time(day)
CO2 He
図3.2.7 改良品の各ガスパーミアンスの経時安定性(大気圧下)
0 5 10 15 20 25 30
0 20 40 60 80
α (C O
2/H e)
time (day)
図3.2.8 改良品のCO2選択透過性αの経時安定性(大気圧下)
3.3 膜モジュールの検討
3.3.1 1リーフモジュールでの構造検討
【はじめに】
膜モジュールの設計を行う上では平膜の性能を十分に発現しうる構造・機能を有してい ることが必要となる。現在開発を行っている分子ゲート膜では膜システムの湿度を制御で きることやガス透過のドライビングフォースとなる膜間分圧差を維持出来るような構造を 考慮することが重要である。湿度依存性の低い分離膜材料の開発が必要であるが、モジュ ール構造および膜分離システム全体においても相対湿度を保持できるようにする必要もあ る。
本項目では、1リーフモジュールでの基本構造検討、およびスイープ構造モジュールにて モジュール性能向上する結果が得られたので、4インチモジュールへのスケールアップを実 施した。
【スイープ構造モジュールについて】
分子ゲート膜の膜性能は供給ガスの相対湿度に依存する。具体的には80 %R.H.以上の高 湿度の条件では分離性能が発現するが、低湿度では分離性能が発現しない。一方で、分子 ゲート膜をモジュールにしたときに、膜の水蒸気透過速度が著しく高いためモジュールの
長さ方向で相対湿度が変化する現象が生じる。例えば、入口で相対湿度80 %だった供給ガ スが、出口で相対湿度20 %に低下するというように、モジュールの出口側では分離性能が 発現しない環境が生じる。
透過側への水蒸気の透過を防ぐために、透過側に加湿ガスを導入できる構造(以下、ス イープ構造)のモジュールについて検討を行った。具体的には、図3.3.1に示すよう な集ガス管中心にキャップ、膜リーフの透過側スペーサー内に仕切りを入れることにより、
透過側に加湿ガスを導入できる構造である。仕切りの位置、長さなどを調整することで透 過ガス流れ方を変えることができる。
スイープ構造の利点としては、上述した湿度保持以外にも、透過ガススイープすること で透過の駆動力である分圧差を大きく保つことが出来、モジュール性能の向上が期待され る。
本項目では、従来構造のモジュールとスイープ構造のモジュールの 2 種類を作製し、実 際のモジュールとして透過側にスイープガスを流すことによって、モジュール性能向上す るのかどうかについて検証を行い、4インチモジュールへのスケールアップを行った。
膜 膜
供給ガス 供給ガス
供給ガス
スイープガス導入型(Sweep type)
加湿 スイープ
ガス
プラグ
透過スペーサー内に 仕切り
加湿 スイープ
ガス
+ 透過ガス
図3.3.1 スイープ構造モジュール模式図
【モジュール性能評価および解体平膜性能評価】
試作したモジュールの評価を行った。供給には40 ℃、80 %R.H.のCO2/He混合ガスを 導入した。透過側条件として、従来構造のモジュールに関しては透過側条件を、①大気開 放および②真空ポンプで-90 kPaGまで減圧の2条件に設定した。スイープ構造モジュール に関しては、80 %R.H.のArガスを透過側へ導入した。
モジュール評価結果を図3.3.2~3に示す。図中の①②③は上述の①②③にそれぞれ 対応している。加圧のみでの評価結果に対し、真空ポンプおよび加湿スイープでは分離係 数およびパーミアンスが増加することが分かった。これは、真空ポンプおよび加湿スイー プをすることで透過側のCO2濃度が下がり、透過のドライビングフォースである分圧差が
つきやすくなったためであると考えられる。また、真空ポンプと加湿スイープの差に関し ては、モジュール内の湿度雰囲気による差であると考えられる。真空ポンプによる減圧で は、透過側のガス濃度は下げられるが、同時に透過側のH2O濃度も下げてしまうため、供 給ガス中の水分が抜けて行ってしまう。加湿スイープでは透過側のガス濃度を低くしつつ、
H2Oを供給するため、供給ガス中の水分は透過せず、モジュール全体として高い分離性能 を発現できていると考えられる。
図3.3.2 2 インチミニモジュール 分離係数の供給ガス圧力依存性
図3.3.3 2インチミニモジュール パーミアンスの供給ガス圧力依存性
【4インチモジュールへのスケールアップ】
スイープ構造4インチモジュールの試作を行った。従来構造およびスイープ構造モジュ ールの作製・評価を行った。評価結果を表3.3.1に示す。従来構造モジュール
(SHINN-0019)ではα=1.7であった。本モジュールに使用した平膜は大気圧条件にてα=30 前後を示すため、SHINN-0019は封止部分もしくはリーフ内欠陥を有していることが考え られる。
スイープ構造モジュール(SHINN-0020)はスイープ流量増加に従い分離性能が向上し た。透過側をスイープすることで、分圧差が高くなり、分離性能向上したと考えられる。
スイープ流量1000 ml/min.、大気圧の条件においてα>5発現したものの、差圧を少しかけ るとHeのパーミアンスが大きく上昇し、αが低下する結果が得られた。差圧を戻すと性能 が元に戻ることから、モジュール内の微小な欠陥に由来すると考えている。
表3.3.1 4インチモジュール評価結果
供給圧力 スイープ流量 CO2 パーミアンス He パーミアンス α モジュール Lot
[MPaG] [ml/min.] [m3/m2/Pa/s] [m3/m2/Pa/s] [-]
SHINN-0019
(従来構造) 0.1 0 1.5E-11 6.7E-12 1.7
0 200 3.3E-11 7.0E-12 3.8
0 400 3.4E-11 6.4E-12 4.7
0 1000 3.8E-11 6.6E-12 5.4
0 1500 4.0E-11 6.7E-12 5.7
0.05 1500 4.3E-11 9.9E-12 4.0
SHINN-0020 (スイープ構造)
0 200(再) 3.7E-11 6.6E-12 4.4
3.3.2 スペーサー圧損評価
後述の4インチモジュール評価時にスペーサーの圧損について評価を実施した。圧損の評 価には微差圧計を用いた。
【評価条件】
評価条件を以下に記す。
使用モジュール:SHINN-005 供給ガス温度:40℃
供給ガス圧力:0.6MPa 供給ガス流量:5L/min.
供給ガス湿度:80%R.H.
【評価結果】
上記条件にてモジュール差圧は0.68 kPa/mであった。今回評価をおこなった条件におい ては、モジュールの供給ガススペーサーの圧損は、本モジュールサイズでは問題ないレベ ルであると考えられる。今後スケールアップした際には別途、圧損評価検討を行う予定で ある。
3.4 実機型膜モジュールの試作 3.4.1 4インチモジュール試作
富津研究室の保有する高精度模擬ガス試験装置にておこなう模擬ガス試験に供するため の実機型膜モジュールの試作を実施した。モジュールサイズおよび外観は図3.4.1~
2の通りである。
図3.4.1 4インチ試作モジュール寸法
図3.4.2 試作モジュール外観
3.4.2 低圧(<1MPa)での4インチモジュール評価
試作したモジュールの供給ガス組成、供給ガス流量、圧力依存性の評価を行った。評価 条件および結果を表3.4.1に示す。
表3.4.1 低圧での4インチモジュール評価結果
<評価条件>
温度:40 ℃、供給側圧力:0.6 MPaG、透過側圧力:大気開放、供給ガス湿度:80 %R.H.
供給ガス組成 モジュール性能
膜面積 供給ガス流
量 CO2/He Q(CO2) Q(H2) α モジュール Lot
no.
(m2) (L/min.) Vol% 比 (m3/m2/Pa/s) (m3/m2/Pa/s) (-) 80/20 1.1E-10 5.0E-11 2.1 32/68 9.2E-11 3.5E-11 2.3 SHIN-005 0.54
20/80 8.1E-11 2.7E-11 2.5 80/20 7.3E-11 3.3E-11 2.0 32/68 5.7E-11 2.3E-11 2.2 SHIN-006 0.54
5 (0.3Nm3/hr)
20/80 5.6E-11 2.2E-11 2.2
上記性能評価条件と同条件にて富津研究室保有の模擬ガス試験装置で模擬ガステストを おこなった結果、同等の結果が得られ、試験装置間の整合性を確認することが出来た。
3.4.3 模擬ガス試験モジュールの解体膜分析・評価
富津研究室協力のもと、3MPaでの模擬ガス試験を実施した。この3 MPa加圧が及ぼす 膜への影響を確認するため、モジュールを解体し、平膜性能評価および膜構造分析を実施 した。
【富津での模擬ガス試験後モジュール性能評価】
富津で性能低下が確認されたモジュールについて、茨木研究室の評価装置で再度評価を実 施した。結果を表3.4.2に示す。富津模擬ガス試験装置での3 MPa負荷後の試験結果 とほぼ同じ結果が得られた。富津試験後のモジュール外観からは構造体として破損した形 跡はなく、3 MPa加圧により膜の性能低下が生じたものと考えられる。
表3.4.2 模擬ガス試験後モジュール評価結果
<評価条件>
温度:40 ℃、供給側圧力:0.6 MPaG、透過側圧力:大気開放、供給ガス湿度:80 %R.H.
供給ガス組成 モジュール性能
膜面積 供給ガス流量
CO2/He Q(CO2) Q(H2) α
モジュール Lot no.
(m2) (L/min.) Vol% 比 (m3/m2/Pa/s) (m3/m2/Pa/s) (-)
80/20 1.7E-10 1.0E-10 1.6
32/68 9.4E-11 6.3E-11 1.4
SHIN-005
20/80 1.1E-10 7.4E-11 1.4
80/20 1.1E-10 6.2E-11 1.6
32/68 9.2E-11 4.4E-11 1.9
SHIN-006
0.54 5
(0.3Nm3/hr)
20/80 9.0E-11 4.9E-11 1.7
【富津での模擬ガス試験後モジュール解体および膜面観察】
上述の通り、3 MPa加圧後のモジュールが性能低下したことから、モジュールを解体し 膜面の観察を実施し、性能低下部位の特定とそのモード調査を行った。
(模擬ガス試験後モジュール解体膜面観察)
シールキャリアおよび外装を外し、モジュール解体膜の外観観察を行った。全体的には 原ガススペーサーの痕が膜面についており、スペーサーに沿った形でデンドリマーが付着 している状態も観察された。また、①ゲル状異物が付着、②デンドリマー由来の黄色が薄 い部分、③明らかな欠陥が見られた。
(解体膜性能評価)
供給スペーサー痕部分、③の部分をサンプリングし、平膜性能評価を行った結果を図3.
4-3に示す。供給スペーサー痕の部分ではα=10程度発現しており、モジュール化前の平 膜と同等の結果が得られている。②のように色が薄い部分は α=4 程度であり、シリコーン 層のみの選択性とほぼ同等であることが分かった。したがって、色が薄い部分では分離機 能層が無いことが推察される。③のように明らかな欠陥部分は α<1 となった。元々欠陥に なりやすい部分があり、3MPa加圧により欠陥発生したものと推察されるが、欠陥発生の詳 細な分析は現在行っている。今回試作したモジュール用の複合膜は、ラボ試作で作ってお り、今回発生した欠陥はその製膜作業上の分離機能層形成のバラツキや不完全性に基づく ものと考えられるため、今後複合膜作製の精度を上げて行くことで、このような欠陥発生 を抑制できるものと考えている。