Caco-2 細胞単層膜の apical 側 (1.5 mL) および basolateral 側 (2.6 mL) を HBSS (pH7.4) で洗浄し, 両側に HBSSを添加し, 37˚C, 30 minプレインキュベーションした. その後, donor側にHBSSに溶解したPL (50 μM) を, receptor側には, HBSSを添加した. 経時的にdonor側からは20 μL, receptor側からは150 μLを採取し, receptor側にはHBSS
を150 μL添加して容量を一定に保った. Receptor側のサンプルおよびHBSSで希釈した
donor側のサンプル150 μLに100 mM リン酸を17.5 μLと, Acetonitrile 150 μLを添加し てHPLCサンプルとした. PLの濃度は, 5) の定量法に準じて測定した. また, 実験終了 後, 0.1% Trypan blue染色によりCaco-2細胞単層膜への障害を観察した. また, 同様の方
法でapical側の溶液にEBSS (pH6.0) を用いて透過実験を行なった.
見かけの透過係数 (Papp : cm/sec) は, 時間 (sec) に対する単位面積あたりの累積透
過量 (μmol/cm2) をプロットし, その初期直線の傾きより次式に従って求めた.
Papp = dQ/dt / A / C0
Q ; 透過量 (μmol) A ; 細胞表面積 (cm2) C0 ; 初濃度 (μM)
9) 速度論的解析
In situ 灌流実験における吸収パラメーターは, 下記に示す式により得られた. 腸間
膜静脈への薬物の出現速度 (v1)は, 灌流速度および薬物濃度から式 (1) で算出できる.
v1 = Qb × Cb 式 (1)
ここで Qb および Cb は, 各々腸間膜静脈における血管灌流速度および薬物濃度である.
また, 腸管腔内における試験薬物の消失速度 (v2) および加水分解産物の出現速度 (v3) は, 各々式 (2) および式 (3) を用いて算出できる.
v2 = Ql × (Cin – Cout) 式 (2)
v3 = Ql × CM, out 式 (3)
ここで, Qlは腸管腔内での灌流速度, Cinは空腸部位の入り口における試験薬物濃度, Cout
およびCM, outは各々空腸部位の出口における試験薬物および加水分解産物の濃度であり,
CoutおよびCM, outはFD-4の濃度で補正した.
腸管腔内を灌流したとき, 腸間膜静脈への薬物の出現は, 以下の物質収支式により 表すことができる.
Vb × dCb/dt = CLapp × Cl – Qb × Cb
ここで, 左項は腸間膜静脈内薬物量の変化, CLappは見かけの吸収クリアランス, Clは腸 管腔内薬物濃度である. 定常状態において, 腸間膜静脈内薬物量の増加は一定であり, 腸間膜静脈内薬物量の変化は起こっていないとみなせることから, Vb × dCb/dtを0とし て式を整理することで, 式 (4) が得られ見かけの吸収クリアランスを算出できる.
CLapp = AUCb/AUCl × Qb 式 (4)
= Absorbed amount/AUCl
ここで, AUCbおよびAUClは, 各々定常状態における腸間膜静脈および腸管腔内での試
験薬物濃度下面積である. 一方腸間膜静脈内および腸管腔内への加水分解産物の出現 は, 以下の物質収支式により表すことができる.
Vb × dCb, M/dt = CLdeg, b × Cl – Qb × Cb, M Vl × dCl, M/dt = CLdeg, l × Cl – Ql × Cl, M
ここで, Vb × dCb, M/dtおよびVl × dCl, M/dtは各々腸間膜静脈内および腸管腔内での加水分 解産物量の変化, CLdeg, bおよびCLdeg, lは各々腸間膜静脈内および腸管腔内加水分解産物 に起因する加水分解クリアランス, Cb, MおよびCl, Mは腸間膜静脈内および腸管腔内での 加水分解産物濃度である. 定常状態において, 腸間膜静脈内および腸管腔内での加水分 解産物量の増加は一定であり, 腸間膜静脈内および腸管腔内加水分解産物量の変化は 起こっていないとみなせることから, 左項を0として式を整理することで, 式 (5) が得 られ加水分解クリアランス (CLdeg; CLdeg, b + CLdeg, l) を算出できる.
CLdeg = AUCM,l/AUCP,l × Ql + AUCM,b/AUCP,l × Qb 式 (5)
= Degraded amount/AUCP,l
ここで, AUCM, bおよびAUC M, lは各々定常状態における腸間膜静脈および腸管腔内での
加水分解産物濃度下面積であり, AUCP, lは定常状態における腸管腔内エステル型プロド ラッグ濃度下面積である. また腸管腔内の AUC は, 腸管腔内において入り口から出口 まで一次速度で消失するとみなしている.
吸収パラメーターを報告された値と比較するために, 見かけの透過係数 (Peff: cm/min) を式 (6) を用いて算出した.
Peff = Ql × (1 – Cout/Cin)/2πRL 式 (6)
ここで, RおよびLは空腸ループの半径および長さである. Rは文献値より0.178 cm15) と みなしており, Lは実測値 (10 cm) を計算に用いた.
第3章に関する実験の部
1) 試料
Bis-p-nitrophenyl phosphate (BNPP), p-Nitrophenyl acetate (PNPA) およびp-Nitrophenol は, ナカライテスク株式会社より購入した. L-Leucyl-p-nitroanilide・HCl (Leu-p-NA), p-NitroanilineおよびN-2-Hydroxyethylpiperazine-N’-2-ethansulfonic acid (HEPES) は, 和光 純薬工業株式会社より購入した.
その他は, 前章までと同じであり, 試薬はすべて市販特級品を, 水は超純水を用いた.
2) 加水分解実験
2-1) ラット小腸粘膜S9の調製
Wistar系雄性ラット (九動, 8週齢 250-300 g) を24時間絶食後, Ether麻酔下, 直ち に小腸を摘出した. またBNPP処理空腸は, 第3章の実験の部: 3) BNPP阻害条件下での
Isovaleryl-PLのsingle-pass灌流法に準じBNPPの処理を行なったあとで空腸の粘膜を採
取した. 空腸を開き氷冷した1.15% KClを用いて洗浄し, 内容物を除去した. 粘膜をピ ンセットの柄の裏を用いてかぎ取り, 湿重量を測定した. 3倍容 (v/w) の1.15% KClを
含む 50 mM HEPES緩衝液 (pH7.4) を加え, テフロン-ガラスホモジナイザーを用いて
粗ホモジネートを調製した. 9,000×g, 4˚C, 20 minで高速冷却遠心器により遠心分離した 上清をS9とした. 調製したS9の蛋白質濃度は, Bradford法に準じ, BSAを標準蛋白質と して定量した107) . 実験に使用するまでは、-80˚Cで保存した.
2-2) 空腸粘膜S9におけるPNPAおよびLeu-p-NAの加水分解測定
ラット空腸S9を50 mM HEPES緩衝液で適当な蛋白質濃度になるように希釈した 酵素溶液1 mLを, 37˚Cで5 minプレインキュベーションした. Dimethyl sulfoxide (DMSO) に溶解させたPNPAおよびLeu-p-NAを5 μL添加し, 初濃度を各々500 μMおよび1 mM で反応を開始した. 加水分解生成した p-Nitrophenol および p-Nitroaniline に基づく波長
405 nmの吸光度 (分光光度計 Jasco, V-530) を経時的に測定した.
2-3) Dixonプロットを用いたPNPA加水分解に対するBNPPのKi値の算出
ラット空腸S9を50 mM HEPES緩衝液で適当な蛋白質濃度になるように希釈した 酵素溶液 1 mL を, 37˚C で 5 min プレインキュベーションした. DMSO に溶解させた BNPPを最終濃度0, 40, 100, 250 nM (添加量5 μL) となるよう加え, 37˚Cで10 minイン キュベーションした. その後, 前項のPNPA加水分解活性の測定に準じ, PNPAの最終濃
度50, 200, 500 μMでの加水分解活性を測定した. 阻害剤濃度に対して活性の逆数プロ
ットし, 各基質濃度の直線の交点からKi値を求めた.
3) BNPP阻害条件下でのIsovaleryl-PLのsingle-pass灌流法108)
第2章の実験の部: 3) In situ腸管灌流実験に準じ, 血管および腸管をカニューレし, 血管腔内および腸管腔内を灌流した. ここでは, 3 種類の実験を行なった. BNPP (400 μM) 単独で灌流した場合が1つ, BNPP前処理の有無でLeu-p-NA (500 μM) を灌流した 場合が1つ, 最後にBNPP前処理の有無でIsovaleryl-PL (300 μM) を灌流した場合である. 以上に示すBNPP前処理は, 腸管腔内にBNPP (400 μM) を40 min灌流し, MES緩衝液 で洗浄する処理のことである. それぞれの実験において, 血管腔内および腸管腔内での 灌流速度は, 各々3.0 mL/min および0.3 mL/minで行なった. 各血管側サンプルは, 前章 に示す方法で有機層に抽出後分取し, 溶媒留去を行った. 更に残渣を 200 μL の
Acetonitrileで再溶解することでHPLCサンプルとした. 各腸管側サンプルもまた, 前章
に示す方法で処理し, HPLCサンプルとした.
4) PL, Isovaleryl-PL, BNPPおよびp-Nitroanilineの定量
PLおよびIsovaleryl-PLの定量は, 第2章の実験の部: 5) PLおよびIsovaleryl-PLの定 量法に準じ測定した. また BNPP および p-Nitroaniline については, UV 検出器 (Jasco 875-UV), ポンプ (Jasco PU-980), データ処理装置 (Shimadzu C-R4A) を装備したHPLC システムを用いた. 吸収波長286 nm (BNPP) および405 nm (p-Nitroaniline), カラム温度 は40˚Cで定量した. PLおよびIsovaleryl-PLは以下の条件で同時定量した. 溶出時間は, BNPPが18.9 min, p-Nitroanilineは4.5 minであった.
カラム ; LiChrosorb RP-selectB (7 μm, 4 mm i.d.×25 cm) 移動層 ; Acetonitrile : 20 mM KH2PO4 = 1 : 1 (v/v) 流速 ; 1.0 mL/min
第4章に関する実験の部
1) 試料
Testosterone は, ナカライテスク株式会社より購入した. 代謝物である 6β- and
16β-Hydroxytestosterone は, 第一化学薬品株式会社により提供された. β-Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate sodium salt (β-NADP), D-Glucose-6-phosphate disodium salt hydrateおよび Glucose-6-phosphate dehydrogenaseは, Sigma-Aldrich Corpより購入した. ISOGENは, 株式会社ニッポンジーンより購入した. DNase IおよびPlatinum Taq DNA polymeraseは, Invitrogen Co.より購入した. RNase H-free Revertra Aceは, 東洋紡績株 式会社より購入した.
その他は, 前章までと同じであり, 試薬はすべて市販特級品を, 水は超純水を用いた.
2) P-450活性の測定
ラット小腸のP-450活性を評価するために, Testosteroneを基質として16β-水酸化活 性 (CYP2B) と 6β-水酸化活性 (CYP3A) を測定した.
ラット空腸および回腸S9の蛋白質濃度5 mg/mLに, 0.25 mM EDTA-0.25 M リン酸 緩衝液 (pH7.4) 200 μLおよび30 mMのTetosterone 5 μL (Methanol溶液) を添加した総反 応容量500 μLを37˚C, 5 minでプレインキュベーションした後, NADP generating system (12.5 mM β-NADP, 125 mM G6P, 50 mM MgCl2・6H2O, G6PDH 1U) を50 μL添加し反応を 開始した. 一定時間後, Ethyl acetate 5 mLを加えて反応を停止した. さらに, Ethyl acetate に溶解させた1.25 μM内部標準物質Betamethasone 1 mLを加え, 10 min振盪し, 3,000 rpm
で10 min遠心した後, 有機層を分離し, 遠心エバポレーターで留去した. 残渣を移動層
A液0.2 mLで溶解し50 μLをHPLCサンプルとした.
3) 16β-, 6β-Hydroxy testosteroneの定量
UV 検出器 (Jasco 875-UV), ポンプ (Jasco PU-880), データ処理装置 (Shimadzu C-R7A) を 装 備 し た 装 置 を 用 い て, 以 下 の 条 件 で 定 量 し た. こ の 条 件 で の 16β-, 6β-Hydroxy testosterone (吸収波長: 237 nm) の定量限界は, それぞれ注入量として120, 40 pmolであった.
カラム;Inertsil ODS (5 μm, 150 mm ×4.6 mm i.d., GL science) 移動層;A液 Methanol : Acetonitrile : H2O = 40 : 10 : 50
B液 Methanol : Acetonitrile = 90 : 10
0-20 min 直線グラジエントでB液を0%から65%にする
20-25 min B液を65%に維持
25-30 min 直線グラジエントでA液を100%に戻す
流速;1.0 mL/min
4) 小腸粘膜S9におけるPLエステル誘導体の加水分解測定
ラット空腸および回腸S9を50 mM HEPES緩衝液で適当な蛋白質含量になるよう に希釈し, その400 μLを, 37˚C, 5 minでプレインキュベーションした. DMSOに溶解し た11種のPLエステル誘導体 (20 mM) を2 μL加え, 初濃度100 μMで反応を開始し た. 酵素速度論パラメーターKm, Vmaxを求める場合には, 初濃度2-200 μMで反応を開始 した. 一定時間後, 飽和食塩リン酸溶液1 mL を加え, 反応溶液をpH 4.0に調節し, Ethyl acetate 6 mLを加えて反応を停止した. これを10 min振盪し, 3,000 rpm, 5 minで遠心分離 後, 有機層を採取し遠心エバポレーターで溶媒を留去した. 残渣を HPLC の移動層 250 μLで再溶解し, HPLCサンプルとした. 生成したR-PLおよびS-PLを光学分離した. 加 水分解活性は, タンパク質濃度あたりで算出した. また Km, Vmaxは, 非線形最小二乗法 プログラムMULTI109) を用いて解析した.