名称:Railway applications - Specification and demonstration of reliability, availability, maintainability and safety (RAMS)
鉄道分野−信頼性,アベイラビリティ,保全性,安全性(RAMS)の仕様と実証 概要:鉄道システムに関して、信頼性(Reliability)、アベイラビリティ(Availability)、
保全性(Maintainability)、安全性(Safety)の信頼性管理指標を、システムの構
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 資料編 第6部
想から廃棄に至るまでのライフサイクルを通じて、経済性に照らして総合的かつ 良好なバランスを維持されることを要求する規格である。各指標の頭文字をとっ てRAMS(ラムズ)と呼ばれている。
規格番号:IEC62778 RAMS IEC62279 ソフトウエア
IEC62425 信号用安全関連電子システム
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 第6部
≪提言詳細及び経緯≫
1. ERTMS/ETCSに準拠した製品開発の難しさ (1) 要素技術
ERTMS/ETCS のレベル 1、レベル 2 を実現するのに必要な技術は、ATS-P形やデ
ジタル ATC を実現した技術とほぼ等価であり、基本的には、日本においても開発済 みで実用化されている。更に、ERTMS/ETCSレベル 3 に相当する移動閉塞制御も、
国内ではATACSで実現している。
(2) TSI仕様に基づく製品開発と認証試験の障壁
ERTRMS/ETCSに準拠した製品を展開する上での課題は、TSI仕様に準拠して製品
開発しなければならない点にある。このTSI仕様で定義されている仕様は精緻であり、
例えばATACSの要素技術をそのまま ERTMS/ETCS のレベル 3 へ適用することはで
きない。TSI仕様で定義されている仕様が日本国内で製品化されている仕様と合致す ることはあり得ない。そのためERTRMS/ETCSに準拠した製品を製造するためには、
TSI仕様に基づいて一から設計、製造しなければならない1。
また、インターオペラビリティに準拠しているかどうかの認証試験も、所定の機能 や性能を発揮していることを、現車走行試験を通じて確認される2。
このように、ERTMS/ETCS 準拠の列車制御システムで鉄道事業を行うには、TSI 仕様で定義された詳細仕様が大きな参入障壁となっている。
2. 現状のERTMS/ETCS
世界の都市間鉄道(含む高速鉄道)ビジネスにおいては ERTMS/ETCS レベル 1、2 を 無視することはできない。また、欧州では近年でもERTMS/ETCSレベル 2 の技術開発が 継続している。
ERTMS/ETCSレベル 3 は、軌道回路を用いずに無線で列車位置検知を行う点を特徴と
しているが、未だ導入実績はない3,4,5。ERTMS/ETCSレベル 2 で採用されている軌道回 路は、現在も主流の列車検知技術となっている。
中国を含むアジアの国々では、レベル 1、2 を導入しようという動きがある。中国では CTCS(Chinese Train Control System)と称したERTMS/ETCSに準拠した規格に適合す
1 有識者コメントに基づく
2 永次「日立製作所におけるETCS車上装置の開発」、鉄道車両と技術、No.210
3 平尾「無線を利用した列車制御システムの世界動向」、JR EAST Technical Review No.43
4 広瀬「欧州ERTMS展開の最新状況」、鉄道と電気技術 2012 AUGUST Vol.23, No.8
【提言 2-1】
欧州をはじめとする世界の都市間鉄道向けの信号システムにおけるビジネスの主体は ERTMS/ETCSレベル 1、2 である。技術開発について、ERTMS/ETCSレベル 3 の動向 に注意しつつ、欧州のERTMS/ETCSレベル 2 の開発動向に注視すべきである。
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 資料編 第6部
る高速鉄道を導入しているが、全て基本は軌道回路の列車位置検知方式を採用している。
3. ERTMS/ETCS関連の特許分析結果と提言
ERTMS/ETCS 関連の特許を分析すると、欧州国籍出願人(独仏除く)と独国国籍出願人
による出願が多いことが分かる。中国国籍出願人は、CTCS としての出願が多い。また、
特徴的なのは、ERTMS/ETCSレベル 2 の出願がレベル 3 の出願よりも多い点にある1。 このように、ERTMS/ETCSレベル 3 の開発動向に注意しつつも、アジア等の世界での ビジネスで主流の ERTMS/ETCS レベル 1、2 の技術動向や製品開発、導入事例等には、
注視していく必要がある。またERTMS/ETCSレベル 2 の対応力をつけて行く事も重要で ある。
また、ERTMS/ETCSでは、製品レベルでの仕様を標準化しているので、規格の周辺技 術、インタフェースの開発・権利化に重点を置く必要がある。
1 →本編図 4-3-59 参照
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 第6部
≪提言詳細及び経緯≫
CBTC関連の技術開発が各国・地域で加速化している。CBTC関連技術の特許分析を見 ると、中国国籍出願人による出願が最多で、全体の 33.3%を占めている1。続いて米国籍出 願人(24.3%)、日本国籍出願人(18.0%)、欧州国籍出願人(独仏含む)(12.7%)、韓国籍 出願人(11.1%)となっている。
更に、累積出願件数推移を見ると2、CBTC の規格である IEEE1474 が制定された 2004 年までは、米国籍出願人による出願件数が伸び、続いて日本国籍出願による出願件数も伸 びた。また韓国籍も同じ傾向であった。その後しばらく横ばいで推移したが、2007 年頃か ら中国籍出願人による出願、2012 年より米国籍出願人による出願が伸び始めている。
中国や米国の出願件数が増加した原因として、どの技術分野に属する出願が増加したの かを詳細に調べた。CBTC関連出願を母体として、各々の出願に付与されている技術分野 コードを集計したところ、運行管理技術、地上-車上伝送、自動列車制御システム、列車 位置検知技術の 4 つの分野で増分を確認することができた。
CBTC 関連出願での他国・地域における急激な伸びについて、ERTMS/ETCS 関連出願 の伸びと比較してみる3(図 4-3-63)。ERTMS/ETCS 関連出願は、若干の増分はあるが基 本的には線形的に増加している。一方、CBTC関連出願の伸びは、明らかに 2 次曲線的に 増加していることがわかる。
このように、ERTMS/ETCS規格とCBTC関連技術とで、出願件数の増分に差異がある のは、ERTMS/ETCS 規格と IEEE1474 規格で制定されている規格の仕様の深さに起因し ていると考えられる。ERTMS/ETCS 規格は、製品仕様レベルまで規定された規格である のに対し、IEEE1474 規格は、主に概念を定義しているのみで、具体的な実装方法、詳細 仕様に関しては規定していない。つまり、CBTC関連技術は、細部迄の詳細な規定がない ため、各社特徴を活かした技術開発を行うことができる。
これはCBTCが適用されるのは都市交通で独立した区間が多く、ERTMS/ETCSのよう にインターオペラビリティ保証のため詳細インタフェースまで規定する必要がなかった という事も理由の一つである。そのため、細部については各社自由に対処できるようにな っ ている。従 って細部の 技術で各社 特徴を出し て特許化を 図っている 。各国にお い て CBTCの実装方法に関する技術開発が数多くなされ、各々の特徴となる技術を特許出願し ている傾向がある。
日本以外の他国の近年における出願増は、上述のことに由来する可能性もあり、日本も 追随する必要がある。
1 →本編図 4-3-61 参照
【提言 2-2】
CBTC関連の技術開発が各国・地域で加速化している。日本もこれらの動きに注視して いく必要がある。
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 資料編 第6部
≪提言詳細及び経緯≫
UGTMS(Urban Guided Transport Management and Command/Control System)規格に ついては、Part1(システム原則と基本的概念)、Part2(機能要求仕様)が現在、IEC62290 として発行済み、Part3(システム要求仕様)が審議中である。また、当初の予定では、
Part4(インタフェース仕様)までが作成される予定である。ここで規格化の範囲がPart4
まで詳細に規格化されてしまうと、ERTMS/ETCS と同様に詳細インタフェース仕様まで 規格化され、今後の技術進歩を阻害しかねない。日本としては、part3 以降の審議におい て、具体的かつ詳細設計可能なレベルまでの規格化を極力避けるよう注力しているところ である。
また、これまでの主要規格の制定時期と特許出願状況には次のような傾向がみられた1
(図 4-3-60)。例えば、ERTMS/ETCSや CBTC は、規格制定前に駆け込み出願が見られ 一時増加していたが、規格制定後は減少するなど、規格制定前後での出願数に変化がみら れる。規格化時期に合わせて出願傾向を見極め、注視していく必要がある。
現在審議中のUGTMSについては、このような傾向はまだ見られないものの、出願傾向 を見極め、注視する必要がある。
1 →本編図 4-3-60 参照
【提言 2-3】
今後注目度の高いUGTMS(都市交通システムの管理、指令・制御システムのための規 格)の標準化について、日本として標準化作業が製品化戦略に対し、優位に運ぶように 注力すべきであるとともに、製品競争でも優位に進めるために欧米の出願内容を含む動 向を注視すべきである。
本編 要約 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 第6部
≪提言詳細及び経緯≫
AUGT(自動運転の安全性規格)は、完全無人自動運転を視野に入れた安全要件の規格 である。
一方、無人自動運転に関する技術は、早い時期に実用化した日本の強み技術といえる。
実例では、神戸ポートライナが完全無人自動運転を実現しており、開業は 1981 年にまで さかのぼる。これは世界初の完全無人自動運転による CBTC とも言われている1。無人化 運転に関する技術は、日本の出願は多い。(図 4-42)
ただ、AUGTで定義されている無人化運転のレベル(GoA2 2,3,4)に沿って特許出願の 傾向を調査すると、GoA4のUTO(Unattended Train Operation)に関する発明では、最 近欧州が出願している3。
また、シーメンス社は、積極的にドライバレスの CBTC を導入しようとしている4。こ のように、CBTCやUGTMSで無人自動運転を実現するための安全要件が規格の面、具体 的には IECの AUGT 規格で整備されてきており、無人自動運転(ATOシステム含み、広 い意味での無人自動運転であるGoA3;DTO(Driverless Train Operation)、GoA4;UTO)
に対応した技術開発では、インフラ輸出を念頭により一層注力すべきであり、また技術動 向・市場環境に注視すべきである。
1 「20.鉄道技術分野における国際標準化活動基盤強化アクションプラン」日本工業標準調査会資料 閲覧日 2016/2/8 https://www.jisc.go.jp/policy/pdf/jiscsc24_03-AP/20_APtetudou.pdf
2 GoA;Grade of Automation(自動運転の程度を示す。Ex.GoA3;DTO;DriverlessTrainOperation、ドラ イバレス運転(運転士は不要だが、添乗員乗車)、GoA4;UTO;Unattended Train Operation、完全無人 自動運転(添乗員も不要)
3 →本編図 4-3-10 参照
【提言 2-4】
AUGT(自動運転の安全性規格)は、完全無人自動運転を視野に入れた安全要件の規格 である。日本は無人自動運転に関する技術では従前より実績はあるが、欧州が近年完全 無人自動運転の特許出願に積極的な傾向があるため、AUGT 規格である安全要件の規格 整備がより一層促進されると思われる。
日本も無人自動運転に対応した技術開発に、よりいっそう注力すべきである。