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P-63  小児潰瘍性大腸炎に対する糞便移植の実施経験と次世代シーケンサー を用いた糞便中腸内細菌叢の検討

ドキュメント内 第6回日本炎症性腸疾患抄録.indd (ページ 90-98)

国立成育医療研究センター 器官病態系内科部 消化器科 1)

国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部 2)

清水 泰岳 1) 、 細井 賢二 1) 、阿部  淳 2) 、鏑木陽一郎 1) 、中野  聡 1) 、新井 勝大 1)

潰瘍性大腸炎 (UC) の原因は完全には解明されていないが、複数の遺伝子異常の報告に加え、腸内細菌叢の 異常 (Dysbiosis) も一因として注目されている。

糞便移植 (FMT) は歴史的には偽膜性腸炎の治療法として報告され、経口抗菌薬療法抵抗例に対しても 90%

以上の高い有効性が示されている。FMT を炎症性腸疾患 (IBD) に施行した報告はまだ多くないが、中には生 物学的製剤を要した症例においても著効し、drug freeでの長期寛解維持が可能となったとの報告もある。今回、

ステロイド依存性全結腸炎型 UC に対し、FMT を実施したので報告する。

患者は 11 歳の女児で、5-ASA、ステロイド、タクロリムス併用にてもステロイド減量にて再燃を反復するため当 院に紹介された。タクロリムスをインフリキシマブにスイッチしたが、ステロイド依存性は変わらず離脱は困難だっ た。家族には手術治療の選択肢も提示したが、本人・家族は同意せず、家族よりFMT の希望があったため、

倫理委員会の承認を得て 2014 年 12 月よりFMT を行った。

母も UC を罹患しており大腸癌合併により大腸全摘されていたため、ドナーは父とした。FMT は初回を含む内 視鏡評価時には経内視鏡的に全大腸に撒布し、それ以外は経肛門的に注腸した。初回導入時は 5 日間連続で 行い、それ以降は 2~3 週間に 1 回の維持投与を行った。合計 11 回の FMT を施行した時点で臨床的にはステ ロイドの減量に成功し、インフリキシマブの 8 週間毎の維持投与にて臨床的寛解が維持される状態まで改善し た。

また FMT 施行前後で糞便中の腸内細菌を、次世代シーケンサーを用いて解析した。施行前の患児の便は E.

coli や Klebsiella が大多数を占め、Bacteroides 属の比率が極めて低く明らかな dysbiosis が認められたが、施 行 8 週後には E.coli が大幅に低下し、それ以降、Bacteroides 優位な組成に変化し、Dysbiosis が是正された。

IBD に対する FMT はまだ確立された治療とは言えず、今後も多くの検討が必要である。FMT の作用機序の 解明、適切なドナーの選択法、投与方法・治療期間など、検討を重ねる必要がある。

第 6 回日本炎症性腸疾患研究会学術集会の開催にあたり 下記の企業よりご協賛いただきました。

ここに銘記し、そのご厚意に感謝いたします。

旭化成メディカル株式会社 味の素製薬株式会社

アッヴィ合同会社 エーザイ株式会社 大塚製薬株式会社

ギブン・イメージング株式会社 杏林製薬株式会社

協和発酵キリン株式会社 コヴィディエン ジャパン株式会社

株式会社JIMRO ゼリア新薬工業株式会社

田辺三菱製薬株式会社 テルモ株式会社 日本化薬株式会社 ファイザー株式会社

持田製薬株式会社 株式会社ヤクルト本社 ヤンセンファーマ株式会社 ユーシービージャパン株式会社

(五十音順)

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