第 4 章 PBW 技術によるポリイミド光導波路の作製
4.3 導波路の作製について
4.3.4 PBW による導波路作製
SRIM でのシミュレーション結果を基に加速エネルギー1.7 MeVとすることで屈折率変 化が生じる深さを、ヒータからの熱を表面付近になるようにした。これは効率的に熱を印 加するためである。
ポリイミドを使用しているカプトンテープはイオン照射実験時に試料固定のためのテー プとしても利用される対照射性が高い材料である。そこでPDMSに比べて高い照射量を設 定して試料作製を行った。また、PDMS サンプルの比較用として加速エネルギー750 keV での試料作製も試みた。条件としては表4.2である。
表4.2 PBW条件表
作製した試料の導波路構造を観察したところ、加速エネルギー750 keVで作製を行った。
試料No1、No2 では肉眼での導波路構造の確認が行えなかった。そこで、高崎量子応用研
究所内の光学顕微鏡を用いて観察を行った。結果、かすかに導波路構造が作製されている ことを確認した。加速エネルギー1700 keVで作製を行った試料No3、No4では、導波路構 造と見られる黒い線を確認した。
この結果から、加速エネルギー1700 keVの条件での試料作製のほうが近視野像の観察等 において有利であると考えられる。そこで、今後の条件として加速エネルギー1700 keVの ように高いエネルギーとした。しかし、後日に作製した No3、No4 の試料を確認したとこ ろ、どちらの試料も黒い線(導波路構造)が消失していることが確認された。
そこで、再度加速エネルギー1700 keV での試料作製を行い、導波路構造が同様な変化が 生じるか確認した。条件としては下記の表4.3である。
試料No No1 No2 No3 No4
加速エネルギー [keV] 750 750 1700 1700
試料電流 [pA] 120 200 200 500
フルエンス量 [nC/mm²] 240 400 400 1000
ビーム径 [μ mφ] ~1 ~1 ~1 ~1
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表4.3 PBW条件表
照射を行った結果、図4.8のように前回の試料作製と同様に照射位置に黒い線が確認でき た。導波路の位置を前回と同様に時間経過で黒い線が消えるかを確認したところ、図4.9の ように消えることを確認した。
図4.8:照射直後の試料No7、No8
試料No No5 No6 No7 No8
加速エネルギー [keV] 1700 1700 1700 1700
試料電流 [pA] 180 250 450 500
フルエンス量 [nC/mm²] 360 500 900 1000
ビーム径 [μ mφ] ~1 ~1 ~1 ~1
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図4.9:照射後しばらく経った後のNo7、No8
*一度基板からはずして表面観察を行った後に図4.8のように配置したものの画像である。
これらの図 4.8、図4.9は、照射直後には存在した黒い線(導波路構造)が時間経過で消失 することを示している。この原因が何かを調べる。
以下の図 4.10 は、カプトン H(標準カプトン)(東レ・デュポン社製)を用いて、ERDA-
RBS同時測定法及び共鳴散乱 RBS法から求めたイオンビーム(4He+)照射量を1 μCから 20 μCまで1 μCごとに増加させた時の組成の変化[23]である。
図4.10:組成変化の割合(カプトンH)[23]
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上記の図はイオンビーム照射時のカプトンHのイオン照射量に対する組成の変化を、イ オンビーム照射量1 μC で規格化してグラフ化したものである。照射量に対して炭素と酸 素の減少量に比べ、水素、窒素の組成の減少が大きいことが確認できる。ポリイミドの化 学式が(C22H10N2O5)n であることから窒素組成は水素組成に比べて少ない、すなわち組 成の減少が少ない。よって、損傷として最も大きいものは水素組成であることから、黒い 線が生じる原因が水素組成の減少であると考えられる。以上を踏まえると、照射後黒い線 が消えたのは、損傷した水素組成が大気中において常温アニールされ補完されたためと考 えられる。