 2003-09-25. [5] IT用語辞典:http://e-words.jp/

[6] 島津 秀雄, 小池 晋一, “ナレッジマネジメントKM再考:Web2.0時代のナレッジ マネジメント, ” 情報処理学会, pp.768-pp.774, 2006年7月.

[7] O’Reilly, T, “What is Web 2.0 : Design Patterns and

Business Models for the Next Generation of Software,”

http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html, 2005.

[8] 大向 一輝, “SNS の現在と展望 -コミュニケーションツールから情報流通の基盤 へ-,” 情報処理学会, Vol.47, No.9, pp.993-1000, 2006.

[9] 梅田 恭子,安田 孝美, 横井 茂樹, “知識メモを活用した研究情報共有方式の提案,”

情報処理学会論文誌, グループウェア, Vol.42, No.11, pp.2562-2571, Nov. 2001. [10] 河村 智,“マルチグループ環境におけるノウハウ共有支援システム,” 高知工科大

学,修士論文,2003年度.

[11] T.Ohkura, Y.Kiyota and H.Nakagawa. “Browsing System for Weblog Articles based on Automated Folksonomy,” WWW2006 Workshop on the Weblogging

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参考文献

参照

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