︵約八万円︶を超えない罰金刑とされた場合︑合理的な理由がない限り︑差押えに代えて︑自動車の不能化又はその
函 ︶
試みがなされなければならない︒自動車の差押えに代えて︑自動車の不能化がなされたときでも︑執行吏又はカンス
( 1 3 9 )
タブルの判断又は書記官の指示により当該自動車を差押さえることができる︒書記官は︑自動車の差押えに代えて︑
三0 0 自動車の不能化がなされた日から一四日が経過しても︑罰金刑が支払われないときには︑かかる指示を執行吏又はカ
( H o )
ンスタブルに行なわなければならない︒なお︑書記官︑執行吏︑カンスタブル及びその他の職員は︑チェーンロック
面 ︶
の際に自動車を傷付けるなど︑自動車の不能化に関する行為から生じた損害について︑個人として責任を負わない︒
差し押さえられた資産は︑差押えから七日が徒過しても︑罰金刑が未払のままであり︑犯罪者以外の者から異議申 立てがなされていない場合︑競売により又は地方裁判所判事若しくは書記官の指示するその他の方法により︑売却さ
( 1 4 2 )
れうる︒売却された資産の競落人又は取得者は︑所有者又は売却前に当該資産に利害を有していた者に代わって︑資
( 1 4 3 )
産に対する完全な権利を得る︒売却代金は罰金刑の支払に充当され︑資産差押え令状にその旨が記載され︑令状はそ
︵出
︶
れ以後有効性を失う︒売却代金が罰金刑の未払の残額を超える場合︑第三者からの申立てがない限り︑剰余金は犯罪
( 1 4 5 )
︵1 4 6 )
者に支払われる︒売却前に罰金刑の支払がなされた場合︑差押えられた資産は返還される︒
差押さえられた資産に利害関係がある場合︑資産売却及び売却利益分配前であれば︑何人も利害関係の存在を申立
( 1 4 7 )
てることができる︒例えば︑月賦購入契約が締結されているため︑未だ所有権が犯罪者に移転しておらず︑売主が所 有権者であるなどの場合がこれにあたる︒書記官は︑犯罪者及び申立人を召還する令状を発付し︑地方裁判所判事が
( 1 4 8 )
申立ての適否を判断する︒地方裁判所判事は︑差押さえられた資産の売却利益を申立人に分配するよう指示すること
( 1 4 9 )
ができる︒また︑犯罪者が売却前に利害関係人の存在を書記官に通知していなかったために︑資産売却及び売却利益
( 1 5 0 )
分配前に異議申立てができず︑損害を被った利害関係人は︑犯罪者に対して損害賠償を求めうる︒
資産差押え令状による差押えを知りつつ︑資産に干渉し︑資産を奪回し︑又は奪回しようとした者は︑執行吏又は この場合︑国が賠償責任を負うこととなる︒
関 法 第 五 六 巻 ニ
・ 三 号
︵五 六四
︶
ニュージーランドの罰金刑
6
.給与差押え カンスタブルによって︑令状なしで逮捕され︑一二月以下の拘禁刑又は二︑OOONND
( 1 5 1 )
に略式手続をもって処せられうる︒
︵ 五
六 五
︶
ニュージーランドにおいては︑資産差押えに代えて︑又は︑資産差押えを実効化するために︑自動 車の不能化を利用することができ︑罰金額が低額の場合︑その利用を試みなければならないとされている︒自動車の 利用は︑日常生活で大きな役割を果たしていることが多いため︑支払能力のある犯罪者に対して︑支払を促す極めて 有効な手段であると言える︒我が国においても︑自動車の所有者が多く︑自動車が日常生活に必要不可欠のものとし て利用されていることが多い︒我が国においても︑自動車の不能化を行なえば︑罰金刑の支払が大いに促進されるこ とが予想されることから︑自動車の不能化を可能とする規定を整備するべきである︒
ニュージーランドにおいては︑罰金刑の支払を行なわない犯罪者の収入を差押え︑これを罰金刑の支払に充当する
wa ge s)
という給与差押えが予定されている︒書記官は︑自己の判断又は地方裁判所判事若しくは地域治安判事からの事件の 付託により︑給与差押え命令が有効である間︑犯罪者に対して雇用者から適正に支払われる給与又は賃金
( s a l a r y r o
( 1 5 2 )
のうち毎週一定額を差押えることができる︒ここで︑給与又は賃金とは︑い退職手当︑年金又は同種性質
を持つその他の支払︑固︱
1 0
0
一年障害防止︑社会復帰及び補償法に基づく事故補償団体によってなされる補償の支払︑いボーナスやインセンティブの支払︑印手数料収入の支払︑い役務提供契約によりなされる仕事の報酬と
しての支払︑︵利得などを含み︑雇用者とは︑これらの給与又は賃金の支払をなす人又は団体
(b od y)
全てを言う
以上
のよ
うに
︑
三0
1 ︵約一六万円︶以下の罰金刑
や支払を行なわない場合︑
三0
ニ
︵ 約
毎週差押さえられる金額は︑犯罪者の生活が維持されるように︑収入から差押え額や各種の控除を差引いた実収入
( 1 5 4 )
( n e t e a r n i n g )
が保護収入率
( p r o t e c t e d e
a r
n i
n g
a t r e ) を維持する限度で定められなければならない︒書記官は︑こ の判断のために︑給与差押え命令の可否︑保護収入率の判断︑犯罪者の給与及び賃金の額︑社会保障関係の差押え命 令又は控除命令の存否及び額︑扶養家族の数を含む家族構成についての情報の提供を社会保障の関係当局に求めるこ
( 1 5 5 )
︵1 5 6 )
とができる︒給与差押え命令は︑命令において示された期間有効であり︑その期間は︑最長五年とされている︒
給与差押え命令は︑命令の謄本が雇用者への手渡し︑又は︑雇用者の居所若しくは職場への郵送により雇用者に到
( 1 5 7 )
達したときに有効となる︒雇用者の氏名又は住所が不明又は不明確な場合︑書記官は︑書面により情報を提供するよ
( 1 5 8 )
う国税局長官
( C
o m
m i
s s
i o
n e
o f r I n
l a
n d
R e
v e
n u
e )
に求めることができる︒
給与差押え命令を受け取った雇用者は︑給与又は賃金から命令で指示された額を控除し︑その額を控除した次の月
( 1 5 9 )
の一九日までに書記官に支払わなければならない︒控除された段階で︑犯罪者は罰金刑の全部又は一部の支払を行
( 1 6 0 )
なったとみなされ︑全部の支払の場合︑給与差押え命令の効力は失われる︒雇用者が︑合理的な理由なくして︑控除
( 1 6 1 )
︵約八万円︶以下の罰金刑に処せられる︒また︑給与差押え命令を理由 に︑犯罪者たる被用者を解雇したり︑被用者の職業上の地位を変更したりするなどした場合︑
( 1 6 2 )
八万円︶以下の罰金刑に処せられる︒給与差押え命令の受領後六月以内に被用者を解雇したり︑被用者の職業上の地
( 1 6 3 )
位を変更したりするなどした場合︑反証がなされない限り︑命令を理由になされたものとみなされる︒
この方法は︑就業しているものの︑資産を有していなかったり︑資産を差押さえたりすることが妥当でない犯罪者
第五六巻二•三号
( 1 5 3 )
と定義されている︒
関法
一
︑
OOONND
一
︑
OOONND
︵五 六六
︶
ニュージーランドの罰金刑
に対して有効であると思われる︒また︑雇用者が給与差押え命令を理由に︑被用者の解雇や降格などを行なうことを 禁止し︑罰則を設けることで︑罰金刑の徴収と犯罪者の社会再統合の両立を図っている点は注目に値する︒我が国に おいても︑同様の規定を用意し︑給与差押えを積極的に活用していくことが求められる︒
以上のような手段が不十分であったり︑不可能であったりする場合には︑拘禁刑が予定されている︒また︑拘禁刑 に代えて︑社会奉仕作業
( c
o m
m u
n i t y
w o
r k
)
が科されることがある︒
︵ 五
六 七
︶
地方裁判所判事は︑犯罪者に即時の支払のための十分な資産があると考えられる場合︑住所不定である場合︑又は︑
犯罪の重大性︑犯罪の性質若しくはその他の理由により︑執行が遅滞なく行なわれる必要がある場合︑支払期限を待
( 1 6 4 )
たずして︑拘禁命令を発付することができる︒また︑地方裁判所判事は︑コンスタブルの報告書を参考に︑拘禁命令
( 1 6 5 )
︵1 6 6 )
を発付することもできる︒こうした地方裁判所判事による拘禁命令においては︑拘禁期間が二年以内とされている︒
拘禁命令を発付した判事は︑召喚令状
( s
u m
m o
n s )
を発付するか︑逮捕令状の発付により︑犯罪者を高等裁判所
( 1 6 7 )
に出廷させうる︒犯罪者が出廷した場合︑報告書の勘酌︑罰金刑及び損害回復の賦科額を考慮して︑社会奉仕作業を
( 1 6 8 )
︵1 6 9 )
命ずることができる︒この場合︑罰金刑は免除される︒また︑ここでは︑拘禁刑が法定されていない犯罪類型により
( 1 7 0 )
罰金刑が賦科されていた場合でも︑社会奉仕命令を科すことができる︒犯罪者が社会奉仕命令への代替に不服がある 場合︑上訴裁判所への上訴が認められている︒また︑上訴裁判所の判断に不服がある場合︑最高裁判所への上訴も認
( 1 7 2 )
められている︒上訴裁判所又は最高裁判所で社会奉仕命令が破棄された場合︑事件は高等裁判所に差し戻され︑罰金
7
.拘禁刑・社会奉仕作業
三0三