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図3 行政とNPOの政策体系の併置と協働事業

れの二つの政策体系の市民による選択は現実味の ある話となり得る。山内(2010)は、寄付税制を 政策税制と位置づけ、寄付の所得控除での限界に 言及し、行政と寄付者が事業資金を1対1で組み合 わせ、負担することになるとして、50%の税額控 除を提案している。何も税金を徴収し、それを配 分することによって事業を、まして協働事業を行 うのではなく、市民が支持するNPOの事業を行う ことを可能にすることによって、多様な社会の需 要に有効に対応し得ることになり得る。

地域コミュニティの政策体系と協働評価

今日、地方の状況を行政に反映するために、地 方分権化が多くの国々で取り入れられている。地 方分権化の導入は、人々の価値観の多様化や、地 域ごとの人々の生活の多様化により、中央政府に よる行政的な、すなわち法律で一律に規定した行 政活動として地域住民に行政サービスを提供して いくことが困難になってきたことによる。一律の 規定によって実施が決められている部分を広げれ ば広げるほど、それぞれの地域ではそれぞれの地 域の状況に合わせることが難しくなる。国から県 に、県から市町村に、より市民に近いところでの

行政サービスの実施が求められている。平成の市 町村の合併により市町村の規模が大きくなり、行 政と市民の距離は大きくなった。しかし、行政の 地域区分を離れれば、旧市町村、学校区、自治会 区、特定の地域コミュニティなど、さらに区分レ ベルを低くすることも可能である。

図4は、地域コミュニティの政策体系を表した ものである。一般に人々の生活や組織の活動はそ れなりの目的を有しており、人々や組織はその目 的を達成するために種々の手段を駆使して目的を 達成しようと努力する。これを地域コミュニティ に当てはめれば、地域コミュニティのビジョンや 価値観、または規範を達成するために、明示的で あれ、暗黙的であれ、人々や組織が想定する地域 コミュニティの一連の目的と手段の連鎖関係が想 定できる。これらの目的と手段を繋ぎ合わせてい けば、地域コミュニティの政策体系を形づけるこ とが可能である。地域コミュニティには、明示的 であれ、暗黙的であれ地域コミュニティの政策体 系が存在することになる(三好 2010)。

このような地域コミュニティの政策体系という 概念を導入することにより、社会的に構築された 地域コミュニティという社会システムをより明示

(出所)筆者作成  政策: 

最終成果 

施策: 

中間成果 

施策: 

中間成果 

事業:アウトプット・活動・投入 

(国の事業) 

事業:アウトプット・活動・投入 

(県の事業) 

事業:アウトプット・活動・投入 

(市役所の事業) 

事業:アウトプット・活動・投入 

(NPOの事業) 

事業:アウトプット・活動・投入 

(NPOの事業) 

事業:アウトプット・活動・投入 

(民間企業の事業) 

公共 

図4 コミュニティの政策体系と協働事業評価

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的に議論することができるようになる。しかし、

このような政策体系が、地域コミュニティの人々 や組織において明示的に認識されていることは実 際には少ない。通常は、地域コミュニティの核に なる行政の担い手である市役所、町役場、村役場 等の行政活動や、農業協同組合、商工会議所、観 光協会等の活動が重なり合い積み上げられること によって、地域コミュニティの政策体系が蓋然的 に認識されているといった方がよいかもしれない

(三好 2010)9。他方、NPOがこのような地域コ ミュニティの政策体系構築の役割を担うことも可 能である。NPOが期待する社会の変革を最終成果 として、地域コミュニティの政策体系を構築する のであれば、その可能性は高くなる。また、その ような政策体系を基にした政策評価、施策評価、

事業評価を、特に協働に焦点を当てて評価実施を 行うことでNPOとしての価値観について議論を深 めることが可能となる10

地域コミュニティの概念自体は200年以上前か ら社会学者の関心の対象であった。しかし、社会 学上で十分に満足のいく定義はなかなか提示され てはいない(Bell  and  Newby  1974)。しかし、実 際の生活の中では、人々は特定化された地域の中 でともに生活することによって、相互の関係を構 築、確立している。それゆえに、確立された関係 にある者たちと、その外に存在する者たちとの線 引きを行うことは、学問的な妥当性があると考え る(Bell  and  Newby  1974)。このような状況は現 在も継続的に存在している。地域コミュニティと は、特定の地域、一般的には行政的な境界によっ て認識される個人や組織によって構築された社会 システムであり、その中では、組織や集団や個人 が彼ら自身を地域コミュニティに所属していると 認 識 す る 相 対 的 な 集 団 と し て 扱 い 得 る ( 三 好 2010)。

一般に、地域コミュニティを町や都市の中の比 較的小さな近隣の人々、ある特定の地域の人々が 住む区域や地区(neighbor-hoodの言葉が使われる)

を示す言葉として使用し、それらの人々がおかれ ている状況を対象として地域コミュニティの分析 が行なわれている(Chaskin他 2001など)。また、

日本国内では、土地の共同所有に基づく地域集団 という意味で長らく使われてきた(北原 1996)。

しかし、地域コミュニティをより広い範囲を含む ものとして扱うことによって、特に支障が生じる 訳ではない。むしろ、市町村、県、州、国、国際 社会のレベルにまで及ぶものとして扱うことによ って、地域の人々のみならず行政機関、市民社会 組織、NGO/NPO、民間企業、教育機関などを広 く構成員として含むものとして扱うことができ る。そして、分析の対象をより広く扱えることに なり、より政策指向の議論ができるようになる。

他方、地域コミュニティ自体は、行政地域の変更、

主要なアクターの出現と退場によって変化するも のであり、固定的なものではない(三好 2010)。

このような枠組みによって地域コミュニティの 政策体系を作成することは、評価の視点からいく つかの議論を進めることが可能となる。まず一点 は、それぞれの政策体系が想定する地域コミュニ ティの範囲を想定し、最終成果としての期待する 社会変化を議論するともに、その達成状況を検証 することを試みれることである。どのような社会 を最終成果として地域コミュニティが設定してい るのか、また、設定し得るのか。そのような最終 成果は社会の変化の中で妥当性を持ち得るのか。

そのような最終成果を達成するために、どのよう な中間成果が必要なのか。どのような事業が必要 なのか。検証を求められる多くの評価設問を構築 し得る。特に、公共を担う事業を明確にし、その 中間成果への寄与、最終成果への寄与を検証する ことは、政策的、施策的、事業的に重要である。

また、公共の担い手を政策体系の文脈の中で規定 していくことは、実践的、操作可能な公共の議論 を行い得る場を設置し得ることになる。

協働評価と公共

ここで田中重義(2010)の主張を基に協働と公 共について整理しておきたい。田中重義(2010)

は、社会の活動を、「根源的共同性」、「場の共同 性」、「自覚的共同性」、「目的的共同性」、そして 公共性について根源的共同性から公共性への移行 について領域的に整理し、そのうちの「『自覚さ れた共同性』」のなかには、明確な「『目的を持っ た共同性』」が存在しており、「この『目的を持っ た共同性』は『協働』あるいは『協同』と同義で ある」と指摘している。目的を持つことは、それ 三好 皓一

を達成するための行為を引き出すことであり、協 働は、複数の個人や集団の共通目標を達成するた めの共同行為としている(p.70)。また、「潜在的 な共同性が自覚され、さらにそれが一定の目的を 持った共同性へと鋳直され」た時初めて、地域の 共同課題への解決へ、さらに公共性の獲得へと 人々は動き出すことになると主張する(同:82)。

しかし、共同性と公共性が交点を持たなかった ことにより、「共同性から公共性を作り出す回路」

がほとんど開かれていないとも主張する(同:

168)。「地域から公共性が創出される過程は、地 域において公共性を定義する過程である」(同:

169)。「現実の地域的な課題を解決するためには、

『公共性を獲得した政策』だけでは十分でないこ とを見過ごしてはならない。地域問題の解決には 共同性に支えられた、あるいは、共同性と協働し た形での公共性が必要とされていることを忘れて はならない」(同:175)。地域の課題を解決する ためには「共同性を公共性へと転換していくこと が必要」である(同:177)。

このような共同性と公共性の議論は、行政と市 民の間に存在する「してあげる」と「してもらう」

という相互の関係が、「国民の間に『国に道路を 作ってもらう』『農業補助金をもらう』という受 益者的な意識を育て、国民を政治的、行政的にク ライアント化してきた」(田中 2010:148)関係 を再検討することを求める。「公共性の問い直し は、こうした市民意識を変えてゆく可能性につな がってゆく。それは、クライアント、あるいは

『政治の観衆』という意識から、能動的な市民と して政策を立案・実施し、主役的役割を担おうと する意識への変化である。市民と行政との関係の 面では、従来の行政と市民の間の『してあげる』」 と「『してもらう』という相互の関係から、「市民 と行政との対等のパートナーシップ関係へと変化 することが期待」される(田中重義 2010:148-149)。

地域コミュニティの政策体系を基にした協働評 価の視点は、このような公共のあり方について実 践的、経験的、提示的な示唆を提供しえる。この ような協働評価は、最終成果である社会変化を求 めるために、政策体系を構成する中間成果や事業 について評価を通して検証していくことになる。

特に公共に焦点を当てて検証していくことにな る。このような過程を通して、自覚された共同性、

目的をもった共同性を認識することが可能とな る。これらは、地域コミュニティの特性を構成す る帰属意識を、またそのような帰属意識を造成す る共通のビジョン、規範、価値観に通じるもので ある。公共性は、このような共同性の認識から生 み出される。何を公共として認識するのか。また、

何を行政の役割とし、何をNPOの役割とするのか。

公共性自体は社会の変遷とともに変化する。また、

地域コミュニティ自体も社会の変遷とともに変化 する。

例えば、地方開発が求めるものは、人口を減ら さずに、自信を持ってその地域に生活しえること であるかも知れない。このような最終成果を求め るために地域コミュニティの人々によって地域コ ミュニティの政策体系が認識され、明示的に構築 される。地域コミュニティ自体は県や市町村、ま たはその下位の地域コミュニティかもしれない。

このような政策体系のもとで共同性が認識され公 共性が定義される。ここでの共同性は、複数の価 値の共通項に近いもの、排他的なものでないこと が望ましい。また、ここで定義される公共性は、

地域コミュニティを超えて存在し得るもの、地域 コミュニティの中において存在し得るもの、であ ろう。また、公共性自体は、政治的、社会的、経 済的な視点から規定される。このような視座に立 つ地域コミュニティの政策体系を基にした協働評 価は地域コミュニティに強さを提供するものとな り得る。

5 終わりに

本稿では、協働事業の政策体系を、行政の視座、

NPOの視座、そして地域コミュニティの視座から 整理し、協働事業のあり方を評価の視点から整理 した。ここで本稿の考察から得られた知見を要約 して確認したい。

行政が遂行する協働事業、それを基にした協働 事業評価は、行政の政策体系を基にした行政の狭 い視座から行われている。結果として、実践にお いては効率性に焦点を当てた事業評価が行われる