第 4 章 Nystr¨ om 法を用いた Hall´ en の積分方程式の解 49
4.2 Nystr¨ om 法
4.2.1 Nystr¨ om 法を用いた積分方程式の解
Nystr¨om法は,良く用いられる数値積分法であり,求積法の一種である.次式に示すよ
うに,積分区間内の離散的な点に対し,各点における被積分関数と重み係数wjの積の和を とる方法である.
∫ b a
h(x)dx≈
∑N j=1
wjh(xj) (4.1)
積分方程式に対してNystr¨om法を適用すると,その核で表された行列を用いることで積分 方程式を解くことができる.ここで,次式で表される積分方程式を考える.
G(z) =
∫ l
−l
Ψ(z, z′)I(z′)dz′ (4.2)
サンプル数をN,zのサンプル点をz1, z2, . . . , zN,z′のサンプル点をz1′, z2′, . . . , zN′ とする.
zのサンプル点は,z′のサンプル点と同じである.積分に台形則を用いると,式(4.2)に対 応した数値積分は,
[G(zi)]
= [ Kij] [
I(zj′)]
(4.3) Kij =
∆Ψ(zi, zj′) j ̸= 1, N
∆
2Ψ(zi, z′j) j = 1, N (4.4)
∆ = 2l/(N −1) (4.5)
となる.ここで,[ ]は行列を示す.Simpson則を用いた場合は,Kij は次式のようになる.
Kij =
4∆
3 Ψ(zi, zj′) j ≡0(mod.2) 2∆
3 Ψ(zi, zj′) j ≡1(mod.2)
∆
3Ψ(zi, zj′) j = 1, N
(4.6)
n次のLegendre多項式を用いたGauss-Legendre則においては,式(4.1)は次式のように なる.
∫ b
a
h(x′)dx′ ≈ b−a 2
n−1
∑
j′=0
wj′h(x′j′) (4.7) x′j′ = b+a
2 +b−a
2 xj′ (4.8)
ここで,xj′はn次のLegendre多項式Pnの根であり,重み係数wj′は wj′ = 1
Pn+1′ (xj′)
∫ 1
−1
Pn(x)
x−xj′ dx (4.9)
で与えられる.式(4.2)に関して,積分区間[−l, l]をmセルに分割し,各セル内にn個の サンプル点を設ける.また,
j =j′+ 1 +nk′, j′ = 0,1, . . . , n−1, k′ = 0,1, . . . , m−1 (4.10) とし,n次のLegendre多項式から求めたwj′, xj′ を用いると,Kij は次式のようになる.
Kij = ∆c
2 wj′Ψ(zi, zj′) (4.11) ここで,
m = N/n (4.12)
∆c = 2l/m (4.13)
z′j = ak′ + (∆c/2)(1 +xj′) (4.14)
ak′ = −l+k′∆c (4.15)
である.
積分方程式の解は,核行列[Kij]が特異点を持たない場合に限り,[Kij]の逆行列を用い ることによって次式に示すように容易に求めることができる.
[I(zj′)]
=[
Kij]−1[ G(zi)]
(4.16)
Nystr¨om法により求めた数値積分方程式の解がN を大きくするにつれて収束する場合に
は,それが元の積分方程式の解である.しかし,収束しない場合には,元の積分方程式は 有限の解を持たない.
4.2.2 1 点修正法
Hall´enの積分方程式の厳密核は対数特異性を持つため,核行列は直接求めることができ
ない.ただ,核は発散するが,それを含む関数の積分は収束する.したがって,核行列に 対して,特異点において適当な値を与えれば,正しく積分を計算することができる.
未知関数I(z′)を含む次式の積分を考える.
gt(zi) =
∫ zi+1
zi
f(zi−z′)I(z′)dz′ (4.17) f(z) = ln 1
|z| (4.18)
台形則によれば,式(4.17)は次式により計算できる.
gt(zi) = ∆
2 (f(0)I(zi) +f(∆)I(zi+ ∆)) (4.19) f(z)はz = 0で特異性を持つが,次のようにすれば特異点を除去することができる.
gt(zi) = I(zi)
∫ zi+1
zi
ln 1
|zi−z′|dz′+
∫ zi+1
zi
ln 1
|zi −z′|(I(z′)−I(zi)) dz′
= I(zi)
∫ zi+1
zi
ln 1
z′−zi dz′+ ∆ 2
{ lim
z′→zi
ln 1
|zi−z′|(I(z′)−I(zi)) + ln 1
zi+1−zi (I(zi+1)−I(zi)) }
(4.20) ここで,I(z′)は無限回微分可能であるとすると,
I(z′) =
∑∞ n=0
1 n!
∂nI(z′)
∂z′n
z′=zi
·(z′−zi)n (4.21)
なので,
lim
z′→zi
ln 1
|zi−z′|(I(z′)−I(zi))
= lim
z′→zi
ln 1
|zi−z′| ( ∞
∑
n=1
1 n!
∂nI(z′)
∂z′n
z′=zi
·(z′ −zi)n )
= 0 (
∵ lim
x→+∞
lnx xn = 0
)
(4.22) となる.
∫ ln1
z dz =z (
ln1 z + 1
)
(4.23) なので,
gt(zi) = I(zi) [
(z′−zi) {
ln 1
z′−zi + 1 }]zi+1
zi
+ (I(zi + ∆)−I(zi))∆ 2 ln 1
∆
= I(zi)∆
( ln 1
∆ + 1 )
+ (I(zi+ ∆)−I(zi))∆ 2 ln 1
∆ (
∵ lim
x→+∞
lnx x = 0
)
(4.24)
式(4.19)と式(4.24)は等しいので,f(0)の補正値として次式が得られる.
f(0) = 2 + ln 1
∆ (4.25)
Simpson則の場合は,まず,次式の積分を考える.
gs1(zi) =
∫ zi+1
zi−1
f(zi−z′)I(z′)dz′ (4.26) Simpson則により,
gs1(zi) = ∆
3 (f(−∆)I(zi−∆) + 4f(0)I(zi) +f(∆)I(zi+ ∆)) (4.27) また,I(z)は無限回微分可能であるとすると,次式のように特異点を除去することができる.
gs1(zi) = I(zi)
∫ zi+1
zi−1
ln 1
|zi−z′|dz′+
∫ zi+1
zi−1
ln 1
|zi−z′|(I(z′)−I(z)) dz′
= 2I(zi)
∫ zi+1
zi
ln 1 z′−zi
dz′+ ∆ 3
{ ln 1
∆ (I(zi−∆)−I(zi)) + 4 lim
z′→zi
ln 1
|zi−z′|(I(z′)−I(zi)) + ln 1
∆ (I(zi+ ∆)−I(zi)) }
= 2I(zi)∆
( ln 1
∆+ 1 )
+ ∆ 3 ln 1
∆{(I(zi−∆)−I(zi)) + (I(zi+ ∆)−I(zi))} (4.28) 式(4.27)と式(4.28)より,f(0)の補正値として次式が得られる.
f(0) = 3
2 + ln 1
∆ (4.29)
同様に,
gs2(zi) =
∫ zi+2
zi
f(zi−z′)I(z′)dz′ (4.30) の積分に対しては,f(0)の補正値として次式が得られる.
f(0) = 6−5 ln 2 + ln 1
∆ (4.31)
まとめると,Simpson則におけるf(0)の補正値は以下のようになる.
fi(0) =
3
2 + ln 1
∆ i≡0(mod.2)
6−5 ln 2 + ln 1
∆ i≡1(mod.2)
(4.32)
Gauss-Legendre則の場合には,次式の積分を考える.
gl(zi) =
∫ ak′+∆c
ak′
f(zi−z′)I(z′)dz′ (4.33)
Gauss-Legendre則によれば,式(4.33)は次式により計算できる.
gl(zi) = ∆c 2
n−1
∑
j′=0
wj′f(zi−z′j)I(zj′) (4.34) ziがzj′ と同じセル内にある場合には,f(zi−zj′)はzi =zj′ で特異性を持つ.しかし,I(z) は無限回微分可能であるとすると,次のようにすれば特異点を除去することができる.
gl(zi) = I(zi)
∫ ak′+∆c
ak′
ln 1
|zi−z′|dz′+
∫ ak′+∆c
ak′
ln 1
|zi −z′|(I(z′)−I(zi)) dz′
= I(zi)
∫ ak′+∆c
ak′
ln 1
|zi−z′|dz′+∆c
2
n−1
∑
j′=0
wj′f(zi−zj′)(
I(z′j)−I(zi))
= I(zi)
∫ ak′+∆c
ak′
ln 1
|zi−z′|dz′+∆c 2 lim
z′j→zi
ln 1
|zi−z′j|
(I(zj′)−I(zi))
+ ∆c 2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′ln 1
|zi−zj′|
(I(z′j)−I(zi))
= I(zi)ϕ(zi) + ∆c
2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′f(zi−zj′)I(z′) (4.35)
ここで,
ϕ(zi) =
∫ ak′+∆c
ak′
ln 1
|zi−z′|dz′−∆c 2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′f(zi −z′j)
=
∫ zi
ak′
ln 1
zi−z′ z′+
∫ ak′+∆c
zi
ln 1
z′−zi dz′− ∆c 2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′f(zi−zj′)
= [
−(zi−z′) ln 1
zi−z′ −(zi−z′) ]zi
ak′
+ [
(z′−zi) ln 1
z′ −zi −(z′−zi)
]ak′+∆c
zi
− ∆c 2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′f(zi−zj′)
= ∆c+ (ak′+1−zi) ln 1
ak′+1−zi + (zi−ak′) ln 1 zi−ak′
− ∆c
2
n−1
∑
j′=0 j̸=i
wj′f(zi−zj′) (4.36)
式(4.34)と式(4.35)は等しいので,ziにおけるf(0)の補正値は次式のようになる.
fi(0) = 2
∆cwi′ϕ(zi) (4.37)
i′ =i−1−nk′ (4.38)
y x
z
source 2g
2l 2r
φ
R P
図 4.1: 中央給電のダイポールアンテナ