第五章 S-D ロジックにおける「価値共創」(理論性)
第二節 S−D ロジックにおける「価値共創」の革新性
第二章の第四節では S−D ロジックにおいて、「価値提案」する主体としての企業と
「価値実現」する主体としての消費者について、簡単に紹介したが、本節は、企業と 消費者との相互作用としての統合的概念である「価値共創」を論理的詳しく検討した い。
S−D ロジックにおける「価値共創」の解釈
S-D ロジックでの「価値」は消費者の提供物を利用あるいは体験するプロセスにおいて 知覚する文脈価値である。そのため、S-D ロジックにおける「価値共創」は企業と消費者 との共同的努力(オペラント資源の適用)によって、個人的消費者の文脈価値を創出する ことである。
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そもそも S-D ロジックは企業と消費者との相互作用的プロセスに焦点を当てているため、
価値共創の基本的方法は、そのプロセスの間に企業が消費者に向けてサービスを供与する ことと同時に、消費者も企業に向けてサービスを供与することと認識されている。
ここで注意しけなればならないのは、S-D ロジックでの相互作用的プロセスの範囲であ る。ここでの相互作用的プロセスは提供物の創造から提供物の利用を通じて消費者が文脈 価値を知覚するまで継続するものである。よって、G-D ロジックでの相互作用的プロセス は取引の終了と伴ってお互いのサービス供与も終止するのに対して、S-D ロジックでの相 互作用的プロセスは消費者が文脈価値を知覚するまでに、企業と消費者との間にサービス 供与は常に続けている。概念図は以下のものである。
図表 14 S-D ロジックでの相互作用的プロセスの範囲
出所:Vargo and Lusch[2006]を参考に筆者作成
価値共創の包括的概念
Vargo and Lusch[2006]により、「価値共創」は二つの構成要素:価値の共同生産
(co-production)と価値の共創(co-creation of value)、とした。
価値の共同生産とは、企業が「価値提案」する際に消費者もそのプロセスに参加し、
消費者の協力により消費者とともに提供物を生産すると意味している。つまり、企業 が優れた「価値提案」を行うために、そのプロセスの中で消費者の協力を求めて、共 同的にアイデアを考えたり、設計したり、及び最終成果としての提供物を創造するこ とである。共同生産の段階では、消費者がそれに参加するかどうかは選択的なもので あり、標準化された提供物を購買するか、または企業との共同生産に参加するかは、
すべて消費者個人の意志によるもので、消費者自身で自由に選択することができる。
価値の共創とは、企業が「価値提案」する主体として、消費者が「価値実現」する 主体として、両方ともに文脈価値の最終的な実現に努力することを意味している。そ
価値提案 消費者に購入され 消費者の利用 文脈価値の知覚
相互作用的プロセス
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れに、価値は消費者によってのみ主観的な判断を下すによって消費者独自の文脈価値 の多少が判断されると認識する。
価値共創の包括概念の論理的関係および G-D ロジックとの比較は以下となる。ここ で田口(2010)が作成した概念図(本論文の用語と一致するため若干の修正あり)を 引用することにする。
図表 15 S-D ロジックの価値共創と G-D ロジックの生産との包含関係
出所:『サービス・ドミナント・ロジック』(2010)p38,修正あり
上から示した通り、S-D ロジックでの「価値の共創」は「共同生産」の上位概念に位 置づけられるのだけではなく、G-D ロジッでの価値共創の上位概念としても位置づけら れている。つまり、S-D ロジックの価値共創の範囲は G-D ロジックの価値共創を包括的 捉えようとしたものである。
価値の共創
消費プロセスの過程で企業と消費者が(文脈)価値を共創する。
価値はユーザーによってのみ判断される。
共同生産
中核となる提供物の共同での考案、共同での設計、共同で の生産。
企業による提供物への(交換)価値の付 加
G-Dロジック
S-D ロジック
(価値共創)
70 価値共創の種類
先行研究により、価値共創の方法は直接的な共創と間接的な共創がある。グッズを 通じて価値共創の方法は間接的な共創であり、サービシィーズを通じて価値共創の方 法は直接的な共創である。
詳しく言うと、有形物を媒介とした価値提案が消費者によって受け入れられ、消費 者の実際の有形物の利用により文脈価値の実現までの一連的なプロセスは間接的な共 創となる。ここでの有形物はただのサービス(ナレッジとスキルの適用)供給の物質 的な手段、道具と見なされている。つまり、有形物はサービスを適用した結果、サー ビスが集結する具象化された成果と認識されている。それゆえ、消費者に向けてのサ ービス供給が間接的になり、よってこのような形での価値共創も間接的な共創となる。
それに対して、サービシィーズを媒介として価値提案が消費者によって受け入れら れ、消費者の実際のサービシィーズの利用により文脈価値の実現までの一連的なプロ セスは直接的な共創となる。つまり、企業が消費者にサービス供給する際に直接に自 らのオペラント資源を適用し、サービシィーズを生産する。サービシィーズの生産と 消費の同時性により、消費者もその場で個人のオペラント資源を適用しつつ該当サー ビシィーズの利用のより、価値共創をその場で直接に実現させるから、このような形 での価値共創は直接的な共創となる。
また、直接的な共創であれ、間接的な共創であれ、消費者による共創のプロセスへ の積極的な参加が不可欠となるので、「消費者は常に(always)価値の共創者である」。
S-D ロジックの「価値共創」の特徴(まとめ)
G-D ロジックでの「価値共創」と比較した上で、S-D ロジックでの「価値共創」の特徴 を以下にまとめる。
① 「価値共創」の主体:S−D ロジックの下では、企業も消費者も価値共創の主体であ る。その中に、企業は「価値提案」する主体であり、消費者は「価値実現」する主 体である。
② 「価値」の意味性:S-D ロジックにおける「価値」は消費者個人の「文脈価値」
であり、取引市場での交換価値と本質上の違いを有している。
③ 「価値」の有効期間:「価値」は消費者個人が生み出したものであるため、
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有効期間も文脈価値を創造した当該消費者に決められる。
④ 消費者の意欲:消費者は「価値提案」への参加は自身の意志で決められるが、「
価値実現」をする主体であるため、「価値実現」への参加は強制的である。