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はじめに

生理的に重要な役割を担う体水分量については、

体水分量の多寡が体脂肪量にも反映される 1)ことに 加え、体水分量の平衡性も健康の指標として重要で あることが示唆されている 2)。つまり、体水分量の 平衡性は、高い体水分量のturnover率によって意味 を持つ。この体水分量のturnoverに影響する要因に ついて運動、年齢、性などの影響が考えられるもの の、充分な検討がおこなわれているとは言い難く、

一致した結果は得られていない。その中で、持久的 なトレーニングや運動は水分補給の必要性と発汗に みられる体水分量のturnoverを認める典型なもので あり、顕著な高温環境下だと電解質も含めた水分摂 取は欠かせない 3)。その持久性競技者において除脂 肪量に対する体水分量の比率が一定且つ不変であれ ば、その持久的なトレーニングは体水分のturnover を促進させる可能性は高い。

今回、同一ランナーにおける約1年間に及ぶシー ズン内の体水分量のturnoverについて、トレーニン グ量とともに検討したので、報告する。

方  法 A.被検者

被検者は、規則的なトレーニングを実施している 男性長距離ランナー10名であり、1年間にわたって 大きな故障がなく、年間の走行距離に大きな落ち込 みもない。それぞれ測定開始直前における1ケ月間

久留米大学健康・スポーツ科学センター

の平均走行距離は、582.5±77.7km、425.0±212km、

556.4±76.3kmであり、初回測定時から年間走行距 離は3970~6889kmの範囲にあった。また、対照群 として日常的に持久的なトレーニングを行っていな い短距離ランナー4人およびバドミントン・プレー ヤー2名の計6人が2回目に合わせて測定された。

被検者の身体的特性は表1に示した通りで、対照群 と合わせた2回目の測定時のものである。なお、全 被検者は、本測定の主旨・安全性について説明を受 け、全てに同意した。

B.体水分量の定量

総体水分量は、重水(D2O)をトレーサーとして 用いた希釈法に基づき定量した 4)。すなわち、被検 者は体重1kgにつき1gのD2Oを20% 以下に水で希 釈したものを、12時間以上の絶食状態で経口投与さ れた。投与後の安静時に、1、2、3時間後の3回 にわたり尿を採取し、熱蒸留された。熱蒸留後のサ ンプルは赤外分光光度計(日立社製、260-50型)に

Diatance Runners (n=10) Control Group (n=7)

Mean S.D. Mean S.D.

Height(cm ) 170.8 4.4 169.1 3.7

Weight(kg) 57.6 4.0 60.2 2.6

BMI 19.73 0.7 21.07 1.2

%Fat(%) 19.0 4.4 19.5 4.4

: estimeted from total body water method.

Table 1.Characteristics of Subjects.

より、体内で希釈され、平衡に達したD2O濃度

(%D2O)が求められた。その重水濃度と投与量から

TBWが算出された 6, 7)

C.体水分量のturnoverにおける評価

体水分量のturnoverは、Schlaerbら 5)の方法に従 い、尿中における重水濃度の半減期(Half Time,

day)と1日当たりの体水分のturnover率(Water

Turnover Rate;%WT、%)によって評価した。すな わち、重水の経口投与後の翌日1日目から10日目ま での毎朝、第2尿の %D2OからD2Oの半減期を求 め、%WTを算出した。その重水濃度は、熱蒸留後 に赤外分光光度計(日立社製、260-50型)により、

体水分量の定量と同様の方法により求められた。な お、測定時の気温など把握していないが、ランナー 群および対照群ともに測定日時を同期させた上で実 施した。

D.統計処理

長距離ランナー群と対照群の各測定項目は、それ ぞれ平均値と標準偏差で表わした。また、平均値の 差の検定は対応のないt検定により、相関関係は

Pearsonの積率相関分析により、それぞれ検討した。

その統計の有意水準は、危険率5%未満とした。

結果と考察

表2は、9月上旬の合宿明け時期(1回目)、4月 上旬のシーズン・イン(2回目)、そして翌年の9月 上旬で合宿明けの時期(3回目)にそれぞれ3回に わたって測定した体水分量のturnover について示 したものである。2回目、3回目に比較して、初回 が短い半減期および高い %WTと最も高い体水分量 のturnoverを最小のCV値(9.8%)とともにを示し ていたが、その変化は統計的に有意なものではな かった。また、2回目、3回目については、変動幅 としてのCV値(25.6%&29.0%、19.2%&19.1%)

も大きく、それぞれ初回に比べ体水分量のturnover における個人差が大きいことを示唆している。2回 目、3回目と同水準で推移しており、半年間のシー ズンによる変化は乏しい。この体水分量のturnover に対しては測定開始直前のトレーニング状態、すな わち走行距離が影響するものと考えられるが、本報 において直前の走行距離に対応して体水分量の

turnover水準も推移している傾向にあった。直前の

1ヶ月間最もトレーニング量が多い初回は、高い体 水 分 量 のturnover を 示 し て い た。 こ れ ま で、

Shimamoto&Komiya 6)、Leiperら 7)は、それぞれ 131.8±23.4/月の走行距離および平均時速29kmで 平均50km/週の自転車走行と言った身体活動量

(あるいはトレーニング量)とともに、非活動群より も高い体水分量のturnoverを報告してきた 6, 7, 8)。本 報 の ト レ ー ニ ン グ 量 は、Shimamoto&Komiya、

Leiperらの身体活動量(トレーニング量)よりも多

いものの、本報における体水分量のturnoverは Shimamoto&Komiya、Leiperらの既報と比較して低 い。このことは、本被検者が年間の走行距離にも反 応していないことから、本被検者が数年に及ぶ長期 的な持久的トレーニングによって安定した体水分量

のturnover を示すようになった結果かも知れない。

また、各測定直前における走行距離と体水分量の turnover に 間 に は、 半 減 期 で -0.538~ -0.604、

%WTで0.454~0.530の相関関係が認められたもの の、有意な水準には至らなかった。慢性的な適応下 にある持久性競技者の場合、更なる体水分量の turn-over 亢進については、測定開始直前における運動量 の把握がどこから影響するのか、検討する必要もあ るだろう。 

表3は、2回目の測定時における長距離ランナー 群(n=10)と対照群として非持久性競技者(7名)

の体水分量のturnover について比較したものであ る。先行研究 8)と同様、長距離ランナー群が対照群 よりも高い体水分量のturnover を示す傾向にあっ

Table 2.Changes of Half^Time and % WT within the Season (1 year).

1st Mearsurement (Sept.) 2nd Mearsurement (Apr.) 3rd Mearsurement (Sept.)

Mean S.D. Mean S.D. Mean S.D.

Half Time 6.74 0.66 8.69 2.23 8.60 1.65

(days)

% body water 10.38 1.02 8.49 2.46 8.33 1.59 turnover per day (%)

45 男性長距離ランナーにおける体水分量のturnoverにみられるシーズン内(1年間)の変動

た(p<0.1)。この非持久性競技者は短距離およびバ ドミントンのプレーヤーであり、トレーニング・パ ターンや時期などが合った2回目のみ同定出来たも のの、それ以外ではトレーニング状況も含めたタイ ミングが同定出来ずに体水分量のturnover は測定 出来なかった。今回、トレーニングのタイプが異な るものの身体活動は行っている、非持久性競技者と しての対照群である 6, 7)。既報にある非活動群とし ての対照群ではないことから、持久性トレーニング が体水分量のturnoverに影響する可能性を示唆して いる。また、2回目の測定時(4月上旬)は、トラッ ク・シーズンに入るタイミングでレースへ向けた質 的トレーニングへの移行期に重なる。実際、トレー ニング量の個人差も、CV値(49.9%)に見られるよ うに極めて大きい。対象群である非持久性競技者 も、それぞれにシーズン・インに伴う質的トレーニ ングは欠かせないと思われる。したがって、体水分

量のturnoverに対してトレーニングの質的な影響よ

り量的な影響が大きいのかも知れない。今後、対照 群も含めた縦断的な体水分量のturnoverの評価、お よびトレーニングの量的、質的な影響についても縦 断的に検討する必要がある。

参考文献

1) 満園良一 長距離ランナーの身体組成.久留米 大学健康・スポーツ科学センター研究紀要,

2003;11:1-11.

2) Shimamoto H, Komiya S The turnover of body water as an indicator of health. J Physiol Anthropl Appl Human Sci, 2000; 19: 207-12.

3) Noakes TD Fluid replacement during exercise.

Exerc Sport Sci Rev, 1993; 21; 297-330.

4) Komiya S et al., Determination of the total body water by D2O dilution using urine samples and infrared urine sample and infrared

spectrophotm-etry. Jpn J Phys Edu, 1981; 26: 161-7.

5) Schloerb PR, et al, The measurement of total body water in the human subject by deuterium oxide dilution. J Clin Invest, 1950; 29: 1296-310.

6) Shimamoto H, Komiya S Comparison of body water turnover in endurance runners and age-matched sedentary man. J Physiol Anthropl Appl Human Sci, 2003; 22: 311-15.

7) Leiper J, et al., Comparison of water turnover rates in men undertaking prolonged cycling exercised and sedentary men. Int J Sports Med, 2001; 22:

181-5.

8) 滿園良一 一流女性長距離ランナーにおける体

水分量のturnover. 久留米大学健康・スポーツ

科学センター研究紀要,2011;19:9-13.

Table 3.‌‌Comparison of Half Time and % WT in Distance Runners (n=10) and Contorol Group (n=7) at 2nd Measurement.

Diatance Runners (n=10) Control Group (n=7)

Mean S.D. Mean S.D.

Half Time 8.69 1.38 10.16 2.23

(days)

% body water 8.49 2.46 6.92 0.89 turnover per day(%)

47

1.投稿資格

1) 本誌への投稿は、原則として久留米大学 健康・スポーツ科学センターの教職員(専任教員・兼任教 員・兼担教員・非常勤講師・技術系職員)及び研究員、研究生によって行われるものとする。但し、

研究生の場合は、指導教員との連名とする。

2) 第一著者が本センターの教職員・研究員以外の場合は、本センター教職員との連名とする。

3) その他、特別に編集委員会で認めた者とする。

2.原稿一般規定

1)原稿は、健康、運動、体育、保健およびスポーツに関連する科学の領域に関するものとする。

2) 人間を対象とした研究の原著論文では、ヘルシンキ宣言の精神に則り実施することとする。

3) 実験動物を対象とした研究の原著論文では、「動物の愛護及び管理に関する法律」および「実験動物の 飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」を遵守するとともに、各官庁の「動物実験等の実施に 関する基本指針」および日本学術会議が策定した「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」に 従い計画し実施するものとする。

4) 原稿の種類は、総説、短総説、原著論文、研究資料、短報、事例報告、内外の研究動向、研究上の問 題提起、技術報告、その他とし、和文もしくは英文とする。

3.原稿執筆規定

1) 原稿のフォーマット:原稿はパーソナルコンピューターを用い、標準的なソフトウエアで作成する。

A4縦置き横書きを基本として、上下左右に25mmの余白をとる。和文の場合は1ページ1200字(40 字×30行)になるように、英文の場合は、1ページ30行になるように設定する。

2) ファイルのフォーマットについて:文章や図・表のファイルは、一般的なソフトウェアのフォーマッ ト形式を用いて作成する(例、文章はMS WordあるいはMS Word互換の形式、図・表はExcelやExcel 互換、あるいはPowerPointやPowerPoint互換の形式)。特殊なソフトウェアを使用して文章及び図・

表を作成した場合は、論文に掲載する形でPDFファイルを作成して、使用ソフトウェアの名称、バー ジョンを別紙に明記し提出する。図は原則としてグレースケールで印刷する。特別にカラーでの図掲 載を希望する場合は、対照となる図をグレースケールとカラーそれぞれで印刷し提出する。ただし図 をカラーにするか否かについては、編集委員会で決定する。全ての原稿は本文(表紙、抄録、謝辞、

引用文献を含む)、図・表および図・表説明をひとつのフォルダーにまとめる。

3) 原稿:第1枚目は原稿表紙として、表題(和文と英文)、著者名(和文と英文)、所属、キーワード(5 語以内)、原稿の種類、原稿用紙枚数、図・表の数、別刷り希望部数を記入する。但し、短報について は原稿の1枚目から表題(和文と英文)、著者名(和文と英文)、所属、キーワード(5語以内)を記 し、ついで本文を書く。短報は刷り上がり4ページ以内(原稿8ページ程度)とする。

4) 原著論文の抄録:原稿第2枚目に英文抄録(500語以内)をつける。

5) 図・表:和文および英文で適切な題目と説明をつける。図・表の挿入箇所は、本文中で挿入する個所 の前後に1行空け、括弧内に図・表番号を書き入れて指定する。短報については、図・表を合わせて 4枚以内とする。

6) 項目:項目の順番は、原則として次のとおりとする。

  (1)大項目;緒言、方法、結果、考察、引用文献 など

  (2)小項目;1、2、…、1)、2)、…、(1)、(2)…、①、②、…

7) 引用・参考文献:本文中で文献に言及した場合、著者名の右肩か文の右肩に末尾の文献表に照合する 番号をつける。3人以上の共著の場合、“ら”“たち”“et al.”を用いる。

  例1.吉水 8)によれば……

投 稿 規 定

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