44
1 1
1 2
2
2 '( )
) ( ' 1
) ( '
) ( ' 1
) ( '
) ( ' 1
) ( ) 1
( ) (
x MRS u
y u p
p x
u y u p
MRS p
x u
y u p MRS p
dy dx
y u p x
pu EU
Const EU
0
病気のとき の消費
=y
健康なとき の消費
=x I
1
D=治療費
A B
C
45
EU2
保険契約によるスクリーニング
タイプ2は契約AをBよりも選好(厳密には「無差別」)
タイプ
1
は契約B
をA
よりも(強く)選好⇒自己選抜
分離均衡が実現
) (
) 1
( ) ) 1
( (
) (
1 2 1
1 1 2
2
A p I
u p
A p
D I
u p
D p I
u
) (
) 1
( ) ) 1
( (
) (
1 1 1
1 1 1
2
A p I
u p A
p D
I u p
D p I
u
46
2つの「均衡」
「プーリング均衡」と「分離均衡」
プーリング均衡
=異なったタイプを識別されず、同じ契約(賃金率、保険契約)
がオッファーされる。
⇒逆選抜の可能性。
分離均衡
=結果的に個人のタイプ(労働者の能力・加入者の健康リスク)
が表明される。
⇒分離均衡を促すためにも「機会コスト」あり
47留意点
分離均衡では、結果として低リスクと高リスクを識別可能
互いに競争する保険者は(1)保険数理的に公平な保険 料を各タイプに提示するとともに、(2)分離均衡を可能に する範囲で高リスクの効用を最大化
⇒タイプ間で所得移転はなく、高リスクには完全保険を提供
低リスクは部分保険のみ=スクリーニングのコスト
分離均衡は存在しないかもしれない・・ 48
逆選抜と強制保険
逆選抜の下では、相対的にリスクの低い個人が保険市場 から締め出し
保険を購入する高リスクな個人は高い保険料
「悪貨は良貨を駆逐する」
例:アカロフのレモン市場(中古車市場)
社会保険は「強制加入」のため、低リスク名個人の撤退は ない
⇒相対的に低い「平均リスク」を確保
⇒ 保険料の高騰は防止できる
49モラルハザード
保険加入者はリスク(の顕在化)を防止するために努力す ることは可能
例:健康管理、自動車の鍵、火の用心
⇒pは個人によって操作可能
加入者は保険購入の安心感からリスク回避努力を怠る
⇒リスクpの上昇
高いpを反映して保険料が高騰
留意:各個人としての合理的選択(モラルハザード)が合
成の誤謬(=保険料の高騰)をもたらす 50
「事後的」モラルハザード
事前的モラルハザード=リスク回避努力が阻害
医療保険の場合、病気になったとき、診療費(の一部)は 保険金で支払い
⇒患者(病気になった加入者)はコスト意識を持たず治療を
受ける⇒過剰受診=事後的モラルハザード
事後的モラルハザードを是正するには自己負担の引き上 げ
⇒保険のリスクヘッジ機能は低下
51
0 受診水準 医療需要
限界費用
自己負担
=3割*医療コスト
効率的水準
過剰受診
=事後的モラルハザード
E
F
G ヘッジされなくなった医療費リスク
=保険機能の低下
52
価格
社会保険の「規範的機能」
市場の失敗を矯正する政府の機能
市場の失敗 社会保険(年金・医療)の機能
「逆選抜」 強制保険によるリスク(健康リスク、長生 きのリスクなど)をプール
保険から排除される 低所得者
強制加入と「社会連帯」⇒社会保険制度 における「再分配」機能の活用
参考:社会保険の再分配
-支払い能力に応じた保険料
-ニーズに応じた給付(最低保障)
社会保険と保険市場の失敗(まとめ)
政府が市場よりも優位な情報を持っているわけではない
ただし、政府は加入の強制、リスク間の再分配が可能
社会保険に起因する「政府の失敗」(公共選択論)もあり 54
市場の失敗 対応
逆選抜 強制保険
事後的モラルハザード 自己負担の引き上げ
社会保障の機能
社会保障(年金・医療・介護)の位置づけ=機能の曖昧さ
保険か再分配か?
社会保障の機能 財源の原則 望ましい財源
保険 応益負担
受益と負担に対応関係社会保険料
(所得)再分配 応能負担
再分配=受益-負担
社会保険料
+税(消費税等)
55
参考:社会保険と民間保険
「対称情報」+「完全競争」の下で市場の保険料は「保険数 理的に公平」
事後的には(損失の有無が判明した後)、損失を被らない加 入者から損失を被った加入者への所得移転(再分配)
ただし、「事前」には保険料と保険金(期待値)が対応
⇒事前には再分配なし
社会保険は様々なリスクを持った個人(pの高い個人、低い 個人)をプール、かつ保険料は通常「応能原則」(所得依存)
⇒事前の観点からも「再分配」あり 56
資本市場の失敗と信用割当
57
資本市場の失敗
情報の非対称性は資本市場においても生じる
非対称情報=貸し手(投資家・銀行)は借り手(企業家)の 倒産リスクについて正確な情報を有していない。
企業は倒産リスクについて異なる
本来、倒産リスクは貸出金利に反映=リスクプレミアム
非対称情報の下では金利の需給調整機能が損なわれる
⇒逆選抜=信用収縮、信用割当
58信用収縮モデル
倒産リスク(成功リスク)の異なる 2 種類の企業家が存 在(低リスクと高リスク)
各企業家は B だけ借入、事業を実施
事業は確率pで成功、収益 R をもたらす;確率 1 - p で 倒産
事業が成功したときのみ、元利 (1+r)B が返済される。
59
信用収縮モデル
企業家の成功確率:
⇒平均収益は同じ
各企業はリスク中立的
両タイプは同数(各 50 %)存在
「有限責任」により、倒産時の利潤はゼロ
期待利潤= p(R-(1+r)B)=A-p(1+r)B
2
1
p
p A
R p R
p
1 1
2 2
60
貸出金利
=r 0
借り手の期待利潤
B r p
A
1( 1 )
B r p
A
2( 1 )
r
1r
2タイプ1企業が撤退
61
タイプ2のみが借り手
両タイプが借り手
信用収縮
貸し手(投資家・銀行)は企業のリスクを正確に把握できな い
⇒ 「平均的」リスクを反映した貸出金利
⇒相対的に安全な(倒産リスクの低い)企業が先に撤退
⇒資金を需要する企業の平均リスクの上昇
⇒貸出金利(リスクプレミアム)の一層の上昇
⇒低リスクな企業の更なる撤退
貸出金利の上昇とリスク増による資金提供の低下
⇒貸し渋り・信用収縮( Credit Crunch)
62図3:逆選抜の悪循環
情報の非対称性 平均的リスクに基づく金利設定
貸出金利の引き上げ 低リスクな借り手(企業)にとって割高
相対的に低リスクな企業の撤退(投資をやめる)
借り手の平均的リスクの上昇
信用収縮モデル
0 r
r
1高リスクのみ資金需要 期待収益率
r p
p )
2 ( 1
2 1
r p
2低リスク企業の 撤退
64
信用割当
貸し手は貸出金利の引き上げが相対的に低リスクな企業
(=貸出からの期待収益率の高い企業)の撤退を織り込 み
投資家・銀行は資金需要が高いにも関わらず、貸出金利 を据え置き
⇒金利が超過需要を解消するよう引き上げられない
貸出金利の資金需給調整機能が失われる。
⇒金利(価格)ではない方法で資金を割り当て=信用割当
65r
1r=貸出金利
0
資金供給
資金の超過需要
両タイプ企業が資金需要 均衡金利
貸出 66 タイプ2のみが資金需要
E
F G
効率賃金と失業
67
労働市場
労働市場における「非対称情報」と「非自発的失業」
労働者を雇用する企業の経営者について考える。
経営者は労働者がサボっているかどうかを正確には
「モニタリング」できないかもしれない(=情報の非対 称性)。
ただし、一定の確率( =p )でもって社内調査をして労 働者の働き具合を調べることはできる。
68
「効率賃金」モデル
雇用主は解雇されるときの労働者の機会コスト(=労働 者への罰則)を引き上げることでサボらせないようにしな くてはいけない。
⇒労働者にとって解雇の機会コストとは解雇によって失 う給与=賃金(w)
B= サボりからの効用
⇒ B/p =サボりを防止するための最低賃金率
p B
w B
w p
w ( 1 ) /
69
「効率賃金」と失業
サボりを防止するため経営者は労働者の「限界」生産 性よりも賃金を (B/p まで)引き上げるかもしれない。
⇒効率賃金=労働者の生産性+サボり防止
賃金が労働者の生産性以上に高止まりする結果、賃 金は労働市場における需給調整の役割を果たさなく なる。
⇒労働の超過供給が解消されない可能性=「非自 発的失業」の発生
70
労働の超過供給
=非自発的失業
労働需要 労働供給
効率賃金 均衡賃金
0 労働
労働者のサボりを 防止できない
賃金率
71
E
F G
シグナリングとスクリーニング
72
非対称情報と
シグナル・スクリーニング
製品・サービスの質、労働の質等について「情報の非対称性」
があるとき、市場では「逆選抜」が生じる(「市場の失敗」)
情報の非対称性を是正するための「シグナリング」と「自己選抜
(スクリーニング)」。
シグナル=私的情報(自身の「タイプ」)を有している個人が、そ の(例:能力が高いこと)を「顕示」する方法。
スクリーニング=私的情報(例:個人の能力)を有している個人 に(その情報を有していない経済主体(例:政府)が)情報を顕 示するよう「促す」方法。
73
情報の非対称性(「展開型ゲーム」)
・健康リスクの低い個人 確率=p
個人のタイプ 外部者には識別不可能
確率=1-p
・健康リスクの高い個人
74
情報の非対称性の克服(その1)
雇用主が雇用しようとしている労働者の「能力」が見極められな いとする。
自身が優秀と考える労働者は「自分が優秀である」という情報を 雇用主に伝達(顕示)しようとする。
しかし、優秀ではない労働者も「自分が優秀である」という誤っ た情報を雇用主に伝える「誘因」を持つ。
優秀なタイプの労働者は自身の能力を説得力のある(=優秀で ない労働者がまねできない)形で顕示する必要がある