第4章 曲げ靭性と曲げ耐力を考慮したRCはり断面の 設計計算法
4.3 RCはり断面の計算例
設計条件として最大曲げモーメントMuと断面のエネルギー吸収能Wit(または断面の塑 性回転能¢p)が与えられるとともに、コンクリートならびに鉄筋の材料特性が与えられた 場合、 RCはり断面の断面寸法ならびに鉄筋量は次に示す手順によって計算できる。
(1)断面のエネルギー吸収能Witを確保するために必要な引張鉄筋量Asvを式(4‑
1)より計算する。
(2)最大曲げモーメントMuを確保するために必要な断面寸法b・dを計算し、引張鉄 筋比pを求める。
(2')断面寸法b・dが与えられている場合には、 Muの確保に必要な引張鉄筋量Asmを 計算し、 AsyとAsmのうちいづれか大きい方を引張鉄筋量とし、引張鉄筋比pを
求める。
(3)式(4‑4)をもとに圧縮鉄筋比p'を計算し、圧縮鉄筋量As'を求めるo
3章(3‑1 5)式より
S(ecr)
esr=
posy‑p'dsy'+N'/(bd)
‑ecr (4‑4)
以下に計算例を示す.設計条件,はり断面,材料特性は次のとおりとする。
ここでは数値を用いて具体的に設計の手順を示すことを目的としており、各値について はさらに検討を必要とする。なお、最大(終局)曲げモーメントを荷重係数1.7で除した値
を用いて鉄筋およびコンクリート応力を求め、これらの値が許容応力以下になるように設計条件を設定した。
(i)設計条件:最大曲げモーメントMu‑35tf・m
断面のエネルギー吸収能Wit‑6・3tf・m/a (または塑性回転能¢p‑Wit/Mu‑0・18/a) (ii)はり断面:長方形断面(図4‑1参照)
圧縮鉄筋位置 d'=0.1d (iii)材料特性:鉄筋の降伏強度osy‑qsy'‑3000kgf/cm2
鉄筋の降伏開始ひずみesy‑0・0015・鉄筋の破断時のひずみesf‑0・15
はり降伏終了時の引張鉄筋ひずみEs,‑0・05‑0・10 (I/3esf‑2/3esf) コンクリートの圧縮靭性S(Ecr)三1・2kgf/cm2
コンクリートの圧縮強度qcuはここでのRCはり断面の計算には直接用いないが、一応
ocu=240kgf/cm2とするo引張鉄筋の降伏時のひずみEsrの上下限(0・05‑0・10)は、引張鉄筋を十分降伏変形させるが破断は防ぐという両方の観点から設けたo
es,がこの̲鶴囲となるように圧縮鉄筋量を調整する。一般に、はり断面のエネルギー吸収能とばり全体
の変形能とを関連づけるには、載荷条件にも依存する破壊領域の広がりについての検討が
必要となるので、ここでは両者の関連づけについては取り扱わないこととする。もっとも、例えばモーメントスパン長を25cm,両側のせん断スパン長を50cmとする小型の模型単純は りに2点載荷を行った場合に、モーメントスパン内の平均塑性回転量が上述の設計条件で 与えた値0.18/mとすると、スパン中央の塑性たわみは12.7cmとなり、これはスパン125cmの 約1/10である。
(C a s el) b, dが与えられていない場合
断面のエネルギー吸収能Wit‑6・3tf・m/mを確保するのに必要な引張鉄筋量Asy (‑As) は、 (4‑1)式より
Asv‑pbd=Wit/ (osy
(%,‑Esy)
)‑6300/(3000(0. 1010.0015))‑21.3cm2
最大曲げモーメントMu‑35tf・mを確保するために必要な有効高さdは、圧縮鉄筋位置に 圧縮合力が作用すると仮定すると
d‑Mu/(0・9Asαsy)
‑3500000/(0.9Ⅹ21.3Ⅹ3000)‑61cIコ はり暗b==d/2==30cⅡlとすると、引張鉄筋比pは,
p ‑As/(bd)‑2l・3/(30x61)‑0・O116
降伏終了点における引張鉄筋ひずみEsrを0・10とするために必要な圧縮鉄筋比p'は (4‑4)式より、
p'‑p‑S(Ecr)/(osy(Ssr+Ecr))
‑0.0116‑1.2/(3000(0. 10+0.005))=0.0078
なお,降伏終了点におけるコンクリートひずみEcr‑0・005としたが、この値が圧縮鉄 筋比p'に及ぼす影響は比較的小さい。
圧縮鉄筋量As'は
As'‑p'bd‑0・0078x30x6l‑14・3cm2
以上の計算結果をまとめると、次のようになる。
d=61cm,b=30cm.A=21. 3cm2,A'=14.3cm2
例えば,上記のRCはり断面にM=Mu/l・7=20・6tf・mの曲げモーメントが作用した場合、
コンクT)一卜上線応力qc=75kgf/cm2,引張鉄筋応力os=1800kgf/cm2,圧縮鉄筋応力os'
・833kgf/cm2となる。
降伏終了点における引張鉄筋ひずみEsrを0・10でなく鉄筋破断ひずみの約1/2の0・08と
成るように計算すると, d=49cTn,b=25cm,A =26.8ctn2,A'=21.1cm2となる。すなわち、 RCは り断面の寸法は約20%減少するが,圧縮鉄筋量は約50%増加し、総鉄筋量(‑As+As')
も約35%増加する。
(C a s e2) b‑30cm, d‑65cmが与えられている場合
最大曲げモーメントMu‑35tf・Ⅲを確保するために必要な引張鉄筋量Asmは,
Asm‑Mu/(0・9dαsy)
‑3500000/(0. 9Ⅹ65x3000)=19. 9ctn2
一方、エネルギー吸収能Wit=6・3tf・m/mを確保するための引張鉄筋量Asy=21・3cm2であ るo MuとWitの両方を確保するために、 As=max(Asm・Asy)=Asy=21・3cm2とするo
p =As/(bd)=21・3/(30Ⅹ65)=0・0109
Esr‑0・10とするために必要な圧縮鉄筋比p'は()式より、
p'‑p‑S(Ecr)/(qsy(Ssr;8cr)〉
‑0.0109‑1.2/(3000(0. 10+0.005))=0.0071
圧縮鉄筋量A'は,
A'‑p'bd=0.0071x30x65=13.8ctD2
以上の計算結果をまとめると次のようになる。
d=65cm,b=30cm,A =21.3cm2.A'=13.8cm2
この断面に曲げモーメントM‑Mu/1・7=20・6tf・mが作用した場合,
oc=69kgf/cm2・ qs=1690kgf/cm2, os'=760kgf/cⅦ2となる.
(C a s e3) b‑30cm, d‑55cmが与えられている場合
Mu‑35tf・mを確保するために必要な引張鉄筋量Asmは、
Asm‑Mu/(0・9dosy)
‑3500000/(0. 9Ⅹ55Ⅹ3000)=23. 6cⅧ2
一方, Asy=21・3cm2であるから、 MuとWitの両方を確保するために, As=max (Asm,
Asv) ‑Asm‑23・6cm2 とするo
p ‑ As/(bd)‑23・6/(30x55)‑23・6cm2
As>Asyであるから、エネルギー吸収能Wit‑6・3tf・m/mを得るには、降伏終了点にお ける引張鉄筋ひずみEsrは0・10より小さくてよい○ (4‑1)式より
Esr‑ Esy;Wit/(Asosy)
‑0.0015+6300/(23.6Ⅹ3000)=0.090 >0.05
Esr‑0・090はEsrの下限0・05より大きいo Ssr‑0・090となるための圧縮鉄筋比p'は、
p'‑p‑S(8c,)/(qsy(es,+£c,))
‑0.0143‑1.2/(3000(0.090+0.005)〉=0.0101 As'‑ p'bd=0・0101Ⅹ30Ⅹ55=16・7cm2
以上の計算結果をまとめると、次のようになる、
d=55cm,b=30c恥A =23.6cm2,A'=16.7cm2
この断面にM‑Mu/1・7=20・6tf・mが作用すると、
oc=82kgf/cm2・ os=1810kgf/cm2、 us'=923kgf/cm2 となる。
(C a s e4) 軸圧縮力N'‑10tfがあり、 b, dが与えられていない場合
C a s e lの計算結果より、
d=61c恥b=30c恥As=21・3cm2・p=o・o116
Esr=0・10とするために必要な圧縮鉄筋比p'は、 (4‑1)式より、
p'‑p‑S(Ec,)/(osy(Ssr+Ec,))+N'/(osybd)
‑0.0116‑1.2/(3000(0. 10+0.005))+10000/(3000Ⅹ30Ⅹ61)=0.0096 圧縮鉄筋量A'は
A'‑p'bd‑0.0096Ⅹ30Ⅹ61=17.6cm2 以上の結果をまとめると、次のようになる。
d=61cm・b=30cm・ As=21・3cm2・ As'=17・6cm2
c a s e lと4の計算結果を比較するとわかるように、軸圧縮力N'が存在する場合にN' が無い場合と同じ曲げ靭性を確保するためには、圧縮鉄筋量を増さなければならない。
4.4 まとめ
本研究においては、 RCはり断面の設計条件として曲げ靭性と曲げ耐力の値が与えられ
た場合における断面の計算方法を、計算例によって示した。
RCはりの曲げ靭性パラメーターとして、引張鉄筋の降伏開始点から降伏終了点までの
間の引張鉄筋の降伏変形によるエネルギー吸収能Wit、あるいはその間の塑性変形能¢p(‑Wit/Mu)を採用したことにより、 RCはりの曲げ靭性を曲げ耐力と同程度の取り扱 い易さでRCはり断面の設計計算に取り入れることが可能となった。
引張鉄筋の破断による急激な破壊を防止すると同時に、引張鉄筋を十分に降伏変形させ
て引張鉄筋のエネルギー吸収能を有効に利用するという両方の観点から、引張鉄筋の降伏終了時のひずみEsrに上下限を設け、 Esrがこの範囲内となるように圧縮鉄筋量を調整す る手法によって検討した。
今後の課題としては、上述の降伏終了時の鉄筋ひずみ£srの上下限の値や,設計条件と してのエネルギー吸収能Witあるいは塑性回転能¢pの値などについて、許容応力度設計法 との整合性をも含めてさらに検討を要することがあげられる。
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