PVA PVA層層
0.6 MPa α膜組成膜組成
①① ②② ③③ ④④
デンドリマー デンドリマー
メインメイン
ポリアミン ポリアミン
メインメイン
化合物 B 配合比率
●大気圧Q
▲0.6MPa Q
●大気圧 α
▲0.6MPa α
0オーダーに到達した。さらに、αは組成①とは異なり、大きく向上した。
図2.5.9 80℃/大気圧条件下における各組成物のガス透過性能と非透過側相対湿度の相関
化合物 B によって性能が向上した要因を明らかにするため、膜の物性検証を実施した。
ここでは膜物性の温度依存性を把握する目的で動的粘弾性による評価を行った。真空乾燥 後のフィルム(膜厚100 μm)の測定結果を図2.5.10に示す。
組成● 化合物B未添加品 組成● 化合物B添加品 図2.5.10 動的粘弾性測定結果
図2.5.10より、化合物Bを添加することで明らかにE’ [Pa] 向上とtanδ抑制の傾向 が見られた (組成●)。すなわち、化合物Bを添加することで、膜の硬さ向上および分子運動 の抑制効果があり、Q(He)抑制に繋がっているのではと考えられる。ただし、まだ加圧での 能力が不十分であり、特にQ(CO2)低下が大きく、今後の課題である。
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
80 85 90 95 100
非透過側相対湿度[%RH]
α[-]
4040℃・℃・9090RH%RH%・・ 大気圧時の 大気圧時のαα
0 2.00E-11 4.00E-11 6.00E-11 8.00E-11 1.00E-10 1.20E-10 1.40E-10
80 85 90 95 100
非透過側相対湿度[%RH]
Q[m3/(m2・s・Pa)]
組成①組成① 組成② 組成② 組成③組成③
40℃・40℃・9090RH%RH%・・大気圧大気圧 時のQ(CO時のQ(CO22))
1.00E+06 1.00E+07 1.00E+08 1.00E+09 1.00E+10
0 20 40 60 80 100 温度[℃]
E'[Pa]
1.00E-02 1.00E-01 1.00E+00
0 20 40 60 80 100 温度[℃]
tanδ
2.5.5 まとめ
今年度は、ガス分離膜の性能向上を図るべく、PVA 種類とデンドリマー種類の変更に取 り組んだ。PVA種類については、けん化度低減によりQ(CO2)向上したが、αの低下が特に 加圧下で大きいため、α維持の観点から高けん化PVAを選定すべきとの結論に至った。ま た相溶性や架橋度の問題からデンドリマーを新規開発品に変更したが、大きくαが低下し た。
化合物Bの添加効果については40 ℃では性能低下が見られたが80 ℃ではαを大きく向 上させることができた。化合物Bを添加することで、力学物性向上(動的粘弾性)傾向も見ら れたことから、膜の硬さ向上、無用な自由体積増大や分子運動活発化を制御し、Q(He)抑制 に寄与していると推察した。
また、京都研究室の協力を得て、化合物A添加したところ、40 ℃/ 大気圧下では驚異的 な性能を発現し、数字の上では当研究組合の目標性能(Q(CO2)=7.5×10-10[m3/(m2・s・Pa)]、
α=30)を大きく上回る結果が得られた。ただし、加圧すると、Q(He)が激増するためにαが 大きく低下した。加圧下での性能向上が今後の課題である。
2 . 6 PVA系 材 料 を 用 い た 薄 膜 化 検 討
CO2選 択 分 離 膜 の 作 製 の た め に 、こ れ ま で PEG系 材 料 を 高 分 子 マ ト リ ク ス と し た 分 離 膜 の 検 討 を 行 っ て き た 。種 々 の 検 討 の 結 果 、分 離 性 能 が 30 以 上 を 0.7 MPa の 加 圧 下 に お い て も 達 成 す る こ と が で き た 。QCO2 は 膜 厚 18 μm の 膜 で は 0.7 MPa に お い て 1.0×10-10 m3 m-2s-1Pa-1と な っ た 。パ ー ミ ア ン ス を 向 上 さ せ る た め に 、膜 厚 が 約 6分 の 1 の 2.9 μmの 膜 で 同 様 の 測 定 を 行 っ た と こ ろ 、大 気 圧 に お い て 1.1×10-10 m3 m-2s-1Pa-1、 0.7 MPa で は 2.5×10-10 m3 m-2s-1Pa-1と な っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 薄 膜 化 に よ る パ ー ミ ア ン ス の 増 加 率 は 低 く 、パ ー ミ ア ン ス を 増 加 さ せ る こ と が 課 題 で あ っ た 。こ の よ う にPEG 系 の 材 料 で は 膜 の 薄 膜 化 に よ る パ ー ミ ア ン ス の 向 上 の 検 討 を 行 っ て き た が 、 薄 膜 化 に 伴 う 耐 圧 性 の 問 題 や 更 な る 薄 膜 化 の 困 難 さ が 課 題 で あ っ た 。 そ こ で 延 性 ・ 展 性 に 優 れ た PVAを 高 分 子 マ ト リ ク ス 素 材 と し て 使 用 を 検 討 し 、製 膜 を 行 う と と も に 分 離 性 能 の 評 価 を 行 っ た 。
2 . 6 . 1 実 験
①PVA系 分 離 膜 の 作 製
PVA系 高 分 子 マ ト リ ク ス に PAMAM デ ン ド リ マ ー を 含 有 さ せ 、化 合 物 A を 処 理 し た も の を 分 離 膜 と し た 。
② 膜 の 分 離 性 能 評 価
分 離 性 能 の 評 価 方 法 の 詳 細 に つ い て は 2 . 3 . 1 . 1 参 照 。
2 . 6 . 2 結 果 と 考 察
作 製 し た PVA 系 材 料 膜 の 分 離 性 能 の 評 価 を 行 っ た と こ ろ 0.1 MPa に お い て 、CO2の パ ー ミ ア ン ス が 8.6×10-10 m3 m-2s-1Pa-1、He の パ ー ミ ア ン ス が 7.6×10-12 m3 m-2s-1Pa-1分 離 係 数 は 110 で あ っ た 。 こ の 膜 を 0.4 MPaま で 加 圧 し た と こ ろ 、 透 過 側 の 流 量 の 増 加 が 確 認 さ れ 、 分 離 性 能 も 急 激 に 低 下 し た 。 透 過 側 の 流 量 が 増 加 し た 膜 を 更 に 昇 圧 す る こ と は で き な か っ た 。 膜 が 加 圧 に よ っ て 破 壊 さ れ た と 思 わ れ る 。
加 圧 時 の 性 能 低 下 の 際 に 使 用 し た 耐 熱 性 支 持 膜Aの 表 面 の 孔 径 が 大 き い こ と か ら 分 離 機 能 層 が 加 圧 に よ っ て 孔 に 陥 没 し 、 結 果 と し て 耐 圧 性 を 失 っ て い る の で は な い か と 考 え た 。そ こ で 、表 面 の 孔 径 が 小 さ い 耐 熱 性 支 持 膜 B上 に 同 様 の 膜 を 製 膜 し た 。製 膜 し た 膜 の 分 離 性 能 を 測 定 の 結 果 、0.1 MPa に お い て 、CO2の パ ー ミ ア ン ス が 4.4×10-10 m3 m-2s-1Pa-1、He の パ ー ミ ア ン ス が 3.2×10-12 m3 m-2s-1Pa-1分 離 係 数 は 130 と な り 、高 い 分 離 性 能 を 示 し た 。 し か し 昇 圧 す る と 透 過 側 の 流 量 が 急 激 に 増 加 し 、 膜 の 分 離 性 能 は 耐 熱 性 支 持 膜 A を 使 用 し た 場 合 と 同 様 に 性 能 が 急 激 に 低 下 し た 。
加 圧 時 に 性 能 が 急 激 に 低 下 す る 一 方 で 、 性 能 が 低 下 し た 膜 を 0.1 MPaま で 減 圧 す る と 、 分 離 性 能 が あ る 程 度 回 復 す る 傾 向 に あ る こ と が わ か っ た 。 例 え ば 耐 熱 性 支 持 膜 A
の 場 合 、加 圧 前 の CO2の パ ー ミ ア ン ス が 8.6×10-10 m3 m-2s-1Pa-1、He の パ ー ミ ア ン ス が 7.6×10-12 m3 m-2s-1Pa-1分 離 係 数 は 110 で あ っ た が 、 加 圧 に よ っ て 透 過 側 の 流 量 が 急 激 に 増 加 し 、 分 離 性 能 が 得 ら れ な か っ た 。 し か し 当 該 膜 を 0.1 MPa に 減 圧 す る と 、CO2 の パ ー ミ ア ン ス が 9.9×10-10 m3 m-2s-1Pa-1、He の パ ー ミ ア ン ス が 3.7×10-12 m3 m-2s-1Pa-1 分 離 係 数 は 25 と な り 、分 離 性 能 を 完 全 に 回 復 す る こ と は で き な か っ た が 、あ る 程 度 分 離 性 能 を 回 復 す る こ と が で き た 。 ま た こ の と き 、 加 圧 時 に は パ ー ミ ア ン ス が 高 く な っ た が 、 減 圧 後 は パ ー ミ ア ン ス に 関 し て は 初 期 値 ま で 回 復 し た 。
こ れ ら の 結 果 か ら 、支 持 膜 が PVA 系 材 料 膜 の 耐 圧 性 に 影 響 し な い こ と が 明 ら か と な っ た 。 す な わ ち 、 当 該 膜 の 耐 圧 性 の 欠 如 は 分 離 機 能 層 そ の も の に あ る の で は な い か と 考 え た 。 減 圧 後 に 膜 の 性 能 が あ る 程 度 回 復 で き た 結 果 か ら 、 膜 に 大 き な 破 壊 が 無 い 限 り 、 つ ま り 高 分 子 マ ト リ ク ス の 分 子 の 絡 み 合 い が ほ ど け る 程 度 の ミ ク ロ な 破 壊 の 場 合 は 減 圧 に よ っ て マ ト リ ク ス の 絡 み 合 い が 再 構 築 さ れ 、 分 離 性 能 を 再 度 発 揮 す る の で は な い か と 考 え ら れ る 。Kai ら は 有 機 溶 媒 の 逆 浸 透 分 離 を 目 的 と し て 高 密 度 ポ リ エ チ レ ン (HDPE) 基 材 の 細 孔 中 に ポ リ マ ー を グ ラ フ ト 重 合 し た 膜 ( フ ィ リ ン グ 重 合 膜 ) に お い て 、 グ ラ フ ト 重 合 の み で 架 橋 を 行 っ て い な い 場 合 、 大 気 圧 条 件 で は 高 い 分 離 性 能 が 得 ら れ る が 、 加 圧 し た 際 に 分 離 性 能 が 大 き く 低 下 す る と 報 告 し て い る 1)。 従 っ て 、 現 在 の PVA マ ト リ ク ス に 耐 圧 性 を 付 与 す る た め に は マ ト リ ク ス の 架 橋 度 を 向 上 さ せ る 必 要 が あ る こ と が 示 唆 さ れ る 。
そ こ で 架 橋 度 を 向 上 さ せ た 分 離 膜 を 用 い て 分 離 性 能 評 価 を 行 っ た 。結 果 を 表 2 .6 . 1 に 示 す 。
表 2 . 6 . 1 架 橋 度 を 向 上 さ せ た 膜 の 分 離 性 能
圧 力 QCO2 QHe CO2/He
MPa m3 m-2s-1Pa-1 m3 m-2s-1Pa-1
0.1 3.7×10-10 3.3×10-12 110 0.4 1.7×10-10 4.0×10-12 42 0.7 1.5×10-10 4.7×10-12 31
こ の 結 果 か ら 、0.7 MPa に お い て も α は 30 以 上 を 維 持 し て い る た め 、架 橋 度 の 向 上 に よ る 耐 圧 性 付 与 が で き た と 考 え ら れ る 。
架 橋 度 の 向 上 に よ る 構 造 変 化 を 確 認 す る た め に 、 顕 微 型 赤 外 分 光 計 を 用 い て 膜 組 成 分 析 を 行 っ た 。
< 顕 微 型 赤 外 分 光 計 >
装 置 : 日 本 分 光 株 式 会 社 製 ( 光 源 FT-IR-6100、 赤 外 顕 微 鏡 部 IRT-5000)
測 定 モ ー ド : ATR 法 IR 結 晶 : Ge
顕 微 ア パ ー チ ャ : 125 μm × 125 μm 対 物 レ ン ズ : ATR-5000-SG
分 解 能 : 4 cm-1 積 算 回 数 : 256 回
図 2 . 6 . 1 に サ ン プ ル の ス ペ ク ト ル を 示 す 。 架 橋 度 の 変 化 を 比 較 す る た め に 、 架 橋 度 の 向 上 を 行 う 前 の 膜 の ス ペ ク ト ル も 示 し た 。
標準架橋度 架橋度A 架橋度B 架橋度C
図 2 . 6 . 1 架 橋 度 を 向 上 さ せ た 膜 の FT-IR ス ペ ク ト ル
ア ミ ド の C=O 結 合 に 由 来 す る 1,640 cm-1、N-H 結 合 に 由 来 す る 1,553 cm-1に 変 化 が 見 ら れ る 。特 に C=O結 合 の 架 橋 度 向 上 前 後 の ピ ー ク 変 化 は 顕 著 で あ る こ と か ら 、種 々 の 架 橋 反 応 に よ り 架 橋 度 が 変 化 し た と 考 え ら れ る 。
参 考 文 献
[1] T. Kai, H. Goto, Y. Shimizu, T. Yamaguchi, S. Nakao, S. Kimura, Development of crosslinked plasma-graft filling polymer membranes for the reverse osmosis of organic liquid mixtures, J. Membr. Sci. 265 (2005) 101.
2 . 7 ま と め
第 2 章 で は 、 膜 の 分 離 性 能 の 向 上 と プ ロ セ ス 適 合 性 の 付 与 を 目 指 し て 、 実 験 結 果 か ら 推 定 さ れ る 分 離 メ カ ニ ズ ム に 基 づ い た 材 料 の 開 発 と そ の 材 料 を 用 い た 分 離 膜 の 開 発 を 実 施 し た 。
CO2分 離 性 能 の 向 上 で は 、PEG 系 材 料 と PVA 系 材 料 を 用 い て 、CO2透 過 速 度 向 上 の 向 上 検 討 、 膜 材 料 の 組 成 の 検 討 、 薄 膜 化 検 討 、 連 続 安 定 製 膜 技 術 の 検 討 、 デ ン ド リ マ ー の 構 造 改 良 を 行 っ た 。
そ の 結 果 、当 初 は 、CO2/H2選 択 性 が 10程 度 で CO2透 過 速 度 が 2.0×10-11 m3 m-2 s
-1 Pa-1程 度 で あ っ た 分 離 膜 性 能 を 、CO2/H2選 択 性 が 30で CO2透 過 速 度 が 1.5×10-
10 m3 m-2 s-1 Pa-1に 改 善 す る こ と が 出 来 た 。 更 に 、CO2/H2選 択 性 が 40以 上 を 有 す る 分 離 膜 を 得 る こ と も 出 来 た 。
プ ロ セ ス 適 合 性 の 検 討 で は 、CO2分 離 特 性 の 操 作 条 件 依 存 性 の 検 討 、CO2透 過 促 進 剤 の 開 発 、 耐 乾 性 材 料 の 開 発 を 行 っ た 。
そ の 結 果 、 供 給 ガ ス 中 の 水 蒸 気 濃 度 や 操 作 温 度 が デ ン ド リ マ ー 膜 に 及 ぼ す 影 響 の デ ー タ の 蓄 積 を 行 っ た 。 ま た 、 供 給 ガ ス 中 の 水 蒸 気 濃 度 に 依 存 し 難 い 分 離 膜 材 料 の 検 討 を 行 い 、 耐 乾 燥 性 を 有 し て 従 来 よ り も 低 湿 度 で 使 用 可 能 な 分 離 膜 の 基 盤 技 術 を 開 発 し た 。
分 離 膜 の 構 造 解 析 と 分 離 メ カ ニ ズ ム の 確 認 で は 、 透 過 電 子 顕 微 鏡(TEM)等 を 用 い て 分 離 膜 の 構 造 を 解 析 し て 、 膜 構 造 と 分 離 性 能 の 相 関 に 関 す る 知 見 を 蓄 積 し た 。 ま た 、 CO2 溶 解 量 の 測 定 、NMR 測 定 等 を 通 じ て 、 従 来 の 高 分 子 膜 に お け る ガ ス 透 過 モ デ ル で あ る 溶 解 ・ 拡 散 モ デ ル を 発 展 さ せ た デ ン ド リ マ ー 膜 の 透 過 モ デ ル を 推 定 し た 。
こ れ ら の 知 見 を 分 離 膜 に お け る CO2分 離 性 能 の 向 上 に 反 映 し た 。
第3章 実機膜モジュールの開発 3.1 はじめに
茨木研究室では、京都研究室および倉敷研究室の開発している分子ゲート膜材料を用い た複合膜化、スパイラルモジュール化、モジュール評価を通じて、分子ゲート膜モジュー ルの最適構造設計を検討してきた。今年度は、「連続安定製膜技術の検討」、「膜モジュール 構造の検討」、「実機型膜モジュールの試作」を行った。実施事項は以下である。
(1) 連続安定製膜技術の検討
平膜を中心に、コーティング技術,表面処理技術等の要素技術を抽出して、その要 素技術を検討する。具体的には、シリコーンサンド構造での複合膜化において、シ リコーン塗工した支持膜上に製膜溶液を安定的に塗工するための溶液物性に関する 検討を実施した。
(2) 膜モジュール構造の検討
耐圧性を有して効率に優れる膜モジュール構造、部材、その他の検討を行う。具体 的には、供給ガススペーサーの圧損評価、1 リーフモジュールでのモジュール構造 検討および4インチモジュールへのスケールアップを行った。
(3) 実機型膜モジュールの試作
実機型膜モジュールを試作して、モジュール性能試験に供した。
以下、それぞれの項目について実施した内容を述べていく。