第 3 章 逐次近似画像再構成法の評価−逆投影法との比較−
3.3 OS-EM と FBP によるパラメトリック画像の評価
Case2 は18F-FDG を Case1 より少ない 165MBq 投与したもので、Case1 よりもカ ウントが低く相関係数は小さくなったが、傾向は Case1 の場合と同様であった(Fig.
3.2.8)。
3.2.4 考察
ノイズのないデジタルファントムでは、FBPとOS-EMで再構成画像に差はなかった。
OS-EMではサブセットと繰り返し回数の選び方で画質が変化するが、われわれの処理条 件では OS-EM はサブセット数 16,繰り返し回数 4で FBP とほぼ同じノイズレベルと なった(Fig.3.2.3)。ノイズを付加したファントムと臨床データでは、高カウント領域 では FBP と OS-EM の画像を画素単位で比較した場合、比較的良好な相関を示したが、
低カウントの領域では相関図の幅が広がり、直線性も劣化した(Fig.3.2.6 〜 8)。この 理由は、低カウント領域では画像のノイズ成分が多く含まれ、FBP と OS-EM では再構 成アルゴリズムの違いのためにノイズの性質が異なるためと考えられる。この程度の違 いはポジトロンCTでの定性測定では問題にならないと考えられるが、定量測定の場合は 定量値に差が現れることも考えられる。
3.2.5 本節の結論
ノイズを付加しないデジタルファントムのシミュレーションでは、FBP と OS-EM で の再構成画像は殆ど差は見られなかった。このことは、再構成アルゴリズムによってポ ジトロンCTの画像には違いが現れないことを示している。しかし、ノイズが付加される ことにより、FBP と OS-EM の低放射能領域で再構成画像に違いが見られた。OS-EM の 場合、サブセットと繰り返し回数の組合せによって画質が変化し、ノイズの性質も異な るため低カウント領域でFBPによる画像との相関は、高カウント領域と比較して劣った。
定量性が必要な測定では影響が出ることも考えられる。
3.3 OS-EM と FBP によるパラメトリック画像の評価
Fig.3.2.7 Fig.3.2.7 Fig.3.2.7 Fig.3.2.7
Fig.3.2.7 Case1:18F-FDG を 223MBq 投与したダイナミック測定。高カウントの フレームでは良い相関を示した。
Fig.3.2.8 Fig.3.2.8 Fig.3.2.8 Fig.3.2.8
Fig.3.2.8 Case2:18F-FDG165MBq 投与。Case1 と同様な傾向を示した。
FBP
OS-EM
(c) Frame #18 2581sec post inj.
(a) Frame #6 270sec post inj.
(b) Frame #10 720sec post inj.
r = 0.902 FBP(kBq/ml) 20 0
20
0 r = 0.937
FBP(kBq/ml) 30 0
30
0 r = 0.955
FBP(kBq/ml) 40 0
40
0
Correlation
OS-EM(kBq/ml) OS-EM(kBq/ml) OS-EM(kBq/ml)
OS-EM(kBq/ml) OS-EM(kBq/ml) OS-EM(kBq/ml)
FBP
OS-EM
r = 0.863 FBP(kBq/ml) 10 0
10
0
r = 0.913 FBP(kBq/ml) 15 0
15
0
r = 0.941 FBP(kBq/ml) 20 0
20
0
Correlation
(c) Frame #18 2581sec post inj.
(a) Frame #6 270sec post inj.
(b) Frame #10 720sec post inj.
なる。
本節では、OS-EM アルゴリズムで画像再構成した18F-FDGPET ダイナミック測定を 動態解析してパラメトリック画像(K1,k2,k3)を計算し、FBP で再構成したものと比較 した。
3.3.2 方法
1)デジタル脳ファントム
われわれは、18フレーム(30secx2frames,60secx4frames,120secx4frames, 240secx8frames)を有する18F-FDG ダイナミック測定を模したデジタルファントム を使用した[51]。このデジタルファントムは既知の速度定数(灰白質:K1=0.102min
-1,k2=0.130min-1,k3=0.062min-1,白質:K1=0.054min-1,k2=0.109min-1,k3= 0.042min-1)を持つ(Fig.3.3.1)。このデジタルファントムをフォワードプロジェクショ ンし、2種類のサイノグラムを作成した。一つはノイズフリーである。もう一つは典型 的な臨床データと等価となるように(最終フレームにおいて20%のノイズ)、トータルカ ウントに応じた統計ノイズを加えたものである。それらのサイノグラムから FBPと OS-E M に よ っ て 再 構 成 画 像 を 作 成 す る 。 F B P に よ る 再 構 成 で は サ イ ノ グ ラ ム を FWHM=8mmのGaussianフィルタでスムージングし、逆投影の前にShepp&Locanフィ ルタをコンボリューションした。
OS-EMアルゴリズムでは、サブセット数と繰り返し回数が再構成画像のピクセル値と ノイズ特性に影響を与え、更にノイズは局所放射能濃度に依存する[46-48]。サブセット 数と繰り返し回数はサイノグラムのノイズレベル即ちトータルカウントから決定される べきであるが、フレームごとに異なる数にするのは現実的ではない。この研究の目的は FBP と OS-EM によって作られたパラメトリック画像を比較することであるから、OS-EM の繰り返し数とサブセット数は、視覚的に再構成画像の画質とノイズが FBP による それと同等になるように決定した。この研究ではOS-EMの全てのフレームに対し、繰り 返し数を 6、サブセットを 16 と決定した。更に、われわれは逐次近似法の不安定性を取 り除くために、sieves の方法[52]を適用した。それぞれの再構成画像はプロファイル曲 線によって視覚的に確認した。次にMarquardtアルゴリズムを用いた重み付き最小自乗 法[53]でピクセルことに K1、k2、k3画像を計算し、OS-EM と FBPによる画像を相関で 比較した。そのプロットを幾何平均回帰によってフィッティングし、次式によって傾き
3.3 OS-EM と FBP によるパラメトリック画像の評価
F i g . 3 . 3 . 1 F i g . 3 . 3 . 1 F i g . 3 . 3 . 1 F i g . 3 . 3 . 1
F i g . 3 . 3 . 1 18F-FDG ダイナミック測定デジタ。(a)既知の速度定数(灰白質:K1= 0.102min-1,k2=0.130min-1,k3=0.062min-1,白質:K1=0.054min-1,k2=0.109 min-1,k3=0.042min-1)を持つ18F-FDGデジタルファントム。(b)血液(プラズマ)
と組織の時間放射能曲線
(a) (b)
blood gray matter white matter
time after injection (sec)
0 500 1000 1500 2000 2500 6
5 4 3 2 1 0 counts (x104)
vX・Yと Y 切片avを求めた。
nX Y
y y x x
◊ = ±
-Â
-Â
( )
( )
2 2
an = -y nx
ここで、xとyは FBP と OS-EM によって得られた再構成画像またはパラメトリック画像 のピクセル値で、xとyはそれぞれxとyの平均値である。負及びゼロの値は解析から除外 した。
次に次式によってノーマライズされた平均自乗根(RMSnorm)を計算した。
RMSnorm
j
E C f
E
j i j i
j
=100¥
Â
( , - ,) / (2 -3),max
RMSnorm =RMSnormj
ここで、Ej,iはi番目のフレーム、j番目のピクセルで観測された PET 値である。Cj,iはi番 目のフレーム、j番目のピクセルでフィッティングされた値である。Ej,maxは全フレーム中 のj番目のピクセルに対する最高値である。f はフレーム数、RMSnormは全ピクセルに対す
Fig.3.3.2 Fig.3.3.2Fig.3.3.2 Fig.3.3.2
Fig.3.3.2 デジタルファントム上の関心領域(ROI)。灰白質 と白質上に 10 個の小さな正方形の ROI を設定した。ROIgrayと
ROIwhiteはそれぞれ 98 ピクセルと 103 ピクセルが含まれる。
るRMS
normjの平均である。RMSnormはフィッティング誤差を表す。
部分容積効果による影響を最小限にするために、これらの画像の灰白質と白質上に10 個の小さな正方形の関心領域(ROI)を設定した(Fig.3.3.2)。ROIgrayとROIwhiteはそれ ぞれ 98 ピクセルと 103 ピクセルが含まれる。それぞれのROIの k 値の平均と標準偏差
(SD)を評価した。
全てのデータは UNIX ワークステーション SGIO2 で処理した。
2)臨床データ
2 次元 PET スキャナ(島津製作所、HEADTOME-IV)[35,54]を用いて、臨床 5 症例に 対し 45 分の18F-FDG ダイナミック測定を行った。測定条件は、18 フレーム(30 秒× 2 フレーム、60 秒× 4 フレーム、120 秒× 4 フレーム、240 秒× 8 フレーム、)で、測定開 始時の18F-FDG 投与量は 86 〜 233MBq である。吸収補正のためのトランスミッション 測定を18F-FDG 投与前に68Ge-68Ga 線状線源を被検者の周りに回転させて行った。全て のエミッションデータはデジタル脳ファントムと同じ条件でスムージングし、FBP およ び OS-EM で再構成した。OS-EM と FBP の画像を比較するため、K1、k2、k3画像を同 じ方法で計算した。
3.3.3 結果
1)デジタル脳ファントム
Fig.3.3.3 は OS-EM と FBP で再構成したノイズ無とノイズ有のデジタル脳ファント ム画像のプロファイル曲線を示す。再構成された値は部分容積効果のために、真値より も灰白質では低く、白質では高くなる。OS-EM のプロファイル曲線は、ノイズの無いデ ジタル脳ファントムの場合、OS-EMとFBPは初期画像、終期画像共にFBPと同じであっ た(Fig.3.3.3(b),(c))。しかし、ノイズを付加したファントムでは、OS-EMのプロファ イル曲線は FBP のそれと異なった(Fig.3.3.3(d),(e))。
3.3 OS-EM と FBP によるパラメトリック画像の評価
Fig.3.3.3 Fig.3.3.3 Fig.3.3.3 Fig.3.3.3
Fig.3.3.3 OS-EMとFBPによって再構成されたデジタル脳ファントムのプロファイ ル曲線。(a)デジタル脳ファントム上でのプロファイル曲線の断面位置、(b)ノイズを 付加しないファントムの初期画像、(c)ノイズを付加しないファントムの最終フレーム 画像、(d)ノイズを付加したファントムの初期画像、(e)ノイズを付加したファントム の最終フレーム画像。灰色( )はオリジナルデジタルファントム。黒実線( ) は FBP による画像。破線( )は OS-EM による画像。ノイズを付加しないデジタル ファントムでは、初期(b)と後期(c)において、OS-EM 画像のプロファイル曲線は FBP の 場合とよく一致した。ノイズを付加したファントムでは、OS-EM画像のプロファイル曲 線は FBP のそれとはやや異なる(d)(e)。注:OS-EM の画像は負の値とはならない。
FBP と OS-EM によって再構成されたノイズの無いデジタル脳ファントムは、全フ レームで非常によく一致しており、その相関係数は0.990であった(Fig.3.3.4(a))。FBP とOS-EMのパラメトリック画像も非常によく一致し、相関係数はそれぞれ0.971(K1)、 0.987(k2)、0.988(k3)であった(Fig.3.3.4(b),(c),(d))。ROIgray(灰白質)とROIwhite
(白質)の値の変動も小さく、その平均値は真値の 7% 以内であった(Table3.3.1)。
統計ノイズを付加したデジタルファントムの再構成画像は、FBP と OS-EM で良好な 相関関係を示し、相関係数は 0.971、回帰直線の傾きは殆ど1(1.01)で Y 切片はほぼ 0
(0.02)であった(Fig.3.3.5(a))が、k2および k3のパラメトリック画像は、それぞれ 相関係数 0.658、.0654 と良い相関を示さなかった(Fig.3.3.5(b),(c),(d))。ノイズの
(a)
Original FBP OS-EM (b)
frame #3 noise-free 500
400 300 200 100 0 -100 -200
Distance from image center (pixels)
-64 -32 32 64
(c) frame #18 2000
1500 1000 500 0
-64 -32 0 32 64
-500
noise-free
Distance from image center (pixels) (d)
frame #3 noise-added
500 400 300 200 100 0 -100
-200-64 -32 0 32 64
Distance from image center (pixels)
(e) frame #18 2000
1500 1000 500 0
-500-64 -32 0 32 64
noise-added
Distance from image center (pixels)
PET value PET valuePET valuePET value
Gray matter : K1true=0.102(min-1), k2true=0.130(min-1), k3true=0.062(min-1) White matter : K1true=0.054(min-1), k2true=0.109(min-1), k3true=0.042(min-1)
Recon algorithm ROIgray ROIwhite
Noise free
Noise added
K1 k2 k3
FBP 0.096±0.004 0.055±.0002 OS-EM 0.097±0.003 0.053±.0002 FBP 0.129±0.001 0.110±.0001 OS-EM 0.129±0.001 0.109±.0001 FBP 0.061±0.001 0.046±.0001 OS-EM 0.061±0.001 0.045±.0001 FBP 0.096±0.015 0.047±.0018 OS-EM 0.093±0.015 0.048±.0012 FBP 0.133±0.053 0.098±.0090 OS-EM 0.124±0.052 0.103±.0077 FBP 0.059±0.020 0.039±.0033 OS-EM 0.059±0.022 0.042±.0034 K1
k2 k3
Table3.3.1 Table3.3.1 Table3.3.1 Table3.3.1
Table3.3.1灰白質と白質の平均 k 値
ためにROIwhite内のパラメータ値の変動は大きく(SD=0.012 〜 0.090)、平均値は真値か
ら離れる。しかしながら、OS-EM による平均 K1、k2、k3値は、FBP によるそれらと近 い(Table3.3.1,2)。OS-EM 画像によるパラメータ値は、FBP 画像によるものと殆ど 同じである。OS-EM と FBP 法によって再構成されたノイズ付加デジタルファントムの フィッティング誤差(RMSnorm)は、約 10% であった。異なる近似回数を当てはめた OS-EM の場合でも、同様な結果が見られた。
2)臨床データ
OS-EMで再構成された臨床画像は、FBPで再構成されたそれらと良く相関し、相関係 数は 0.956 であった(Fig.3.3.6(a))。OS-EM によるパラメトリック画像は FBP による ものと概ね類似したが、相関はそれほど良好でなく、特に k2(r=0.649)と k3(r=0.467)
は劣る(Fig.3.3.6(b)-(d))。OS-EM による K1、k2、k3の平均値は FBP によるそれら とよく類似し、ノイズを付加したデジタルファントムとの場合と同様、回帰直線の傾き はほぼ 1(1.01 〜 1.05)で Y 切片は殆ど 0 であった。OS-EM のフィッティング誤差
(RMSnorm)は FBP の場合とほぼ一致した。18F-FDG の投与量に関わらず、全臨床例で同
3.3 OS-EM と FBP によるパラメトリック画像の評価
Fig.3.3.4 Fig.3.3.4Fig.3.3.4
Fig.3.3.4Fig.3.3.4 FBPとOS-EMによって再構成されたノイズの無いデジタル脳ファントム。
(a)18FDG ダイナミックスキャン(45 分測定、18 フレーム)。上段は FBP、中段は OS-EM による最終フレームの再構成画象。下段は全フレームの画像の相関図。(b)K1のパ ラメトリック画象。(c)k2のパラメトリック画象。(d)k3のパラメトリック画象。それ ぞれ上段は FBP、中段は OS-EM によって再構成された画像から計算された。これらの FBP と OS-EM の相関図は傾きが 1 の直線付近に散乱し、良好な相関関係を示した。
Table3.3.2 Table3.3.2Table3.3.2
Table3.3.2Table3.3.2K1,k2,k3値の平均値とフィッティング誤差(RMS)
Digital phantom noise-free Digital phantom
20% noise Case 1 (Normal) Case 2 (Wilson) Case 3 (HTLV-1) Case 4 (CBD) Case 5 (MELAS)
223 1.79
81.6 0.60
214 0.83
174 1.30
165 0.96
FBP 0.062 0.121 0.055 0.05 OS-EM 0.062 0.121 0.054 0.05
FBP 0.062 0.119 0.048 10.36
OS-EM 0.060 0.115 0.046 10.29
FBP 0.059 0.056 0.044 9.70 OS-EM 0.062 0.060 0.046 9.69
FBP 0.083 0.120 0.036 13.74
OS-EM 0.087 0.127 0.037 13.35
FBP 0.056 0.092 0.040 14.81
OS-EM 0.057 0.090 0.038 13.99
FBP 0.073 0.146 0.035 10.47
OS-EM 0.077 0.147 0.035 10.55
FBP 0.062 0.112 0.045 14.28
OS-EM 0.065 0.114 0.044 13.55
Subjects Injection dose (MBq)
Total count in frame #18 (M counts)
Recon algorithm
K1mean (min-1)
k2mean (min-1)
k3mean (min-1)
RM (%)
FBP
OS-EM
Correlation
OS-EM(kBq/ml) OS-EM(min-1) OS-EM(min-1) OS-EM(min-1)
(a) Frame #18 (b) K1 (c) k2 (c) k3
y=1.03x+0.23 kBq/ml
FBP(kBq/ml) FBP(min-1) FBP(min-1) FBP(min-1)
min-1 min-1 min-1
0.2 0.1 40
0
0.15
0 0 0
40
00 40
0.15 0.2 0.1
0 0 0
0.15 0.2 0.1
frame#1-18
y=1.05x+0.00 y=1.03x+0.00 y=1.01x+0.01
r = 0.956 r = 0.779 r = 0.649 r = 0.467
2581sec post inj.
0 0 0